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No.8075の一覧
[0] 竜は働かない(現実→ファイアーエムブレム)オリ主 憑依 【完結っぽい】[車道](2010/01/10 20:52)
[1] Act.2[車道](2009/09/20 10:54)
[2] 感想をネタに書いてみた番外編[車道](2009/07/07 20:13)
[3] Act.3[車道](2009/04/20 16:18)
[4] Act.4[車道](2009/04/28 20:19)
[5] Act.5[車道](2009/05/05 19:20)
[6] Act.6[車道](2009/05/08 20:14)
[7] Act.7[車道](2009/05/12 18:58)
[8] Act.8[車道](2009/07/07 20:12)
[9] Act.9[車道](2009/07/07 20:11)
[10] Act.10[車道](2009/07/17 20:13)
[11] Act.11[車道](2009/09/20 10:54)
[12] 番外編2[車道](2009/09/22 20:12)
[13] Act.12[車道](2009/10/01 22:15)
[14] Act.13[車道](2009/11/07 20:59)
[15] Act.14 最新話?[車道](2011/07/26 20:07)
[16] Act.18[車道](2010/01/10 19:58)
[17] 始まりと終わり[車道](2010/01/10 20:32)
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[8075] 始まりと終わり
Name: 車道◆9aea2a08 ID:19da274d 前を表示する
Date: 2010/01/10 20:32
 ソレは、世界を見守る者であった。
 それが、いつからなのか、なんのためなのか、そんなことをソレは知らない。
 世界を見守るためだけに存在したソレに思考や記憶は意味を成さず、ゆえに自身が何者なのかすら興味の対象外だったのだ。

 それが変わったのは、世界に人間という生き物が生まれてしばらくしてからのこと。
 人間は思考する生き物であり、それを見続けた結果、ソレは考えることを覚えたのだ。
 そうして思考することを覚えたソレは、ふと考えてしまう。
 人は必ず死ぬものであり、形あるものは、いずれ壊れる。
 世界すら例外ではないのだと、ソレは気付いてしまった。
 ソレは恐怖する。
 ソレの目的は、世界を見守ることだけなのだ。
 その世界が滅んでしまえば、自分には他に何もない。自身が世界よりも長く存在することになる保障などどこにもなかったが、そうなることを、ソレは激しく恐れた。
 だから、ソレは予備を創ることを考えた。
 新しく、もう一つの世界を創る。
 それは人には叶わぬ神の如く行為であるが、ソレにはそれが不可能ではなかったのだ。
 だが、それが簡単なことなのかといえば、そうではない。
 世界には、様々なものが含まれなくてはならない。
 大地が、空が、海が、木が、草が、獣が、人が。
 それらを創りだすこと自体は、ソレには簡単なことではあったが、それだけでは世界として完成しない。
 例えるなら、人間で言えば中身がないのだ。
 物理的な意味ではなく、ただ呼吸し生命があるというだけの人形しか出来上がらない。
 そんな空っぽの世界では、今ある世界より長く存在することは叶わない。
 それでは意味がない。
 そこで、ソレが考えのは人が生み出した物語をモデルに世界を創りだすことである。
 物語とは一つの世界であり、そこには人がいて過去があり未来があり歴史が存在する。
 それをそのままに写し取れば、簡単に中身のある世界が作り出せる。
 もっとも、そうやって創りだした世界とて、しょせんは人の考えた幻想を形にしたものにすぎない。
 滅ばず、今ある世界よりも長く存在できる可能性は低い。
 だから、ソレは可能性を高めるための二つの手段を取った。

 一つ目は、世界を複数創りだすことである。
 可能性は低くても、ゼロではないのだ。数が多ければ長きに渡って存続する確率も上がる。
 人は数多くの物語を生み出した。
 世界を創りだすモデルとなる物語は、いくらでもあったのだ。

 二つ目は、幻想でしかない世界に楔を打ち込むこと。
 ソレが創りだした世界が幻想でしかないのなら、そこに現実という楔を打ち込めばいい。
 それはつまり、いまある現実の世界に存在する人間を自身の創りだした世界に放り込むことであり、そこに放り込まれる人間の事情は一切考慮されない。
 そもそも、人類の発祥以前、あるいは世界の始まりの頃から存在していたかもしれないソレにとって、人間一人の事情など小さなものであったのだ。

