あらかじめ、告白します。今回は『銀河英雄伝説』のパクリがあります。--------------------------------------------------------------------------------††恋姫無双演義††講釈の17『益州侵掠(その3)』~七たびとらえて七たびはなつ~その一言、すなわち「七たびとらえて七たびはなつ」それだけで「伏竜鳳雛」には理解できたらしい。そう、南蛮王、孟獲をたとえ殺してたところで統制すらとれなくなった“南蛮”各部族がバラバラに略奪しに来るようになるだけ。“南蛮”の全員を皆殺しにするなど不可能な以上、かえって面倒になるだけ。それよりも、孟獲の統制の下で侵入してくるのなら、その王ただ1人に「漢」への侵入をあきらめさせる方が、より完全な解決になるのだ。少なくとも、南蛮に隣り合う「蜀」の国をこれからも治めていくつもりならば。そのためには、孟獲には軍事的に限らず、心理的にも「参った」と思い知らせるべきであり、それまでは孟獲を殺すわけにも行かない。「(よし、先に言えたぞ)」孔明にこの戦略を思い付かせた切欠は「演義」だと、馬謖の進言だった。このため、次の「北伐」でも期待した結果が「泣いて馬謖を斬る」になってしまった。今回も胡蝶は「妹」を連れて来ていたので、余分な事を言わせない方が無難だったかも知れなかった。・ ・ ・ ・ ・山また山脈の雲南でも、そこは大陸。山と山の間にはそれなりの平野があり、そこに劉備軍と南蛮軍が布陣していた。「にゃ?こっちの半分くらいだけにゃのにゃ。今回は今まで以上に楽勝にゃのにゃ」ただし、敵はもう2軍いたのだ。南から北へ向かう南蛮軍と、北から向かい合う劉備軍。その東から接近する軍の武将は星。軍師は胡蝶。さらに、西から接近する軍の武将は桔梗。軍師は狭霧。「儂(わし)らをまるで荊州か、いっそ幽州から連れて来た者みたいに使(つこ)うてくれるのう」「そんな事も考えていらっしゃらないでしょう。あの方たちは」ただ「伏竜鳳雛」は、厳将軍が長兵(射程の長い兵器)に熟練しているとは考えたでしょうが。その通り、桔梗たちには虎牢関以来、自慢の連弩を預(あず)けていたのだ。… … … … … いかにも蛮兵らしい勢いと、数を頼んで押し寄せる南蛮軍を、愛紗と鈴々が陣頭に立ち、朱里と雛里が白羽扇を振って押しとどめる。「しゅぶといにゃ!」… … … … … 「1点集中…狙え・・・撃て―!」桔梗は自ら豪天砲を放つと同時に、連弩を一斉につるべ撃ちさせた。狭霧の戦術眼と桔梗の熟練によって、最大効率で統制された1点集中射撃が打ち込まれた。何本かの矢に襲(おそ)われた1人が、その衝撃で跳ね飛ばされて、周囲の何人かを巻き込む。あたかも鏨(たがね)を打ち込まれた石が砕けるように、反対側へ陣形を崩した。その方向には、星と胡蝶の率いる騎兵が待ち構えていた。「ここは突撃するしかありません」「聡明なる「白眉」でもすら、そうしかないか。では、全軍に命令…」第1命令…突撃!第2命令・・・突撃!!第3命令!ひたすらただ突撃!!!…愛紗や鈴々に比較すれば、地道で着実な武将と思われていたが、これ以降の星は「全身すなわち肝っ玉」と呼ばれるようになる。ドミノ倒しのように崩れかかる、その出鼻を思いっ切り叩かれて、もはや統制を取って戦う兵士ではなく、逃げ惑う群集となった南蛮兵たちは、唯一、敵のいない方向、すなわち最初の布陣での後方へ逃げ散った。しかし、これで南蛮王孟獲が負けを認めたとも思えない。孟獲自らが負けを認めるまで、七度でも追い払わなければならなかった。・ ・ ・ ・ ・「あれって?前回と逆」そうだった。前面には、ほぼ劉備軍の半分ほどの南蛮軍。右手からは、長弓を構えた弓兵が接近しつつあり、反対側の左手からは、南蛮軍らしく、戦象をそろえた突撃隊が、好機を窺(うかが)っている。「前回、こちらにやられた仕返しをそっくりするつもりでしょう。とどめをさす役を自分でするつもりなのも」「ただし、この陣形は事前に見破られると、各個撃破の好機を与える危険があります」「そういう訳で、全軍、全速力進発。中央正面の敵から各個撃破します」… … … … … 元々こちらが半分程度でも持ち堪(こた)えられるくらい、軍を預(あず)かる武将や軍師に差があった。向こうの方が半分程度で、しかも統率する王がいない。他の軍との連携もまだ遠い。これで破るのは容易だった。中央正面の南蛮軍を撃破すると、そのまま敵の「包囲陣形」の外に飛び出した。そのまま、戦場をめぐると、弓兵隊の後ろから襲い掛かる元々弓兵は接近戦、特に正面以外からの攻撃にもろい。第2の敵も苦戦することなく撃破して、そのまま戦場の中央に飛び出すと、第3の敵と正面から向かい合った。「こんにゃはじゅではないのにゃ!! 」それでも、南蛮王孟獲は自軍の陣頭に立ち、戦象に大地をゆらがせて劉備軍と正面衝突した。そして、見事に中央を突破した。いや、突破「させた」のだ。そのまま劉備軍は、孟獲軍の左右をすれちがう様に後方へ飛び出すと、勢いのついた象を止められない間に、方向転換を済ませ、今度は後方から追撃する形になる。「にゃにゃ!?!向かいにゃおって、反撃しゅるのにゃ!!」だが、勢いのついた象は急には止まれない。まして、方向転換となれば。