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No.8260の一覧
[0] 【完結】真・恋姫†無双SS~馬超伝~[ムタ](2011/02/03 22:35)
[1] 2話[ムタ](2009/04/28 23:53)
[2] 3話[ムタ](2009/05/10 06:38)
[3] 4話[ムタ](2009/05/10 06:41)
[4] 5話[ムタ](2009/05/11 23:41)
[5] 6話[ムタ](2009/05/17 13:05)
[6] 7話[ムタ](2009/05/25 00:27)
[7] 8話[ムタ](2009/06/07 22:30)
[8] 9話[ムタ](2009/05/28 23:24)
[9] 10話[ムタ](2009/06/07 22:32)
[10] 11話[ムタ](2009/06/07 22:45)
[11] 12話[ムタ](2009/06/21 13:36)
[12] 13話[ムタ](2009/06/21 13:53)
[13] 14話[ムタ](2009/07/05 17:19)
[14] 15話[ムタ](2009/07/12 05:21)
[15] 16話[ムタ](2009/09/17 02:06)
[16] 17話[ムタ](2009/09/21 22:04)
[17] 18話[ムタ](2009/09/21 22:16)
[18] 19話[ムタ](2009/11/01 23:47)
[19] 20話~袁紹伝その1~[ムタ](2009/10/25 02:34)
[20] 21話~袁紹伝その2~[ムタ](2009/11/02 02:07)
[21] 22話~袁紹伝その3~[ムタ](2009/11/12 19:04)
[22] 22.5話~袁紹伝その3.5~[ムタ](2009/11/29 23:29)
[23] 23話~袁紹伝その4~[ムタ](2009/11/29 23:34)
[24] 24話[ムタ](2009/12/07 03:00)
[25] 25話前編[ムタ](2009/12/27 04:04)
[26] 25話後編[ムタ](2009/12/29 23:39)
[27] 26話前編[ムタ](2010/01/05 22:05)
[28] 27話前編[ムタ](2010/01/24 10:55)
[29] 26話後編[ムタ](2010/01/28 00:14)
[30] 27話後編と28話[ムタ](2010/02/21 02:28)
[31] 29話前編[ムタ](2010/02/23 23:50)
[32] 29話後編[ムタ](2010/02/28 02:15)
[33] 30話[ムタ](2010/03/16 02:55)
[34] 31話[ムタ](2010/04/15 18:19)
[35] 32話[ムタ](2010/04/18 23:32)
[36] 33話[ムタ](2010/04/19 00:03)
[37] 34話[ムタ](2010/04/27 23:16)
[38] 35話[ムタ](2010/05/06 00:53)
[39] 36話[ムタ](2010/05/13 23:17)
[40] 37話[ムタ](2010/06/01 17:55)
[41] 38話[ムタ](2010/09/21 23:43)
[42] 39話[ムタ](2010/09/22 00:19)
[43] 40話[ムタ](2010/10/16 14:21)
[44] 41話[ムタ](2010/10/24 18:15)
[45] 42話[ムタ](2010/10/30 16:08)
[46] 43話(最終話)[ムタ](2010/11/21 02:31)
[47] おまけ1[ムタ](2011/02/03 22:28)
[48] おまけ2[ムタ](2011/02/03 22:29)
[49] あとがき[ムタ](2011/02/03 22:35)
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[8260] 24話
Name: ムタ◆f13acd4e ID:b19915a3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/07 03:00





