あたしは今ものすごく後悔している。やっぱ、無理矢理にでもスラム探険なんざ止めるべきだった。襤褸を着た、如何にも流民といった感じの男たち五人に路地で挟まれながら、あたしは心の中で毒づいた。内二人はそれぞれ鉈と中華料理で使うような分厚い包丁だった。残りの三人はただの木の棒である。
あたしらを囲んでいる連中は皆痩せ細り、獣のような笑みを浮かべている。尋常な状態ではないのは一目で分る。飢え苦しんでいるところに来た、大金になるかもしれない相手だ。色々とテンパっているのかも知れない。
「貴方たち!一体誰にぶきをむけているのか、わかっているのですか!」
怯えている斗詩さんと猪々子さんを背に僅かに体を震わせながらも大人五人に言い放つ麗羽様。子供と思えないほど立派ではあるが、あたしからすればこいつらを刺激するようなことはしてほしくなかった。父上の細作衆が辿り着ければ、訓練もされていない、それも飢えた人間などどうとでもなるだろう。だが、彼らを怒らせた結果誰かが怪我をすれば取り返しが付かない。
「うるせぇ!餓鬼がガタガタ抜かしてんじゃねぇ!」
鉈を持った、この連中のリーダー格らしい男が怒鳴る。他の奴らもそうだが、こちらに向ける視線に怒りがある。大方、俺たちがこんなに苦しんでいるのにこの金持ち共が!見たいなものだろう。あたしも前世で、親のおかげで遊んでいるボンボンを見て世の理不尽を感じたりしたこともあったが、この人たちは命の危険とかそういうのまで付いてくるから、そこら辺の感情は当時のあたしの比じゃない。
もっとも、あたしらに向けられても困るんだけどね、そういう感情。そういうのは経験して見ないと、本当の意味で理解できる訳がないものだと思うから。
尚も連中に何かを言おうとする麗羽様の口を押さえて無理矢理黙らせる。
「ちょっ、何を!?」
「黙ってください麗羽様。斗詩さんたちが怪我するのは嫌でしょう?」
事態が事態なので、声が荒くなってしまう。麗羽様は一瞬声を詰まらせるが、すぐに納得してくれたのか大人しく頷いてくれた。
麗羽様を落ち着かせてから、あたしは一歩前に進み出る。兎に角時間を稼ぎたい。そうすれば何とかなると信じて。
「あの、もしお金が欲しいのでしたらこれらで何とかしていただけないでしょうか」
あたしは幾つか身に付けていた装飾品を外して連中のリーダー格の前に差し出す。麗羽様から頂いたもので心苦しいが仕方ない。
「これでしばらくは食べていけると思うんです。これで手を引いて貰えないでしょうか」
差し出したのは玉や瑪瑙などを使ったもので、売ればそれなりの額になると思う。これで勘弁してくれりゃそれでもいいんだがね。
「て、てめぇ!馬鹿にしてんのか!」
鉈を持った男はそう言いながらもにやけ顔であたしの手から装飾品をひったくる。それらを手に、まじまじと眺めている。結構隙だらけな感じだがこれで逃げ出そうとは思わない。あたし一人ならともかく、子供の足ではすぐ捕まってしまうだろう。
だがこの時あたしは一つだけ、あたしらへの追い風の兆候を見つけた。前にいる三人の更に後ろの十字路で鈍く輝く、クナイの柄の部分をなくしたような形で赤い布を巻き付けた金属片。ヒョウ(金辺に票)と呼ばれる、日本の手裏剣に相当する暗器が何気なく落ちていたのだ。そう、余りにも不自然なものが然も当然のように風景に混じっていたのだ。
「ちょっと、黒羽さん!それはぶっ・・・」
それはそうと、またしても怒り出した麗羽様の口をふさぐ。怒る理由は分るつもりだ。友人への贈り物が、その友人の手で物取りに渡されたのだから。
「後でいくらでも叱られますから。今は押さえて、あたしを信じてください」
