あらためての釈明:大原則として、「恋姫(無印)」「真・恋姫」の公式キャラは、「原作」優先でキャラ設定をしてきましたが、遺憾ながら「漢女ルート」関連キャラに限り、あくまで作者個人の趣味嗜好に対して不適合が発生しました。そのため「漢女」キャラ相当のみ、この「外史」においては、オリキャラに含まれる結果となってしまいました。この点において、これらのキャラのファンには不快を生じる可能性があり、ここであらためてお詫びいたします。また今回、そうしたキャラの中からの登場を楽しみにしていたかもしれない読者には、さらにお詫びいたします。--------------------------------------------------------------------------------††恋姫無双演義††講釈の11『帝都落月』~洛陽は燃えているか~(前編)「天の国」では見覚えのある石油とかの「備蓄基地」そのままの光景。立ち並ぶ、半地下式の「穀物タンク」が、中華帝国のスケールというものを、視覚から納得させる光景。北郷一刀にしても、敖倉に次いで、2度目に目にする光景だが、これが1ヶ所ではない事に、あらためて思い知る思いだった。中華帝国、その巨大さを。その巨大な帝国が迷走し、その帝都にいまや攻め上る、いや、すでに帝都を包囲してしまっているのだ。… … … … … 「間に合ったか。洛陽をまだ燃やされていなかった」帝都洛陽の城壁沿いに、その周辺を完全に包囲して布陣した連合軍。一方、劉備玄徳の「義軍」は、そこからやや離れて、帝都近郊の「食糧備蓄基地」を占拠し、同時に連合軍への兵糧支給を担当していた。ここに至る、2つの関門で「無名の私軍にあるまじき」手柄をたててしまったがための、いわば左遷であることは明らかだ。しかし、連合軍のほとんどに、そこまで記憶に残る功績を上げたのだから、後は戦後、その実績を上手く利用して立ち回るだけだろう。というか「伏竜鳳雛」が上手くやるだろう。というわけで、現在はおとなしく、後方任務についていたつもりだった。… … … … … 聞くところによると、この「基地」を占領していた董卓軍に、皇帝の方から飛び込んでしまったと言う。まさか、当の本人たちが、同じヘマをする筈もない。そう思っているから、その事情を知っている袁紹や曹操が、ここを守らせているのだろう。それでも例の「かくれ道」は一応、抜け道に使われるかもしれないから、一応、警備はしていた。その警備中に、ひょっこりと現れたのである、ソイツが。「何者」見た目で侮(あなど)られないため、愛紗もとい関羽が尋問している。無論、他の同志たちも立ち会っている。「へい。俺は済成。これでも涼州軍では、それなりに兵隊の間で意見をまとめられる野郎です」(胡散臭(うさんくさ)―っ。成(な)り済(す)ますなんて名乗っている時点で)一刀の印象では「演義」で知っている“董卓”の強欲貪婪(ごうよくどんらん)をそのままにして、ある意味での豪傑ぶりだけを「羊の皮をかぶった狼」にしたらこんなんじゃないかな、とも見える。さらにソイツは、これが暗器(かくし武器)だったら何人殺せるか、というほどの金銀財宝のたぐいを取り出して見せた。「これで信用して貰えるでしょう。これで足りなければ、またいくらでも」無論、この面々では、信頼度は下がっている。だからといって、流石にそれをこの場であからさまにするほど、例えば「はわあわ」とかはお人好しではない。「それで、何を言いたい」「謀反人、董卓の首を持ってくるから、その手柄を認めて欲しいのでさ」「・・・」「将軍方にも、悪い話じゃないでしょう」旗揚げした以上は手柄を立てたいでしょうが。だのに太守だの、州牧だのの官位がないばかりに、こんな兵糧の番人を押し付けられて。敖倉の段階だったら微妙に当っていた。だから現時点では微妙に外(はず)していた。・ ・ ・ ・ ・悪い話じゃないかもしれない。が、この一党の面々には好みじゃないし、それに連合軍にバレたときに、面倒そうだ。そこで、曹操の陣営に、例の金銀を届け出た。戦場や政略で敵に回したら、油断も隙(すき)もないが、こういう場合には、袁紹や袁術より、信頼できる。――― ――― ――― 華琳は、あっさり、受け取った金銀を、空いていた「長持ち」に放り込んで、封印をした。「出来れば、本来の持ち主に返したいのですが」「まあ、貴女ならそう言いそうね。それで、申し込み自体はどうするつもり」「まだ、はっきり決めていないのですけど…」そもそも、一刀には「あの」董卓が、あっさり殺されるとも思えなかった。「正史」の董卓といえば、個人的な武勇でも有名だ。暗殺するにも、あの呂布を裏切らせなければ、殺せる相手がいなかったぐらいだ。…確かに「この」世界では、劉備たちが桃香たちだったり、曹操が華琳だったりしたが、それでも、たとえ女の子でも、確かに劉備たちだし、曹操だというキャラだったし、“董卓”だって、そんなにキャラが壊れちゃいないだろう???「まあ、すぐまた来るわよ。お手並み拝見、少し楽しみね」――― ――― ――― 「本当に、董卓の首を持ってくるのか?」「信用してもらえませんかね?これでも」前回より多い金銀の小山。ここで、どう答えるかは、あらかじめ相談していた。