河北の英雄袁紹敗れる………………英雄である。



 誰もが予想し得ず、負けないまでも長期戦、あるいは引き分けであろうと思われた中原の覇権をかけた

俗に言う官渡の戦いは曹操軍の勝利によって幕を閉じる。

曹操の勝利を予想した僅かな者さえ勝ったとしても河北四州と徐州を併せた広大な領土を支配するのには

時間がかかると考えらており、結果曹操はその予想すら覆す事になる。

理由の1つは一時袁紹軍軍師であり曹操軍に戻った荀彧の存在である。軍師時代に河北の台帳と地図の

閲覧は元より検分資料の悉くを読み漁り、急速な領土拡大による反抗的な豪族や五胡の調査を行って

いた為、荀彧の指示通りに案件を片付けるだけでスムーズに併合が行われた。

もう1つの理由が幽州牧公孫賛、徐州牧劉備の徳であった。元来それなりの善政を敷いて、徳を持って

領土を支配していた二人を追いやっての領土拡大であり、袁紹に対する領民の怨嗟の念少なからずあり、

それを破った曹操軍は行く先々で歓迎された。また荀彧の指示通り、かつ領民の協力によって復興は

順調に行われ、結果文字通りあっという間に河北四州、徐州を完全な支配地域として曹操領として併合。

結果曹操は大陸のほぼ3分の1を支配するに至ったのである。



さて、ここで現在の大陸の情勢についてまとめてみようと思う。


まず益州を領土とする益州牧劉障。中原の混乱等何処吹く風で天然の要害の地を盾にほぼ独立国の様相を

呈していた。決して暴君ではないが良く言って無能なこの支配者の領地経営は酷く、されどなんら対策は採らずに

安全な成都に篭り惰眠を貪り、結果民は貧困に喘いでいた。

荊州との入口を守る黄忠、また益州防衛の要、巴郡城を劉障より任されている厳顔等が治める地域は太守の

能力によって比較的平和であったが、それでも本国より課せられる税によって民の暮らしは楽ではなかった。


続いて陸遜曰く『強い人』と言わしめた荊州牧劉表は言われるだけの才覚を持ち、良い土壌と風土に包まれた

荊州の地を平穏に治めており、また北の脅威である曹操に対抗する為、隣接地にある新野城に黄巾討伐や

難攻不落の虎牢関を落とし勇名を馳せた同族の劉備を客将として迎え入れ、曹操に対する防衛網を張る

という老練な手腕を発揮していた。しかしここで問題が発生する。



その問題の原因とも言える揚州について説明したい。

揚州の支配者であった袁術に対してクーデターを起こした孫策は見事袁術を破り江東の地を支配下に治めた。

この直後孫策は独立を宣言。伝国の玉璽をその正当性の証として江東の地に呉国の建国を宣言したのだった。



混乱したのは先にあげた荊州牧劉表である。突然東に隣接した江東が独立し呉という国になったと思ったら北方

にて10年は争い続けるであろうと予想された曹操と袁紹の戦いはあっという間に終わり、しかも勝者である曹操は

瞬く間に河北を平定しているのだ。

曹操と呉が直接争うならそれでよい。しかし海軍の無い曹操が直接江東に攻め寄せるよりはこの荊州の地を通った

方が都合が良いのである。逆に呉にとっては曹操に対抗する為にこの肥沃な荊州の地は魅力的であり、まさに喉から

手が出るほどに欲しい土地である筈だった。

荊州を守る為に打てる手は限られている。曹操、呉に対抗する国力を得る為に益州に攻め込む。北と東に対する脅威

があるのに今兵を動かせる事など出来るわけもなく、もし戦ったとしても要害の地益州の守りに黄忠、厳顔といった良将

昨今若手ながらその武を轟かせている魏延といったそうそうたる武将を相手に勝てる見込みは少なく、客将の劉備を

派遣して北の守りを薄くしたら本末転倒である。

だからそう、馬国の馬超、天の御使いと言われる軍師北郷と面識があると言っていた劉備を使って第2の大国馬と同盟

を結ぶという選択肢が出るのは自明の理であった。



さて、劉表が利用しようとした馬国はどうか? 正式には後漢における西涼軍閥大連合が本来の名である。

西方貿易の入口である武威、第2の首都長安を主な領地とする北西の強国として領土的には劣るが国力という面に

おいては曹操に次ぐ大国であった。盟主馬超は義姫と称えられる程義に厚く、錦馬超と謳われる程に強く美しく、

西涼の誇りとまで称えられたと歴史書にはある…………酷い捏造である。

