※CAUTION! このSSには、多分な「おふざけ・パロディ・ブラックジョーク」が含まれております。 嫌な予感のした人は、速やかに回れ右して撤退してください。 あと、時間軸的な解釈を投げ捨てたパラレルな設定となっております。 登場キャラが全員顔見知りでかつ普通に接していますが、深く気にしない様にしてください。 「新年、あけましておめでとうございます。文姉、幽香さん」「あけましておめでとうございます、晶さん。幽香さんは……まぁどうでも良いですが」「天狗は心底どうでも良いけど、晶はあけましておめでとう。今年もよろしくね」 年明けから絶好調な義理の姉とご主人様が、満面の笑みで睨み合っている。 挨拶だけで険悪になれる事は良く分かったので、お正月くらい平穏に過ごして貰えませんでしょうか? そんな僕の切なる願いが通じたのか、単に飽きただけなのか、二人は殺気を引っ込めて僕の方に向き直った。「と言うワケで晶さん、お年玉どーぞ」「はい、私からのお年玉よ。大事に使いなさい」 お互いをガン無視してポチ袋をくれる二人にヒヤヒヤしながら、僕は二人のお年玉を受け取った。 考えてみれば、まともなお年玉を貰ったのは中学以来かもしれない。 ……紫ねーさまのお年玉は、一ヶ月くらい過ぎた後で「ああ、あれはお年玉だったのか」と気付くモノばかりだったからなぁ。 袋の中身を確認しつつ、僕は紫ねーさまのらしいエピソードを思い出していた。 うん、二人のお年玉は普通みたいだね。良かった良かった、変なのがあったらどうしようかと。 「で、これがもう一つのお年玉です」「ほへ?」「とっておきから厳選しました。大事にしてくださいよ」 文姉が安堵している僕に、一回り大きなポチ袋を追加で渡してきた。 何だろう、コレは。やたら分厚いのがまた気になる。 好奇心に負けて僕が袋の中身を覗くと――そこはまさに、僕にとっての地獄となっていた。 とりあえずぶっちゃけて言いますが、中身は僕の写真の詰め合わせです。それも色んな意味で際どい場面ばかりの。 コレを喜べる人間は、相当なナルシストかマゾヒストかのどちらかに違いない。 そして僕は、どっちの人間にも該当していないのだ。「文姉、正直コレは色んな意味でキツいです」「そうですか? 良いお年玉だと思ったんですがねぇ」 心底不思議そうな顔で、ウケなかった事に首を傾げている僕の姉。 そんな彼女に、果たして僕はどんなツッコミを入れれば良いのだろうか。 ――ちなみにこの時、文姉にばかり注視していた僕は気が付く事ができなかった。 僕の‘お年玉’を見ながら、邪悪な笑みを浮かべる幽香さんの姿に。お正月特別変「フタマルイチイチ、ヲトシダマ異変」 妖怪の山で年始の挨拶を終えた僕は、初詣のため守矢神社に向かっていた。 文姉と幽香さんは其々予定があるようなので、残念ながら同行者は無し。 二人が来られないのは少し残念だけど……文姉も幽香さんも守矢の人達とかなり相性が悪いから、一人はある意味正解だったかもしれない。 「あけましておめでとうございます! 晶君!!」「へ、早苗ちゃん!?」 神社の階段中頃を進んでいると、何故か目の前に早苗ちゃんが現れた。 あれ? この時間ってお正月真っ只中な上に初詣もピークなはずですよね? なのに何ゆえ守矢の風祝サマがここに居るの? 僕が疑問を全力で顔に映していると言うのに、彼女はそんな事知らないとばかりに満足げな笑みを浮かべている。 どうしたんだろう。年始の挨拶をしに来た――と言う感じじゃ無いな。 早苗ちゃんはウキウキした笑顔のまま、真っ直ぐ右手を僕に突き出して言った。「晶君、お年玉くださいっ!!」 ……いや、さすがにそれはおかしい。 何が悲しくて同年代の相手に、しかも親友にお年玉をあげないといけないのか。 「そういうのは、八坂様か諏訪子さんに貰ってください」「でも、お二人は晶君の恥ずかしい写真を持っていませんよ?」「――あんですと?」「幽香さんから聞きました! なんと晶君が手ずから、自身の恥ずかしい写真をお年玉としてくれるとか!!」