耳元で小声で伝える。怒りが収まらないのだろう、大人しくなってくれはしたがあたしに睨むかのような視線を送ってくる。
その後ろで震えている二人もこちらに不安げな視線を向けてくる。笑顔を作って二人に向かって頷く。あたしに任せな、と。思い上がりかもしれないが、中身は大人であるあたしが何とかするべきと思っている。それになんと言うか、アレだ。コッチで、黒羽として初めての「友達」を存外に気に入っているらしい。
問題は挟まれている、ということだ。前に三人、後ろに二人。多少の距離があればどうにかできるんだが。
いざという時は殺すことも考えなけりゃいけないか。その場合は人を実際に殺したことのないあたし自身が不安要素になるか。
兎に角こいつらから離れなきゃだよな。
「おい!餓鬼共!」
いつの間にか渡したものを眺めるのを止めていたらしい、鉈を持った男がこっちに向けて怒鳴る。
「怪我したくなかったら大人しく俺たちの言うことを聞きな」
なんつ~か「ゲヘヘへ・・・」といった感じの、如何にも悪そうな笑いをしながら連中はあたしらににじり寄って来る。ここは大人しく捕まった方が良いかな。
「・・・分りました。麗羽様も皆も大人しく・・・」
無駄に抵抗して、怪我とかしないように大人しくするよう言おうとした瞬間だった。パンっという音と共に頬に衝撃が走った。麗羽様に平手を食らったのに気付くのに暫くかかった。
「なんあのですか、あなたは!さっきからものとりにこびを売るように!」
え、えと、あれ?何であたしが怒られたんだ?
「あなたにはほこりはないのですか!そんなやり方が!あんな心までうすぎたないやからに!」
あ~、あれか?あたしのやり方は麗羽様のプライド的に許せなかったということか?でも、あたしとしては最良を考えての行動だったんだが・・・
「が、餓鬼が舐めたこと言ってんじゃねぇ!」
麗羽様の言葉が気に触ったのだろう、鉈の男にいた男があたしを蹴り飛ばして麗羽様の頬を殴りつけやがった。
「お、親に恵まれただけで人を見下しやがって・・・」
殴られ、倒れ伏した麗羽様に一瞥しながら男は吐き捨てるように言う。
あたしの視界が倒れた麗羽様を捉えて放さない。放せない。そして、倒れた時に頭を打ったのだろう、地に赤い色が広がっていく。あ、なんか視界全体が赤みかかって来た?
斗詩視点
麗羽様がものとりになぐられた。目の前で大事な人が傷つけられた。倒れ伏している麗羽様を見ても、私の足は、体は動いてくれなかった。
「れ、れいはさ・・・ま・・・」
私にしがみつく様にしていた文ちゃんがくずれるように膝をつく。それほどこわいということなんだと思った。私だって体の震えが止まってくれない。
けど次のしゅんかん、男の人のさけびごえで私たちは無理やりに目を向ける方向をかえられた。麗羽様をなぐったうでから血がふきだしていた。
「てめぇら、誰に断って人様のともだちに手ぇ出してんだ・・・」
こわい声だった。さいきん聞きなれてきたはずの声がちがう声みたいだった。
泣きながらうでを押さえてる男の人の前に黒羽ちゃんが、ひしゅをもったままたっていた。
私は何もかんがえられなくなっていた。文ちゃんも同じだったと思う。私にしがみついてるだけしかできない。
そして、私たちの後ろにいた人たちが持っていた棒をふりあげながら黒羽ちゃんに駆けて行った。黒羽ちゃんは一人をよけると、もう一人のひざのうらにひしゅをつきさす。その後は他の人たちも一緒になってらんとうになった。
「く、ろは・・・さん?」
あたまから血をながしながらだけど、麗羽様が起き上がる。ここから麗羽様のかおは見えないけど、やっぱり信じられない気持ちなのかな。
