ハンコック達三姉妹と友人関係を築いて二週間、意外にも関係は良好である。
本当は受け入れた振りをして内心疑っているんじゃないかと思ったが三人ともそんな素振りは欠片もない。
これは一体どういう事だろうか?
まあ疑ってもわからない以上考えても仕方がない、それに関係がいい事に異論はないし。
第五話
sideチャルロス
ムカつくえ~、ホントにあの兄上はムカつくえ~。
あちしが先に目を付けたのに横取りしたえ~!
何日もするのにまだムカつくえ~。
前もあちしを叩いたし、お父上様にも叩かれたことないのに!!
お父上様まで兄上を贔屓してるえ!!
せっかく新しい奴隷を買ったのに蹴っても、花瓶で頭を殴ってもちっともイライラが収まらんえ!
絶対いつか仕返ししてやるえ!!
sideハンコック
あれから二週間ここでの生活が特に不自由はない、あるとすれば大半がシュバルツの部屋で過ごす事だけだ。
しかし、自分達の環境が極めて特殊かつ幸運なのはわかる。
先日偶然にも自分達と同じ時に買われた者たちを見たが……思い出したくもない。
それほどの状況だった、ある者は肉体的にまたある者は精神的に様々な苦痛を与えられていた。
そのうえ、与えている側は何故苦しんでいるのかもわかっていないようだった。
おそらくシュバルツに買われていなければ私達もこうなっていたのだろう、この時は三人でシュバルツに心から感謝した。
よくよく思い出したら焼印を押されそうになった時もシュバルツが飛び込んできて助けてくれた事を思い出した。
最初は友人を金で買う最低な者かとも思ったが確かにこのような立場なら友人を得る方法もそれこそ買うくらいしかないだろう。
私達も海賊だ善人を気取るつもりはない。
その後の態度も悪くない、おそらくこの年頃でこの対応が出来るのはシュバルツがかなり利口なのだろう。
前に弟という奴を見たが…顔立ちから身の振り方までまるで似ていない、この身の振り方からシュバルツが男だから利口というわけでもなさそうだ……それとその弟が何故かこちらを睨んでいたな。
最初はまだ疑っていたが、騙しているわけでもなさそうだ、それに前から現女帝の船長が
「男は美しい女に弱い。」
と言っていた、九蛇では美しいというのは強いという事、私は新入りだが既に九蛇海賊団でも上に入る方の腕前に見た目も美しい、うん疑う所など微塵もない。
ゆえにシュバルツの友達になりたいという言葉を疑う必要もないしその正直さに免じて友人になってやった。
そうよ私は寛大で美しいから……などというのは嘘だ。
そう、あの時に美しいから仕方がないなどと言ったがあれは嘘だ。
美しいから何をしても許されるのは美しい方だ。
ソニアやマリーもそれはわかっているが、同意したのは私と同じ気持ちだったからだろう。
そう私達は奴隷になるなど認めたくなかったのだ。
だからシュバルツの言う友達という言葉に乗ったのだ。
(だが…それも悪くない。)
ここ数日少しずつだがそう思えるようになってきていた。
sideシュバルツ
ハンコックが何か考え事をしているみたいだが、
(一体何を考えているんだ?まさか外に出たいのかな?)
そんな風に考えているいと
「はい!よそ見しない!」
サンダーソニアに足を引っ掻けて転ばされた。
「何回言わせるの、訓練中によそ見しない!実戦でそんなことしてたらすぐ死んじゃうわよ!」
そう俺は今稽古をつけてもっている最中である、少なくとも女々島の精鋭で作られる九蛇海賊団にこの歳で入る三人ならそこらの海兵などよりよほどいいと思い頼んでみたら、
「友の頼みなら仕方がない、恩もあるしな」
というお言葉と共にあっさり協力してくれる事になった、予想以上にハンコックは素直な性格のようだ。
もちろん公然と天竜人を殴らせる訳もいかないので家の中にある大きな部屋から他の者達を追い出して中が見えないようにしてからだが。
しかし五歳では無理なトレーニングは体に悪いし筋トレを今までより減らして体力をつけるランニングなどを増やした。
三人との訓練も修行とかいうのよりは眼を閉じないとかそんな基礎的な事ができるようになるための組み手で勝つためのものじゃないむしろ慣れるための訓練だ。
そのためか向こうも殴ったりせずに主に投げや足払いをしてくる。
力をつけるとかそういった類の訓練はもっと大きくなってからやる事にした。
あ~六式とかつかいてえ。
コビーで出来るなら頑張れば俺にも出来るはず……ゴメン、コビーの努力を馬鹿にするようなことを思った、しかし同時に希望にもなってるぞコビー。
ハンコック達が逃げるまであと四年それまでに出来る限り鍛えてもらってその後は海軍に頼もう、天竜人に臆せずに稽古を付けてくれるとなるとガープくらいかな?
