気が付けば次の日になっていた。
(あの後一体どうなったのだろうか?)
「姉様起きたのね。」
ソニアが話しかけてきたが状況がわからない。
「ソニア此処は何処だ?」
「何処って船の中だけど…姉様、大丈夫?」
「船……ああ、故郷に帰る所だったな、何時の間に出港したんだ?覚えがないのだが。」
「姉様があの後気絶しちゃったからそのままマリーと私の二人で姉様を乗せて出発したのよ。」
(……あの後?…!あの時、シュバルツと…く、口付けを!!?)
思い出した。
シャクヤクに女が好きな男を待たせて船出をする時は口付けすると聞かされ、したのはいいが恥かしくて気が遠くなってしまったんだ。
(思い出したら急に恥ずかしくなってきた!どうしよう次にあった時にまともに顔を見れない気がする。)
「姉様どうしたのまた顔が真っ赤よ!」
「ソニア、どうしよう!?わ、私はどうすればいい!!?」
「どうしたの姉様!落ち着いて!!」
「私、わた…し………。」
「姉様ー!!マリー!姉様がまた気絶したーー!!」
外伝1話
sideサンダーソニア
姉様が二度目の気絶から目覚めたのはもう日が沈んでいた。
あれから数日…あの姉様をシュバルツから離して大丈夫とは思っていなかったが…予想とは違った感じで大丈夫じゃなくなった。
私達は姉様が気力を無くして寝たきりになるんじゃないか、最悪すぐに戻る事になるかもしれない、と思っていたが…あれから姉様は起きてる時は口付けが忘れられないのだろう。
急に赤くなって布団の上をゴロゴロしたり、悶えたりしている。
酷い時には気絶したりもする。
このまま暫くはまともにシュバルツに顔を合わせる事も出来ないだろう。
もしかしたら姉様がこの状態になったのは自分の気持ちに正確に気が付いてないからかもしれない。
いや気が付いているが、
どうしたらいいのかわからないと言った所だろう。
恋と言う物は私達の生活では聞いたこともない物だったが、シュバルツとの生活の中で何と無くだがわかってきていた。
私やマリーはそうだろうけど、肝心の姉様がシュバルツに夢中でわかっていかったようなので、仕方がなく屋敷に居た時に仲良くしていたメイドの人に貰った恋愛小説を渡して見た。
あらから数日が経った。
あの日から姉様が小説を離さない。
何時も持ち歩き何度も読み返しているようだ。
(これは失敗したかもしれない。)
そう思いマリーと話し合う事にした。
「どうしましょう、姉様がどんどんダメになって行くわ。」
「困ったわね…声をかけてもかなりおざなりな返事しかしてくれないし、私ここ数年でシュバルツの事とヒナを撃つ事以外でこんなに集中している姉様を初めて見たけど…あの本一体どんな内容なの?」
「さあ…知らないわ、これを読めば恋愛についてよくわかると言われたけど、あんまり興味なかったし、姉様があんな状態になって初めてあの本の存在を思い出したんだもの。」
「貴方ねぇ…。」
呆れた様に此方を見てくるマリーに私はどう返していいやらわからない。
「だってしょうがないじゃない、あんなになるなんて思わなかったんですもの。」
どうしようか二人で考えていると勢いよく扉が開いた。
中から姉様が出てきたのを見て声を失った。
中から出たきた姉様は、今まで見たことが無いくらいの覇気を全身から放っていた。
「ソニア、マリー……。」
「「は、はい!!」」
覇気が強すぎて思わず委縮してしまったが何とか返事を返す事ができた。
そんな私達の様子も気にせずに
「私は必ず七武海になる、その為にお前達に力を貸してほしい、改めてよろしく頼む。」
一瞬なにを言われたのかわからなかったが言葉の意味を理解した瞬間
「もちろんよ!!」
「全力でサポートするわ!!」
と力強く返答した。
「よろしく頼む。」
そう嬉しそうに言った姉様に私は最近の疑問をぶつける事にした。
「姉様ここ最近その本をずっと読んでたけど、何が書いてあったの?」
「そうそう、それになんだか今の姉様やる気に満ち溢れているわ、その秘密がその本にかいてあるの?」
