オリキャラの『真名』設定糜竺=燕=つばめ糜家が裕福な商家だという史実から。手広く商いをしている家の娘に付けるなら、遠くへ飛びまた帰って来るような、そんな鳥にちなんだ名前はありと思いました。孫乾=礼劉備陣営の外交担当という印象が強いので。特に中国内部での「外交」には、礼法が重視されていました。こんな名前を親に付けられて、その道を選んだかな、というイメージです。… … … … … かつて「ゴットハンド」と呼ばれた、とある格闘家は弟子たちにこう教えたそうです。「力なき正義もむなしい。正義なき力もまたむなしい」この2句と「力こそ正義」とまで開き直った1句を比較してみる一方、曹操、劉備、呂布の主張と行動を比較してみると、その違いが見えるつもりになります。--------------------------------------------------------------------------------††恋姫無双演義††講釈の31『雄将無情』~正義なき力は正しいか~徐州の州都、彭城の城内。この城内でも有数の商家である糜家では、姉妹ゲンカになっていた。「分かったわ。この徐州の糜家と商売は貴女に継いでもらうわ」「姉さんは正気じゃない」――― ――― ――― 曹魏、蜀連合軍の陣営。蜀軍の天幕。「ここまで来たら、戦う以上、呂布さんに勝つ方法を考えなければなりません」チラリと月たちの方を見て続ける。「おそらく、呂布さん本人よりも、あの「汗血馬」が勝負の分かれ目でしょう」――― ――― ――― 「先輩…」「北郷。良く抜け出せたな」「この格好なら、分かりませんよ」「劉備の胸からだよ」「真面目な密会ですよ」曹魏軍の厩(うまや)だったりする。「桃香は、すやすやオヤスミです。それより、どうしても先輩に聞きたいことがあります」「俺は、今回の事について、何の「お告げ」もしてないぞ」そもそも華琳姉さんは、どこまで本気で俺を「天の御遣い」と信じているかな。「それで、この策謀ですか」流石は曹操ですね。いや、皮肉じゃないですよ。本当に。だけどいったい、何をしたんです。「見当はついているんだろう」口に出しては、俺にも言わんがな。おそらく、真相を知っているのは華琳姉さんと風だけだろう。「そうですか。やっぱり、俺たちは蜀に帰った方がいいみたいですね」「姉さんの弟としては、華琳姉さんを裏切れないがな」しかし、簡単には返してくれそうもないぞ。「この」時期の曹操が、どれだけ劉備たちに執着していたかは知っているだろう。… … … … … あまり、成果のある密会でもなかった。それに最後にもう1関門あった。桃香が目を覚まさないようにして、もぐり込まないと。――― ――― ――― 「重大事です」蕭関での防御を固めるのにいそがしい音々音のところに、陳登が駆け込んでいた。「裏切りです」糜竺と孫乾が蜀に寝返りました。糜竺の妹の糜芳が訴え出ましたから、間ちがいありません。ここまでは本当の事だった。この時、蜀軍では……糜竺(真名燕)と孫乾(礼)が、蜀軍の天幕に駆け込んでいた。「私の真名は燕です。徐州の糜家と商売は妹に継がせました」「私の真名は礼です。これより、我が忠誠と外交能力をささげます」・ ・ ・ ・ ・「危険なのは、糜竺がこの徐州の名士であるだけでなく、隊商を往復させ続けている有力商家だという事です」当然、徐州周辺の地理交通に精通しています。この蕭関を迂回して、小沛なり、彭城なりを直撃する抜け道に蜀軍を誘導しかねません。・ ・ ・ ・ ・その夜。小沛の恋のもとに蕭関の音々音からの伝令だと、陳登が駆け込んだ。「蕭関を迂回した敵軍が、この小沛に接近しつつあります。迎撃のご用意を」やはり、糜竺が抜け道を教えたのでしょう。それに、味方と誤認させるつもりなのか、旧「董卓」軍だった事は同じ、張遼軍が混じっています。ところが蕭関に駆け戻ると、音々音にはこう言った。「迂回した敵が、背後から奇襲していようとしています」やはり、糜竺が抜け道を教えたのでしょう。それに、味方と誤認させるつもりなのか、旧「董卓」軍だった事は同じ、張遼軍が混じっています。… … … … … 1夜明けて、悲惨極まる「同士討ち」の惨状の中で、恋と音々音は唖然としていた。「どういう事」「裏切りは陳登もだったのです」その時、蕭関の方向から喚(と)きの声があがった。音々音と守備兵が留守にしていた関城を突破したのだ。やっと「同士討ち」を止めたばかりの、呂布軍には迎撃する気力が無かった。その場どころか、小沛にも踏み止まれずに後退していく。「これは恋どのでも、立て直しようがないです。