【グロ注意!!】
今回の話は暴力シーン、流血シーンが含まれます(あれ? いつもジャン?)
すみません、改めて(まじめに)
今回の話は精神的にキツい部分があります。ドン引きする可能性がありますので
そういったものに抵抗のある方は読まないか7までで読み止めるようお願いします。
1
―――少女が地獄を見る24時間前
「……どういうこと?」
洛陽の城壁から攻城戦をしかける部隊の旗を見て、賈駆は一人小さく呟いた。
洛陽放棄、長安遷都。董卓軍の基本方針が決まって2日が経過していた。
こちらとしては撤退の準備に追われ、守備隊の兵力を減らさざるを得なかったのだが、連合側がそれに気付いている
のかどうなのか? 24時間攻撃は変わらず続けられていたが明らかに変化が起こっていた。
「あいつに聞けば何か解るかもね。頼りにされてるとでも思われたら癪だけど……」
あいつとは当然今回の作戦を提案した北郷一刀の事である。
2日前の軍議は一刀の『俺と月は洛陽に残る』の一言で紛糾した。
総大将を置いて逃げるなどありえないからだ。
『月を売るつもり!』 と怒鳴りつけてやったらあいつはしれっとした顔で言葉を続けた。
『馬に乗れない位の肥満体で熊のようなヒゲ面の大男。後宮の女官を汚し、農村の婦女を誘拐。歴代皇帝の陵墓暴いて
財宝を奪い、洛陽の金持ちから金品を没収し、逆らう者を焼き払い、数百人の捕虜を殺害して楽しんだ』
『誰よそのケダモノ?』
『董卓』
『あんた……殺してやる!!』
『まてまて! 連合軍は董卓の事をそう思ってるんだよ。だから月を袁紹の所に連れてって『この子が董卓です』って言っても
絶対信じないってか『北郷さんアナタ正気ですの?』とか言われて俺の脳が疑われると思うぞ』
『つまり月を董卓やなくて別人として洛陽に隠しとくわけやな?』
張遼が感心しつつ一刀の言葉を補足した。
『そ。捕虜の俺が牢に置いてけぼりにされててなんらおかしくないからな。董卓に逆らった金持ちの娘も一緒に捕まってた。とか
言えば無事に保護されるだろ。向こうが助けに来たって言ってるからまず大丈夫だし、反董卓連合って言っても洛陽解放が主目的
だからな、ここで解散だろうから帰り道のついでに馬騰軍が月を長安へ送り届けてみせる。どうかな?』
悪くは無い、むしろ最善手といえた。だが……
『……アンタが信用できない』
『詠ちゃん、ご主人様はいい人だよ?』
月の言葉に呂布もコクコクと頷く。
ちがうのよ月、ボクが信じられないのは性格じゃなくてコイツの下半身なのよ!!
そもそも初対面で全裸だし、
ねねの話だと恋に悪戯目的で近づいたらしいし、
霞をお嫁に行けない体にしたって噂もあるし、
あの飛将軍呂布が妙に懐いてるし、
霞もなんだかあいつを無駄に高くかってる節があるし、
ねねは楽しそうに蹴りを入れてるし ← これは偏見
月もなんだか気を許してるし!!
恐ろしい事に気付く。いつのまにか董卓軍の将軍達がこのち●こに関心を抱いているではないか!!
ボクだけでもしっかり警戒しなくちゃ!!
と、自身も一刀の事で頭がいっぱいになっている事に賈駆は気付いていない。
とにかく言葉には出来ない。下手な発言で逆に意識させるのは危険過ぎる。ならば……
『その作戦、一つだけ条件があるわ!』
条件を飲ませ、董卓軍の基本方針は決まった。
賈駆は意識を戦場に戻す。
「そろそろ軍議の時間ね。この場は任せるからなにかあったらすぐ連絡しなさい」
「はっ」
洛陽放棄の時期を決める最後の軍議に参加する為賈駆は洛陽城壁を下りた。
2
―――少女が地獄を見る23時間前
洛陽放棄の準備はほぼ完了していた。後はいつ決行するべきか?