 さて、ソレの創りだした世界の一つに、あるゲームをモデルにしたものがある。
 その世界にも、ある人間が放り込まれたのだが、まったくそのままに送り込まれたというわけではない。
 人の生み出した物語の多くは、人の命が軽いものが少なくない。
 その世界も同様で、戦う力のないものでは長く生存することは難しかったわけだが、世界を安定させるために打ち込んだ楔に簡単に死なれては意味がないではないか。
 だから、ソレはその人間の魂だけを抜き出し自身の創りだした世界に送り込み、その魂が宿るための強靭な生命力を持つ器も用意しておいた。
 だが、そこで一つ予定外の事態が起きる。
 ソレが創った世界は、その時点では安定しておらず、過去も未来も現在も混じり合った混沌とした世界である。
 世界を安定させるのが楔の役割ならば、それは当然のことではあるのだが、困ったことに楔は予定より過去に落ちてしまった。
 楔が落ちた過去に、ソレの用意した器はない。
 運が悪ければ、宿る肉体のない魂は、そのままに死を迎えたのかもしれないが、そこには器を造るにあたって見本にした火竜と呼ばれる生き物がいて、現実という世界から送り込まれた楔は、その世界の幻想から形を得ただけの者たちより存在として強く、だからその生き物の肉体に入り込み、それを乗っ取ることとなる。
 もしも、楔が肉体を乗っ取った火竜という生き物が脆弱な存在であったなら、ソレは何らかの修正を行ったのかもしれないが、幸いそうではなかったので、そのままにすることにした。
 楔の役目は、幻想でしかない世界が現実として固定するまでの間生き延びることであり、それさえ果たせるのなら肉体が用意した器であろうがなかろが、どちらでも構わないのである。
 そして、本来、楔の肉体となるはずだった器も魂を追い遅れて過去に移動し、その後、楔に肉体を乗っ取られ追い出された火竜の魂がそれに入り込む事態となったが、それもソレにとっては小さなことでしかなかったのである。

 余談だが、魂を抜かれたその人間の肉体は、後に変死体として発見されたのだが、それはどうでもいいだろう。

 ◆◇◆◇

 小さな庵のあるその地には、何百年も昔から一頭の巨大な火竜が生息していた。
 それは、積極的に人を襲うようなことはなかったが、自身や庵に危害を加えようとするものには容赦がなく、庵の近くにはいくつもの屍が転がる。
 その庵には、竜にとっての唯一の存在であった人間が眠っており、それの目的は庵を守ることだけであったのだけれど、人はその竜を恐れ放置できなかったのである。
 その巨竜の元に、蒼穹の彼方からやってきた光り輝く巨大な物体が舞い降りる。
 それは、地に降り立つと共に収縮し光を収め、光を消すと共に、一人の女性の姿を形作った。

「久しぶりですね」

 緑の髪を揺らす女性の言葉に、竜はゆっくりと首をもたげ、その眼に女性の姿を映す。

「そうなのか?」

 尋ねる言葉が竜の口から発せられたと知れば、現在この大陸に住む民の多くは驚愕しただろう。
 マムクートと呼ばれる竜人種といえど、人語を操るのは人の姿をとっている時に限られる。
 そのままに人の言葉を操る竜など、伝説に語られる存在だけである。
 もっとも、この竜は今では伝説として語られる千年近い昔にこの大陸に起こった二度の戦争で活躍し名を語られる存在であったりしたのだが。

「前に、私がここに訪れてから、五百年ほど経っていると思うのですが」

 苦笑と共に語られる女性の言葉に、しかし竜はなんの感慨も持たない。
 気の遠くなるほどの年月を生きることになるその竜に、五百年という時間はたいした意味を持たないし、竜にとって意味のある存在というのは少なく、千年もの過去からの知り合いである女性すら、竜にとっては敵ではないという程度の存在でしかない。

「それで、今日ここに来た目的は何だ?」

 ただ、旧い知り合いに会いに来たのだというわけではあるまいという断言に、女性は顔から笑みを消す。

「彼の居場所を知りませんか?」

 その彼というのが誰なのか、名を出すまでもなく竜には理解できる。
 そもそも、数百年もの時間を他者を拒絶して生きてきた竜と、女性の共通の知り合いというのも多くはないのだから。

