歓迎を受けて数日、俺は少しずつ九蛇海賊団に溶け込んでいった。
危なく気がついたら皆と同じ服を着る所だった。
いや流石に着る前に気がついて止めたけどね。
むしろ着たらヤバいでしょ、海軍に見つかったら即逮捕だよあんなの。
こんなのを着る位なら今着てる上着にフリルを付けた方がマシ……なわけないか。
俺とハンコック達の昔話をしたり、俺の能力を見せたりした……それでハンコックが少し拗ねたりもしたが。
何でも自分だけ超人系なのが寂しかったらしい。
仕方なく獣化してハンコックを乗せて飛んでやったら機嫌が直った。
まるで子供みたいに感じたね。
他の人達も乗せてほしそうだったので乗せようとしたら、近くに居たハンコックがまるで開眼したように睨んだで皆逃げてしまった。
いや実際俺も怖かったよ…もうなんかこう目が光からビームとか出るんじゃないかと思ったし。
まあとにかくそれくらいの眼力だった。
あと気がついたらバキュラをラジャが倒して子分みたいになっていた。
バキュラの奴ラジャの二倍くらいの大きさがあるのに情けないな。
そんな事を思ったりもしたが実際この世界で体の大きさはそんなに強さの決め手にはならない事だし気にしなことにした。
調子に乗って俺も獣化してバキュラを見降ろしたりすると、もうメチャクチャビビりまくってしまい可哀そうなので二度としないようにしようと思った。
俺がこの船の皆と打ち解けるために色々としている間も順調に船は進み、とうとう女ヶ島アマゾン・リリーに到着した。
第三十一話
遠目からでも見える岩ほられた多いな九蛇の文字。
さらに近ずくと見えてくる大きな鉄ごしらえの門。
正義の門にしてもそうだがこんなデカイ鉄の門だれが造ってんだ?
開く門を見ながらそんなどうでもいい事を考える。
そして門が開くと聞こえてくる戦士達の帰還を祝う声。
「蛇姫様ー!」
「サンダーソニア様!」
「マリーゴールド様!」
3人を始めとして口々に戦士達の名が呼ばれる、戦士達もそれに応えて手を振り返したりしている。
しかしどうも俺の存在に気が付いたのか次第に声が消え、近場の人とヒソヒソと俺の事を話しだした。
それもそうだろう、男とばれている訳ではいないようだが、見かけないやつが一番目立つ位置に居るのだから。
ちなみに一番目立つ位置とはハンコックの横で、そのやや後ろにサンダーソニアとマリーゴールドが立っている位置だ、そりゃ嫌でも目立つだろう。
ハンコックはそんな事も気にも留めずに、港に着くと俺と腕を組み九蛇城に向かった。
どうも籠が用意してあったようだが今回は使わずに、城に向かう道を歩きながらハンコック自ら俺に色々と説明をしてくれた。
そんな様子にますます周りの人達の俺に対する疑問は深まるばかりだろう。
しかしそんな周りの視線を気にする事もなく、城に俺を入れた。
「御帰りなさいませ蛇姫様、あの…其方は?」
中から背の高い女の人が出てきてハンコックを迎えたが、俺に気がついて問いかけると。
「この者はシュバルツじゃ。本日からこの九蛇城に住む、部屋は…わらわの部屋だ。シュバルツこの者はエニシダじゃ、何かあったらこの者に言うといい。」
行き成りすぎて説明になってないような気がする。
実際に相手のエニシダさんは困惑していた。
それすらも意に返さず進むハンコックに、俺はもう連れられるがま奥に進んだ。
なんか謁見の間みたいな所につくとハンコックの連れている蛇が椅子のような形になり座れるようになった。
便利な蛇だな…俺も欲しいかも。
そう思った瞬間に俺の心を読んだかの如く、後ろからラジャが俺に覆いかぶさるように乗って来たので
「悪かったって、機嫌直せよ。」
と諌めながら下して、伏せの体勢になったラジャを背もたれに床に座った。
ハンコック俺を隣に座らせようとしていたが流石に今回は遠慮した。
向かい合うように座り、ハンコックが何やら国の事なのあかよくわからんが何人かの人と話しているのを聞きながら当りを見回すが、やはり世話をする人達が此方を見ている。
暫くすると用事が終わったのか立ち上がったハンコックにまた腕を引かれて場所を移す事になった。