親父に頼めば将官クラスの師匠がすぐにつけられるだろう。
武器も欲しいな。
せっかくの世界貴族という立場、利用するだけ利用させてもらうぜ。
しかし友達という言葉はとっさに出たかなりいい加減なものだったがなってみると凄くいい。
そうこの世界に生まれてから大抵は一人だった、いや人数的には沢山いたがこんな風に過ごすことは無かった。
朝起きて朝食を食べ、午前中は遊んで昼食をとり、午後もやはり遊んでおやつを食った後昼寝して起きて風呂に入り夕食を食し寝る。
ゲームをしてもみんなワザと負けるし、こんなくだらない生活サイクルの繰り返しだ。
そこに友達が入り遊びの時間を訓練と対戦相手のいるボードゲームなどで遊ぶだけでずいぶん違う気がする。
この間親父に
「シュバルツ、奴隷の首輪は外してはいかんえ」
などと注意されたが適当に誤魔化しておいた。
この時の俺の言訳はかなり無理があったけど通った。
この事から思うに親父はあまり我儘を言わない俺の願いは聞いてくれる可能性が高いことが分かった。
いや、もしかしたらどうでもいいだけかもしれないが……
そんなこんなでハンコック達が俺に買われて数ヶ月が経ちここ最近はすっかり打ち解けたので前々から考えていた計画を行動に移す事となった。
そう、その計画とは……
「「「キャーーー!!」」」
「ああああああああ!!」
今俺達4人は大絶叫中である、何故か?
それは俺達がただ今絶賛降下中だからである……ジェットコースターで。
そう俺達は今シャボンディーパークに来ていた。
しかもお忍びで、本来なら天竜人がお忍びとかあり得ないだろうがそこは俺、メイドに普通の服を買ってきてもらったからだ。
俺は親父に言って俺専属の世話係を減らしてもらっていた、今の俺の世話係はメイドが三人だけだ。
この三人を選んだ理由は簡単だ俺と比較的仲が良く俺のこういった行動にも口止めしておけば黙っておいてくれるという寛容さがある人達を選んだ。
護衛にはハンコック達が強いから平気だと言っておいた。
親父も天竜人に攻撃してくる奴なんかいないと思っているのか許可してくれた。
以上の事があり今日シャボンディパークで遊ぶという事態が成立してる。
ちなみに3人のメイドさんは別行動で好きに遊んでもらっている。
ジェットコースターの後はコーヒーカップにゴンドラ、観覧車と乗り継いで遊んでいた。
「高いな~ここ」
「ホント!人が小さく見えるわ。」
などと言いながら俺が何気なく下を見ているとふと視界にどこかで見た様な男が飛び込んできた。
(あれ?あの男何処かで見たような……)
「どうしたシュバルツ、何かあったの?」
急に黙った俺に気がついたサンダーソニアが声をかけてきた。
「いやちょっと見たことがある人がいた気がして」
「このシャボンディに知り合いがいるのか?」
「ううん、いないけど……」
「なら気のせいよ、そもそも貴方と知り合うような人が此処に居るわけないでしょ?」
「そうだよな、気のせいだよな…(でも何処かで見た気がするんだけどな……)」
観覧車を降りて次のホラーハウスに向かっている間に俺の頭からその疑問は消えていた。
あとがき
だめだベタな展開しか思いつかない。
なんかいつの間にか仲良くなってるし……
奴隷を仲間にするにしても少数だよな……男と女どっちにしよう。