ウォーターセブンを出発した所で懐かしい人乗ってそうな船を見つけた。
第二十九話
法則その一、「九蛇」の旗を見たら海賊も商人もボートで逃げ出す。
さて、全速力で逃げ出しますか。
とも思ったがこの船にはボートが積んでないので無理だね。
つーかハンコックが七武海になったのは大分前に聞いたけど、会いに来なかったってことはもう忘れられたのだろう。
……てことはヤバいかな?
このまま攻撃対象になるかも知れないのでやはり逃げる事にした。
「ラジャ逃げるぞ、スクリューを回すから…って、ヤバ!こっちに来てる!!」
考え事をしている間にすぐそこまで船が来ていた。
まあいいや、いずれ行くつもりだったしカームベルトを越える手段もない、俺は覚悟を決めてその場に留まった。
sideサンダーソニア
姉様の状態が良くない…ようやく決心がついてシャボンディに着いたのに、シャッキーから丁度シュバルツが旅立った所だと聞くと姉様が倒れた。
急いで後を追ったけどこの広いグランドラインで何処に行ったかなど全くわからない。
取りあえずウォーターセブンに行くと言っていたと聞いて追ったが、全く見つからないまま目的のウォーターセブンに着いてしまった。
港の者達にシュバルツの事を聞こうとしたが、九蛇の悪名か姉様の七武海の称号に恐れをなしたのか一向に誰も捕まらない。
話さえ聞いてくれないなんて…。
海賊だから仕方がないのかもしれないがこのままでは姉様が危ない。
何とか話を聞いてもらえたが結局シュバルツの行方はわからなかった。
ウォーターセブンを目指しているはずのシュバルツより先に着いたのは、目的地が此処じゃなかったのか、フロリアン・トライアングルで迷ったか…まさか死んだりしてないでしょうね。
そのまま島を離れて当てもなく彷徨うか、せめてもの希望に縋ってこの島にシュバルツが来るのを待つか。
姉様の状態を心配した船員からはアマゾン・リリーに帰った方がいいと言われたが、この姉様の状態は島に帰っても意味がない。
幸いそれほど重い状態じゃないからまだ暫くは大丈夫だろうけど…これは病と言うより体力の問題だろう、ここ数日姉様が碌に食事をしてくれない、それ程ショックだったのだろう。
「痩せて酷い顔になってきてるわよ、このままじゃシュバルツにも嫌われちゃうわ。」
そう言って無理やり食事を食べさせたり
「姉様、あの時の事を思い出して。」
と言って悶えさせてりして何とか持たせてるが……このままでも一月位は余裕でもたせれるかも。
仕方なく近海へ出て当てもなく彷徨い時々ウォーターセブンに戻ると言った形をとる事にした。
あれから一週間
やはり無理がある…。最後にウォーターセブンに戻って航海の準備を整えたら、もう一度シャボンディに行ってシャッキーと何処に言ったか一緒に考えてもらおう。
そう思って再度ウォーターセブンに進路を取った。
暫く言った所で見張りから声がかけられた。
「サンダーソニア様、船が一隻見えたのですが襲いますか?」
本当ならそんな暇は無いのだけど…ここ最近意味もなく彷徨う事に戦士達もフラストレーションが溜まってるだろうし。
「仕方ないわね…手早く終わらせてよ。」
「わかりました。」
そう言って走って行くのを見送り私はマリーが見てる姉様の所に行く事にした。
sideシュバルツ
さてと…どうするかな。
結局追いつかれてしまった。
こうなったらハンコック達に取り次いで貰うか…戦って勝つか。
お互いの船の甲板に立ち九蛇海賊団と対峙しながらこんな事を考えるって…俺、結構余裕だな。
「おい、男もう逃げないのか?」
名前を知らない九蛇の船員が言って来たので適当に挑発する事にした。
「もう逃げられないでしょ、この状況。」
「それもそうね…船を捨てて逃げなくていいの?」
「いや船は捨てない、ボートは無いしね。」
「泳げばいいんじゃない?」
「いや、俺能力者だから、泳げないんだ。」
「ザハハハ、残念な子ね、泳げれば生き残れたかもしれないのに。」
別の船員があざ笑うように言ってきた。
そういえばこんな笑い方の奴がいたような…。
こんな事を考えているあたりやはり余裕があるようだ……いや現実逃避してるだけか?