そのタイミングを見極める為にも連合軍の動きを観察する必要があり、それぞれが気付いた情報を報告しあっていた。
「なんですかこれはー!?」
意味不明な連合軍の布陣を理解できず陳宮は両手をあげて叫んだ。
攻城戦をしかけてきた敵の旗を確認し、並べてみると連合軍は1日を6等分して各軍が4時間毎に交代して攻撃をしかけて
いる事が解った。開始をどこに決めるかはともかく、ローテーションの順番として以下の通りだった。
孫策軍⇒公孫賛軍⇒劉備軍(前日は袁紹軍)⇒曹操軍⇒孫策軍(前日は袁術軍)⇒馬騰軍⇒劉備軍⇒先頭に戻る
うん、意味が解らないよね……袁紹と袁術に会った事なければ。
「袁紹と袁術軍がいないわね。戦力を温存しているのかしら?」
いやどーせ飽きたとか面倒とか最初に攻撃受けるの嫌だとかそんな理由だと思う。
「もう一つ気になったんだけど、劉備軍の中に曹操軍の鎧を来た連中が半分ぐらいいたわ」
……なんだろ? そこはちょっと解らない。だがその情報が決め手になった。
「洛陽脱出の時期(タイミング)は公孫賛軍後の劉備軍だ」
「なんでや?」
「最初から説明する。まず袁紹、袁術軍がいないのは多分面倒とかだと思う。そんな馬鹿な! とか思うかもしれないけど
袁紹はバカだからとしか説明の仕様がない。その分を孫策と劉備に押し付けたとすればつじつまは合う。で、兵士数が
少ない劉備が曹操に兵を借りたかしたんだろう。って事は連携が取れてない混合劉備軍が狙い目だと思う。しかも追撃が
怖い騎兵の公孫賛軍の後で馬騰軍がずっと先だから追撃の危険性が格段に減る」
ちなみに反董卓連合軍は攻城戦時、反撃の勢いが弱まった事から、近日中に董卓軍が決戦をしかけてくると読んでいた。
その為、最初の一撃を喰らう不名誉な事は御免だと袁紹、袁術が我侭をいい、ここは一刀の読み通り孫策と劉備に
押し付けられ、兵数が少なく困っていた劉備に曹操が兵を貸し与えた。というのが正解であった。
「決まりやな」
「今孫策軍が攻撃してるからほぼ20数時間後、ちょうど明日のこの時間なのです!」
董卓軍最大の脱出劇が20時間後と決まった。
3
―――少女が地獄を見る3時間前
呂布隊3万、残存華雄隊1万が裏門近くの広場に集まっていた。
「……じゃあご主人様いってくる。皆をお願い」
「ああ、セキト達もちゃんと長安に連れてくよ」
コクッと恋が頷く。
「……あの……さ、出来ればでいいんだけど」
「……?」
「……あ、いや…………気をつけて」
言えるわけが無い! 恋だって命がけなのだ! だから……
「……恋は死なない」
「えっ!?」
「……恋は死なない、ちんきゅーも、仲間も守る。だから、何?」
情けない、結局恋に心配をかけてしまった。
「真っ直ぐ逃げてくれ。出来るだけその……倒さないでやってほしい。ごめん、出発前に言うべきじゃないし、勿論身を守る為に
戦ってくれていいんだ。だけど劉備も結構いい人なんだよ。本気で洛陽の民が困ってるって信じてここまで来てるんだ。だから……」
「……解った。でも、あくまで出来るだけ……」
「ありがとう、それで十分だ」
裏門が開く。
突然の事に呆然としている混合劉備軍へ、その先の長安へ向けて、呂布隊は出撃した。
その姿を見送っていると、ゴチンと脳天に衝撃が走った。
振り返ると張遼が殴ったコブシを開いて手をヒラヒラとさせていた。
「アホ、 聞こえとったで? 恋に甘え過ぎ。軍師失格やな」
全くその通りで流石にしょぼくれてしまう。
「ちょ! そこまで落ち込まんでも……まああんたの立場からしたらしゃあないって、な!」
霞にまで気を使わせてるし……
「霞も気をつけてな」
「ああ、まかせとき! ……そんでな一刀、アンタ連れてきて良かったわ」
「は?」
「結局一刀がおらんかったら月は酷い目にあっとったかもしれんし、ウチらも無謀な決戦しとったかもしれん。
それに、一刀がいたおかげでみんな明るかった思うわ」
「そうか? ねねに蹴られ、詠に罵倒され、……霞に裸にされただけだったような?」
「……いやアレはなあ……噂になっとってウチも反省した。兎に角長安で会おう。で酒でも飲もう」