早く彭城に戻って、守りを固めるしかないです」・ ・ ・ ・ ・だが、体勢を立て直しつつ後退する呂布軍を曹魏軍が追い抜き、彭城の留守を預(あず)かっていた陳老人が、城門を開いて迎え入れてしまった。――― ――― ――― 徐州彭城の城内「糜家商店」。桃香と一刀は、華琳に公邸をゆずって、ここを宿舎にしていた。「姉の道楽には、ここまでしか付き合えません」(まあ、糜芳ならこんなものかな。蜀まで来てもらう必要も無いし)… … … … … 結局、話題は今日の戦いの事になった。恋の事なので、月や詠も加わっていた。「それにしても、裏切りだらけだったな。いくら仕掛けたのが曹操とはいえ」「ボクには分かるような気がする」詠は久しぶりに、軍師の顔になっていた。多分、虎牢関から後、恋が心を開いていたのは、人間では音々音だけだったんじゃないかな。主君に仕える武将なら、その主君がたとえば月なら、それでも良かっただろうけど、自分が主君になった時には、何かが足りなかったんだ。それなのに、恋は強過ぎるから、あるところまでは通用してしまう。でも、その後は強過ぎるだけでは、かえって危険なんだ。それを補うには、音々音も軍師として未熟だったし。「…強いだけなのに、強過ぎた…」(「正史」の「張飛」にも、そんなところがあった感じだったな。まあ、鈴々なら大丈夫だろう)――― ――― ――― 州牧公邸、今日からの主が昨日までの主の行方を検討していた。「おそらく、ここね」現在の彭城とは、川を挟(はさ)んだ古城。――― ――― ――― 「気が進まへんな」彭城の城内にいた、犬の「セキト」以下の恋の「友だち」は、霞が保護していた。その霞が、不本意ながらも華琳の命令を実行していた。… … … … … 霞たちが目前にしているのは、呂布軍が逃げ込んだ古城。そこに向かって、恋の「友だち」が呼びかけていた。本能のままに城内にいる「仲間」を感じ取って。流石に、恋本人は音々音が引き止めていた。だが、恋が目を離したとき「赤兎馬」が、世話役を振り切って飛び出してしまった。しかし、曹魏軍の目前まで来ると、流石に「敵」だと気付いたか引き返しかける。その戸惑(とまど)うように、一瞬だけ停止した「赤兎馬」に、飛び付いて手綱を捕らえた物がいた。他の者だったら、蹴り殺されていたかもしれない。しかし、蹴れないよう身を捌(さば)きながら説得を続ける。その「言葉」が届いたか。恋以外に初めて取る態度を見せて手綱をゆだねた。「見事だったわ」華琳のほめ言葉には無言で礼を返した。「これが呂布さんには大きな打撃になるでしょう」「そんな気は無かった。ただ、突然、あの馬があわれになった」自軍の軍師にすら、愛紗はそう答えた。――― ――― ――― 「恋はさびしい。「赤兎」まで行った」幼子そのままにフテ寝してしまったが、しかし、それが致命的になった。この古城に逃げ込んだ者の中にまで、華琳と風の仕掛けた用間策が届いていた。… … … … … まるで、本物の虎でも捕らえた様に、雁字搦(がんじがら)めにいましめられた恋。そして、観念した様な態度の音々音。「正史」の「呂布」の末路を知る一刀や曹仲徳ですら、ため息をつきたくなった。「さて、どうするかしら」(…「正史」みたいに、董卓や劉備を裏切っているわけじゃないしな…)結局、華琳は、恋と音々音にも「メイド服」を着せた。「しばらく、こうして様子見ね。虎の幼子は猫に育つかしら」… … … … … 「あの馬は欲しくないの?雲長」愛紗が取り押さえた赤兎馬は、曹魏軍が管理していた。主力軍の権限で。「我が主君からのいただき物であれば」愛紗の返答は明快だった。「どうかな?桃香」一刀は「その後」の赤兎馬を知っているから、かまわない気だったが。しかし、桃香が答える前に、曹魏軍の中から「ブーイング」が出た。「誤解しないでいただきたい」自分が名馬を欲しいわけでありません。しかし、関羽は華琳様の部下では無い。欲しければ、あの時に自分のものにしておれば良かったのです……華琳は微笑と苦笑をしていた。この時は。・ ・ ・ ・ ・実のところ、1頭の馬どころではなかった。またしても蜀軍は成都に帰りそこね、許昌に連れて行かれてしまった。--------------------------------------------------------------------------------まだしばらく、許昌の都が舞台になるようです。それでは続きは次回の講釈で。次回は講釈の32『白馬有情』~英雄を論(ろん)じて肴(さかな)にする~の予定です。