どうでもいいけどあんたらのその服装結構危ないよ…口には出さないけども。
「まあ、泳げなくても生き残る方法は無くもないでしょ。」
「へぇ…どんな方法?」
俺はニヤリと笑いながらはっきりと告げてやった。
「例えば…襲ってくる奴らを返り討ちにするとか。」
その途端爆笑の渦が巻き起こった。
「「「あはははは!!!」」」
自分たちが俺に負けるわけないと言った感じだ。
しかし、笑う者もいれば怒る者もいる。
主に俺も僅かに顔を覚えてる矢筒を背負った奴と大砲のような物を脇に抱えてタバコを吸ってる奴だ。
「まあいいわ、この勇敢な子に実力の差を思い知らせてやりましょう。」
今いる中でのリーダー各と思われる奴がそう言った途端、かなりの数の船員が俺の船に向かって飛び掛って来た。
「仕方ないな…。」
そう呟き俺は向かってくる奴らに全力で覇気を叩きつけた。
「「!!?」」
飛び掛かる途中で覇気に当てられ気絶した者は、こっちの船に叩きつけられたり海に落ちたりした。
無事に船に着地した者も居たが、動揺して動けなかったようであっさりと意識を刈り取る事が出来た。
海に落ちた仲間を拾いに行った者達を除くともう此方に飛び込んで来なかった奴らが1割程相手の船に残っているだけだった。
正確に言うと海に落ちた奴らと俺の船に落ちてきた奴5割、海に落ちた仲間を拾いに言った奴3割、こっちに飛び乗ったはいいが俺にやられた奴1割、残り1割と言った所だ。
「まさか…覇王色の覇気!!?」
「こんな事って!!」
動揺する九蛇海賊団。
そして何より
「!!?…………マジ?」
九蛇より驚愕する俺。
反射的に俺の船に降りてきた奴を倒したのはいいがその後によくよく状況を確認すると大変な事になっていた。
何時もは師匠にどれだけ覇気を向けても何ともないので、実は出てないんじゃないかなとか思ってたんだが…しっかりと出てたみたいだ。
そのせいで驚きながらも俺を警戒する九蛇の戦士と、不敵な笑みで九蛇を戦士を威圧してるように見えて、実はある意味一番覇気にあてられて内心ドキドキの俺、と言う構図が成り立ってしまった。
ちょっと俺…凄くね?
ドキドキしながらも、一瞬で九蛇海賊団をほぼ壊滅状態にした自分を自画自賛して見たり。
そんな事をしていると向こうが慌ただしくなってきた。
「サンダーソニア様とマリーゴールド様を呼んできてちょうだい。」
「わかったわ。」
何やら不味い雰囲気になって来た。
あいつ等俺の事覚えてるかな?覚えてくれてれば楽なんだけど…いやダメか何人か船員倒しちゃったからもう後には引けないな。
一か八かの賭けに出る気分で待つ事にした。
そして暫く睨み合っていると奥から…懐かしい顔…懐かし……でかっ!!?
ちょ…!!?何あの2人でかっ!ちょっとでか過ぎでしょう!!3メートルはあるよ、しかも美人だから気持ち悪くない、けど違和感を感じる。
いや昔からでかかったけど、俺がまだ小さかったからじゃなかったんだな…別れた時よりもさらに身長が伸びている。
マリーゴールドも普通の体型だ。
別れ際に食べすぎには注意するように散々言ったのが効いたのか?