「幽香さぁん!?」 あの人ほんとさらっとトンデモない事するねっ!? 僕は改めて、早苗ちゃんの顔色を窺った。 ウキウキしていると思っていた彼女の笑顔は、その裏に狂気の様な迫力を秘めている。 ああ、分かる。早苗ちゃんの選択肢の中に「殺してでも奪い取る」さんが含まれているのが、知りたくもないのに分かってしまう。 とりあえず僕は、表面上だけ同じ満面の笑みを彼女に送り――全力で踵を返してその場から逃げ出した。「あ、ズルいです晶君!」「何を言われようと、今の早苗ちゃん相手に止まる気は無いからね!?」 氷翼を展開し、全速力で守矢神社から遠ざかる。 さすがにこうなった以上、呑気に初詣なんかしている場合じゃない。 とにかく、どこかに隠れるなり避難するなりしないと……。「晶様、ご無事ですか」「咲夜さん!? 何でココに!?」「貴方を――助けに来ました」 ヤダ、何それ。超惚れそうになるんですけど。 淑女なのに紳士な振る舞いで、瀟洒なメイドはいきなり僕の前に現れた。 彼女は口元に爽やかな微笑を湛えながら、その右手をこちらに向けて突き出している。 尚、その目には早苗ちゃん同様の狂気が含まれている事は言うまでも無い。 ジーザス、貴方もか咲夜さん。そしてもう紅魔館にまで回ってるんですか幽香さん。 咲夜さんと幽香さんの恐ろしいまでの行動力に愕然としながら、僕は返答すら略して咲夜さんから逃げ出す。「さすがは晶様、迅速な判断です。相手が私でなければ撒けていたでしょう」 ――しかしまわりこまれてしまった。 先ほどと同じ姿勢で、当たり前のように僕の道を塞ぐ完全で瀟洒なメイドさん。もうやだこの人。 僕の反応を見て、最早欲望を隠す必要も無いと判断したのか、彼女はナイフを構えつつ僕に冷徹な視線を送ってくる。 これはアレか。抵抗するなら美鈴の刑も辞さないと言う覚悟の表れですか。 ……どうでも良い事だけど、何故皆欲しがる写真に写っている本体の方の安全は考慮してくれないんだろう。 「その慧眼ですでに、この私の目的は察している事と思います」「察していると言うか……ある意味隠せてないと言うか……」「晶様には秘密にしておりましたが――実は私、可愛いモノに目が無いんです」「ワァ、ソレハハジメテシリマシタヨ」 隠しているつもりだったのか。そんな本音はとりあえず心の中に仕舞い、適当な相槌を返す。 しかし咲夜さん的にはその返事で満足だったのか、彼女は大袈裟な仕草で心中の秘密を語っていく。「本来ならこの気持ち、墓の下まで持って行くつもりでした。――ですが、お年玉の内容を聞いてしまっては黙っていられません」「黙っててくださいよぉ、このくらいの事なら……」「晶様、その‘お年玉’を私に譲ってください。私は、貴方を傷つけたくない」 深刻な物言いですけど、結局は写真が欲しいだけですよね? と言うか、本格的に僕の安全は考慮されて無いんですか。僕ってどういう扱いなんですか。 こちらの困惑お構い無しに、咲夜さんはゆっくりと距離を詰めてくる。 どうしよう。理由は心底下らないけれど、咲夜さんが本気である以上どうにかして逃げ出さないといけない。 そのためには、何とか咲夜さんの動きを止めないといけないんだけど……よしっ。 今が最大の窮地だと判断してからの、僕の行動は速かった。 懐に手を突っ込むと、僕は一枚の写真を明後日の方向に投げ捨てる。「甘いですよ、晶様。その程度で私の気を逸らす事等……」 次の瞬間には、何故か咲夜さんの手に収まっている写真。 そこに映っているモノを見た彼女の動きが、分かり易いほど明らかに止まった。「こ、これは――お嬢様と妹様のお昼寝写真!?」 かかった! 対咲夜さん用最終秘密兵器!! 至近距離で愛でる様に写真を眺めている咲夜さんを置いて、僕は全力で逃走した。 ありがとうめーりん! 君がこの最終手段を教えてくれなかったら、僕の未来はハリネズミだったよ!! だけどゴメンねめーりん! 多分この後君は咲夜さんに何故か怒られると思う!! 