「何処に行くんだ?」
俺の質問に足を止めることなくハンコックは応えた。
「湯浴みじゃ。」
「ああ、風呂か……で、何で俺の腕を引く?まさか一緒に入る気か?」
「勿論じゃ。」
「そうか。」
当然のように応えるハンコックに、もう俺は特に抵抗することなく引きずられていく事にしした。
子供の頃は一緒に入ってた事もあり、なんかもう今更で抵抗する気がなかったからだ。
「じゃあ俺先に入ってるから。」
「わかった。」
先に服を脱いだ俺はハンコックにそう告げ一足先に風呂場に入った。
湯気で細かい所はよく見えないが、高そうだ…家に居た頃を思い出す。
早速湯に浸かり寛いでいるとハンコックも入って来た……サンダーソニアとマリーゴールドも一緒に。
「どうじゃ湯加減は?」
「ああ、丁度いい…じゃなくて2人も一緒かよ!」
思わず普通に応えたがよくよく返した俺に3人は
「なんじゃ突然叫んで。」
「私達が一緒だと悪いの?」
「昔からそうじゃない。」
と平然と返してきた。
「そりゃそうだけど……もうお互いに成長してる訳だから、てか前隠そうよ。」
「隠す物など何もないわ。」
それはもう自信満々に返された。
「そう…もういいよ。」
言っても何も変わらないのでもうやめる事にした。
別に俺はそんなに純情な訳でもない、女の裸をみて赤面して鼻血を吹く様な漫画みたいな事もない…パウリーが見たら出血死しそうだがな。
「ではシュバルツわらわが直々に背中を流してやろう。」
ハンコックがそう言ってきた。
「ああ、それは良いが……男の前で全裸で仁王立ちするのは止めた方がいいぞ。」
「そなただけじゃ、別に気にする事は無い。」
「はいはい、それは光栄ですね。」
適当に応えているとまた腕を引っ張られた。
何か今日はやたら引っ張られるな。
そう思っていると3人に取り囲まれて隅々まで洗われた。
恥ずかしかったけど我慢してお返しに3人を俺が洗ったりもしたが、丁度終わった所で入り口の方から音がした。
何と積荷をかたした九蛇海賊団の人達が入って来たのだ。
あれ?ハンコックの入浴してる時は入らないんじゃなかったの?
「ハンコック、海賊団の皆は一緒に風呂とか入るの?」
「ん?ああそうじゃぞ。別に分かれてはいる必要はないからな。」
「姉様と入るのは海賊団の者達だけだけどね。」
「姉様と一緒の湯浴みは一種のご褒美よ、これが理由で海賊団に志願する者も居るくらいよ。」
ハンコックに続いて2人が補足してくれた。
やはり背中に印が無いのが影響しているようだ、ハンコック達も呪いではなく悪魔の実の能力と皆の明かしているし。
なんか原作よりハンコック達と国の皆の距離が近い気がするのは気のせいではなさそうだ。
まあ原作通りハンコック達の人気は凄いがな。
風呂から上がった後に国の人達に向かって、船の時と同じように説明…と言うかハンコックのお願いをして俺がこの国に居てもいいような感じになった。
その後は特別な事は無く食事を取って寝た。
しかし俺の知らないうちに、国中に俺の様々な噂が流れたようだが。
次の日、やや早く起きた俺は1人寝床から抜け出し九蛇城の天辺に登り景色を見ていた。
青い空、青い海、この果てしなく広がる世界と言う「何を悟ったような顔をしてるのよ。」現実逃避をしていたのだが、サンダーソニアに邪魔された。
「俺が黄昏てると変か?」
「物凄く変よ。それより姉様は?」
全く容赦なく言ってくるサンダーソニアの言葉に内心傷ついているが、そんな俺の事はお構いなしにハンコックの事を尋ねてきた。
「疲れたんだろう、まだ寝てるよ。」
「そう、帰って来たばかりだものね。」
「ああ、そうだな。」
そう答えて俺は立ちあがった。
「何処に行くの?」
「散歩してくる。」
適当に返事しながらその場を後にした。
「お早う御座います、シュバルツ様。」
「あ、どうもお早う御座います。」
こんな感じで普通に挨拶が出来る程度にとけ込んでる俺…なんか順応早くない?
自分でもそう思ってしまう程の順応ぶりだ。
まあこんなに軽く接してくれるのはまだ海賊団の人達だけだけどね。
何でこんなに俺が簡単に受け入れられたんだろう?