俺が驚いていると向こうも驚愕した表情で此方を見ている。
そのあと2人で何やらヒソヒソと話しだした。
俺だけじゃなく、他の九蛇の船員やようやく海から出てきた者達まで不振に思う程の怪しさだが、2人は気にする事もなく内緒話を続け、ようやく終わったのか此方を向き
「貴方…シュバルツよね?……その船は…ラジャも居るし。」
「船かよ!!?マリーも頷くな!!顔くらい覚えといてよ!!!」
物凄く恐る恐ると言った感じで聞いてくるサンダーソニアと隣で頷くマリーゴールドに思わず突っ込みを入れてしまった。
「だって凄く背が伸びてて顔も大人っぽくなってたから驚いたのよ!!なんか船の形まで微妙に変わってるし!!」
そう言うサンダーソニアに同意するように頷くマリーゴールド。
「船はついさっき修繕したんだよ!それに凄く背が伸びたとかソニアには言われたくないね!!2人とも俺より1メートルは余分に高いだろ!!てかさっきからマリー頷いてばっか!!」
「そんな事言われても、2人で漫才してるんだものどう入っていいかタイミングが掴めなかったのよ!」
ギャーギャー喚いてる俺達に
「あのー…お2人とも知り合いですか?」
恐る恐ると言った感じでタバコの人が話しかけてきた。
「え、ああ…そうよ、昔の馴染で私達と姉様が凄くお世話になった……そうだ!こんな事言ってる場合じゃなかったわ!シュバルツこっちに来て!姉様が大変なの!!」
「そうよ貴方しか直せないの!!」
何やらただならぬ雰囲気の2人に呼ばれて何事かと思いつつも、九蛇の船に移って2人について奥に行ってみると、ハンコックの部屋と思われる所に案内された。
ドアについてる窓から中の様子を覗いてみると…
「ああ…わらわは……。」
何やらベットの上で悶えている物体が居た。
苦しそうに悶えるって言うか、恥ずかしそうに悶えてる。
「……うん、なんか大変そうだね。」
やや呆れた感じで2人にそう言うと慌てた2人が
「違うのよ!今はあんなだけどさっきまでは本当に苦しそうだったの!!マリーがまたあの事を姉様に言ったから!!」
「ええ!?確かに言ったけどこんなに早くシュバルツが見つかるなんて思わなかったんだもの!それに元はと言えば原因はシュバルツじゃない!!」
「俺かよ!?何が何やらわからないけどこのノリで行くなら、きっと悪いのは俺じゃなくてソニアだな!!!」
「私じゃないわ、マリーよ!!」
「いいえシュバルツよ!!」
「よくわからんがソニアで!!」
昔に戻ったようにはしゃぎながら責任を擦り付け合う俺達。
「マリーよ!!」
サンダーソニアがマリーゴールドの責任だと言うと
「シュバルツのせいよ!!」
すかさずマリーゴールドは俺のせいだと言ってくる
「ならハンコックで!!」
さっきから同じ事の繰り返しで捻りがないので、何と無く此処にいない人を巻き込んでみた。
「姉様!?」
「姉様のせいなのね!!」
「その通り!ハンコックのせいだ!!」
結局よくわからんがハンコックが悪い事で落ち着いた。
「それで結局何がどうした訳?」
一向に話が進まないので改めて聞いてみたが…2人は俺の質問には答えずに俺の後ろを凝視していた。
何かあるのかと思い振りかえると……少しだけ開けたドアの隙間からハンコックが仲間に入りたそうな目で此方を見ていた。
とりあえず俺は
「お久しぶり。」
と言っておいた。
sideハンコック
何やら部屋の外が騒々しい。
どうもソニアとマリーが騒いでいるようじゃ。
あの2人が騒ぐなど一体なにがあったのだろう?