「知っている。が、教える気はない」

 あっさりと告げられた言葉に、女性はハッと顔を上げて竜を見つめる。
 彼が姿を消してからの数百年、女性とその仲間たちは彼の存在を求め捜し続けていた。
 だけど、見つからなかった。
 もちろん、彼が本気で姿をくらませるつもりなら、自分たちがどれだけ捜そうと見つかるはずがないのだと理解はしていたのだけれど、彼が身を隠そうとする理由が思い当たらなくて、だから捜し続けていたのに、それを知っている者がこんな身近にいたことに女性はやりきれない思いを感じる。

「いつから知っていたのですか?」

 問いかけに、竜は最初からだと答える。

「我としては、あんな目立つ存在を見つけられないと言うほうが、驚きなのだがな」

 そんなことを言ってくる竜に女性は恨みがましい視線を向ける。
 自分たちが彼を捜していたことを知っていただろうに、彼の居場所を知っていて黙っていたという事実が愉快であろうはずもない。

「なぜ、彼のことを隠していたのですか?」

 睨みつけ言い放つが、竜は歯牙にもかけない。

「別に隠していたわけではない。当時の我は、人の言葉を解さなかったのだし、アレが奴のことを捜しそうとしていなかったのでな。アレが望んでいないことを、我がやらねばならぬ理由はあるまい?」

 なるほど、理解のできる話ではある。
 この竜は、唯一人の存在の言葉にしか従わない。
 かつては、力でねじ伏せ従わせたもう一人もいたが、その後に唯一人の存在に出会わなければ、竜は早々に反旗を翻していただろうから。

 だけど、理解ができたからと言って、納得ができるかどうかは別の話であろう。

「では、隠しているわけではないというのなら、なぜ教える気がないなどと言うのですか?」
「奴が、それを望んでいないからだ」
「え?」
「最初に奴が姿をくらました時は、何故そんなことをするのかと我も疑問に思ったものだがな。アレを亡くして、我には理由が分かった」
「その理由とは?」
「意味がないのだ。我にとり、アレ以外の存在には意味がない。奴もそうだったのだろう」

 それだけを言うと、話は終わりだと言うように、竜は体を丸めて目を閉じる。
 竜には、唯一人の存在以外は等しく価値のないものであった。
 何故そう思うようになったのかなど知らないし、考えてみようという気もない。
 それが大切だと言う結果以外に興味などない。
 だから、その存在が生を終えた時、竜は世界の全てから興味をなくした。
 そうして、竜は墓守となる。唯一人の人間の眠る場所を守るだけの存在に。

 女性が彼と呼び、竜が奴と呼ぶ存在もまた、同じなのだと竜は言う。
 その者にとって、女性もまた価値のない存在だと見なされているのだと切り捨てる。
 それは、女性に取り受け入れ難い話である。
 女性にとり、その者は大切な存在で、そう思っている相手に無価値だと思われているのだなどと言われて、簡単に受け入れられるはずもない。
 とはいえ、彼が自分たちに何も言わずに姿を消して、その後、二度と姿を現さなかったのも事実で、だから反論の言葉も浮かばない。

 もっとも、それを納得したからといって、彼のことをあきらめるわけにはいかない。
 いや、ここに来て竜の話を聞くまでは半ばあきらめていたのだが。
 女性はこの大陸に住まう竜と竜人種たるマムクートの頂点に立つ竜の女王である。
 千年ほど前から、共存の道を歩んだ大陸に住まう人と竜の関係は、ここに来て破綻しようとしていた。
 その理由は、特別なものではない。
 人の精神は、竜と言う強大に過ぎる存在を隣人として迎えられるほど強靭にはできていない。
 また、マムクートにも人と言う、自身たちに比べ脆弱な存在を見下してしまう者は少なくない。
 ようは、起こるべくして起こった不和であり、千年前にも同じ理由で二度の大戦が起こっていた。

 一度目は、マムクートの受け入れを行った国に、当時の盟主国が大陸の多くの国を率いて戦争をしかけ敗退し、その二年後には、今度は一度目の大戦に参加しなかった国をも含めた同盟軍を指揮した盟主国が奇襲をかけて、逆に滅ぼされている。
 結果として、マムクートを受け入れた国は、元々竜の国であった一つを除いた全ての国と戦争をしたことになる。
 そのことを考えれば、むしろ千年もよく持ったものだと感心するべきであろう。

