ビビとの会合の数日後コーティングが終わりシャンクスも新世界へと旅立っていった。
あの日から2年が経ち俺はもう18歳になった。
前から決めていた事だが18歳に俺は旅立つ、それは師匠達にも言ってある事だ。
第二十三話
昨日は俺の出発祝いと誕生日祝いをしてくれた。
旅立つ朝、俺は師匠と最後の組み手をするために向き合っている。
毎日こうしていて慣れたのに、今日はいつもと違う事ばかりに目がいく。
初めてこうして向き合った時、俺はまだ背も低かったし、師匠も今よりもっと髪が黒かった、時間の経った事が伺える。
(今日で最後かと思うと感慨深いものだが……)
「どうした?何を馬鹿面さらしている、さっさとかかってこんか。」
「言われるまでもねえ!!」
(……ごちゃごちゃ考えるのは終わってからにするか!!)
俺と師匠はお互いに刀と剣を抜き打ち合いだした。
「ハァ!!」
気合を入れて俺が上から斬りおろすと師匠は剣でそれを受け止めながら斬りこんできたので俺も連撃の技で対抗する。
「武礼千萬」
下段、上段、突きなど様々な方向から斬り結びそのたびに辺りに甲高い鉄のぶつかる音が響いた。
お互いに振り被りひときわ甲高い音を立てて鍔迫り合いをする俺達。
「少しは出来るようになってきたな!!」
「そりゃ毎日やってりゃ嫌でも上達するさ!!」
お互いに軽口をたたきながら後ろに飛んで距離を取った。
いつもなら此処からは剃で回り込んで攻撃する所だが今日はあえて正面からの突破に拘った。
もう一度正面から突っ込んで来る俺に意外そうに師匠は言った。
「どうした、今日は背後に回らんのか?」
昔、勢いで言った言葉を俺は今現実にする気でいる。
「前に言ったでしょ、師匠を超えるって。」
一瞬驚いたような顔になった後師匠はニヤリと不敵な笑みを浮かべて言い放った。
「面白い、是非やってもらおうか。」
そう言った後はお互いに言葉を交わすことなくひたすら剣を交えた。
俺が刀を振れば師匠は剣で受け止め、師匠が剣を振れば俺はその斬撃をかわす。
(やっぱり師匠は凄い…おそらくスタミナだけならもう俺の方が上のハズなのに何時も俺の方が先にダウンするのは俺より圧倒的に無駄な動きが少ないからだ。これはおそらく経験値の差だな…俺の動きを読んでいる。)
これは俺の意地だが、今回は六式と悪魔の実の能力なしで戦いたかった。
そう思い俺はあえて刀一本で師匠に挑んだ。
俺の突きを横に体をずらして避け、そのまま俺に向かって斬りおろしをしてくる師匠。
俺はそれを刀で受け滑らす。
ガリガリと音をたてて刀の上を滑りながら剣が俺の横を過ぎて行く。
「上威下辰」
そのままの体勢から今度は俺が刀を振り下ろしたが、師匠は身をかがめてこれを避けた。
身を屈めた師匠が全身のバネをきかせて斬り上げてきたのを慌てて刀で受け止めるが、受け止めきれずに空中に撥ね上げられてしまった。
「クッ…!!」
刀を通して伝わる大きな衝撃に呻き声を漏らしながらも空中でバク宙をして体勢を立て直して着地した。
「どうした、私を超えるんじゃなかったのか?」
「言われなくても!!」
そう叫びながら俺はまだ少し痺れを残している腕にも拘わらずに駆けだした。
お互いの攻撃がより一層激しくなっていく。
傍から見ていると一進一退の攻防に入ったかのように見えるだろうがやはり少しずつ師匠が押してくる。
このままいけば何時ものように負けるだろう。
しかし……
(今日は勝つ!!絶対に!!)
そう心に決めて力いっぱい刀を振るった。
「躇突孟振!!」
「おおっ!!」
受け止めはしたもののガンッ!!と大きな音をたて剣をはじかれ師匠が後ろにのけぞった。
(ここだ!此処で決める!!)