「ああ、その通りだ。」
そう言って姉様は手にもっていた本を見詰めて言った。
「この本には私の知らない事がたくさん書いてあった。」
「一体何が書いてあったの?」
私も同じ疑問を持っていたためマリーの問いかけに口をはさむ事なく姉様の答えを待った。
「この本に書いてあるには、私がシュバルツと一生共に居る方法が書いてあった。」
「そ、そんな方法が書いてあったの!!?」
マリーは驚愕のあまり叫んだが、逆に私は驚きのあまり声が出なかった。
そして姉様がその答えを言う。
「この本に書いてある通りならば”ぷろぽうず”と言う儀式をすればいいらしい。」
「そのぷろぽうずのやり方はわかって居るの?」
「ああ、その方法とは…大きな目的、この場合私が王下七武海に入る事、それを果たしてシュバルツに会いに行き……跪き指輪をさし出して『私と結婚してください。』と呪文を唱えるらしい。すると夫婦と言うやつになる事が出来て一生一緒にいれるらしい。」
世界にはまだまだ私達の知らない事が沢山あると痛感した瞬間だった。
「凄いわ姉様!さっそく儀式を行わないと!!」
「落ち着いてマリーその為には目的を果たさないとダメなのよ。」
「その通りだマリーだから二人の力を借りたい。」
「わかったわ、任せて姉様。」
「私達どんな事もしちゃうわ。」
その日から私達3人は毎日我武者羅に頑張り続けた。
幾つもの島を超えたり。
修行をしたり。
帰り方がわからずに迷って変なお婆さんに助けてもらったり。
そのお婆さんがあの本の作者だったり。
恋愛についてよりお婆さんから詳しく教えてもらったり。
そして旅をする事3ヶ月…とうとう懐かしき故郷、アマゾン・リリーに辿りついた。
故郷に辿りつき懐かしい顔ぶれに帰還を祝福された後、皇帝に呼び出された。
「3人共良く帰ってきたな、お前たちの帰りを心から嬉しく思う。」
「「「有難うございます。」」」
「そして久しいなニョン婆…いや先々代皇帝グロリオーサと言った方がいいか?」
!!?先々代皇帝!?驚く私達を尻目に話は進んで行く。
「只のニョン婆で結構、他の者ニュも只の婆とお伝えください。」
「それで、何をしに戻ってきた?」
「特にニョニもすりゃせんわ私はただ村の外れにでも住まわせてくれればそれでいい。」
「よかろう、3人を連れて来てくれたそうだし特別に許可しよう。もう下がれそちらの3人も、今日はゆっくりと疲れを癒すといい。」
そうして皇帝との謁見は終わった。
翌日から姉様は鬼気迫ると言った様子で修行の日々を開始した。
私達もそれに続く様に毎日修行に打ち込んだし、九蛇海賊団の戦闘員として海に出る事もあった。
そうして一年半が経つ頃、皇帝が倒れた。
何やら原因不明の病らしい。
ニョン婆様が診ているようだがその甲斐なく亡くなられた。
次の日から新しい皇帝を決める為に武道大会が行われ、姉様は見事に優勝し皇帝に選ばれた。
「やったわね姉様!」
「姉様おめでとう!夢への第一歩ね!!」
「有難うソニア、マリーお前たちの協力があってこそだ、礼を言う。」
私とマリーで祝福して姉様も喜んでくれた。
次の日から姉様は皇帝として言葉遣いを変えた。
そして皇帝就任から一週間後、私達は新生九蛇海賊団として初めての航海に旅立った。
やる気と覇気に溢れた姉様に引きずられるように九蛇海賊団の戦士全員が大暴れした。
幾つもの海賊団を沈め。
海軍を退けた。
商船を襲うと言う意見も出たが姉様はそれを却下して民間人には手を出さないようにしていた。
連日のように新聞に九蛇海賊団の記事が載り、気が付けばアマゾン・リリーに帰らずに幾つもの島を渡っていた。
一度区切りを付け約五ヶ月ぶりに帰還する途中、ついに姉様の手配書がでた。
”海賊女帝” ボア・ハンコック 懸賞金9800万ベリー
初頭の手配では異例と言ってもいいくらいの値段だ。
アマゾン・リリーに帰還して数日、次の航海に備えていると急に見張り台にいた者が叫んだ。
「中枢の船がこちらに向かってきている!!」