「斗詩!麗羽様つれてけ!」
黒羽ちゃんの言葉で気が付いた。麗羽様がいる場所はらんとうしてるばしょにちかい。私はとっさにかけだして麗羽様をかついでそこをはなれる。そして私たちが離れるのと同時に近くの物陰から黒羽ちゃんと似たがいとうを着た人たちが何人がかけ出してきた。
「お嬢様、怪我の具合は?後、他の皆さんはどうです?」
その内、こっちに走ってきた一人は黒羽ちゃんのお父さんの張管家でした。わたしも、いつの間にか近くまでかけよって来てた文ちゃん。そっか、麗羽様つれてくるのに夢中でおいて来ちゃったんだ。
「わ、わたくしたちよりも黒羽さんが!」
自分のけがをむしして麗羽様が張管家に言う。
「・・・いえ、アレは無事です」
そう言う張管家が目をむけた先には、あのがいとうを着た人たちの一人に抱えられている黒羽ちゃんがいた。ひしゅをとりあげられているのに、まだ私たちをおそった男の人たちをにらんでた。私たちをおそった人たちはみんな地面にたおれていた。
そして、私たちを助けてくれた人たちは黒羽ちゃんをだいたままつれて来た。
「こっちは終わりました、お頭」
「そうか。ご苦労だった」
私たちのけががあるかを見ていた張管家が初めて黒羽ちゃんを見る。
「無事だったか」
安心したような張管家の言ってるのが聞こえてないのか黒羽ちゃんはまだ私たちをおそった人たちのほうをにらんでる。おこった表情をしていたけど急にそれがあせったのにかわって、かかえてた人にうでからにげ出す。
「あ・・・」
なんとなく、黒羽ちゃんがさっきからにらんでた方向を見た。たおれてた男の人たちの一人が体の上半分をおきあがらせて、包丁をなげようとしてた。
そして黒羽ちゃんが文ちゃんにだきついた。なげられた包丁が黒羽ちゃんのせなかにささった。黒羽ちゃんの黒いかみのけが切れて、黒い服の黒さがこくなっていった。そのまま黒羽ちゃんがたおれてく。
いちばんさいしょに泣き出したのは私か、文ちゃんか、麗羽様か、私は覚えてない。
袁逢視点
「娘たちのこと、ご苦労だったね」
私は部屋から出て、中庭に設置された石の席に着き、そう口にした。部屋の中では手当てを受けた張管家の娘さんが眠っている。娘も、その友人たちも部屋で彼女の様子を見ている。酷く消沈していたが、だからこそ医者の邪魔になることもないだろう。
「いえ、お嬢様にお怪我を負わせてしまいました」
「あれは麗羽自身のせいだ。寧ろ君の娘まで巻き込んでしまった」
真面目なのは美徳なのは疑いないが、張管家はそれが過ぎる。
「それに、幼子に人を殺めさせてしまった」
娘たちが傷つけられた故と聞いた。恐らく張郃の心に付く傷は大きなものになるだろう。
「何れは通る道です。それが早まっただけかと」
やれやれ、我が子のことだと言うのに。だが、彼がこう言うのであれば私にこれ以上言う権利はないのだろう。
ただ、自己嫌悪になりそうな考えだが、今回のことは不幸な事件ではあったが、或いは袁家にとっては無形の財産になるかもしれない。娘の麗羽が如何に子供であろうと、今日のことで何も学べない程度の人物であるとは思いたくない。そして、自分の望み通りであれば、この日を持って麗羽は大きく成長するだろう。これが他者が傷つくという結果を伴ったものでなければどれだけ良かったことか。
「子供たちのことも気になる。部屋に戻るかね」
もう日も傾きかけている。細作衆が子供たちを連れ帰ってそれなりに時間が経っているが、あの子は昏睡したままである。傷はさして酷いものではなかったそうだが、それでも幼子の体にとっては多くの血を流し過ぎたのだと言う。