理由を考えてみよう。
1、ハンコックが女帝だから。
2、一応俺は初対面の相手に対して礼儀正しいから。
3、主力(ハンコック、サンダーソニア、マリーゴールド)を除いたとはいえ、国の精鋭で造られる九蛇海賊団を一瞬で壊滅寸前に追いやるほどの実力者と勘違いしている。
4、演技、実は全然認めてなくて闇討ちの準備をしている。
1と3が主な理由かな…2もなくは無いけど殆どないだろう。
4は…居るのかな?全体ではないにしろ多少は居そうな気がするな。
一応気を付けておこう。
sideハンコック
朝起きたら隣に居るはずのシュバルツが居なかった。
一瞬夢だったのかと思ったが周りの状況を見て昨夜の出来事が頭の中に蘇えってきた。
凄かった……修行にもあんなのは無かった。
「姉様、起きてる?」
昨夜の事を思い出しながら、しばし考え込んでいたがソニアが呼びに来て我に返った。
「ソ、ソニアか!起きているぞ!」
慌てて答えてしまった為か、ソニアが部屋に入ってきてしまった。
「お早う姉様…どうして裸なの?」
「昨日は飲み過ぎてな、その…凄く暑かったのじゃ!!」
「そ、そう…気を付けてね。」
思わず叫ぶように言ったわらわに若干引き気味にそう答え立ち去ろうとするソニア
「そ、そう言えばシュバルツは何処に行ったか知らないか?」
そう聞いたわらわに
「散歩って言ってたわよ。」
そう言って出て行った。
散歩……これは帰るまでに修行の成果を見せねば!!
船では料理など出来なかったので今しかない、わらわは急ぎ服を着て厨房に駆けだした。
sideシュバルツ
散歩に出かけて森の中等を適当に歩き戻ってみると
「シュバルツ、朝食が出来ているぞ。」
まるで自分が造ったように料理を見せてくるハンコックがいた。
いやまるでじゃなくてその格好は……
「もしかして…いや、まさか…本当の本当に…間違ってたら悪いんだけど…その…何と言うか…ハンコックさんが造ったとか?……何てことありませんよ「わらわが造ったそ。」ですよね!どう考えてもハンコックさんが造ったんですよね!!」
まさかハンコックが料理出来ると思わなかった俺はちょっと自信なさげに聞いてみた所、何とハンコックが造った事が判明した。
あまりにも慌てたのでさん付けになったほどだ。
「凄く美味しそうだね。」
何とか取り繕ってそう言いながらハンコックの隣に座り食べる事にした。
「シュバルツ…あ~んじゃ。」
「へ?」
普通に食べようとした俺に向かいハンコックが俺に食べさせようとして来た。
一瞬硬直したが取りあえず
「あーん。」
と食べておいた。
「どうじゃ?」
「うん、美味いよ。」
「そ、そうか…………お前に食べさせてもらうとより美味だなんて……。」
「え、言ってないから……おーい、ハンコックさん…。」
ハンコックは何やら嬉しそうにしながら妄想の世界に行ってしまった。
「仕方ないほっとくか。」
仕方ないのでハンコックを放置して食事を続けていると
「姉様、次の出港は何時にする、あらお食事中?」
マリーゴールドが来た。
「おう、マリーも食うか?ほれ、あーん。」
マリーゴールドにも食事を薦めてみた、あーんしたのは何と無くだ。
その途端、思わず冷や汗が吹き出すほどの怒気が横から叩きつけられた。
いや、もうこれ覇気だね…覇王色の。
「折角だけど遠慮しとくわ、私まだ死にたくないもの。」
マリーゴールドはそう言うと部屋から出て行った。
何でも無い様に振る舞っていたが、物凄く早足だった。
俺はそのまま必死に平然を装いながら食事を続けた、決して横を向かないようにしながら。
「…………。」
「…………。」
此方をガン見してくるハンコックを必死で無視しながら食事を続ける。
別に激辛料理でもないのにさっきから汗が止まらない。
既に料理の味もわからない。
食事中に此処まで窮地に陥ったのは俺の料理の修行中に出来た失敗作を、師匠とお互いの口に突っ込み合った時以来だ。
何とかせねば。
「あの…ハンコックさん。」
「なんじゃ?」
いかにも不機嫌な感じで返された。
「食べないんですか?」
そう問いかけた俺に対して暫く目の前の料理を見詰めた後、俺に向かっていかにも食べさせろと言った感じで口を開けた。
「え?……食べさせるの?」
頷くハンコックに仕方なく食べさせる俺…結局全部食べさせた。
まるで本物の恋人のようだ……あ、そう言えば俺達もう本物の恋人だった。全然実感がないな。
食べ終わる頃には機嫌も直ったのだが、その姿はとてもあの王下七武海とは思えなかった。
結局昼も夜もこんな感じだった。
その夜に俺の心配していたことが起こってしまったが。
あとがき
なんかラブコメしてしまった。
もう少しワンピっぽくしたほうがいいかなと思う今日この頃。
所でどうすればワンピースっぽいのだろうか?
バトル?
ギャグ?
いやもう何か書きたいものを書いてしまおうと思った。