一瞬で納刀し、抜刀の構えを取りながら全力で師匠の懐に飛び込んだ。
流石に師匠も体勢を立て直して身構えていたが、構わずに俺は突っ込んだ。
「伝皇刹華!!!」
気合と共に抜き放った俺の刀は師匠に向かって一直線に進んだが…
「フン!!」
師匠も腰にぶら下げていた杖を抜き放ち刀を持つ俺の手の甲を強打した。
カウンター気味になっていたせいか、師匠の一撃の方が早く決まり、その攻撃によって俺は刀をはじき飛ばされてしまった。
一瞬飛んでいく刀に目を向けたが次の瞬間目の前に突き付けられた杖の先があった。
暫くお互いに時間が止まったかのように動かなかったが
「残念だったな…今日も私の勝ちだ。」
師匠の言葉で時間が動き出した。
「クソ!勝てなかったか……。」
そう言って下を向く俺の頭を師匠の杖が直撃した。
「なにを言ってる、私は冥王と言われた男だぞ、まだまだお前如きが越えるには100年早いわ……しかし、まああれだけ出来ればそう簡単にはやられんだろ、六式や能力もあるしな。」
「でも……いたっ!!」
まだ落ち込んでる俺の頭を再度杖で叩かれた。
「別に何時までとは言っとらんだろう、これから海を周りもっと強くなってこい、私のようにな…私を超えるのはそれからだ。」
「師匠……わかった、俺はこの旅でもっと大きな男になってくる、だからまた何時か俺と勝負してくれ。」
「よかろう、期待して待っておるわ、では元気でな。」
そう言ってバーに入って行く師匠の背中に向けて俺は頭を下げながら言った。
「師匠、有難うございました!!俺に倒される日までお元気で!!!」
師匠は振りかえることなく軽く後ろ手で手を振ってバーの中に入って行った。
その後シャッキーやメイドさん達に見送られて俺とラジャはシャボンディ諸島から旅立った。
sideシャクヤク
「行ったわね。」
シュバルツの船が見えなくなった所でそう言った私の言葉にメイドの子達が反応した。
「そうですね。」
「でもシュバルツ様なら大丈夫ですよ。」
「はい、きっと大丈夫です、あの方は興味のある事に対しては並々ならぬ力を発揮されますし。」
「そうね。」
そうあの子は興味がある事とない事で差が激しい。
例えば航海術は凄い速さで覚えたけど、掃除は全く出来なかった。
修行は真面目にやるけど、それ以外は大抵だらけてる。
この子達に聞いたけどそれは昔かららしい。
まあ人間大抵はそうだけど、これだけ極端な子も珍しいでしょうね。
「さあ、戻りましょうか。」
そう言った時にメウちゃんが突然何かを見つけたようだ。
「あ、蛇が船を引いてる?」
その声に反応して振り向いた私の目に映ったのは大きな蛇が船を引いてこの港に向かってくる姿だった。
あれが噂に聞いていた船だとしたら
「あらあら、あの子も間が悪いわね。(今すぐ追いかけても、この広い海ですぐに見つけられるかしら?)」
どうやら、これからあの子達に残念なお知らせをしなければならないようだ。
sideシュバルツ
これから暫くはグランドラインを逆走しようと思う。
ここを目指す理由は二つ…
一つ、ルフィ達が辿った道筋を逆走して自分でも彼らが見たものを自分でも見てみたいからだ。
原作に登場した人達に実際に会いたいと言う理由もある。
これは別に急ぐ旅でもないしゆっくりとつもりだ。
しかしイーストブルーに行きたいとは思わない、グランドラインに比べて面白いものは少ないだろうからな。
二つ、久しぶりにハンコック達に会いに行こうかな……どうやってカームベルトを越えよう。
いやそれ以前に3人とも俺の事覚えてるかな…何か不安になってきた、9年も会ってないからな。
9年って言えば俺の人生が18年でその半分だろ…アマゾン・リリーに行ったら護国の戦士に殺されたりしてな。
いやまあ行き方とかどうなるかとか今考えても仕方がない、旅をしながら考える事にしよう。
(まずはウォーターセブンからだな。)
そう考え俺はログを辿り船を動かした。
補足説明
武礼千萬(ぶれいせんばん)………上段、下段、突き、様々な斬撃を連続で叩き込む技。
上威下辰(じょういかたつ)………上段から振り下ろす技。
躇突孟振(ちょとつもうしん)……相手の横を抜けながら全力で刀を振り切り捨てる技。
伝皇刹華(でんこうせっか)………抜刀術の技。
あとがき
さていよいよ旅立ちましたね。
剣技の技名は四文字熟語を当て字にしました。
めちゃくちゃ普通で特にすごい所はないですがまあそこら辺は適当に読み飛ばしてください。