同じ出来事でも、物事は捉え方次第で様々な形に変わる。
要するに同じ事をしても人によっては全く違う事の様に対応されると言う事だ。
俺は今までの人生で一番その事を実感している。
俺達からすれば何時も道りのじゃれ合いでも、黄猿…いや政府から見れば大犯罪だったと言う事だ。
改めて自分の生まれを実感した出来事である。
第三十八話
「これは大問題だよォ…。」
そう言うと黄猿は指先を、未だ突然の事に驚き床に手をつけ起き上がっていないサンダーソニアに向け光を集め出した。
不味い!
そう思い俺は黄猿の指の前に達コースを塞ぐ。
「ちょっと待って下さい黄猿さん!!」
俺が前に出た事に黄猿は光を消しながら言った。
「どうもお久しぶりで…それとォ…そこをどいてもらえませんかねぇ……。」
そんな事を言ってきたが退ける訳もない。
しかし不味いぞ、この調子で海軍が攻撃してきたら。
「何故行き成り攻撃を?」
わかりきった事だが一応聞いておく。
「天竜人を傷つければ…わっし等が対応する事は…ご存じのはずでしょう?」
「まだ私が本人と確認された訳ではないでしょう?」
「それはそうだけどねぇ~…わっしの任務は貴方を本部まで護衛する事だからねぇ……何かあったら困るんだよォ…本人かどうかはその後の問題なんで。」
「先ほどの攻撃は私にも当る可能性があったのでは?」
「これでも一応は大将ですからねぇ~…自分の攻撃位は制御できますよ。」
「わかりました、今後この様な事は無いようにしますから引いて下さい、本部としても七武海と騒ぎを起こしても得は無いでしょう?」
「しかしねぇ…。」
中々引こうとしてくれない黄猿に困っていた所でようやく助けが来た。
「騒がしいな、何用じゃ? …いや要件自体はわかっている、何故行き成り攻撃を仕掛けて来た?」
「それがねぇ~…あんたの所の船員2人が天竜人に暴行をしててねぇ~~。」
「馬鹿な…そのような者がこの船に居るはずは無い。」
驚き否定するハンコック。
まあハンコックからすればこの船にそんな奴がいるなんて思ってないだろうな。
実際にやられた俺ですら暴行なんて思ってない。
てか頬っぺた引っ張って暴行とかあり得ないだろう普通。
「そうは言ってもねぇ…そこの2人が無礼を働いてるのをわっしは確かに見たんだがねぇ~~。」
そう言ってサンダーソニアとマリーゴールドを指差した。
「まさか、よりにもよってその2人が……」
そこまで言ってハンコックは何かに気がついたように黙ってしまった。
ハンコックもこの2人だからあり得るかもと思ってしまった様だ。
この2人を含めて俺達は小さい頃から割りとアグレッシブなスキンシップをしてきたしな。
知らぬ者からしたら十分無礼に見えるだろうと気がついたみたいだ。
「別に暴行されてた訳ではないですよ、仲が良くスキンシップを計ってただけです。」
黙り込んだハンコックをフォローするように黄猿に言う俺。
「スキンシップねぇ~。」
やや疑うように、しかし俺の言う事を無視する訳にもいかないで考え込む黄猿。
「黄猿さん、このまま九蛇と戦う訳じゃないでしょう?」
「まあ…それは~状況次第でしょう。」
そう聞いた途端に臨戦態勢に入る九蛇の面々。
一触即発の状態に内心頭を抱える俺。
帰る前から問題だらけだ。
「とにかく私は襲われたなんて思ってません、そちらも此方からの要請があって動くのが本来の手順でしょう?」
「それは…そうですが…。」
言い淀む黄猿。
本来通報や被害届があって動くのが普通。
確かに目の前で事件が起これば介入するだろうが、被害者と思ってた人が事件そのものを否定するならそれ以上の介入は不可能のはずだ…まあ余程の事なら別だろうが。
黄猿だって馬鹿じゃない、あれを本気で暴行なんて思ってないだろう。
七武海との争いだって起こしたくないはずだ。
「わかりました…わっしの勘違いで申し訳ない。」