何となくそんな気がする!「おーい、晶! こっちこっちー!」「……てゐ?」 一刻も早い逃亡か隠匿が望まれる、下手すると史上最大の危機に戦々恐々しながら飛んでいると、下の方から毎度お馴染み悪戯兎の声がした。 その方向に顔を向けると、善意を前面に押し出してみました的な笑顔を浮かべたてゐちゃんの姿が。 うわぁ、逃げ出したい。超逃げ出したい。「大丈夫大丈夫、てゐちゃんは味方だよーっ」「僕が何から逃げているか分かっている時点でもう敵だよね!?」「ちっ、バレたか」 本当に油断ならないなこの子は!? しかし、てゐにしてはツメが甘いと言うか、やたらあっさり引いた気が。 ……何だか凄い嫌な予感がしてきたなぁ。背中の方から妙な悪寒がしてくると言うか何と言うか。 等と考えていたら、本当に背中の方から何かが迫ってきた。 無数の弾幕と一緒にやってきたのは、やたら嬉しそうな笑みの姉弟子――レイセンさんだった。「覚悟しなさい、あきらぁっ!!」「ええっ、何で姉弟子がぁ!?」 氷翼を出している状態なので、弾幕自体は難なくかわせる事が出来た。 しかしさすがは姉弟子。回避した僕の軌道を読んで、動きを遮る様に追加の弾幕を放ってくる。 そしてそのまま、僕の前に立ちふさがってくる姉弟子。えっと、これはひょっとして……。「あ、姉弟子まで僕の写真を?」「そんなワケ無いでしょ!? 人を変態みたいに言わないでよ!!」「えっ、でもその、このタイミングで襲って来たって事は……」「写真を欲しがってるのはそこの兎詐欺よ! 私は、そのてゐの提案にのっただけ!!」「はぁ、とどのつまり、写真に興味は無いと」「当たり前でしょう!?」 良かった。これで姉弟子まで欲しがったら本気でどうしようかと。 しかし、面倒な事に変わりは無い。 姉弟子は僕を全力でボコりたいみたいだし、負けたらてゐに最悪の脅迫ネタを握られるワケだし。 ―――良し。ここは心を鬼にしよう。 即座に覚悟を決めた僕は、ヤル気満々の姉弟子に対し適当な紙切れを放り投げた。 律義な姉弟子は、受け取ったそれを広げて不思議そうに首を傾げる。 申し訳ありません、レイセンさん。これから僕は自分の命と尊厳を守るため鬼になります。 ……え、いつも通りだって? 余計な御世話だ。「わぁたいへんだー、鈴仙・優曇華院・イナバさんにぼくのはづかしいしゃしんをとられてしまったー」「は? いきなり何を言って……」「―――安心してください、おいしい兎鍋にしてあげますから♪」「―――私のナイフは、兎の毛より痛いわよ?」 僕のかなり白々しい言葉とほぼ同時に、唐突に現れる風祝とメイド。 二人は魔眼じゃ治せそうにない狂気をばら撒きつつ、ゆっくりと姉弟子ににじり寄っていく。 本当にゴメンなさい姉弟子。でも、隙を見せたそちらが悪いんですヨ? 「うーん、やっぱ鈴仙に頼んだのは失敗だったかー。体よく利用されてやんの」 てゐの方も追撃をする気は無い様なので、とりあえずは一安心か。 明後日の方向に逃げ出す姉弟子と、それを必死の形相で追いかける二人の姿を見つつ、僕はホッと一息つくのだった。「お、覚えてなさいよ! このクサレ外道ぉぉっ!!」「忘れません、何があってもこの恩義は絶対に忘れません」 例えこの後どんな酷い目にあったとしても、僕は甘んじてそれを受け入れようと思ってますから。 いやぁ、姉弟子だとどんなに酷くても物理的に痛いだけで済みそうだから安心だよね! 今の早苗ちゃんや咲夜さんが、精神的凌辱すら躊躇い無く行いそうなのを考えるととっても良心的! ……まさか、姉弟子をエライ目には合わせないよね? 持ってるのが紙くずだと分かれば即座に解放してくれるよね? ちょっと早まったかなぁ。等と今更反省しつつも、身の安全を確実に確保するためこの場から逃げ出そうとするクサレ外道な僕。「やっほぉぉぉ、おっにぃちゃぁぁぁぁああん!」 当然、神様がそんな卑怯者に天罰を下さないワケが無く、僕はフランちゃんと言う名の直下型砲弾を背中に受ける羽目になってしまった。 ――やぁ、久しぶりだね母なる大地! しばらく離れたおかげで分かったよ、やっぱ人間は地に足をつけてないといけないって!! そうやって最高速で地面と抱擁しながらも、何とか生きてる自分をとにかく褒めてあげたい。 自分で作った馬鹿でかいクレーターから這い出しながら、僕は生への喜びを溜息として放出した。「あけましておめでとう、お兄ちゃん!」「あ、あけましておめでとぉ……」「なるほど、これがほんとの「落とし魂」ってか」 まだ落としてません。ギリギリセーフですよてゐさん。 僕の背中に乗ったままご機嫌なフランちゃんに年始の挨拶を返しつつ、僕は何とか立ち上がる。 ……これでも、まだマシな方だと思える自分がだいぶ嫌だ。 身体についた埃を叩き落としていると、さらに僕の方に降りてくる影が一つ。 一瞬あの二人が返ってきたかと身構えたが、すぐにその警戒は解かれた。 空から現れたのは、フランちゃんの姉で咲夜さんの主であるレミリアさんだった。「くく、あけましておめでとう晶。随分と面白い格好になっているな?」「おめでとうございます、レミリアさん。ちょっと妹さんの全力タックルを背中に喰らいまして」「なんだ、自慢かそれは」「……てゐちゃん思うんだけどさ、フランちゃんのおねーさんってわりと変だよね」「そうだねー」 姉に妹の行動をさり気無く抗議したら、何故か真顔で羨ましがられました。どういう事なの? 良く分からないレミリアさんの言動に首を捻っていると、早々と話題を切り替えたつもりのレミリアさんが不敵に微笑んできた。 彼女は置いてきぼりくらっているこちらの様子を一切顧みず、背後に居たフランちゃんを前面に押し出してくる。「さて、久遠晶。正月の約束事と言えば何だと思う?」「えーっと」「お兄ちゃん、お年玉ちょーだいっ!!」 あ、答えは特に言わなくて良かったんですね。レミリアさん、話の腰をぽっきり折られて苦々しい顔してるけど。 まぁ、そこは敢えて追求すまい。僕は元気よく右手を突き出したフランちゃんに視線を向けた。 さすがにこれは、本来の意味での「お年玉」を求めているのだろう。そうでないと泣く。 なので僕は、予め用意していたポチ袋を取り出してフランちゃんに渡した。「はい、大事に使ってねー」「わーいっ」「お、意外。ちゃんと用意してたんだ」「そりゃー教育係だからねー。ちなみにてゐちゃんの分もあるんだけど……」「お兄ちゃん大好き! お年玉はやっぱり現金だよね!!」 うん、君はきっとそう言ってくれると思ってたよ。そのために用意していたモノだからね。 袋の中身を確認して、喜色満面のてゐの姿にとりあえず一安心。 これでしばらくは写真を狙ってくる事は無いだろう。……機があればそれでも裏切ってくるだろうけど。「これがお年玉かぁ……何だかお金にそっくりだね」 いえ、お金ですからソレ。どういう説明を受けていたんですかフランちゃん。 どうやら基本的な所が分かっていなかったらしい彼女は、それでも無邪気に僕のお年玉に喜んでくれる。 うんうん、わざわざ人里で短期のアルバイトをした甲斐があったってもんだよ。 微笑ましい光景を慈しむ様な目でいると、視界の端に何やら不穏そうなオーラを放つ吸血鬼が。 視線を微妙にずらしてそちらの方を見てみると、不満たらったらな感じのレミリアさんがそこに居た。 ある意味分かり易い。てゐやフランちゃんが羨ましいけど、紅魔館の主的に「お年玉欲しい」と言いだせないといった所か。 ふっふっふ、まったく持って分かり易過ぎますよレミリアさん。僕がその展開を予測していなかったとでも?「あ、そういえばレミリアさんにもあるんでした。どうぞ」「なっ!? ば、馬鹿にしているのか貴様! この私にお年玉等と……」「いえいえレミリアさん、これはフランちゃんのためなんですよ」「な、なにっ?」 いきなり出てきたフランちゃんの名前に、戸惑うレミリアさん。 その動揺を見逃さず、僕は彼女の耳元に囁いた。 ――後でてゐに聞いてみた所、この時の僕はかなり悪い笑顔をしていたらしい。 