最も馬超を知る北郷一刀からすれば『嘘じゃない、嘘じゃないけど物凄く納得がいかない』と言ったであろうがそんな

不都合な言葉など歴史書には残されないのがこの世の常である。







―――馬国 武威


『翠ちゃん、たんぽぽちゃんにご主人様お久しぶりです桃香です。実は今わたしは荊州の劉表さんの所でお世話に

なっていて新野城を任されています。それで今年荊州の地はとっても豊作でそれをお祝いしようという話になりました。

その大宴の主人として礼をとり行うよう劉表さんの代理としてお願いされてて、その劉表さんたってのお願いで是非

涼州の人も招いて欲しいって言われてお手紙を出しました。

荊州の食べ物はと~ってもおいしいので是非来てください、お待ちしております♪』


まあ文面を砕くとこのような手紙が馬超の元に届いた。


「うはっ! 豊作でおいしい物いっぱいだって。楽しみだなご主人様♪」

「えっ!? 翠、ちょとあんた行く気なの?」

罠ではないか? 行くにしても誰を向かわせればよいのか? そんな次元をすっ飛ばして行く気満々の今や大国の

盟主となった馬超の言葉に馬鉄こと詠は『冗談でしょう?』というニュアンスがたっぷりと包まれた言葉を返した。

「当たり前だろ、美味い物……じゃなくて桃香さまは大切な友達なんだ」

正直者である。恐らくこれが精一杯の腹芸だと思われる。

「あんた西涼の盟主なのよ? 今や第2位の大国の代表って自覚あんの?」

翠の事を知っている人間からすれば今更ながら冗談みたいな話である。

「別にいいだろ? 国内の事は詠がやってるし陳情とか月が得意だし軍事はたんぽぽがいるし……あれ?

あたしいらない子なのか!?」

衝撃の事実が今発覚した。

「え~軍事はお姉様がやればいいじゃん? たんぽぽがご主人様と二人で行ってくるよ♪」

「ずるいぞたんぽぽ!」

「ちょっと待ちなさいよ! なんで行く前提の話しになってるのよ、まずこの手紙の意味がどういった物か考えなさいよ!」

「はあ? 意味?」

まるで理解していないと解る返事に詠の目はスウッと細くなった。

「じゃあ翠、この手紙の真の目的は何?」

「美味い物いっぱいあるから食べに来いじゃないのか?」

「0点。あとで補習するわよ」

「なにー!?」

「たんぽぽ?」

「え? えっと……たんぽぽ達と仲良くなりたい?」

「40点。まあ本質は理解してるみたいだから赤点は許してあげるわ」

「ほっ」

「それじゃ月解る?」

「えっと……曹操さんの脅威に対抗する為に同盟を結びたい、とか?」

「流石月だわ! もう100万点あげるわ、まあそういうわけなのよ」

上限何点だよ! 適当なクイズ番組かよ! というツッコミすらできず、話が終わりかかっていたので

『ちょっと待ってくれ詠』と一刀が話を遮った。

「……あんたいたの?」

話を振らないという次元ではなく、存在を認識していなかったというスルー以上の扱いだった事に一刀は冷や汗を

かいた。

「いたよ! たまに話振ってくれる時別の奴がツッコミを入れるから会話に入れなかっただけだよ。というか俺にも

今の問題聞いて欲しかったんだけど?」

正解を知っているのに当ててもらえないのは結構寂しいものだ。

というか最近出番自体が無いどころかたまの出番でさえセクハラして失敗して酷い目に遭う。という汚れ系の

オチ要員のような扱いで自分の存在意義的な意味で某外史”蜀”ルートにおける『このルート一刀いらなくね?』

的扱いになりつつありわりと危機感を持っていた。軍師の仕事詠がやった方が効率がいいし……

「じゃあ聞いてあげるわよ、あの手紙の意味はなによち●こ」

「……魏と呉に挟まれていつ攻められるか解らない荊州は今危機的状況だからな。魏と隣接してる西涼と同盟

を結んで魏を牽制して攻め込まれないようにしようってのが劉表の策だな。翠と面識がある桃香を利用して

断りにくくするつもりだろう」

詠の悪意をスルーして一分の隙も無い回答を朗々と語る(ふふ、ぐうの音も出まい?)

「……チッ」

舌打ちされた!?

「というか魏って何よ? まあ曹操軍の事言ってるのは解るけれど……」

「あ、そうだった」

そう、袁紹を滅ぼした曹操軍は未だ魏を名乗っていなかった。無論正史でもまだ名乗る時期ではないから

おかしくはないのだが、逆に呉は既に名乗っていた。偶然かそれとも魏を名乗らない理由があるのか?