様子を見に子供たちのいる部屋に戻ろうと部屋の前に来た時、丁度扉が開き麗羽が出てきた。普段の自信に満ちた顔でなく、酷く暗いものになっている。
「お、お父様・・・」
丁度部屋を出てきたところに私がいて驚いたのだろう、少し慌てた様子だった。
「そ、その、お父様。お話し、したいことがあります」
「そうか。張管家、私は娘と話がある。君はあの子に付いてあげなさい」
なんとなく、娘が良い方にむかって成長しようとしていると感じる。
「いえ、私の任は・・・」
「父親なのだよ、君は。良いから行きなさい」
職に忠実すぎるな、アレは。もう少し個人の情を出してもいいものを。自分の肩が震えっぱなしであるのにも気付いていないな。
娘だけを伴い、私の部屋に向かう。その際娘は終始俯いていた。部屋に着いた後、お互い向かい合うように椅子に座る。
娘がまず口にしたのは今回の件の、事の顛末だった。自分が貧民区に行こうと言い出したこと。物取りに襲われたこと。張管家の娘が物取りと交渉しようとしたこと。事の大まかな部分は全て語ったのだろう、そこから沈黙が続いた。だが、娘はまだ本当に言いたいことを口にしていない。
「それで、お前は何を言いたいのだ」
私の言葉に、されど黙ったままであった娘は、やがて意を決した瞳で話し出した。
「わたくしはまちがっていたのでしょうか?袁家の一いんとして、しもじもの人たちのことを知りたいと思って行きましたの。でも、皆さんをきけんな目に遭わせてしまいました。わたしはどうするべきだったのでしょうか・・・」
成る程。一歩つづ先に進み始めたか。
「間違ってはいないよ」
そう、その想いは正しいものだ。何れ人の上に立ち、天下を動かす立場になる者に必要な想いだ。
「でもっ・・・」
「間違っていないことが必ずしも正しい訳ではないんだよ」
子供にするには難しい話かもしれない。だが、この子が真剣に聞いてくる以上私も真剣に答えねばなるまい。
「・・・間違ってないことが正しくないことがあるのですか?」
「ああ。そうだ」
決して気分の良いものではないが、この子も何れ政の世に入れば知らねばならないことだ。・・・私も張管家を謂えんかな。
「・・・では、お父様。麗羽はどうすれば正しくいられるのでしょうか」
最も難しいことを聞くか。
「常に正しくあり続けることは無理なのだよ。人である限りな。だが、お前が可能な限り正しい人間でありたいというのなら、今回の件を持ってまずは身の程を知りなさい」
己に出来ることと、出来ないことを見極める眼をまずは持たねばならない。
「・・・みのほど、ですか」
「そして学びなさい。今の自分に出来ないことをなすために。本当にやらねばならないことを知るために」
人の上に立つためにもう一つ必要なもの、心を支えてくれる友を、お前はもう持っているのだから。
この娘が漢王朝の明日を担う善き支柱となれることを、私は願いながら語り続けた。
黒羽視点
「知らない天井・・・すら見えん」
目が覚めたとき、一番最初に見たのは枕代わりらしい毛布の塊、最初に感じたのは手を握られている感触だった。ずっとうつ伏せだったらしく涎の感触もあった。
「・・・えと、猪々子さん?」
眼を向けるとそこにあったのはあたしの手を握ったまま床にうつ伏せになって眠ってしまってる猪々子さんと、それに寄り添って眠る斗詩さんの姿だった。
「起きたか、黒羽」
声は父上のものだった。声の方向に眼を向けるが、窓から射す夕日の明かりで部屋が真っ赤に染まって、父上の姿がぼやけて見えた。まるで空気まで何か赤いもので濁っているように見えた。
赤く、紅く、アカク、あかく・・・・・・?
