悪魔の実を食べてから三年が経った。
日々繰り出される師匠の杖攻撃を避けてるうちに何と『紙絵』を習得してしまった。
これは自分でも予想外だ。
しかし師匠は、紙絵をする俺の動きをさらに見切って当ててくるから全然意味がない。
俺は調子に乗って
「見える、見えるぞ!私にも敵が見える!!」
などと言いながら調子に乗っていると
「戦いとは、常に二手三手先を考えてするものだ!」
と言うセリフと共に滅多打ちににされた。
「師匠…キャラ被ってるぞ……。」
そんな言葉と共に俺は意識を失った。
「おいおい、冥王ともあろう人が何ガキ虐めてんだ?」
意識を失う寸前にそんな声が聞こえてきた。
こ、この声はシャ○…大佐?
第二十一話
覚醒する意識、後頭部の柔らかい感触。
こ、これは!?……なんてことはない、いつもの通り、気がついたらバーの中でメイドさんに膝枕されていた。
「お、気がついたか。羨ましい体勢しおってさっさと起きんか。」
「はっはっはっ、大丈夫か坊主、しっかしあの天竜人が冥王に弟子入りとは、面白い奴だな。」
俺が起きた事に気づいた師匠と赤髪の男が話しかけてきた。
赤髪?
「あ、アンタまさか、赤髪のシャンクス…さん?」
「お、知ってるのか?天竜人にまで知られるとは俺も有名になったもんだぜ。ああ、それとさんは付けなくていいぜ、敬語とかもなしだ。」
「あ、ああ、俺はシュバルツだ、よろしくな。」
あのシャンクスがいる事に驚いたが、えらくフレンドリーに接してくれたおかげで別段緊張もせずに話す事ができた。
それから俺が弟子になった経緯を話したりシャンクスの冒険談を聞いたり、ロジャー海賊団の事を二人から聞いたりした。
「ところでお前さん、左腕はどうした?ついに鷹の目にでも負けたか?」
「ん?ああ、コイツの事か。いやこれはちょっと面白い奴がいてな、そいつに懸けてきた、今はまだただのガキだが腕一本失う価値がある男だと俺は思ってる。」
「まあ悔いが無いならそれで結構、しかしお前さんがそこまで言うとはなどんな子なんだ?」
「ああ、そいつはモンキー・D・ルフィって言ってな。」
「ほう、あのDの一族か……。」
「ああ、そのうえコイツ船長のあの言葉と同じ事言ったんだぜ。」
そう言ってシャンクスはルフィと出会ってからの事をそれはもう原作に載っていない事まで色々と楽しそうに話してくれた。
いつの間にか日も暮れ出してシャンクスは今晩ここに泊まる事になった。
次の日の朝修行をしているとシャンクスが話しかけてきた。
「よう、シュバルツどうだ調子は、お前さんどれくらいの腕前なんだ?」
「さあ、自分でもよくわからないんだ、でもいつも師匠にボコボコにされるからまだまだ大した事何と思うよ。」
「はっはっはっ、あの冥王に勝つ事が出来る奴なんざ両手、いや片手で数える程しかいないぞ。」
「でも弟子入りして五年半になるのに未だにまともに一撃も入れられないんだぜ。」
「他の奴と戦った事無いのかよ?」
「あると言えばあるけど、あれも全部組み手だし、弟子入りの前だから今の実力とは全然違うよ。」
「そうか……なら闘って見るのが一番手っ取り早いな。」
「それはいいけど…本気で行っていいの?」
「はっはっはっ、いくら冥王相手でも未だ一撃も食らわせれないなら大丈夫だろう、遠慮せずに来いよ。」
「(言ってくれるな…流石は未来の四皇だ。)そう…じゃあ行くよ!!」
「嵐脚”線”」
一直線に飛ぶ鎌風をシャンクスに向かって放ち、同時に剃で移動し横から居合抜きで斬りかかった。
しかしシャンクスは半歩横にずれるだけで鎌風を避け、俺の移動にもしっかりと目が付いてきていた。