実は曹操軍が魏を名乗らない為に馬(以後西涼連合でなく馬とする)としては動きようが無かった。

動く理由がないのだ。領土的野心を持たない馬超にとって、今回の官渡の戦いも曹操領に攻め込んできた

袁紹との自衛の為の戦いであり、未だ漢王室における曹操領であって攻め込む理由などなく、むしろ曹操

に請われれば袁紹と戦うぐらいの認識であったのだ。

後に魏が攻め込んでくる事が解っている一刀や月の安全の為に脅威を取り除きたいと考えている詠からすれば

なんとも歯がゆい状態であった。魏を名乗れば漢王室に反旗を翻した賊軍として漢王室の臣として馬は戦いを

挑めるのだ。

「つまりカンニング(不正行為)ね。翠と一緒に補習を受けた後『私は卑怯者のちん●です、生まれてきて

ごめんなさい』という反省文を1000回書きなさい」

「鬼だ!」

人生どころか生まれてきた事を否定された!

「10000回に変更するわよ?」

「私は卑怯者のちん●です、生まれてきてごめんなさい」

一刀は土下座して詠に許しを請うほかなかった……カンニングじゃないのに。






「まあ思惑はなんであれ美味い飯を……じゃなくて話を聞いてもいいんじゃないか?」

という恐らく世界一正直者の盟主の発言で方針が決まり、では誰が行くか? という議題に移行する。

「ボクと月が行くのが一番だけどね。正直外(西涼以外)へ出るにはまだ早すぎるわ」

反董卓連合の一件以来まだ数ヶ月(恐ろしい事に!!)。どこに月や詠の正体を知っている者がいるか

解らず、荊州までの旅路はあまりにも危険というのが詠の言葉だった。

「恋ちゃんとねねちゃんも無理だね」

二人とも長安の守りの為この場にいない。

「ほら、やっぱりあたしが!」

「だからたんぽぽが行くべきだって、こないだ詠の実験という名の五胡殲滅戦でボロボロにしたからとーぶん

侵略はないよ」

「ち●こが行けばいいじゃない」

「うん? ああいいけど」

「ご主人様だけズルイぞ!」 「ずるーい! なんでご主人様だけ!」

非難轟々である。

「だってコイツだけ無職じゃない。でも腐っても天の御使いだから相手に失礼にはならないわ」

酷い事を言われた! 馬国の軍師なのに!!

そりゃあ最近軍師の仕事は詠がほとんどやってくれるから自分の仕事なんて月に何回か長安に行って視察

という名の恋とのお食事会だったけど……(いい仕事である)

「詠ちゃん、言いすぎだよ?」

「そうね。ニート(無職)に失礼だったわ。腐ったちん●と同じにしちゃあね」

フッと鼻で笑われた。

いい加減挫けそうな心を癒すかのように隣に座っていた月がそっと耳打ちする。

「あの、詠ちゃんホントはご主人様のこと好きで、かまって欲しくてああ言ってるんですよ」

そうなの? ツンデレなの? ひたすらツンしかないんですけど?

「兎に角ご主人様一人じゃ危ない!」

翠が心配してくれているらしい発言をする。

「そーそー桃香さま犯されちゃうよ? 国際問題だよ?」(国際ではないです)

蒲公英の発言で心配されていたのは俺ではなく、桃香の貞操だった事を知った……なんでだよ!!

「はあ? ちょっとそれどういうこと?」

「ご主人様反連合の時桃香さまを押し倒して胸を揉みしだいていたんだよ」

蒲公英なんて余計な事を!!