sideハンコック
「中枢の船がこちらに向かってきている!!」
その声と共に周りが騒然とした。
慌てる者達に声をかけ落ち着かせねば。
「静まれ!騒いでも何も変わらん!護国の戦士達を集めろ!子供と老人を九蛇城に避難させるのじゃ!!」
「「「「「はい!!」」」」」
どうにか静まって対応を取り始めたが…これからどうするか。
(一体どうやって 凪の帯(カームベルト)を越えて女ヶ島まで来れたのだ?いやそんな事よりもこの状況は不味い、一度限りの海上戦ならともかく島に何度も攻めてこられたら何時までも持ちこたえられん。)
「蛇姫様、護国の戦士が揃いました。」
「わかった、半分を船に乗せてもう半分を国の護りに回せ。その後門を閉じろ、絶対に中に入れてはならん。」
「かしこまりました。」
急ぎ出港して少しでも国から遠い位置で戦うようにしたが此処からでも大砲を撃てば届くだろう。
幸い三隻だけなので何とかなるとは思うが。
そう考えながら甲板で敵を観察しているとその中の一隻だけが前に出てきた。
「一隻だけか…舐められたものだ。」
「すぐに沈めて、他の二隻にも後を追わせましょう。」
わらわの呟きに隣に居たマリーが答えた。
「頼もしい物だ、頼りにしているぞ。」
「勿論よ、任せて姉様!」
「あら、私も忘れてもらっては困るわ。」
「勿論そなたもじゃ、ソニア。」
そうしている内にも中枢の船はどんどん近寄ってきてとうとう此方との戦闘可能範囲内に入った。
そして向こうの甲板に立っている者の姿を見た時わらわは反射的に飛び掛かってしまった。
「何故貴様が此処にいる!!?ヒナ!!!」
「あらあら、久しぶりに会った第一声がそれ?不満よヒナ不満。」
「ヒナ中佐!!」
「蛇姫様!!」
戦うわらわ達にお互いが加勢しようとするが思わず
「「手を出すな!!これはわらわ(私)の戦いだ!!!」」
お互いに部下達を止めて戦い続ける。
戦っている内に少しづつわらわが押し始めてきた。
「どうした!?鈍っているのではないか?」
「冗談でしょ!これからよ本番よ!!(この子ホントに強くなってる、流石に今回の件に選ばれただけの事はあるわ)」
「そこまで!!」
何者かが大声をだしながらわらわ達の勝負に割って入ってきた。
「ドーベルマン中将!!」
「ヒナ中佐、今回の件は自分に任せろと言うから任せてみれば、何だこの状況は?我々は戦いに来たのではないぞ。」
「申し訳ありません、飛び掛かってこられたものでつい…。」
「つい、ではない!今回の件で話し合いに来たのに根本から破壊する気かね?」
「申し訳ありません。」
「もう良い、君は下っていたまえ。」
「はっ!」
ヒナが怒られるのは構わんが、わらわ達の勝負を邪魔したのか気に食わん…折角邪魔な奴を消せる所だったのに。
そう考えていると今度はその男が此方を向いた。
「ボア・ハンコック殿かな?」
「そうじゃが…なんじゃ、貴様は?」
「私は海軍中将のドーベルマンと言う者だ。本日は貴殿に話があって此処までやって来た。」
「話?討伐ではないのか?」
「それはそちらの判断しだいだ。とにかく話を聞いてもらいたい。」
「(罠かもしれんが…もしかしたら戦わずに済むかもしれんな…)よかろう、話すがいい。」
「本当はもっとちゃんとした場所で話したいのだが…奥まで来てもらうと後ろの者たちが暴れそうだな…仕方ない、率直に言おう世界政府より貴殿に王下七武海への加盟要請が出ている受けるか否か近日中に返答を「受ける」もら…本当か?嫌に早いな。」
反射的に即答してしまったためか、ドーベルマンとやらが怪しげな眼で見てくるがわらわはそれどころではなかった。
(こ、これは…こんなに早く目的を果たせるとは…ま、まだ心の準備が、しかしもう返答してしまったし…どの道受けるのだからそれはいいが…いや、これは…。)
「どうした、何かあったのか?」
黙り込んだわらわを不審に思ったのかドーベルマンとやらが声をかけてきた。
とりあえずこの場は何とかせねば、この機会を逃す訳にはいかない。