「解った」
張遼率いる2万の軍勢が、混乱極まる裏門へ突撃する。
洛陽脱出戦は中盤を向かえていた。
4
あれ? 反撃がないな? と洛陽の裏門から兵7千を率いて攻撃していた劉備が首を傾げたと同時、
洛陽の裏門があっさりと開かれた。
「え? 何で?」
大将である劉備を含め、全員が呆然とした最中、洛陽から飛将軍呂布を先頭に大軍が飛び出した。
「そんな!? どうしよう!……って誰もいないんだった! 向こうが鋒矢陣だから……」
「すみませ~ん! 曹操軍のみなさん、こっちは堰月陣で向かえ討つので陣形を~ってきゃああああッ」
陣形を整える前に呂布隊によって蹴散らされ、劉備軍は簡単に分断され、突破される。
前提として劉備軍は袁紹の我侭によって優秀な武将を2つに分けられてしまっていた。今回攻城戦をしかけていた
劉備軍は大将に劉備、副将に趙雲、軍師に鳳統。主力の趙雲、鳳統は正門を攻略していた為、運のなかった
劉備はわずか7千の兵で突然董卓軍全軍を迎え撃たねばならず、あげく自軍の兵の半数が曹操軍であった為、
連携を取ることもままならなかった。
「突破されちゃった……追撃? それとも洛陽を攻めるべき? ううん、まずは分断された軍を集結させないと!」
劉備が意外な統率力ですばやく軍を再編させる……まさに運がなかった。
「報告します、洛陽より、張遼隊が来ます!」
「えええ~ッ!!」
分断されたままであればむしろ無傷だったかもしれない。集結した直後、またも突撃を喰らい、追撃する事も、洛陽へ
進入する事さえ出来なかった。
ただ何故か死者は驚くほど少なかった事を追記しておく。
劉備率いる劉備軍が立て続けの攻撃によって事態を連絡できなかった事、趙雲隊が反撃が全く無い洛陽を不審に
思い、罠を警戒して慎重になり過ぎてしまった事、洛陽が放棄された事を知ってどちらが一番乗りを果たすかで
袁紹、袁術が揉めた事等が重なり、
結果、反董卓連合軍が無人の洛陽へ上洛したのは董卓軍が完全撤退した3時間後であった。
5
―――少女が地獄を見る1時間前
張遼を見送った後、大変なイベントを忘れていた事を思い出し、一刀は必死に走っていた。
「月、詠いるか!!」
牢へ入る準備をしている二人がいる董卓の私室を開ける。
「きゃあああああああッ!!」
着替え中でした。
「うわッ……ごめ……ブッ!!」
飛来した食器が顔面を直撃する。
「さっそくなの!! 霞達がいなくなった途端覗きをするってあんたどんだけち●こなのよッ!!」
「ほんと スミマセン、決してわざとではなく重大な用件があっ……ブッ!」
2つ目の湯呑が同じく顔面を直撃した。
「白々しい。やっぱりボクが残って正解じゃない」
そう、一刀の作戦を了承する条件は一つ、賈駆も董卓と共に洛陽に残るという事であった。
「と、兎に角急いでるんだ。二人とも伝国の玉璽どこにあるか知らないか?」
「伝国の玉璽ですって! あんたまさか皇帝を名乗るつもりじゃないでしょうね!」
「いるかあんな呪いのアイテム! とにかく何処?」
「詠ちゃん?」
「ボクが持ってるわよ。いっとくけどネコババしようとしたわけじゃなくて張譲が隠し持ってたのを取り上げただけよ」
そう言って一刀に玉璽を手渡した。
「で? それをどうするつもり?」
「井戸に捨ててくる。牢は先に行っててくれ」
「はあ!?」「……いいの?」
一刀は二人の返事も聞かずに部屋を飛び出していった。
流石に今がどういった状況か解っている洛陽の民は家に閉じこもっていた為、人通りの全く無い街を走る。
「どこだ? たしか古井戸だった筈だけど……」
途方も無く広い洛陽を走り回り、ようやく古井戸を見つけ玉璽を投げ込んだ。
「はぁ、はぁ……これで、いいだろ。疲れた……」
三国志演義ではこの玉璽を見つけた孫堅が反董卓連合を抜け出している。玉璽が原因だったらこんな呪いのアイテム
持ってって貰ったほうがいいし、玉璽がなくて戦果がないからって孫策が長安まで追撃にこられても困る。
「あとは月達と牢屋で翠かたんぽぽが助けに来てくれるのを待つだけだな」
そう呟いた直後
ドカン!!