「首を尋問しても、董卓だと答えはしないだろう」「これは、厳(きび)しいおっしゃり方で」「尋問できるように、生け捕りにして来い」その“董卓”が本人だと、確認出来たら、連合軍にも、済成とか言ったな、そちらの方の条件を取り次ごうじゃないか。(最初から殺すつもりでも、呂布でもなければ殺せない「あの」董卓だ)生け捕りなんか不可能だろう。これで、この胡散臭い話も、まともになるだろうさ。・ ・ ・ ・ ・また、金銀を届け出ると、「この済成とかいう奴は、欲深ね」自分が欲深だから、他人も「コレ」で動く。動かなければ、もっと欲しがっているとしか、解釈できないのよ。・ ・ ・ ・ ・数日後、済成は本当に連れて来た。… … … … … 済成が連れて来た、2人の少女。そこにいた全員が「お人形さんみたい」だと思った、儚(はかな)げな少女。いま1人は、それをかばう様にして、一同をにらみ付けている。済成は、この2人が、董卓と軍師の賈駆だというのだが、「これじゃ“壊れキャラ”も限界があるじゃないか」とにかく「まずは本物だったら。後の話はそれから」と言って帰らせた。… … … … … 「あんたたち、いったい月をどうするつもり」「どうするって…(確か俺の読んだ「三国志」だと)」“董卓”の死骸(しがい)は、帝都の市場にさらされただけではなく、人体ろうそく立てにされ、灯をともさられた。そして数日間、その灯は燃え続け、これを見て泣くものは死罪とされたという。…って、どこの「鬼畜系18禁もの」だよ。この子じゃあ…案の定、賈駆(?)は“鬼畜”“変態”“ロリコン”などと翻訳できそうな、罵詈雑言(ばりぞうごん)の類(たぐい)を、肺活量の限り喚(わめき)き騒いだ。同志たちも、ジト目である。「だ、だからさあ、これは“魔王董卓”の末路であって・・・」この子が“魔王”に見えるかい。五者五様、しぶしぶ納得したみたいだったが、その途端、桃香が別な事に気が付いたみたいだった。「すみません。もし本当に貴女が董卓さんだったら、私たちは大変な思い違いをしたかも」突然、平謝りし始めた桃香を見て、いぶかしげにしていたが、謝る内容から、気が付いた。華雄を挑発するために「魔王董卓の十の罪」を数え上げた相手だという事に。その途端、怒るより先に「ま、まさか。月の事をそんな風に思っていたから、さっきはあんな事を」などと、月を抱き締めて震え出した。「いや、だから、その子は“魔王”じゃないんだろう。その子が董卓かどうかより前に」そこに曹姉弟が現れた。捕虜にしていた華雄や 張遼(霞)を引き連れて。・ ・ ・ ・ ・霞たちは、必死になって否定した。「ちゃうでえ。この子たちは「月」に「詠」っちゅう、ただの侍女や」そもそも、あの成り済ましものは、兵を扇動して、略奪して回っていたような欲深で、適当にごまかすつもりだ!だが、必死になり過ぎだ。その態度が、語るに落ちている。しかし、華琳すら、言葉に出して突っ込みはしなかった。当然、一刀たちにも、突っ込むつもりはない。結局、華琳が言い出した事は「済成とやらがまた来たら、私の陣営に連れて来なさい」だけだった。――― ――― ――― 「いったい、どうなっているのだ―」鈴々ならずとも、説明が欲しいところだろう。つまりはこういう事だ。まず、この月(真名らしい)という少女が、本当に董卓本人だろうが、ただの侍女だろうが、連合軍が倒すべき“魔王”は他にいる筈だった。「もしかして、アイツが本当の魔王だったりするのか」まるきり、直感だろうが「伏竜鳳雛」でも、そう疑ったりしている。「それに、私たちの目的は、帝都の民衆を解放する事よ。まだ、それは達成できていないわ」「つまり、まだやっつけないといけない相手が、あの城の中にいるのか」その通りである。しかも、帝都洛陽を燃やされないようして、倒さないとならない。――― ――― ――― 「姉さん、どうするの」「あの子がたとえ、董卓本人であっても、もう問題は別だわ」あの帝都の中にいる「董卓軍」を、いま手中にしていて、おそらく私たちが主張してきた“魔王”の所業を、実際にやってのけた奴を、引きずりだして倒す。そして、奴らが握ってきた、最大の「宝」を……うふふ。そのために策を仕掛ける隙を、向こうが見せてきた事の方が、重大なのよ。「(姉さんは、確かに曹操なんだから、本当に策があるんだろうけど)」まいったな、あの“壊れキャラ”の後遺症で考えがまとまらない。やれやれ…――― ――― ――― 曹操軍の陣営。劉備軍のときよりも大量の財宝を持参した、済成との交渉で、華琳は洛陽からの退去を承諾させた。ただし、洛陽に火をかけるとか、民衆を拉致するとかの行為に出た場合は、連合軍が総攻撃するとの、条件を付けて。ここで、ある条件を“スルー”していたことに、はたして何人が気付いていたか。承認を求められた連合軍の諸侯からも、その点を言葉に出して突っ込んだ者はいなかった。「長持ち」の封印を確かめた者はいたが。--------------------------------------------------------------------------------どうも、ここまでで、いつもの1話分の分量になってしまいましたが、今回分として妄想した内容は、まだ、後半があります。そのため、前後編にするしかなくなりました。そういうわけで、続きは次回の講釈で。次回は講釈の12『帝都落月』~洛陽は燃えているか~(後編)の予定です。