「……犯罪じゃない、普通に引くわ。月も離れて! 妊娠させられるわよ!」

詠に生ゴミを見るような目を向けられた以上に、さっき隣で親しげに耳打ちしていた月がススス……と

自分から離れるのがショックだった。


兎に角、荊州大宴の出席者として一刀が数名の護衛をつれて荊州へ向かう事が決定する。





―――数日後


外套を目深く被った2人の護衛を連れて相棒の麒麟と共に一刀は荊州へ旅立っていった。

『今回も頼むな麒麟』と首を撫でる。麒麟もいつもどおり『まかせろ』と嘶いた。

「しかし桃香か、久しぶりだなー。朱里とかも元気かなあ?」

馬上で背伸びしつつそう独り言を呟く。

「みんな可愛いからご主人様は楽しみだね♪」

外套を脱いで姿を現した蒲公英が当たり前のように微笑む。

「まあそうなんだけど……」

「いやーでも美味い物食い放題だろ? 楽しみだよなー」

もう一人の護衛も当然の如く翠。しかも大宴の内容がいつのまにか食べ放題になっていた。

二人の乗っていた馬は黄鵬に紫燕。はなっからバレバレであった。

「へへ、留守番なんかしてられるかっての、詠の勉強に付き合ってたらしんじゃうって」

駄目な盟主だった。


出発の前日、翠と蒲公英が部屋に来て『護衛に変装すっからご主人様も知らん振りしとけ』と、口裏を

合わせに来ていた。

「でも今頃詠怒ってるよ? 帰ったらお姉様どうするの?」

ああ、うん。その心配は無用だたんぽぽ。俺は鞄から詠より預かっていた荷物を取り出す。

「だーいじょうぶだって♪ たんぽぽも心配症だな……ってご主人様なにしてるんだ?」

『はい』と二人に本を渡す。

「? なんだこれ?」 「げっ、まさか……」

察しのいい蒲公英は気付いたらしい。 孫子の兵法書である。

「移動の最中それ読んで勉強しろって。帰ったらちゃんと読んだか確認する為に感想文かかせるってさ」

「ひどーい! ご主人様裏切ったんだ!」

「人聞きの悪い事を言うな。最初っから二人の行動なんて詠に読まれてたよ」

『どうせ荊州に付いて行くだろうからこれ読ませてときなさいよ』とは詠の弁。

『二人も荊州に行って大丈夫なのか?』と聞けば『翠に説明する手間が省けるから寧ろ仕事が捗るし

最近仕事が溜まってきたから都合が良い』との事。軍事においてもまず長安を突破せねばならず、その事態

になってから帰ってきても十分間に合うし、五胡においては大規模な攻勢はまずない事も調査済との事。

いやほんと、敵じゃなくて本当に良かったと思う。

たしか正史では曹操と戦った馬超と馬岱はその時曹操軍の軍師だった賈駆の策によって敗れるのだから。

ブーブー言ってる二人には月から『旅の途中で食べてくださいね』と冷めてもおいしい饅頭を三人前持たされて

いるからそれでご機嫌取ればいいだろう。


一刀改め馬超一行は荊州へ向かう。




―――武威


「ほんと美味しい物食べ放題とか意地汚いわよね」

政務に励む馬鉄がお茶を持ってきた馬休に愚痴る。

「本当はご主人様と一緒に遊びに行きたかっただけだって詠ちゃんも解ってるんでしょう」

クスクスと笑いながら詠にお茶を勧める月。

「ありがと月……月も行きたかった?」

「うん、詠ちゃんも一緒にね」

「ボクは別に……そうねいつか平和になったら」

「そうだね。でもきっとそれはそんな遠くない気がする」

「ふ~ん……まあいいわ。ちょっとくらいは恩返ししないとね」

「素直に遊びに行かせてあげれば良かったのに」

詠の背中を見ながらニッコリと微笑む。

「どーせ兵法書なんて読まないわよ。まあそれをお説教のネタにして帰ったら仕事させるけどね」

振り向いて月と顔を見合わせて笑う。何気に仲良し四姉妹+1だった。








―――許都


『ちょぉぉぉりゃぁぁぁぁっ!!』許緒の巨大鉄球”岩打武反魔”が『はあっ!』典韋の巨大ヨーヨー”伝磁葉々”が

同時に関羽に襲い掛かる。

ゴウッ……と迫り来る鉄球陣を恐れる事無く冷静に軌道を見極めた関羽は手に持った青龍偃月刀を振り上げる。

ガガッ!! という金属音。『わっ!』 『ええっ!?』 季衣と流琉が素っ頓狂な声をあげる。

二人の鉄球とヨーヨーは鎖が絡まりあい、打ち上げられた為結果関羽に引き寄せられるようにワタワタと近づき、

コツンコツンと青龍偃月刀の柄の部分で叩かれて勝負がついた。

