周囲からの視点によるニート竜。
王様の場合
「ミネルバはどうした?」
「あの子なら、レッドの所に遊びに行ってますよ」
むっ。ミシェイルの答えに、ワシは顔が険しくなるのを自覚する。
そんなワシの感情に気づいたミシェイルが攻めるような表情をするが知ったことか!
気に入らんのだ、あの火竜が。
大賢者ガトーが連れてきおったために無碍にはできんが、ワシは本当はあんなバケモノを城になど住まわせたくないのだ。
そもそも、マケドニアの成り立ちはマムクートや野生の竜共が人の国に侵入せぬように、見張りと牽制の意味をもってできたもの。言うなれば楔。
その国に、竜を住まわせるなど本末転倒ではないか。しかも、知能のある竜だと? そんな危険なものに気を許すなどミシェイルは王子としての自覚があるのか?
「飛竜を飼育し、竜騎士団を編成している国の王が言うことですか?」
うるさいわい。あれは家畜だからいいんじゃ。
「自分の竜を家族のように思っている騎士には聞かせられませんな」
ええい、黙れと言っとる。
まったく、この国の王の子であるミシェイルにミネルバやマリアまで懐柔しおって、何を企んでおるのやら。
「ミネルバたちと遊ぶことと、食っちゃ寝することしか考えてないように見えますが」
だから、黙れと言っとる。
かといって、迂闊に排除しようというわけにもいかん。
あれが、大賢者によって連れてこられたということは、国内では有名な話になっておる。ヘタに手を出せば、ガトーを崇拝する国民が何をするか分からん。
べっ、別に、ガトーが自分では勝てないとか言ってたからって、恐れをなしてるわけじゃないんだからね。
「どうして父上は、そこまでレッドを毛嫌いするんですか? 最初の頃はそうじゃなかったでしょう?」
む、ミシェイルの奴め、ため息なんぞ吐きおって。そんなこと決まっているじゃろう。
あの火竜のせいで、大好物の餅が食えなくなったからじゃああああぁぁぁぁ!!
あやつめ、ミネルバとマリアに年寄りに餅を食べさせると喉を詰まらせて死ぬことがあるなどと吹き込みおって。
娘たちに、「もう、おもちを食べないで」「お父さま、死んじゃやだ」なんて、涙目で言われたわい。
おのれ、ワシから大好物を取り上げて何を企んでおる? あと、人を年寄り扱いするな!
って、おーい、ミシェイルよ。どこに行くんじゃ?
ミシェイルの場合
今日も、レッドは妹たちと遊んでやっている。
そこに、他の企みなどない。あの竜は本心から妹たちの相手をしてやることを楽しんでいるのだ。ちょっと前まで、同じように遊んでもらっていた俺には、よく分かる。
だが、俺だけは、それだけでないことを知っている。
レッドは、この先この大陸に起こる激動の未来を知っている。そして、その行く末を俺に委ねたのだ。
あいつの言うことを疑ったこともある。
だから、俺はガトー様に会って確認した。未来に起こることではない。過去の歴史。アカネイア聖王国建国の裏の事情。そして、暗黒竜と呼ばれる人類の敵、メディウスが過去は人の味方であった事実を。
その話をした時、ガトー様は驚き誰に聞いたのかと尋ねてきた。
レッドに聞いたと言ったら。
「何っ!? 奴は、知らぬはず。もしや、異世界から来たというのは偽りだったのか? いや、待てよ。神竜王ナーガは世界から情報を引き出すことで過去と未来を見通しておった。奴め、真なる竜の力で、この大陸の過去を見通しおったのか」
なにか、ぶつぶつ言いながら、考え事を始めたが、やはりレッドの言ったことは事実だったようだ。
では、何故そんなことを俺に話したのかと考えて、俺は答えに至った。
かつて、この世界は竜族のものであったのだという。しかし、今この大陸の覇権を握っているのは人間だ。
レッドは、こう言いたいのだろう。
「人間が、この大地の支配者だというのなら、この運命を打ち破ってみろ。もはや過去の存在である竜の預言など覆してみろ」
そう、これは俺に架せられた試練なのだ。そして、この試練を乗り越えることをレッドは望んでくれているはずだ。
やってやるさ。
俺は死なん。父上を殺しもせん。ドルーアに尻尾も振らずアカネイアの支配も跳ね除けて、正しいやり方で、この国を救ってみせる!