俺の居合抜きに対してシャンクスは腰の剣を少しだけ鞘から抜き受け止めた。
ガキィィン!!と甲高く鉄と鉄がぶつかり合う音と鳴り響きそれと同時にお互いに後ろに飛び距離を取った。
「おいおい、遠慮すんなとは言ったが行き成り本気で斬りかかってくるとはな。」
「何?怒ったの?」
「いや、いい度胸だ、気に入ったぜ。ほれどんどん来いよ。」
「言われなくても。」
月歩で俺はシャンクスの上に飛びあがり。
「嵐脚”乱”」
嵐脚の乱れ撃ちを放った。
シャンクスはその鎌風の連撃を最低限の動きで捌いていく。
着地して次の攻撃に移ろうとする俺に向かい
「次はこっちから行くぜ。」
そう聞こえた瞬間にシャンクスが凄いスピードで俺の横に回り込みパンチを繰り出してきた。
とっさに鉄塊を使うがその上から衝撃が襲い鉄塊が揺らいだ。
そのまま連撃でパンチを打ってくる、まずいと思い紙絵に切り替えて回避に専念するが完全に防戦一方になってしまった。
(片腕のくせになんて連撃だ、もし両腕だったり師匠の攻撃スピードに慣れてなかったら当たりまくってるだろうな。)
「はは、良く避けるな、でも避けてるだけじゃ勝てないぜ。」
「わかってるよ!!鉄塊”空木”」
「うおっ!!」
カウンター用の鉄塊でシャンクスの拳をはじき返し追撃に移る。
「鉄塊”砕”」
「おっと。」
突っ込んだ俺を軽く飛んでかわしたが俺の追撃はまだ終わらない。
「鉄塊”輪”」
回転しながら連続で攻撃する俺の懐にシャンクスは潜り込んでカウンターを入れた来た。
「まだまだ甘いな。」
「(まずい!!)鉄塊”剛”!!!」
今度はかなり力を入れてきたのか、俺の鉄塊をあっさり破りぶっ飛ばした。
「グッ!!」
崩れ落ちそうになる体を何とか持ちこたえさせて膝をつきながらもシャンクスを見る。
「へえ、あれを耐えるか…大抵の奴なら今ので終わるんだがな。……ならこいつはどうだ?」
そう言った途端にシャンクスから何かとてつもない威圧感が叩きつけられた。
ビリビリと肌が痛くなり意識が飛びそうになる。
段々とその圧力も強くなってきている。
(これは!!覇気か!?)
「ガァァァァ!!!!」
その威圧感に負けそうになった時、俺は獣化して咆哮をあげていた。
そうしなければ意識が飛ぶ、無意識のうちにそう判断した俺は気がつけばそれを実行していた。
「動物系か?見たことない奴だな、ドラゴンみたいで強そうだ。なにはともあれ俺の覇気に耐えるとは大した奴だ、割と本気で出したんだがな。(つーか、今アイツも少しだが覇気出してたな…無意識にか?確かにこれは将来が楽しみな奴だ。)」
「ハァ…ハァ…」
覇気が収まった事で余裕ができたがそれでも俺の体の具合も良くない。
(次の攻撃で動きを止め、俺の最大の技で決める!!)
俺は前から密かに練習していた未完成の技を放つために人獣型になり構えた。
シャンクスも感じ取ったのか真面目な顔になり剣を抜き構えた。
剃で駆けだしシャンクスに正面から突っ込む。
人型に比べて圧倒的に早いがそれでもシャンクスは驚くことなく俺を見据えて対処してきた。
「十指銃」
十本の指で繰り出した指銃をかわしたシャンクスは剣を横薙ぎに振るってきたが、これを俺は地面にくっつく様にしゃがんでかわし体を起こすと共に一気にシャンクスの懐に飛び込んだ。
「激竜葬!!」
剃で飛びこんだ勢いをそのままに自分の体をまっすぐ伸ばし槍に見立てて突っ込んだ。
しかしシャンクスは刀の腹で俺を受け止めた。
俺は鉄塊を使っているためにダメージはない。
(ここだ!)