 女性の望みは、その不和を解消することであったが、それが簡単なはずもない。
 不満は、人とマムクートの両者から出ているのだ。竜の頂点に立つ彼女と言えど、人の側に生まれた不満には対処のしようがないし、人間相手に下手にへりくだれば自身の配下であるマムクートにも侮られてしまう。
 それを何とかできる者がいるとすれば、一人しかいないと彼女は思う。
 かつて、人と竜の垣根を取り払い、暗黒竜と人に恐れられたメディウスとすら友になった彼。
 おそらくは、自分を含める大陸全ての竜を敵に回してもたやすく勝利できるであろう力を持ちながら、それに驕ることなく人と対等に対話ができる存在。
 だけど、彼は姿を消しており、つまるところ不和の種が芽を出してしまったのも、それが原因なのだろうと彼女は信じた。
 だから、次善の策として彼女は彼に次ぐ力を持つ、この巨竜の力を借りようと思いつきやってきたのであり、彼のことを尋ねたのは、ただの話題作りでしかなかったのだ。

 それゆえに、彼の居場所を知っているという言葉を、彼女は聞き逃せない。
 ことは、大陸全てを巻き込む大戦に発展しかねない事態なのだ。
 大切な存在を失ったからなどという感傷に付き合っていられる余裕などありはしない。
 そんな彼女に、眼を閉じたままの竜は言う。

「確かに奴が帰ってくれば、全てを解決させることも可能だろう。だが、それだけの話だ。お前たちは、奴を神と崇め、永遠に依存して生きていくつもりか?」

 その言葉は、チキという名を持つ神竜王の血を引く女性の心に突き刺さる。
 そして、彼女は自分が竜の女王と言う責任から逃げ出そうとしている事実に気づかされる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


レッド

この作品の主人公。
この、ゲームを見本に創られた世界を固定化し安定させるための楔であり、憑依した竜の能力を十全に使いこなせるために、その気になれば世界を支配することも可能だが、決してその気にはならない火竜。
なぜならニートだから。

256勝0敗

生涯、ただ一人のパートナーであったミネルバがその命を終わらせると同時に、その屍を咥えいずこかに飛び去った。


ミネルバ
この作品のヒロイン的存在。
レッドに対する想いは、恋であるというより家族愛に近いものであり、保護者であると同時に被保護者である少女。

0勝0敗

いつの頃からか、自身の人生の全てをレッドのためだけに使うことを決意し、死のその時までレッドと共にあった。


ミシェイル

最強オリ主であるレッドがやるべき仕事をすべて丸投げされた不幸な少年王。

119勝0敗

大陸に起こった二度の大戦の後、アカネイア大陸人類統一国家となったマケドニア帝国の皇帝となった。


マリア

ミネルバの妹にして、姉の次に、レッドの近く(精神的な意味でも)にいる少女。

11勝0敗

15歳の時に、王宮のパーティで出会った青年と結ばれたとされるが、その青年の名は後世に伝わっていない。
後に、マケドニア帝国海軍の将軍となる。


ブルー

後の海軍将軍マリアの騎乗する竜。
アカネイア大陸の歴史において確認された、ただ一頭の水竜。

65勝0負

マリアの死後、歴史から姿を消す。


レナ

この作品ではシスターにならず、巨竜を操り二度の大戦で活躍することになる後の大将軍。
しかして、本人には自身の竜といつまでも共にありたいという想いしかなかった。

1198勝0負

後に伝わる彼女の姿は、巨竜を神とする巫女のようであったという。


カーマイン

ごく普通の火竜の魂が、世界を創った存在の用意した器に宿ったもの。
竜をモデルに作られた竜ではない存在であり、その身に眠る能力は真なる竜の能力を使いこなすレッドより上である。
もっとも、現状では、その能力を使いこなすための知性がなく、ゆえにレナに補ってもらわなければ人が習得できる魔法すら使えない。
厳密には竜ではないために知性を持つことも可能であるが、知性のない竜として生まれ育ったために、狼に育てられた人間の少女が人として生きられなかったように、人と同じ程度の知性を得るのには数百年を必要とする。
その特殊な生態から、後世の人間にはレッドと同一視される場合が多い。