使用人たちの場合
「あの竜、気持ち悪いと思わない? 人の言葉を話したりして、王様やその子供たちに取り入ったりして、何を企んでるのかしら」
「そうかしら、礼儀正しいし、いい人(?)だと思うけど」
「なに言ってるのよ。あいつ姫さまを太らせて食べる気よ。絶対」
「それなら、そんな回りくどいことしないだろ。あいつはな、マムクート共のスパイだよ。決まってるだろ」
「でも、そんな下心があったら、子供の相手なんかやってられないんじゃないか?」
「馬鹿、そうやって油断させようとしてるんだよ」
「そうかぁ? 俺には、食っちゃ寝の合間に子供と遊んでる、ぐうたらにしか見えないぞ」
「「「「「「いや、それは無い!!」」」」」」
未来の幼女でなくなった幼女軍団編
最強オリ主である俺の活躍によって、大陸に平和が訪れた。
長い戦いだった。本来スターライトでなければ倒せないガーネフを俺のチートパワーで倒し、ファルシオンを手に入れた俺は神剣の力で人間の姿になり、メディウスを封印。
超絶美形最強オリ主となった俺は、仲間になった全ての女性の心を虜にし、アカネイア統一国家の皇帝となりハーレムを作るのだった。
「あの、レッド様は何をおっしゃってるんですか?」
「気にするな。いつもの病気だ」
可憐な美少女、タリスのシーダの質問に、今ではどこに出しても恥ずかしくない美女に成長したミネルバが、俺の代わりにばっさりと答えてくれました。
病気は、ないんじゃないかな? 最近冷たいよ幼女。水浴びについて行ったら怒るし。
「幼女って言うな! 私は、もうそんなことを言われるような歳じゃない! あと、水浴びを覗かれたら怒るのは当然だろう!」
まあね。でも、幼女時代から見守っていた立場からすると、当時の感覚が抜け切らないのよ。
大体、最近のミネルバは俺に厳しいよね。昔は、「おっきくなったら、レッドのお嫁さんになる!」って嬉しいことを言ってくれてたのに。
「うううっ! うるさい! うるさい! うるさい! いつまで私を子供扱いしているつもりだ! 私はもう、あの頃の子供じゃない!」
そうだね。あの頃は、こんなに怒りっぽくなかったよ。
「というか、ミネルバ様が、こんなに取り乱したり感情的に怒るところは初めて見ました」
「そう? 姉さまは、レッドが絡むといつもこうよ。主に、レッドが他の女の子と話している時だけど」
「マリアっ!!」
真っ赤になって、妹を叱責するミネルバ。
なるほどツンデレか。
「ええい、黙れ! この馬鹿ーっ!!」
あっ、逃げた。
「からかいすぎですよ」
レナに叱られてしまった。
うん。分かってはいるんだけどね。でも、俺は竜だしね。
マケドニアが誇る姫将軍が竜とって、王様のミシェイルも困るんじゃね?
「何を今更。あなたも、今じゃマケドニアの守護神でしょう」
うん。そういうことになってるね。特に何もしてないのに守護神とか竜神とかビックリだよ。
あと、パオラ。話しかけてくるんなら、もうちょっと、近くに来てもいいんじゃない?
「アハハ。姉さま、レッド様が苦手だから」
そうかい。ところで君も遠いよエスト。具体的に言うと20メートルくらい。
「アハハ……」
いや、笑って誤魔化す所じゃないから。
まあ、ミネルバほ放っとくわけにもいかないし、追いかけるかねえ。
え? カチュアはどうしたって? どっかの天幕でミシェイルといちゃついてるんじゃね? 次期王妃だし。
アカネイア大陸人類統一国家マケドニア皇帝ミシェイルの妻になるんだから皇妃なのかな?
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幼女分が足りないにもほどがある。
この物語は、思い付きのみでできています。
ニート竜とミネルバがくっつくとか、カチュアがミシェイルとくっつくなんて、この番外編を書くまで考えもしてませんでしたよ?
王様の名前が分からなくてどうなるかと思ったけど、まったく問題がなかった。