昨夜のワンピース界の大塩平○郎ことフィッシャー・タイガーの乱……長い夜だった。
ひとまず無事に逃げだす事に成功した俺達が、シャッキーのバーに着いた時はもう明け方になっていた。
ハンコック達とはもちろん会っていない。
無事に逃げきってくれていればいいが。
第十六話
思わぬところで初めての航海となった俺は当然のごとく航海術など持っていなく思うように船を動かせず、毎日のように来ている場所でさえこんなにも時間がかかってしまった。
今回の事で航海術の大切さが身にしみてわかった、今度シャッキーにしっかりと習っておこう。
実際スクリューが無ければ何処に行ってたかわからない。
どうにかバーにたどり着いて扉を開けて中に入ると、そこにはハンコック達の姿は無かった。
「あら、無事だったのね。」
「え?無事って?」
「これよ、これ。」
差し出された新聞を読んで見ると昨晩の事件について一面の大見出しが書かれていた。
長ったらしい文を要約すると…
・冒険家フィッシャー・タイガーが昨晩聖地・マリージョアを襲撃した。
・フィッシャー・タイガーは世界貴族の屋敷を次々と襲撃するという、天をも恐れぬ大犯罪を犯した。
・その際に奴隷を解放し、何千人と言う奴隷が大脱走をした。
・一部の奴隷は駆け付けた海軍等の手により捕縛されたが、およそ奴隷の八割強が逃亡に成功した。
・世界政府はこの異例の犯罪を起こしたフィッシャー・タイガーに対して懸賞金を賭け全力で追跡する模様だ。
「うん、これがどうしたの?」
「違うわよ、それもあるけど、下よ下。」
「ん?」
よく見ると下にも記事が載っておりそこに
「天竜人一名行方不明。昨晩起こったフィッシャー・タイガーの聖地・マリージョアに襲撃した事件の際に世界貴族、シュバルツ聖が行方不明となり未だ発見できずにいる模様。
これに対し海軍本部はフィッシャー・タイガー又は逃げ出した奴隷により誘拐された可能性が高いとの見方をし、現在大将黄猿指揮の元大規模な捜索が開始されている。……え?何これ?」
「貴方の捜索が大規模に行われてるのよ。まあ今現在犯人はフィッシャー・タイガーと思われているからこのシャボンディ諸島で捜索される事はないでしょうけど。」
「どうやらフィッシャー・タイガーと逃げ出した奴隷達はマリージョアを横切って新世界へ逃げたようだからな、そうそう見つからんだろう、しかし攫われたと思ったらあっさりと顔を出しに来て妙なところで意表を突く、流石は私の弟子だな。」
と訳のわからん所で褒められた。
本当に心配してたのかこの人達?
「それよりも、ハンコック達来てない?」
「いえ、来てないけど一緒じゃないの?」
「実は逃げる時にはちょっとあって別々に逃げたんです。」
「あら大変、それじゃあ急いで探さないと。」
そんな会話をしているとバーの扉が勢いよく開いた。
驚きつつも皆が扉に注目すると
「シュバルツ!!居るか!?」
ハンコックが飛び込んできた。
「ハンコック無事だったんだね!」
俺が声をかけると俺を見つけたハンコックが勢いよく抱きついてきた。
「よかった、無事だったんだな!!」
「心配したんのよ。」
「無事でよかったわ。」
ハンコックの後でサンダーソニアとマリーゴールドも入ってきた。
「二人とも無事だったんだね、よかったよ。」
「まあ、何はともあれ全員無事でよかったわ。それで、これからどうするの?家に住む?」
「うん、そうさせてもらうつもりだけど。」
「だけどそうすると不味いんじゃないかしら?貴方の捜索が行われているし…メイドの子達はいいとしてもハンコックちゃん達は見つかると誘拐犯にされる可能性があるんじゃない?」
「シャッキーや私はそう簡単にはやられはせんが、その子達は目立つからな、見つかりやすいぞ。」
ハンコック達は俺と一緒にこの諸島をよく歩いていたし美人なので顔を覚えられているだろう。
町に出たら間違いなく注目の的だ、いや外に出なくても店に来た客や他にも見られる要因はある。
何時俺の顔写真が公開されるかわからないし……何とかしないと。
「ハンコックどうする?一度故郷の島に戻るか?」
「シュバルツお前……私を一緒に居たくないのか?」
親切心で言ったつもりなんだけど、そんなにショックな顔をしないでくれ。
「あら、酷い事言うのね。」
「酷いじゃない、シュバルツ。」
「酷いぞ。」
「わははは、大した女泣かせだな。」
「「「こんな子に育てた覚えは……」」」
あれ?なんか俺が悪い事をしたみたいな雰囲気になってるんですけど?なにこれ?
シャッキーに始まりサンダーソニア、マリーゴールド、師匠にメイドさん達にまで?