「いえ、此方こそ紛らわしい事をしてすいません。それと…海軍の人達にも攻撃してこないように伝えてくれません?」
「あーー…それは大丈夫で、わっしが双眼鏡を覗いた所で偶然目に移り…急いで飛び込んで来たもんで…他の者達は知らないはずです。」
「そうでしたか、よかった。」
黄猿しかこの事を知る者はいないらしい。
安心しながら海軍の船に目をやりその数に驚いた。
4隻の船が此方に向かってきていたのだ。
海軍の軍艦3隻と見るからに豪華な造りの船が1隻。
「黄猿さん…あの船の数は?」
やや引き気味に4隻の船を指差し言う俺に
「護衛の船ですけど…何か?」
当たり前のように返す黄猿。
「過剰戦力では?」
「あー…確かにねぇ~でも見つけ出す事が出来なかった訳ですし……これ位はしっかりこなさないと、わっし達の立つ背がないでしょう?」
よくよく俺はとんでもない事をしてしまったと認識させられた。
此処までしてくれた人達に家出しましたとか。
「何やら違うのも1隻混じってますが?」
軍艦と共に来るやや小さい船を指差し言う。
最も軍艦に比べてやや小さいだけだから十分大きいのだが。
「あー……あれは政府の要人用の船ですよォ。」
そんな物まで持ち出してきたのか。
そして俺は考えるのを止めた。
side黄猿(ボルサリーノ)
ん~~…これは多分本物だねぇ~。
あの後何度か天竜人にあったが、相手が大将とか元帥とか言う事位で自分達と対等とは見ていないようだったしねぇ。
敬語で話される様な事は1度もなかった。
天竜人の事を研究して似せようとしたら、自然とわっしに対しても威圧的に接しなきゃならないはず。
九蛇とやけに親しそうなのは気になるが無理に聞く事はできないしねぇ。
このまま何事もなく終わってくれればいいんだがねぇ。
でもこの子は何かしでかしそうな予感がする。
前に話した時に家の事が嫌いみたいな事を言ってたからねぇ…まさか家出でした何てことないよねぇ。
「黄猿大将! 何事ですか!?」
おっと、わっしが飛び出してきたせいで要らん心配をかけたようだねぇ。
「何でもないよぉ~…ただ速く会っておきたかっただけだよぉ~。」
本当はダメなんだけどねぇ…わっしの一存で七武海と事を構える訳にもいかないからねぇ、今回の事は無かった事にするしかないねぇ。
まああの子の事だからまた歌でも歌って仲良くなったんだろうねぇ。
「では…あちらの船に移ってくれませんか?」
「あの船にですか?」
政府の船を指差し嫌そうな顔をしなさる。
「一応貴方を乗せるために来た船ですしねぇ…そう嫌な顔しないでやって下さい。」
「わかりました。」
未だ嫌そうな顔だが移って下さった。
「ではぁ…わっしも同乗して護衛させてもらいますんで。」
「わかりました……あと前みたいに気軽に話してくれて結構ですよ。」
…………やっぱり本物みたいだねぇ。
「そちらもぉ…前みたいでいいよォ。」
「わかったよ、黄猿。」
こりゃ間違いないねぇ。
sideシュバルツ
しかし要人用だけあって凄い設備だな…主に人が。
メイドも使用人も乗っている。
頭を下げられまくった。
会釈を返すだけで驚かれる…そして疑われる。
これからは今までとは違う意味で大変な生活を送る事になりそうだ。
そんな事を考えながら、他の人に聞こえないように黄猿に言う。
「あ、あとハンコックの船も一緒に来るので、そのつもりでお願いします。」
そう言った俺に黄猿が驚いたように反応した。
「あー…海賊女帝もかい?」
「うん。」
「あちらの方にはぁ…後日ちゃんと礼をしとくから大丈夫だよォ。」
「いや…それとは別に大事な話があってね、彼女にはその際に同席してもらわないといけないんだ。」
「大事な話? それは先にわっしが聞いてはダメなのかねぇ~。」
どうしよう…言わないと納得してもらえないかな?