1198勝0負

レナだけをただ一人のパートナーと決めており、彼女の死後はその遺骸を埋葬した庵を守り続ける。


パオラ

ミネルバ付きの騎士。
本人は、ペガサスナイトになることを希望してるが、主であるミネルバがレッドを自身の騎乗する竜と決めているために、その望みが叶う日は訪れない。

40勝0負

ミネルバの下で、飛竜騎士を指揮する騎士団長となる。


カチュア

ミシェイルの秘書として、政務を学び働く少女騎士。
誰よりも、ミシェイルの近くにあり彼を支えている。

2勝0負

後に幼馴染であるミシェイルに嫁ぎ、マケドニア帝国皇妃となる。


エスト

マリア付きの少女騎士。
マリアの年齢的に、騎士というより遊び相手としての側面のほうが大きく、二度の大戦にも参加することはない。

9勝0敗

海軍所属の騎士となるが、その役目は貿易船を海賊から護衛する目的のものであり、あまり華々しい活躍はないままに終わる。
仕事の都合上で出会った他国の騎士と結ばれる。


チキ

神竜王の血を引くマムクート。

0勝0負

大陸の統一後、一度目の大戦の後にマケドニアに集められていた子供たちが、各地方の領主になった頃にマムクートたちの女王となる。


メディウス

マケドニア帝国皇帝。

42勝2負

封印された地竜を救うことを願い、後に真なる竜レッドの力を借りて、彼らをマムクートに変えることで封印から解き放つ。
その数年後には、神竜王の血筋であるチキに皇帝の地位を譲り娘と共に隠居する。


ハイドラ

メディウスの娘。オリキャラ。

0勝0負

成人までの期間を父と過ごし、その後は竜の長であるチキの側近として仕える。


マルス

原作ゲームの主人公だが、この作品ではモブキャラ

0勝0負

後のマケドニア帝国アリティア領、領主。


エリス

マルスの姉にして、死者蘇生の杖オームの継承者。
しかし、オームの杖を使う機会は生涯訪れなかった。

0勝0負

後に、マケドニア帝国グルニア領の黒騎士団団長の元に嫁ぐ。


ニーナ

祖国アカネイアの貴族の思慮の足りない暴走に振り回される不幸な王女。
二度目の大戦の時には、マケドニアにいたため、肩身の狭い思いをすることになる。

0勝0負

二度目の大戦の後、アカネイアが完全に滅ばされたことや、残党の旗頭にされると困ると言う理由から、ミシェイルの第二妃となる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 人の寄り付かない洞穴、そこには材質の分からない透き通った結晶がある。
 水晶のようなそれには若い女性が眠り、それを見守る一体の竜がいた。

 彼、かつて自分は人間であったと自覚するその竜は、自問する。
 どうすればいいのかと。

 この洞穴に篭ってから、どれほどの時間が経ったのか彼は知らない。
 分かるのは、その時間のほとんどを悩むことに費やしているという事実のみであろう。

 結晶の中に眠るのは、彼にとって特別な存在であった人間である。
 彼女が、天寿を全うした後、彼は年老いた屍を咥えここに来た。
 ここに来た理由は、死者の蘇生に都合が良かったから。
 彼には、死者の蘇生を可能とする能力があったが、それには満たさなくてはならない幾つかの条件があり、この場所が最適だったのである。
 だから、ここに来た。ここに、屍を運んだ。
 年老いた肉体を若返らせ、いつでも蘇らせることができるようにもした。
 だけど、彼には彼女を蘇らせようという考えがあったわけではない。
 それらは、無意識の行動であったし、彼女が死後に蘇ることを望んでいたとも思えない。
 そもそも、彼女の望みは死を迎えるその時まで彼と共にあることで、死を免れたいなどとは思っていなかったのだから。
 つまりは、彼女を蘇らせたいというのは彼の我侭でしかなく、それに彼女が自分を置いて先に逝ってしまうことなど最初から理解していたはずなのに、いざその時が来ると自分を見失い蘇らそうとしているなど、笑い話にもならない。
 だから彼は悩み続けているのだ。

 そんなある日、洞穴に人が訪れる。
 またか。というのが、彼の感想。
 この洞穴には、たまに竜退治を目的とした侵入者がやってくる。
 別に、彼が何かをしたというわけではない。むしろ、何もしなかったからと言うべきだろう。
 彼は何もしなかった。
 近在の住人を助けたこともないので、人に受け入れられるはずもない。
 人を襲ったこともないので、ただ侮られた。
 そこが、竜の住まわない大陸だったのも悪かったのだろう。
 急に住み着いた、得体の知れない怪物を恐れない人間がいるはずもないのだ。