スキマにそっくりだったって言われると何とも反応に困ります。嫌ではありませんが。「聡明なフランちゃんなら、レミリアさんだけがお年玉を貰っていない事にやがて気が付くはずです。その時、彼女はどう思うでしょうか?」「どう、と言うと……」「きっと優しいフランちゃんは、心苦しく思うはずです。何でお姉ちゃんにはお年玉が無いんだろうって」「そ、それは、私が紅魔館の主だからな」「レミリアさん、フランちゃんにとって貴方は―――紅魔館の主である前に姉なんですよ!」「な―――っ」「姉であるレミリアさんがお年玉を貰えなければ、フランちゃんはきっと悲しみます! 彼女を悲しませないためにも、お年玉を貰ってあげてくださいっ!!」 まぁ、これくらい言っておけば受け取らざるを得ないだろう。 外面とは正反対の冷静さで、僕はそんな事を考える。 大義名分を得たレミリアさんは、内心の喜びを隠す様に笑いながらお年玉を受け取った。全然隠せてないけど。 「そ、そういう事なら仕方あるまい。受け取ってやろうではないか」「うわぁ。晶のヤツ、ものすっごい力技で受け取らせたなぁ」 はいそこ黙ってなさい。こっちも紅魔館の家庭内平和を守るために必死なんです。 お年玉を受け取ったレミリアさんは、ニコニコ笑顔のフランちゃんと中身を見せあいっこしている。 言うまでも無い事だけど、皆のお年玉の中身は一緒ですヨ? 値段の違いはさらなる火種を招くからね。 今度こそ何の問題も無くなった事を確認して、僕は再び目の前の微笑ましい光景を見守った。 うんうん、やっぱ正月はこうじゃなくちゃ。平和が何より――――「久遠晶ぁぁあ! 覚悟をぉぉおおおっ!!」 ……正直、今のがネタ振りになる気はしてました。 命の危機を感じた僕がその場から離れると、先ほどまで居た位置に御柱が降ってきた。 その柱の上には、毎度おなじみ守矢の神々――八坂様と諏訪子さんの姿が。「――ちっ、外したか。運の良い奴め」「いや、当てちゃダメでしょ。早苗が怒るよ」「あのぉ……お二人は何をやっているんでせうか?」 早苗ちゃんにも言ったけどさ。二人共、最もお正月に神社離れちゃマズい人達だよね。 僕の非難轟々な視線の意味を察したのか、八坂様があからさまに動揺しながら言い訳を始めた。「し、仕方が無いだろう!? 怒った早苗は怖いんだぞ!?」「神様が風祝に頭上がらないってどうなんですか……」「うるさいっ、お前がとっとと写真を渡せば済む話だ!」「まぁ、私は個人的興味もあるんだけどね。ちなみにどんだけ恥ずかしいの? 例えて言うならどれくらい?」「公開されたら、舌を噛んだ後に割腹するレベルです」「二重自殺するレベル!?」 と言うか、この人等も僕の写真が狙いなのか。 とことん早苗ちゃんに頭が上がらない神様二柱を眺めながら、僕はこっそりと距離をとった。 飛んで逃げる――のは無理だよなぁ。どうしたもんかと頭を巡らせていると、お年玉袋を眺めていたレミリアさんが前に出てくる。 彼女は子供らしく喜んでいた表情を一転させ、紅魔館の主としての冷徹な笑みで八坂様達に相対した。「話は良く分からんが、この神共は貴様の敵であるらしいな」「ふん、吸血鬼風情が……何の真似だ?」「知れた事、久遠晶は我が妹の大切な友人だ。貴様等に手を出させるワケにはいかん」「……小癪な」 一気に険悪になる八坂様とレミリアさん。フランちゃんも諏訪子さんもやる気満々らしく、静かに臨戦態勢に入っている。 ――アレ、これは思った以上にヤバい事態じゃないのかな。 守矢の神々対吸血鬼姉妹とか、周辺の被害がエラい事になりそうな……。「どうしようかてゐ――ってもういない!?」 ちくしょうさすがはてゐだ。もうすでに危険を察知して撤退してやがる。 張り詰める空気、各々の手に握られるスペルカード、今から逃げる事は出来そうに無い。 ――終わったなぁ、これは。 こちらに迫ってくる余波とは思えない弾幕の壁を眺めながら、僕は静かに十字を切るのだった。 いや、まぁ別にそっち系の信徒では無いんですがね。