と何か巨大な物が吹っ飛ぶ音と共にけたたましい喧騒が洛陽にあふれた。
「正門が破られた? うわぁ、牢までまた走るのか……」
こんな所で連合軍に見つかる訳にはいかない。絶対大丈夫とは言ったが心無い連中が月達を見つけてその美しさにトチ狂った
行動にでるかもしれないのだ。自分を信じて作戦を結構した皆を、無理な頼みを『出来る限りやってみる』と言ってくれた恋達に
報いる為にも、月と詠(あとセキト達)は絶対に無事な姿で霞達の下へ帰さなければいけないのだ。
6
―――少女が地獄を見る30分前
―――馬騰軍陣地
「お姉様、洛陽がッ!」
「ああ、解ってる」
恐らく今日も寝付けずに天幕で悪夢を見ているのではないか? そう心配していた馬岱は姉と慕う馬超の瑞々しい生気
溢れる顔を見て、思わず息を止める。
長い髪を縛り、トレードマークのポニーテールを軽く整えると、銀閃を掴み天幕を出る。
目の前には一刀の愛馬、麒麟が佇んでいた。
「そうか、お前もご主人様を迎えに行きたいんだな」
その首を優しく撫でた。
「じゃあご主人様を迎えに行ってくる」
「……うん、たんぽぽもみんなをまとめたらすぐに行くよ!」
その言葉に『ああ』と返事を返した馬超は麒麟に跨り洛陽へ……
まるで空を飛んでいるような、袁紹と袁術の軍でごった返している洛陽の正門を麒麟から降りずに、全くスピードを
落とす事無く進み、洛陽に侵入する。
不思議であった。また連れて行かれたのではないか? そんな心配は全く無かった。それどころか今一刀が何処に
いるのかさえなんとなく解っていた。
勘が冴えていた。そんな言葉では説明できない、そう、朱里が聞いたのなら『まさに愛ゆえに! ですね』と答えたで
あろうし、現代の日本人なら『ニュータイプに目覚めた!?』と思われるかもしれない。
……悲しい事に、ニュータイプに目覚めた人の末路は悲劇であるというのに。
7
―――少女が地獄を見る15分前
「はぁ、はぁ……なんで……まだ、月の部屋…はぁ…に……」
牢屋に駆けつけても誰の姿も見えず、まさかと思い、董卓の部屋に行ってみれば二人は未だ部屋の椅子にちょこんと
座っていた。
「あんたが心配だって月が言うから待っててやったんでしょ! ってあんた凄い汗ね?」
「はぁ、連合軍が……洛陽に入ってるから……はぁ、はぁ……もうここで、軟禁されてたって事に、しよう」
そこまで言って、もはや立っているのも辛くなり、ふらりと倒れそうになる所を正面にいた小柄な詠が受け止め……
られる訳も無く、詠を押し倒すような形でベッドに倒れこんだ。
「ぎゃあ! あんたちょとドサクサ紛れに何処触ってんのよ! ってホントに汗臭いわね!」
「きっと余程大事な事があって走ってたんだよ。今お茶を入れますから詠ちゃんはご主人様の汗を拭いてあげて」
「なんでボクがッ! もう重いんだからどきなさいよッ!」
「……無理。はぁ、はぁ、もうしばらく動きたくねー」
じゃあなんでそんなに頑張ってんのよ!