あと師匠それ何か違う気がしますよ。
「シュバルツ、私達はずっと一緒に居ると言ったはずだぞ、それなのに何故私を遠ざけようとする?」
「違うよハンコック、俺もずっと一緒に居たいよ。」
「では何故そんな事を言う?」
「このままじゃ何処に居ても外を歩けなくなるよ、もしハンコック達が誘拐犯だと思われたら守りきれない、だからほとぼりが冷めるまで暫くは離れていた方がいいと思うんだ。」
「しかし如何すればいいんだ?」
「だから波風立てないように離れておくのさ。」
ああだこうだと話していると見かねたのか師匠から提案が出てきた。
「どうだ、此処は正式に見つかってもいい立場に立つ方法があるが……最も簡単ではないがな。」
「どう言う方法だ教えてくれ。」
ハンコックが一瞬で食いついた。
「それはな、世界政府公認の海賊になればいいと思うのだが。」
「そうか、王下七武海だね。七武海になれば政府や海軍から逃げる必要はなくなる。」
「世界政府公認の海賊?王下七武海?」
ハンコックは七武海を知らないようだ。
七武海を知らないハンコック達にシャッキーが説明しているが、俺はそれを聞きながら少し驚いていた。
(まさかこんな所で、七武海が出てくるとは……もしハンコックが七武海になるなら、俺も負けないように強くならないとな。)
そんな事を考えていると聞き終わったハンコックが勢いよくこっちを向き
「シュバルツ、私はお前のために王下七武海になる!!」
などと力強く宣言してくれた。
俺は嬉しいが、かなり恥ずかしく顔が真っ赤になるのがわかった。
サポートする気満々の妹達、声援を送るメイドさん、シャッキーや師匠楽しそうに見ている。
まるで子供の成長を見守る親のような視線が恥ずかしく、何かご褒美をあげる約束でハンコックより大人のように振る舞おうとして、思わず
「ありがとう、もしハンコックが七武海になれたら、ご褒美に何でも好きなものやるよ。」
「本当だな!!絶対に約束したぞ!!」
「あ、ああ…わかった約束だ。」
またえらく食いついて来たが疑問に思う余裕もなく余程欲しい物があるんだなと勘違いした俺はそれを約束してしまった。
周りの大人達がやけにニヤニヤしているのを疑問に思う事もなかった。
そんなこんなでハンコック達は女ヶ島に帰る事になった。
数日後……
準備が整いった3人と見送りがバーの前に集まった。
なにやらシャッキーがハンコックに耳打ちしていたが聞いてもはぐらかされてしまった。
その後に何やらニヤニヤしながら俺を見て
「私達は此処までにしておくわ、貴方は港まで見送りに行ってあげなさいね。」
と俺に向かって言ってきた。
(今絶対に何か余計な事を吹き込んだ気がする。)
俺元々そのつもりだったので疑問はあるが、特に反論もなく変装をして港までハンコック達と4人で歩いて行った。
わかっていた事だがいつも道理ハンコック達は注目の的だった。
本当にここら辺を捜索されたらすぐに見つかるだろう。
俺達は今までの思い出を話しながらゆっくりと歩いて行った。
港に着いた俺達は船に荷物を載せて向かい合った。
4年も一緒に居たのにこれから暫くは会えないかと思うと何やらしんみりした感じになる。
「本当に大丈夫?島まで帰れる?」
「大丈夫だ、私達三人でも小型船なら操舵出来る。できるだけ近い島までログを辿って行ってそこから帰る方法を探すさ。」
「そうか…3人とも元気でね。」
「ああ、お前もな、次に会う時は七武海に成るだけでなく皇帝にもなり島にお前が自由に入れるようにしておく。」
「うん、頑張ってね、俺も負けないように強くなるよ。」
嬉しい事は嬉しいが、どうもハンコックの中では俺は女ヶ島で暮らす事に成って入るようだ。
「…………」
出港の準備も整い、いざ出発と言った所で何やらハンコックが赤くなりモジモジしだした。
「どうかしたのか?」
「あ、ああ、少しな。……シュバルツ大事な話があるのでこっちに来てくれないか?」
「ああ、わかった。」
手招きするハンコックの元に行ったら
「私は必ず約束を守る、だからお前も約束を忘れるなよ!!」
そう言って勢いよくキスされた。
「!!!?」
驚いて思考が停止した俺、真っ赤になって動かないハンコック、唖然としたサンダーソニアとマリーゴールド。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
暫くの間4人とも動かなかったがようやく思考が動きだした。
「ど、どうしたんだよ急に!」
「…………」
しかし慌てる俺を無視してハンコックは固まっている。
「おい!聞いてる…って、気絶してるの!?」
なんとハンコックは自分でしておいて勝手に気絶していた、しかも立ったままで。
そのまま倒れそうになるハンコックを慌てて支えた。
軽く叩いても反応しないので仕方なく2人に預けたので、ハンコックに肩を貸しながらと言うなんとも締まりのない形で2人と別れのあいさつをした。
「楽しかったわよ、有難うシュバルツ!!」
「貴方には感謝してるわよ!!またね!!」
「また必ず会おうな!!」
ハンコック、サンダーソニア、マリーゴールドの三人は俺に見送られ出港した。
ハンコックが女帝として最初の航海に出るのはこの二年後のことである。
あとがき
ハンコック消えた…。
さあ次に登場するのは何時になるやら。
これからはシュバルツの成長を書くとしますか。
ああ、あと無理やりな約束やキスシーンとか入れんなとか思われたかも知れませんがそこら辺は思いつきなのであまり気にしないでください。