「あーまた負けた~」 「関羽さん強いです……」

「まだまだ甘いな。だが連携するという考えは良かったぞ」

「ホント!?」 「本当ですか?」

「う、うむまあな。次は私も危ないかもしれん」

子供の純粋な目に弱いのであろう、関羽が慈しむような目を二人に向けながら微笑んだ。


……帰れなかった。


顔良と文醜という袁紹軍の二大看板を倒した時点で十分な手柄だった筈……なのだが失敗した。

その事を知った季衣と流琉が尊敬の眼差しを向けながら凄い凄いと褒めちぎってくれた事につい調子に

乗り『あの程度たいした手柄でもない』等と言ってしまった事を司馬懿殿に聞かれ『本当!? じゃあもうちょっと

手伝ってくれ』となし崩し的に十面埋伏の計の一角を担ってしまった。全員の手柄であり『じゃあこれで……』

とも言えずズルズルと残ってしまっていた。袁紹と戦う以前なにかと危なっかしい許緒をほおって置けず邪険に

されつつも仕事の手伝いをしてからなんとなく懐かれ、典韋も加わり自身もつい鈴々と重ねて見てしまったせいで

それなりに仲良しになってしまったのが失敗した。張遼もやたら親しくしてくれるがこちらは微妙に貞操の危機的

直感が働くので飲みに誘われても飲みすぎに注意していたが。

つまるところ曹操軍におけるポジションが出来てしまっていたのである。



その光景を見ていた者がいる。司馬懿一刀と郭嘉、程昱である。

「以前袁紹との戦いの際『一点を除いて一刀殿の策で間違いない』と言った事を覚えていらっしゃいますか?」

「うん? あったっけ?」

「ええ、その一点とは関羽殿の武だったのですがまさかこれ程とは思いませんでした」

「このまま帰らないで欲しいけどな」

「無理でしょうね~次は荊州ですから。すぐ帰したら敵になっちゃいますし、だからと言って許昌に置いて来たら

後ろから反旗を翻すでしょうから荊州攻略に連れて行くしかないのですよ~」

「というかこんなに早くて大丈夫か? 桂花が頑張ってくれてるのは解るけど……」

「問題ありません」 「問題ないのですよ~」

二人の返事は同時だった。寧ろ今しかないという危機感さえも感じられた。

「桂花さんのおかげで予想の数倍の早さで河北併合がなってますからね~。ここまで早いとは孫策さんも予想

してなかったでしょう。だから建国したのでしょうが……呉、馬や益州、荊州が同盟を結ぶより早く南下して街道を

塞ぎ、電光石火にて荊州、呉を併合。ここでようやく魏を名乗れるのですよ~」

馬国一刀の懸念通り、馬国盟主馬超の人となりを考えた上で正面から戦うまで魏を建国しない。程昱の考えは

まさにそれであり、少しでも早く魏建国を目指す武将達にとっての奮起材料ともなっていた。




謀士賈駆も、未来を知っている一刀ですらこの歴史の流れの速さについて来ていない。


曹操軍50万の呉征伐。俗に言う赤壁の戦いへ向けて外史は一気に動き出していたのである。







(あとがき)


補足:手紙は砕いて、とあるように桃香らしさを出した訳がなされているので立場上ちゃんとかねーよってのはスルーで。

翠や蒲公英は相手との立場が逆転したとかそんな理由で呼び方返る子じゃないです。

孫子の兵法書は有名なのでネタ的にw メタ発言もこうゆうノリの時は作風とご理解ください。


あと大丈夫だと思いますが本来荊州まで数ヶ月位かかりそうですが恋姫感覚で言うと熱海に三泊四日位のノリですw


文面で読み取れるとは思うのですが自覚とかも双方問題ないと結論つけてかつ任せて大丈夫っていう信頼感です。

これで熱海にミサイルが落ちたって予想できないのおかしい!みたいなんだったら某国がしょっちゅう日本海にミサイル

落としている日本人は外に出るのも常識ねーになるかなと。


というわけで状況説明+新章のプロローグ的な話。

荊州は激戦区。最初はどのシナリオ的にも真恋姫だと荊州の支配者は袁術なんですが呉ルートだと

なんだか複雑。袁術が支配してた筈で孫策が倒したから楊州と荊州は呉になったかと思ったら

いつのまにか荊州の実力者劉表が治めてるという流れ(何故?)。なんで馬ルートにおける荊州牧は劉表さんです。

あと気がついたら魏とか呉とかになってるよね恋姫無双(汗)





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