それは言葉に出来なかった。コイツが頑張っているのは間違いなくボク達の為だからだ。
伝国の玉璽を井戸に捨てる事がどう自分達の事に繋がるのかはさっぱり解らなかったが。
全く、一人でさっさと連合軍へ逃げられたってしかたないのに、何考えてんのよ! どーせイイ所を月に見せてとか
ち●こな事でも考えてるんだろうけど……そういいながら額の汗をハンカチ(布)で拭う。
「ほら、上着も脱ぎなさいよ!」
「はぁ、はぁ……脱がしてくれ……めんどい」
「あんた調子にのってんでしょ!」
いつの間にか体勢は詠が膝枕しているような状態になっていた。嫌そうに制服の上着のボタンを外す。
そこえ月がお茶を持って近づいた。
「ご主人様、お茶をどうぞ」
「はぁ、助かるよ月……って熱ッ!!」
「きゃあ!」
冷たいお茶と思っていた一刀は思わずお茶を噴出し、湯呑みから手を離してしまう。それが月のスカートにかかった。
「月! 早く脱いで! 火傷しちゃうわ!」
「う、うん……」
いそいそとスカートを脱ぐ。ちなみに二人の服装は一刀が特注で作らせたメイド服だった。『何故こんな服を!』という
詠の当然の疑問も、いやそれ囚人服だから。という強引な嘘を突き通した事が功を奏していた。
そして地獄の扉が開かれる。
「ご主人様無事かッ!!」
全く悪意はない筈なのに、考えうる限り最悪のタイミングで彼女が、そう地獄の使者となる馬超こと翠が、見てはいけない
現場を見てしまったのだった。
8
―――そして少女は地獄を見る
……感動の再会の筈だった。
悪夢にうなされ、食事も喉を通らず、ただ一刀の無事だけを祈った……無事だった。それはもうムカつく程に。
どのような酷い拷問にあっているのか? 本当に心配だった。それがどうだ?
まるで王侯貴族のような豪奢な部屋で、可愛らしい少女を二人もはべらしながら、一人は膝枕させ、自身の上着の
ボタンを外させていた。もう一人にはスカートを脱がす事を強要したのか、少女が涙目になりながら下半身下着だけ
の姿を一刀に晒しつつ、羞恥に頬を染めていた。
当の本人はハアハアといやらしい息遣いと締まらない顔で涎をダラダラと垂らしながら(本当は茶)興奮していた。
テーブルには湯気のたった茶菓子。
……酒池肉林?
噴火寸前のどす黒いオーラを放つ翠に気付かないのか、一刀は気軽に声をかけた。
「はぁはぁ、翠、この二人は月と詠といって、ええっと……ハァ、ハァ、一緒に董卓に捕まってて……」
真名!?
この時、なにか ブチリ と、聞こえない筈の何かの音が聞こえたと詠は後に語る。
これが始まりだったと。
つかつかと一刀の元へ歩く馬超。
あぶない! そう直感が告げて、詠は一刀を放り投げ、呆然とする月を抱き部屋の隅へ退避した。
「あれ? あの、翠……さん? なにか様子が?」
「……」
グシャリ!!
「えっ?」
月が思わず顔を上げる。何が起こってそんな音が聞こえたのか全く理解できなかったからだ。そして道路に潰された
猫の死骸を見るような、内臓を食い破られて海に浮かぶ鳥のような……見てはいけないものを見てしまう。
「え? え?」
「月、駄目!!」
詠が月の頭を押さえ込み、惨劇を見せないようにする。そう、これは序章だった。
バキッ!!
ドガッ!!
ゴキッ!!
身の毛もよだつような音が絶え間なく聞こえる。あえて視界を閉ざした為、その音の恐怖は尋常ではなかった。
何より恐ろしいのは先ほどから北郷一刀の声が全く聞こえない事だった。
「……け……て……」
「!!」
微かに、そう微かにだが恩人である北郷一刀の助けを求める声が聞こえた。
今度はわたしがご主人様を助けなきゃ!!