 もっとも、竜の生息する大陸であっても事態はそれほど変わらなかっただろう。
 元いた国において、この強大な力を持つ怠惰な怪物が人に受け入れられたのは、彼を怪物として扱わず引っ張りまわし人のために働かせた子供たちの存在があったからなのだから。
 とはいえ、彼を退治しようという者も、そう多いものではない。
 放って置けば洞穴に引きこもっているだけの、人の力の及ばぬ怪物を討伐しようなどと考える酔狂な人間はあまりいない。
 実際、今度の侵入者にしても半世紀ぶりであるのだが、自身が千年近くも引きこもっているという自覚のない彼は、時間感覚が狂いまくっており頻繁なのだと感じていた。

 さて、どうしたものかと侵入者を待ち受ける彼は、おかしなことに気づく。
 小さいのだ。その足音が。
 パタパタという軽い足音と、それに続く獣のものであるとわかるそれ。
 なんだろうと疑問を持って迎えた彼の前に現れたのは、小さな少女。
 そして、その少女の後を追ってくる狼の群。
 狼に追われた少女は、自分の向かう先にいる彼に気づかず、狼たちもまた興奮しているのだろう、普段なら決して足を踏み入れない洞窟に入り込んでくる。

「もう、しつこいな」

 呟きを漏らし、少女は洞穴の暗さから彼を岩か何かと勘違いしたか、その体に手をかけよじ登ろうとし、しかし足を滑らせて尻餅をついたところに襲い掛かろうとした狼は、そこで足を止める。
 ようやく気づいたのだ。
 ここが、怪物の巣であることに。
 彼が何の気なしに、顔を近づけるとそれだけで狼の群は悲鳴を上げて逃げ出した。

「あれ? なんで?」

 事態が分からず、キョロキョロと顔を動かした少女は、そこで頭上に金色の灯火を見つけてしまう。
 それが、彼──竜の瞳であると少女が気づく前に、彼は口を開く。

「ここは、俺の巣だからな。本当なら、獣が入ってくること自体ありえないんだ」
「へ? アンタ何?」
「竜だ」
「リュウ? あの、おとぎばなしの?」
「御伽噺?」
「うん。悪い子は、食べちゃうっていうあの」
「いや、人を食ったことはないぞ」
「そうなの?」
「ああ」

 話しながら、変な子供だなと彼は思う。
 人間を食べると教えられている竜に会って、脅えもせずに話ができる子供というのは珍しいのではないだろうか。
 そんなことを考え込む彼に構わず、少女は問いかける。

「それで、リュウは何でこんなところにいるの?」

 さて、どうしてだろうね。と、彼は空を見上げる。洞穴の天井が見えるだけだが。
 実際のところ、彼がここにいなければならない理由はない。
 結晶内に眠る者を蘇らせることを決めようと、あきらめようと、どちらにしろ選択をしてしまえばここに用はないのだ。
 つまりは、優柔不断ゆえにここにいるということ。

「どうしたの?」
「いや、なんでもない」

 あと、ここにいることに理由もないと答えた彼に、少女は少し考えて、口を開く。

「わたしと一緒に来ない? リュウもこんなところに一人ぼっちじゃ寂しいでしょ」

 どこに? と思ったが、答える言葉は別のもの。

「言っとくが、竜ってのは名前じゃないぞ。人間」

 人間という呼び方に、少しムッとした顔になった少女は、自分の名を名乗った後に、彼の名を尋ねてくるが、そこではたと彼は気づく。
 名を尋ねられて、自分はなんと答えればいいのかと。
 別に名前がないわけではない。忘れてしまったわけでもない。
 彼には、人間だった頃に親につけられた名前と、竜になってから一人の少女につけられた名がある。
 だけど、人間だった頃の彼を知るものはこの世界にはおらず、竜になった後に名をつけてくれた少女は眠りについた。
 今の自分が、なんと名乗ればいいか判断の付かない彼は、「好きに呼べばいい」としか言えない。

 そして、少女は少し考えた後に言う。

「じゃあ、レッドって呼ぶね」

 その言葉に、呼吸が止まる。

 人生とは、自身を主人公とした物語なのだと言う。
 そして、彼の物語は、彼をレッドと呼ぶ少女と共にあることで紡がれるのだ。



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とりあえず完結。
気が向いたら、番外編を書く可能性が無きにしも非ず。


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