それに幻聴か…シュバルツの声が聞こえる気がする。
いや正確に言えばシュバルツの声ではないな…こんなに声は低くなかった、でも話し方はシュバルツの話し方のように聞こえる。
昔はよく4人で他愛もなく騒いだものだ…どうも昔を懐かしむあまり幻聴が聞こえてきたようじゃ。
私もいよいよ長くなさそうだな…せめて一目会いたかった。
しかし一向に幻聴が止む気配がない…何故か急に力が湧いてきたのでドアの外の様子を窺って見ると……幻覚まで見えだしたのか外にシュバルツが居た。
これは夢か…いやそんな事はどうでもいいあの楽しそうな輪に入りたい……でも入る切欠が掴めない、どうしよう。
思えば昔からそうじゃった。
何かとわらわが除け者にされる、大体はシュバルツとわらわが意見の食い違いから対立するような形になりソニアとマリーがシュバルツの味方をする。
シュバルツの味方をするのは気に入らないが、後から冷静になって考えると仕方ないのもわかる。
大抵意見が食い違う時はわらわの我儘が原因だったからじゃ。
ソニアとマリーがシュバルツにつくのは2人も向こうが正しいと思ったからだろう。
会ったばかりの時はわらわの味方についてくれていたが、いつの間にか2人にとってもシュバルツはわらわと同じくらい大切な存在になっていたと言う事だろう。
昔からそんな時に、このわらわだけ除け者のような構図か出来る。
やはり入る切欠は掴めなかったが、暫くして素直に謝ればすぐに輪の中に加われた。
しかし今回は謝るとかそういった問題ではなく純粋に入る事が出来ない。
しかも3人は何かを激しく言い合っており、わらわに気がつく気配がない。
「ならハンコックで!!」
どうしようかと考えていると行き成りわらわの名が呼ばれた。
何故呼ばれたのかはわからんぬが……ここだ!此処で行くしかない!!
ここで
「なんじゃ、誰かわらわを呼んだか?」
と言った、さも今呼ばれたから出てきましたみたいな雰囲気で行くしかない!!
そう思い、今まで扉の前で屈みこみ様子を窺っていたわらわは、いざ行こうと立ち上がり扉を開けようとした所で
「姉様!?」
「姉様のせいなのね!!」
「その通り!ハンコックのせいだ!!」
何かわらわが悪い事になっている。
困惑して動きを中途半端な形で止めてしまい、ソニアとマリーの2人と目が合った。
しまった…動きを止めた事で折角の機会を逃してしまった、2人もわらわに気がついたのだろうわらわを凝視して動きが止まっている。
此方に背を向けて戸惑っているような雰囲気のシュバルツはまだわらわに気がつかんようじゃ。
しかし立ちあがってから見てみるとシュバルツは大分背が伸びた事がわかる。
昔は小さかったのに今ではわらわより少し高いとは。
そう考えながら此方に気がつかないかな…と期待していると
「それで結局何がどうした訳?」
急に反応しなくなった2人に訝しげに聞くシュバルツ。
2人の視線を追ったのだろうシュバルツが此方を向いた。
見つめ合う事数秒、驚いた様子のシュバルツがわらわに声をかけてくれた。
「お久しぶり。」
そう聞いた瞬間にわらわは駆け出していた。
押し倒すような勢いでしがみつき力一杯思いのたけをぶつける事にした。
「シュバルツ…。」
sideシュバルツ
行き成り物凄い勢いで抱きつかれたせいで俺は尻もちをつ居てしまったが、美人に抱きつかれるのはいい事なので気にしない事にした。
数秒しか見えなかったがハンコックは凄い美人になっていた。
昔にはなかった大人の雰囲気と言うやつだろうか。
「シュバルツ…。」
「おう!覚えてたか!!」
ソニアやマリーと違い一瞬でわかってくれた事にテンションが上がりながら答えるとある事に気がついた。
痛い…ハンコックが全力で俺の胴体を締め付けてくるのだ。
俺なんか悪い事したかな?
最初はそんな事を考える余裕があったが段々強くなってきて本気で苦しくなってきた。
「シュバルツ!その…大事な話が有ってな!!」
しかしハンコックは真剣な表情で何かを伝えようとしてくるので、止める事が出来ずに我慢していたがとうとう限界が来た。
「わらわと…」
俺の意識はそれが限界だった。
慌てた様なハンコックの顔を見ながら俺の意識は遠ざかって行った。
あとがき
さて今回の天駆ける竜の人生は…
・シュバルツ無双する
・シュバルツ再開する
・シュバルツ昇天する
の三本でした。
…いやすいません真面目にします。
今回はハンコックの出番が少なかったが、次回からどんどん出そうと思う。
しかし…キャラの性格が壊れてんな…まあいいか。
ではまた次回ジャン、ケン、ポン!ウフフフフ。