でも此処で言ったら反対されるかも知れないしな。
まあ反対されても聞く気ないけどね。
それにそのうちわかる事だしな。
「実は…ちょっと待ってて。」
話す事を決めた俺は言いかけたが、勝手に話すのもどうかと思いハンコックに了承を得に行った。
既に九蛇の船との間に掛けられていた橋代わりの板は外されていたが、俺は気にせずに月歩で九蛇の船に向かった。
戻った九蛇の船の上ではサンダーソニアとマリーゴールドの2人がハンコックに説教をされていた。
可哀そうなので止めておく事にしよう。
「その辺にしとこうよ。」
「何故此処に居る?」
「ああ、ちょっと聞きたい事があってね。」
俺はハンコックの近寄り例の事を黄猿に話していいか聞いた。
「何を言っておる、どうせ知られるのじゃ構わんじゃろう。」
ハンコックはあっさりとその事を了承した。
寧ろ態々俺が聞きに来た事を怒っているみたいだった。
また覚悟がないと思われたのだろうか?
「勘違いするなよ、俺だって中途半端な気持ちじゃないんだ、ただハンコックの了解を得ずに勝手に話しちゃ悪いと思っただけさ。」
「ん、そうか…それなら良いのじゃ……すまぬ。」
どうやら誤解は解けた様で良かった。
「それじゃあ、そう伝えてくるよ。」
「わかった。」
そう言い俺はまた月歩で船に向かった。
空を翔けて来た俺に驚いた様な周りの人達がいたが一々説明するのも面倒なんでほっておいた。
「こりゃ~驚いた……月歩を使えるのかい?」
黄猿もやや驚いたようだ。
最も殆ど表情に出ていなかったから余り驚いてなかったのかもしれないが。
「一応六式は使えるよ。」
「そりゃ~…凄いねぇ。」
「でも黄猿からしたら大した事ないでしょ?」
「さあねぇ。」
しらばくれる黄猿に本題を話す事にした。
「黄猿さっきの事なんだけど…俺今度ハンコックと結婚するんだ。」
今度こそ本当に黄猿が驚愕するのが見れた。
「おーー………。」
何を言っていいかわからないようだ。
もう少し面白い反応をしてくれるかと思ったんだが……早口で話すとか
だめだ早口で話す黄猿とか想像できない。
多分他の大将や元帥でも見たことないだろう。
「黄猿…き~ざ~る~。」
目の前で手を振ってみるが反応が薄い。
「おー…生きてるよォ。」
いや別に死んでるとは思ってないけどさ。
「どうしたの?」
「いやぁ…少し考え事をねぇ…。」
そう言って黄猿はまた黙ってしまった。
部屋に入ってもそれは続き、手持無沙汰になった俺は取りあえず歌ってみた。
「ああ~あああああ~あ、「ああ~あああああ~」」
歌ってみると後半部分がハモった。
黄猿も歌っている…しかも先程と変わらない様子で。
未だ考え込んだ様な顔のまま…いや実際に考え込みながら反射で歌っている。
おそらく自分が歌っている事すら気がついていないのだろう。
こいつ…成長してやがる。
そう思った俺はさらに熱唱し、黄猿も考え込んだまま続く。
「「ああ~あああああ~あ、ああ~あああああ~、むむーむむむむーむむ、むむーむーむーむーむーむーむー」」
豪華な船の広い一室に2人の男の歌声が静かに、それでいて力強く響いた。
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歌い終わった後よくよく考えたら、俺何してたのみたいな気分になった。
間違いなく今までの人生で1番カオスな時間だったね。
勝手に落ち込む俺の事など無視して船はマリンフォードに向かう。
あとがき
いや~最近はシリアス(笑)が続きますね。
まだまだ続きますよ。
それと前回のあとがきでヒナの事書いたが作者がヒナが堕ちるシーンが思いつかずに断念しました、スイマセン。
作者はヒナは大人の女性のイメージがあるためちょっとした事じゃ堕ちてくれない気がするんですよね。
まあそれを言うとロビンもそうなんですが。
ただそのロビンの事を考えた時にもしロビンがまだ十代前半の人格がまだしっかりと形成してないときに何かの縁があればいけるんじゃないかと思った。
そう思い試しに読みきりでそんな話を書いてみたが失敗しました。
なんか中途半端に拠り所みたいになって病んでいってしまった。
てか描写も中途半端で全然ロビンがヒロインじゃなかったのでボツにしました。
あとなんか本編で動物系の幻獣種とか言うのが出てきてましたね。
あの悪魔の実の名前によってはこっちの名前も変えないといけないかもしれませんね。
トリトリの実 モデル:フェニックスだった場合は、こちらもヘビヘビの実 モデル:ドラゴンにするかもしれません。
それと前に要望があったので別に人物紹介を載せておきます。