「落ち着け!ゆっくり、息を深く吸って、深く吐け・・・」
気が付いたら父上に抱き締められていた。あれ?息が苦しい。体が寒い?背中から体温が抜けていっているような感触だった。
そういえばさっきの色で思い出した。
「あ、あた、し・・・ひと・・・」
殺した。ころした。この手で、じぶんのいしで、ころしたころしたころした・・・
「違う!お前は守ったんだ!お嬢様と友人たちを守ったんだ!お前はよくやった!お前のおかげで助かったんだ!」
まもった?守った、護った・・・
「そうだよ!黒羽ちゃんが私たちを助けてくれたんだよ!」
聞こえてきたのは斗詩さんの声だ。この時あたしはようやく自分の手を痛いほどに強く握られているのに気が付いた。
手を握っていたのは猪々子さんだった。あれからずっと握ってたのか?目尻から涙を流しながらあたしを見ている。
「私たち・・・黒羽ちゃん好きだよ・・・」
猪々子さんが言った。なんか、今まで一番はっきりと聞こえた気がする。猪々子さんの声。でも、なんか急に息苦しいのがなくなっていく。変わりにすごく眠くなってきた・・・
次に目が覚めた時、手を握る感触はそのままだった。
「黒羽ちゃん・・・」
日が落ち、月明かりが窓から射す薄明かりの中、猪々子さんの声が聞こえた。
「おはよう、猪々子さん。それともこんばんわかな、この時間」
体がだるくて仕方ない。でも、手から伝わる暖かいナニカで妙に口元が弛んでるのが自覚できる。
「・・・うん・・・よかったよ・・・黒羽ちゃんが起きて・・・怖かったんだよ・・・」
涙でグシュグシュいいながらも必死に色々伝えようとしていた。興奮しているせいか、内容は支離滅裂だったが、あたしを心配してくれているのが伝わってきてちょっと幸せな気分になった。それと、猪々子さんの話を聞いている間、斗詩さんが猪々子さんの横で眠ってるのが見えた。多分部屋の隅に椅子で座ってる体制の影が父上なんだろう。
猪々子さんのあたしを心配したり、慰めようとする言葉を聴いていたが、ふと彼女がこんな事を聞いてきた。
「ねぇ、黒羽ちゃん。あのとき・・・黒羽ちゃんはこわくなかったの?」
「そんな訳ないじゃん。怖かったさ」
虚勢を張ってはいたけど心臓はバクバクだったし、足も力が抜けそうになってたし。
「・・・じゃあどうしたら黒羽ちゃんみたいに勇気持てるの?」
勇気?あたしみたいに?正直こんな事を言われるとは予想外だわ。
「黒羽ちゃんいつも男の子みたいでとってもかっこよかったよ。それにとってもやさしいの」
あ~、うん、元々中身男ですもん。
「私も黒羽ちゃんみたいに強くて優しくなりたい」
あたしのように、か。なんとなく嬉しいけどあたしは今の猪々子さんも嫌いじゃないんだけどな。
「今の猪々子さん、可愛くて好きだよ、あたし」
「でも私・・・ううん、あたしは黒羽ちゃん見たくなりたいの!」
なんか、言っても納得してくれなさそうだな。まあ、悪いことではない、のかな。
「ん~、でもアレだね、自分をあたしって呼ぶの、被るのはちょっとな」
そういったあたしの言葉が拒絶に聞こえたのか、しゃくりあげてきた。まず、大泣きになる!?