「お前達が此処までどうやって来たのかはわからぬが、中枢の者たちはカームベルトを渡る手段を持ったと言う事だろう?」
「まあな…。」
「それならばわれらの国ももう絶対に安全ではない海上戦で負ける気はないが、何度も波状攻撃のように襲われてはかなわぬからな、七武海に加盟すればその心配もないのだろう?」
「そうだな…その通りだ。」
「それがわらわが加盟を了承する理由だ。(表向きはな)」
「わかった、無駄足に成らずに良かった。政府の方には合意を貰ったと伝える、それと…これを。」
そう言って懐から書状を取り出して渡してきた。
「それに書いてある事を守るようにとのことだ、破れば称号は剥奪される。」
そんな言葉を聞き流しながら書状に目を通す。
要約すれば
・未開の地及び海賊を対象とした略奪行為を特別に許可する。
・収穫の何割かを世界政府に差し出しだす。
・召集がある場合は駆け付ける事。
・世界政府の命には従う事。
他にもいくつかあったが主要はここら辺だろう。
「わかった、了承すると伝えてて構わぬ。」
「了解した、それと貴殿にかかっている懸賞金は破棄されるだろう。」
「わらわにはどうでもいい事じゃ。」
「では我々はこれにて失礼する。」
「勝手にしろ、それよりももう島に近づくなよ。」
「了解した、どの程度の距離になるかわからんが立ち入り禁止区域になるだろう、後日連絡する。」
そう言ってドーベルマンとやらは踵を返して船の中に戻って行った。
わらわも戻ろうとしたところでまた奴に声をかけられた。
「ちょっと聞きたい事があるんだけど、シュバルツ君はどうしたの?」
「ふん、貴様には関係の無い事だ。」
「あら、捨てられたの?残念だったわね。」
「ふ、ふざけるな!そんな訳無かろう、わらわ達は結婚するんだからな!!」
「え、結婚!?それ本当!?」
「当たり前じゃ、近いうちにじゃがな。」
「ああ、妄想ね、頭大丈夫?」
「貴様は、相変わらず失礼な奴じゃな!」
「お互い様よ、で…実際はどうなのよ?彼無事なの?」
「当たり前じゃ、あれはいい機会だから家出しただけじゃ。」
「家出って……ホント変わってるわよねあの子、まあ他の天竜人が無事なんだから、他より動けるあの子が無事なのはほぼ確信してたけど、やっぱりちゃんと聞くと安心できるわ。」
「お前に心配してもらっても何の意味もないわ。」
「それはそうだけど酷い事言うわね、これでも本気で心配してたのよ。」
「用はそれだけか?ならわらわは行くぞ。」
「ええ、有難う、それと一応彼だけじゃなくて貴方達の事も心配してたのよ。」
「お前の心配など要らぬ…………ではな。」
「ええ、さようなら。」
それを最後にわらわ達が振りかえることはなかった。
船に戻るといつも以上に歓迎された。
どうも国のために、と言ったところで勘違いが起こったようじゃ。
事実を理解しているソニアやマリーは苦笑いしておった。
後日正式な協定を結び島の海岸より3キロ以内に中枢の船は入らない取り決めとなった。
早速シャボンディ諸島に行こうと2人に言われたが、最後の口付けを思い出すと未だに恥ずかしくて踏み出す事が出来ない。
確かにわらわも会いたいのだが…そんな日々を過ごしているうちにニョン婆様にアドバイスを受けた。
曰く、
「はニャ嫁になるには修行が必要。」
との事だ。
女帝をしながら七武海としての活動、そして修行。
皆に見つからないように修行するために思うように時間が取れない。
それに指輪もまだ用意していない。
(シュバルツお前に会いに行くのは暫く時間がかかりそうじゃ。しかし待っていてくれ、必ず修行を納め、お前に相応しい指輪を手に入れ会いに行くぞ!!)
そう思いわらわは今日も包丁を握る。
あとがき
こんなのハンコックじゃない!と思う方、勢いと妄想で書きましたので今回の話はあまり気にしないで下さい。
あとニョン婆の恋愛理論は九蛇出身だけあって結構ずれてます。
つーかこの婆さんの話し方難しい。
では今回はこの辺で。