放浪バスに乗るのはコレが二度目、らしい。蛇曰く。
詳しい事は良く解らないのだけど、僕が拾われたのは錆付いて機能停止寸前だった放浪バスの中かららしい。
その時僕は一歳未満の赤ん坊だった。
そんな赤ん坊が、運良く一人で生き残っていたのだから、普通怪しいものだと疑って掛かるべきなんだろうけど、まぁ、武芸者なんだからそういう事もあるかとか、適当にその辺は見過ごされたらしい。
なんでも、生存本能で無意識に頸息を整えて仮死状態だったとか何とか。
・・・実際は、取り付いた蛇君が助けてくれたらしいんですがねー。
そんなこんなで、人生二度目の放浪バス。一般人の方にしてみると狭いわ臭いわで評判最悪なんですが、いやはや、百聞は一見にしかずと言うか。
普段粗食食ってるとたまにまともなものを食べるだけでご馳走に感じるといった方が正しいか。
遮断スーツの密閉感、閉塞感に比べれば極楽浄土です、コレ。
嫌な事思い出したけど、ストレスとかプレッシャーに負けて、戦闘中に遮断スーツ脱ぎだしたヤツとかいたっけ。アレ怖かったなぁ。そいつの皮膚が一気に破けて血が噴出して、そいつさらにパニックになるし。
だからもう、実戦経験者から言わせて貰えば放浪バスサイコーです。
まず広い。
どのくらい広いって、もうコレ、バスって言うかちょっとしたマンション。
マンションに足が着いた、早い話が小型のレギオス。
レギオスをそのまま縮小したものだから、当然空気清浄機も小型化されてるわけで、その辺で換気が余り宜しくないのが評判の悪いところなんだけど、これ以上を望むのは贅沢ってものでしょう。
そんな感じで一週間、割りと快適に過ごせました。
何より、グレンダンで『お祭り』があったお陰で、客席が二割程度しか埋まってなかったのも幸運でした。余り話す機会も無かったけど、どうやら僕と同じく留学目的の人が多かった。・・・そういう時期だもんね。
恐れていた汚染獣の襲撃も無く、無事にバスは中継地点の交通都市ヨルテムへ到着した。
ここで一週間ほど逗留して、その後ツェルニ行きのバスに乗り換えるらしい。
しかし、全ての放浪バスはヨルテムから旅立ちヨルテムに帰るとは言うけど、どういう仕組みなんだろうね。運転手さんに話を聞いてみても、実際に進路を決めているのはバス自身とか言ってたしねぇ。
冷静に考えれば変な話だ。蛇君曰く、そういうレベルではなくこの世界は狂ってるとか言ってるけど。気にしてもしょうがないってことなんだろうな、きっと。
・・・・・ヨルテムすげぇ。
放浪バスの停留所がある区画で、ちょっとした祭り、なるものがやっていたんですけど、その派手さがハンパ無いです。
グレンダンの年に一度の祭りなんか目じゃない盛況ぶり。
スモークとか電飾とか七色レーザーとか、どんだけ金余ってるんだこの都市。
伊達に物流のメッカじゃねぇな。
お陰で物価高で宿代もそれなりに掛かるのが困りモノです。
しっかし、コレでちょっとした、か。
通りを埋め尽くさんとばかりに露店が並び、広場ではなにやら舞台を組んでイベントなんかを開いている。
聴けば、割と定期的に行われている行事らしいとのことだ。
むしろ逆に考えると、どんだけグレンダンが貧乏だったか解るというものである。いやはや、家出して正解だったなコレ。
なんかさぁ、このまま学校とか行かないで、ここで傭兵まがいの事始めた方が幸せに生きられるんじゃないかって気がしてきた。
ちょっと昔のニュースのアーカイブとか調べてみたんだけど、やっぱり汚染獣の出現頻度がグレンダンに比べて断然少ないんだよね。
数年に一度って、マジか。都市戦の回数の方が多いんじゃないだろうか。
しかも汚染獣と言ってもデカブツはあんまりこないんだよ。
いいなぁ、テキトーに芋虫みたいな幼生体を追っ払いながら、でかい屋敷に美人のお嫁さんとか。
例えば、あの即席舞台で開かれてるミスコンの出場者の女の子とか、最高じゃない?
いかにも『友達に無理やり申し込まれました~』みたいなオドオドした感じで、マニアックなスク水から胸がはちきれそうである。
ロリ巨乳とか。何か泣きそうな顔が保護欲と言うか嗜虐性をそそります。
とはいえ、本気でここに居座るわけにも行かないしなぁ。
追っ手が来る確立は限りなく低いけど、無いわけではないし、こんな近場(自立移動都市に近場も何も無いのだが)に居を構えてはわざわざ連れ戻してくださいと言っているようなものだ。
それに、学園都市を卒業すればそれが身分証明にもなる。
しかもアレだ。ここに来て気付いたんだけど、武芸者だからって武芸者として生きなくても良いのね!
びっくりしたよ、武芸者の人が普通に店開いたりしてるの。
それが世の中の普通らしい。才能のある人間以外は別段戦闘に狩りだされる訳ではないのだ。そりゃ、数年に一度ペースでしか汚染獣来ないんじゃねぇ。一応戦時召集はあるらしいけど、それも一応ってレベルだし。
都市戦のときだって、容赦なく質量弾ぶっ放すんだってさ。何処にそんな予算が眠ってるのさ?
とにかく、こうして初めて外の都市を見ることが出来たお陰で、今後の方針は決定した。
申し込んじゃった以上仕方が無いから学校は武芸科を卒業する。
選択授業の時になるべく一般教養を取って知識をつけて、卒業してからはどこかの都市にでも移民するかなぁ。武芸者の移民ってのは歓迎されやすいらしいしね。
テキトーに戦いながら、隙を見て何か別のことを・・・まぁ、グレンダンでなければそのまま武芸者やってる方が生き易いかもしれないけど。
とにかく、まずは学園都市だ。同年代の死なない友達をたくさん作る事を目指そう。
そんな感じで、僕のヨルテムでの滞在は幕を閉じた。
再び放浪バスに乗り込み(今度は満席だった)、進路は学園都市ツェルニへ。
※あれ?入学からバイト決定とかまでの話の筈だったのに。
設定とかはホント、思いつくままに書いてますので、実際のものとは随分違うんじゃないですかねー。
因みに蛇君は、廃貴族にあるまじきやる気の無さを発揮しているため、他の連中と違って狂化による出力補正が掛かって無いと言う設定。ニーナ隊長とかについてるやつに比べたら当社比七割くらいのパワーなんでない?