最初から止められる事を予測していた俺は両手でシャンクスの腕と肩を掴み
「ハァ!」
未だ慣れないも氷のブレスを吐きシャンクスを軽く凍らせた。
最もそんなカチカチに凍らすことなど出来ずに精々一瞬動きを止められるかどうかだろう。
「くそっ!」
悪態をつきながら動こうとするがシャンクスは動けない。
最も長くは持たないだろう、既に表面は割れ抜け出しかけている。
動けないシャンクスを放り出して俺は空に飛び上がった。
100メートルほど上昇した所で獣化し、月歩で勢いを付けて降下だした。
途中で数回月歩を使ってさらに勢いを付け、鉄塊玉をして標的に体当たりする。
これが俺の最強の技…
「ドラゴンダイブ!!!」
下に驚愕したシャンクスの顔が見えた。
「ちょっと待てぇぇぇ!!」
そんな叫びもむなしく俺はシャンクスに突っ込んだ。
「ふう、驚いたな。」
シャンクスは全くのノーダメージだった。
当たり前だ…コイツ避けやがった。
俺はこの攻撃の反動で動けない。
この技はまだ未完成で俺の体にも少しだがダメージが行く。
本来とどめの技だから此処で決まるのでいいんだが、やはり避けられた時の事も考えるべきだな。
(それは今後の俺の道力の上がり次第か。)
起きれない体でそんな事を考えていると
「どうした?負けてそんなにショックか?」
「つーか、あの場面で普通避ける?空気読めよ。」
「いや、あれの直撃は洒落にならんし、どうしても受け止めれないって事はないが、此処はそんな命掛ける場面じゃないしな。」
「もういいよ、それで…俺の評価は?」
「ま、努力賞ってところかな?」
そんな言葉と共に放たれたパンチを受け俺は意識を失った。
(とどめは刺すのかよ……。)
「ん、……どうなったんだ?って聞くまでもないか。」
慣れ親しんだ後頭部の柔らかい感触でいつもの如く気絶した事がわかった。
「ありがとう。」
「いえ、お気になさらず。」
お礼を言ってカウンターの方へ行くとシャンクスが酒を飲んでいた。
「お、気がついたのか、てかお前気絶するといつもあんな美味しい状況になるのか?」
「え?あ、ああそうだけど、それよりも俺の実力はどうだった?」
「ああ、中々のもんだと思うぜその年にしちゃ上出来だ。これからまだまだ伸びるだろうし、どうだお前ウチに入らないか?」
「いいよ、誘ってくれるのは嬉しいけど俺は将来冒険家になりたいんだ、だから海賊になる気はないね。」
「そうか、そりゃ残念だ。ああ、それから俺は4、5日此処に居るからその間また見てやるよ。」
「そうなの?でもそんなに船を開けていいの?一応は船長でしょ?」
「一応ってお前な…まあウチは副船長が優秀だから平気だよ。それにお前さんの師匠を借りてるからなその間位面倒をみるさ。」
シャンクス達は元々レッド・フォース号を師匠にコーティングしてもらいに来たらしい。
「まあ、そっちがいいならお願いするよ。」
「おう、お願いされてやるよ。」
こうして俺達は数日間だが師弟関係になった。
まあ結局ボコボコにされただけだったが。
補足説明
激竜葬(げきりゅうそう)…剃+鉄塊で相手に向かって自分を槍に見立てて突撃する。追尾も可能。
ドラゴンダイブ…上空100メートルから標的めがけて月歩を複数かけて落下する技。
落下の際には自身には鉄塊をかけ剃の速度で横回転する(鉄塊玉)を使う。
獣化時の必殺技。
あとがき
シャンクスを出してみました。
この時期に本当にここにいたかは知りませんが。
そして何よりこの戦闘描写…ありえない…色んな意味で。
技名にしてもセンスゼロですね…。
まあこれが作者の現在の限界です。
毎度こんな駄文に付き合ってくれる皆様に感謝いたします。