「……それは、正月早々災難だったわね」「今日一日だけで、何度死ぬかと思った事か」 あの攻防から何とか生き残れた僕は、アリスの家に避難していた。 その後も、人里で輝夜さんと妹紅さんの喧嘩に巻き込まれたり、戻ってきた咲夜さんと早苗ちゃんに襲われたりと大変だった。 もう今の僕には、机に突っ伏して唸る事しか出来そうに無い。「なので親分や大ちゃんやメディスンへのお年玉は、アリスがお届けしてください……」 「それくらいなら頼まれても良いけど、一つだけ聞いて良いかしら」「な、なんでせう?」「何でその写真、さっさと処分しなかったの?」 目の前にお茶を置きながら、疑問を隠そうともしない顔でそんな事を尋ねるアリスさん。 僕は出されたお茶を一気に飲み干して、そんな彼女に真剣な表情で言葉を返した。「―――その手があったか」「……そのうちうっかりで死ぬわよ、貴方」「アンタジゴクニオチルワヨー」 写真入りの袋を燃やしつくしながら、僕は安堵から胸を撫で下ろす。 そこで安心していた僕は、当然文姉がこの写真の「ネガ」を持っている事に気付かなかったワケで。 ……今年も、うっかりの呪いからは逃れられないと思いました、まる。 ◆隙間を覗きこんでみますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【スキマ妖怪が教えてア・ゲ・ル♪】スキマ「あけましておめでとう。皆のアイドル、スキマさんじゅうななさいよ」腋巫女「……人の神社で何始めてんのよ、アンタ」スキマ「この子はアシスタントの腋巫女ね」腋巫女「喧嘩売ってる?」スキマ「さて、じゃあ早速最初の疑問を片付けましょうか」腋巫女「だから疑問って何よ」 Q:えーき様の登場回は「教えろ、山田さん!」はお休みですか?スキマ「お休みよ。その場合は今回の様に、突発Q&Aコーナー「スキマ妖怪が教えてア・ゲ・ル♪」が始まるわ」腋巫女「……きゅーあんどえー?」スキマ「死神Aファンの方には申し訳ないけど、これは始めから予定されてた事なの。ゴメンなさいね」腋巫女「良いから私にも何の事か説明しなさいよ。調伏するわよ」スキマ「ちなみに作者としては、あと一回このコーナーが出来れば満足らしいわ。質問たくさんお願いね♪」腋巫女「……作者って誰よ」 Q:ヤマはともかくザナドゥはサンスクリット由来じゃねーようです。スキマ「これは疑問と言うよりミス指摘ね」腋巫女「分類上で言うなら英語だったかしら、ザナドゥは」スキマ「なににせよサンスクリット語では無いわね。これは作者の勘違いよ」腋巫女「だから作者って……」スキマ「ただ、主人公の頭の中だけで完結している事だから、今回はあえて「主人公の勘違い」と言う事で片づけるつもりらしいわ」スキマ「ここで取り上げたのは、「ザナドゥは本当はサンスクリット語で無い」と言う事を喚起するためだと思ってちょうだい」腋巫女「喚起って誰によ。と言うか、主人公は私じゃないの?」スキマ「……まぁ、裏主役ではあるわね。ある意味」腋巫女「えっ、ちょっ、どういう事よ」スキマ「では次の疑問に行ってみましょう」腋巫女「……分かった。とりあえず不都合のある質問は無視するワケね」 Q:スカーレットバタリオンの方は天津飯的なのかしら、個体事の能力は4分の1とか。そうじゃなきゃ使いようによっては鬼臭いスキマ「基本的に、フォーオブアカインドの特性はそのままだと思ってくれれば良いわ。イメージ的にはナ○トの多重影分身が近い感じかしら」腋巫女「フォーオブアカインドってフランドールのアレよね? アレは増えたら能力が4分の1になるなんて生ぬるい事はないでしょ」スキマ「そういう事よ。まぁ「一行動をとったら消滅する」以外は、ほとんど元と変わりないと思ってくれて構わないわ」腋巫女「元と? と言うか、これは結局どういう話なのよ。紅魔館の奴らに関係してるの?」スキマ「では、全ての疑問に答えた所でまた次回、「スキマ妖怪が教えてア・ゲ・ル♪」であいましょう」腋巫女「だから次回って何よ……」 とぅーびぃーこんてぃにゅーど