「だからさ、猪々子さんはアタイ、なんてどうかな。あたしと似てるし」
「・・・アタイ?」
キョトンとする猪々子さん。
「うん、アタイ」
「・・・アタイ・・・うん、私はアタイ、アタイになる・・・」
うん、喜んでくれたみたいだ。
「それと、黒羽ちゃんのこと、お姉ちゃんって呼んでもいい?」
うん?姉?いやでも、
「あたしと猪々子さん同じ年じゃん」
誕生日は確かに先だから姉と言えなくもないんだろうけど。
「黒羽ちゃんは目標だから、お姉ちゃんになってほしいの」
「そっか。じゃ、アネキって呼びな。アタイにはそっちの方がらしいよ」
こそばゆい感じだな、なんか。
「アネキ・・・うん、アタイ、がんばって強くなるよ、アネキ」
その言葉と共に見せた笑顔は、とっても輝いて見えた気がした。
おまけコーナー
楽屋裏三国志研究所(仮)
K[どうも!今回で二回目おまけコーナー!司会はこの張儁乂と!」
T「う~、文ちゃんカワイ~よ~!感動だよ~!」
K「お~い、戻って来い。斗詩さんや~い」
T「はっ、文ちゃんの可愛らしさにどこかに魂をさらわれてたよ!」
K「うん、見てりゃ分る。んな事よりコーナーやるぞ」
T「う、うん、今回は何の解説をするのかな?」
K「アンケートがなかったからな、前回。寧ろこれに関する反応すらなかったという悲しむ事実故にこっちで決めることになった」
T「反応ないのは悲しすぎるよ・・・」
K「話題が悪かったのかな?えーと、今回はこの時代の武器に関してやって見ようと思う」
T「武器?この時代の武器って言えば、関羽の青龍刀とか、呂布の方天画戟とか?」
K[違う。それは8~9世紀のものだ」
T「・・・え?」
K「ちなみに三国志は3世紀前後、5~6世紀違う。張飛の蛇矛にいたっては15~16世紀のものになる」
T「え?じゃあ、私たちの使ってる武器って・・・」
K「恋姫仕様は問題外として(ドリルとかバンカーとか)演義でも、結構時代的にありえない武器が多い」
T「えっと、じゃあ実際はどんなのが使われてたの?」
K「この時代の主力は戟と言う長柄にL字に近い形の金属を付けたやつだな。言うなれば西洋のスパイクのようなものでな、突いて善し、叩いて善しで使いやすいものだったらしい。騎兵は歩兵、この時代の主力兵器だな」
T「へー、私は主力は槍だと思ってたな」
K「槍は丁度三国時代の産物でね、登場は三国鼎立した時期だったらしい」
T「あれ?槍って構造簡単そうだからもっと前に出来てそうなんだけど」
K「槍の構造そのものは確かに単純なんだけど、素材が問題だったんだ。三国志の序盤の時代ではまだ鋼鉄を練成する技術が普及してなくって、兵器の素材は主に青銅だったんだ」
T「えと、青銅だと何かまずいの?」
K「まずい。槍に、というか突くための武器に充分な貫通力を持たせるには鋭い形が必要になる。青銅じゃ脆過ぎてこの形が維持できないんだ」
T「それって武器として使えないって事?」
K「使えないな。鎧を突くと折れてしまうんだから」
T「うわ~、でもだったらどうして演義の武将は色んな武器持ってるのかな?」
K「キャラの個性を出すためのものだろね。正史じゃ、誰が何使ったとかはない。演義でも無名武将は武器に関する記述はほとんどない」
T「それじゃ、実際の私たちはみんな戟を使ってたって事かな?」
K「まあ、ほとんどの武将が戟だったんじゃないのかと思う。でもまあ、あたじらは実在の人物がモデルの虚構の人物みたいなもんだからな。別に何使っても良いだろ」
T[そ、そうだよね、何使っても良いよね」
K「うん、それこそ勇者王なハンマーやら艦を両断できてしまいそうな剣でもな。ということで今回の話はここまで」
T「え?あ、うん。それじゃ読者の皆様、ここまでありがとうございました」
K「このコーナーは皆様のご感想とリクエストをお待ちしています」
K&T「それでは皆さん、また次回!」
後書き
今回普段よりだいぶ苦戦しました。時間の割にはちょっと微妙なクオリティになった感じです。
次回から洛陽を出てしばらくオリキャラがメインになる予定です。主人公の修行編みたいな感じに。ついでに物語のメインになるオリキャラもそろそろ登場予定です。一応有名武将で、なぜ恋姫に出ないのか!?と思ってたキャラと、その親族です。とりあえず三国志好きな人には知らない人はいないだろう人物なので楽しみにしていただけたら幸いです。
それでは今回はこれで。また次回をお楽しみに!