月はなけなしの勇気を振り絞り、押さえつける詠を押し返した。
「月!」
「た、助けなきゃ……ご主人様を……」
怖い、恐怖で涙が止まらない、それでも助けなければ……ただその一心で彼女は立ち上がろうとして転ぶ。既に腰が抜けていた。
彼女は這うように、ゆっくり、ゆっくりと、本人としては全速力で惨劇が繰り広げられるベッドへ向かう。
そして残る力の全てを声に向けて……
「もう、やめ……(ビチャリ)……えッ!?」
月の額に何か暖かい液体が付着する。鉄のような匂い……額から流れ落ち、床に落ちた紅い雫を見て、月は『あっ』と言って
気絶した。
頭から落ちそうになった月を詠は抱きとめた。
「月、月!!」
揺すっても目を覚まさない。いや今は眠ったほうがいい。こんな惨劇、残酷過ぎる。
ただ、そうせめてボクだけは月や霞達の為に見届けよう。ち●こは立派な最後だったとせめて伝えられるよう。
それが最後に残った者の義務だと、彼女はこの地獄を目に焼き付けることに決めた。
これがまだ地獄の入口であったとも知らず。
9
―――少女は地獄を見ていた
ピチャリ……「あ……」
また意識が飛んでいたらしい。飛び散った血が詠の顔を濡らし、少女はまだ地獄が続いている事を理解する。
詠は自分の精神を守る為、無意識のうちに既に心の鍵をロックしていた。
であるから目の前の光景が不思議でならなかった。
あの鬼は、何故ズタズタの粗大ゴミを殴っているのだろう?
そう、彼女から見える北郷一刀は既に人間ですらなく、汚らしい粗大ゴミにしか写っていなかった。
白い綺麗な部屋だった……と思う。壁も床も飛び散った血で赤黒く染まり、昔の部屋の面影など微塵も無い。
そして甘いお菓子とお茶のよい香りがしていた部屋は、咽返るような血の匂いが充満し、その匂いだけで意識を
失える程であった。
何故こんな地獄を見続けなければならないのかさえ忘れる程の永劫の時間。あまりの恐怖に失禁した事さえ忘れ、
ただ月を抱き続けた。
10
―――地獄の果てに
「お姉様、ご主人様は見つかったの!?」
どれだけの時が流れたのだろう? 数分間だった気もするし、数日間だったような気もする。
ただ、ひとつだけたしかなのはオニはもはや粗大ゴミを殴るのをやめていたということだけだった。
「うっぷ! ちょっと何この部屋? 物凄い血の匂いが……」
先ほどの少女が鼻を摘みながら、咽返るような室内へ入り……『ふぎゃっ!』と悲鳴をあげて転んだ。
「も~……なあに? 床に汚い粗大ゴミなんて置いて!!」
自分の足を引っ掛けた粗大ゴミをゲシッと蹴飛ばして立ち上がろうとして、服にこびりついた血を見てまた悲鳴をあげる。
「お姉様? この部屋もしかして全部血なの? いったい何が……えっ!?」
部屋を見回し、先程の粗大ゴミをもう一度見、それが何か見覚えのある事に気付き、少女は絶句した。
「血に染まってるけど……これご主人様の……服だ…………まさか?」
恐る恐るご主人様の服らしきものを触る。そしてゆっくりと手のひらでなぞりながら首があるほうへ手を滑らす。
「あ……ああ、ああああッ」
両手で顔らしきものを掴み、少女はガクガクと振るえた。
「い……や……いやだ…………いやーーーッ!! ご主人様ーーーッ!!!!!!」
洛陽に、たんぽぽの絶望の悲鳴が響いた。
次回 惨劇に挑め!!(ドン引きされた方は続けて16話を読む事をオススメします)
(あとがき)
ご愛読ありがとうございました(未完)
といってしまうくらいこれ死んでるだろ!? な感じですよね(汗)
いや酷いノリだけの回だったと。でも大丈夫! あのガンダム種だってコクピッドむき出しで自爆攻撃受けても、
MS大破して壊れたヘルメットが宇宙漂っててもパイロットは平気で生きてるんですから何の問題もありません!!
むしろこの程度で死ぬわけないジャンw 人殺すならビームサーベルで黒焦げにして灰するくらいしないとwな21世紀
ガンダムなのですから恋姫無双キャラがこの程度で死ぬわけがない(いやその理屈はおかしい)。
調子に乗りすぎてるので気をつけますといった矢先にコレなので流石に見限られるかとビクビクしているのですが
ノリの回は今回で最後のつもりで。あと2話で第一部が終了なので見限るのはもーちょっと待ってくださいお願いします。
あと孫堅あたりは諸説あると思うのでー。