手間取っている間に、連弩の狙いを付けて象が横腹を向けたところに打ち込めば、象使いを振り落とし味方の歩兵を踏み潰して、勝手々々に逃げていく。流石に、王である孟獲を乗せていたのは、一番強く一番賢い象だったが、こうなってしまっては、当人が逃げる役にしか立たなかった。・ ・ ・ ・ ・その後も、戦術を変え布陣を変え、南蛮王孟獲は劉備軍と戦い続けたが、その度ごとに、裏の裏をかかれるか先手を取られるかして、逃走する繰り返しだった。――― ――― ――― 曹魏軍の陣営。物語は、沛国からの急報を受けて軍議を開いた時までさかのぼる。・ ・ ・ ・ ・「いったい仲徳のやつ、どうなったんだ?」急報の内容が内容のため、軍議の最初から殺気だっていたうえ、華琳の弟で、したがって当事者でもあるはずの曹仲徳の、思いもかけぬ態度と発言で、軍議の行方は暴走するかと思われた。流石に華琳は、激昂しつつも暴走はまずいと判断した。そして、姉弟2人だけの話しにするため、一旦、私室に戻っていた。・ ・ ・ ・ ・「さあ、なんといって弁明するつもりなの」「……その前に、姉さん。何を言っても、最後まで俺の話を聞いてくれるか」「そのために、2人だけになったんじゃないの」「ありがとう。それと、2人だけにしてくれた事も」「何よ」こういうときの華琳は姉らしい。元々愛憎とも感情の豊かな、詩人でもある彼女なのだ。「姉さん。俺は…あの北郷一刀と同じなんだ」「?!」流石に華琳でも、想像のななめ上を飛び去っていた。「確かに俺は、華琳姉さんの弟に生まれ、曹孟徳の弟として育ってきた、曹仲徳に違いないよ」でも、ものごころついた時から、俺の中には別な記憶があるんだ。あの北郷が落ちてきた、そう、劉備たちが言うところの「天の国」で生きていた、もう1人の俺の記憶が。そうだよね。怪力乱神を語らず、淫祠邪教の類(たぐい)は容赦なく取り締まってきたのが、曹孟徳だからね。だから、今までは俺の頭がおかしくなったとでも思われると、そう考えて黙っていたんだ。でも、今回はそうはいかない。ここで「天のお告げ」を使ってでも、姉さんを止めないと。「なぜなら、俺が「天の国」で知った限りだと、これから曹操は、その覇道を汚すほどの大失敗をするからなんだ」「……。…それで…この「天の御遣い」は何の「お告げ」を下さるのかしら」「親の仇を討ちたくなるのは、当然の感情だよ。今の俺にも親だしね」でも、何の罪も無い徐州の住民を大虐殺するのは、決して正当化できない。劉備や孔明は、一生、許さない。(「正史」の孔明は、子供のとき、この虐殺から生き残った難民の出身だったな)曹操がどんな大義名分を唱えようが、その「正義」を信じない。それほど、曹操の「正義」を貶(おとし)める結果になるんだ。しかも、結果として、仇は討てない。留守にした勢力圏を、例えば旧「董卓」壊滅の後行方不明になっていた、あの呂布とかに乗っ取られかけて、徐州州牧、陶謙を殺す事すらできずに、力の無い罪も無い住民を虐殺した汚名だけをかぶって、スゴスゴ引き揚げる羽目(はめ)になる。おまけに俺の知っている話だと、この事件には陶謙は関与していなかったんだ……「…言いたい事は聞いたわ…仲徳」「華琳姉さん?」「あなたが「天の御遣い」かどうかは、またの話しにするわ」そんな事より、そんなとんでもない話をしてまで、私を冷静にしようとした事は、認めてあげる。確かにまだ、何もかも不明だったわね。攻め込んできたのが本当に徐州軍なのか。なにより、沛国の一族がどうなったのかも。殺されたかどうか、まだわからない親の仇討で、冷静さを失うより先にする事があったわね…・ ・ ・ ・ ・「何も無かったわ」軍議の場に姉弟が戻ってきての、第1声がこれだった。「仲徳は私を冷静にさせようとしただけよ。私が先に逆上したから、自分が逆上できなかっただけ」一同はそれで納得するしかなかった。なにせ、緊急事態なのである。「まだ、沛国の曹夏候一族が殺されたという報告までは来ていないわ。ならば、直にする事があるはずよ」霞、貴女たちが連れて来た、涼州騎兵の快速を役に立ててもらうわ。至急、快速部隊を選抜して。春蘭、秋蘭、貴女たちと仲徳は、この快速部隊と一緒に沛国に急行して。貴女たちの役目は、快速部隊の道案内と、一族に対しての味方だという証人。だから、貴女たち自身の兵は、足手まといは連れていかないよう、今回だけは最小限。風、確かにこの徐州軍らしきものは、正体も目的もはっきりしていないわ。用間を使って、調べて。桂花、稟、この緊急事態のすきをうかがう何者かがでるかもしれないから。例えば、あの呂布とかね。油断や隙がないように目を配って。「とにかく、仇討は殺されてからよ。その前に救う事を急ぎましょう」――― ――― ――― 益州永昌郡。すでに益州も南端の“南蛮”との“国境”の郡。南蛮王孟獲の軍は、すでに劉備軍から6度敗走し、ここまで追い返されていた。「次の戦いは逃がしません。そのために「八陣図」を使います」「そうだな。次が7度目だったな」--------------------------------------------------------------------------------野神奈々さんの声で「第3命令 ひたすらただ突撃」は書いていても楽しかったです。それでは続きは次回の講釈で。次回は講釈の18『益州侵掠(その4)』~百戦百勝は善の善ならず~の予定です。