季節は夏、レジャーな季節である。
肌を射す陽射しの下、海岸にだらしなく寝そべり、下あごを砂に埋めて眠っていた俺は、顔を叩くペチペチという音に頭を覚醒させる。
そして、目を開けるなり「キャー!!」という楽しそうな悲鳴を上げて逃げていく金髪の幼女。
なんだかねー。と、その幼女を視線だけで追うと、走っていく先にはよく似た顔つきの金髪の男の子がいて、木の影からオドオドとこちらを見ている。
別の方向に視線を転じると、こちらが見ていることなど気にもならないという風に、ひざを抱えて海を見ながら黄昏ている少女たちがいたり、更に別のところでは泳ぐ水竜の背中に乗った幼女がいたり、それを追いかけて泳ぐ少女たちやおっさんがいたり、幼女や少女たちと鬼ごっこに興じる老人がいる。
ついでに、シートの上に寝そべり目を閉じた少年やら、それを愛しそうな目でみる少女やら、周囲の者にどう見られようと知ったことかと言わんばかりに、肩を抱き合う少年少女がいたりするが、そちらからは目を逸らしておく俺です。
もげればいいと思うよ。
夏の海な浜辺にて全員が水着を着ている、この一行が何者たちなのかといえば、このアカネイア大陸にある国々の王族がほとんどだったりする。
◆
アカネイア聖王国とマケドニアの間で始まった戦争は、春に始まり夏をまたいで秋にはマケドニア側の勝利で終息した。
元々、平和ボケしたアカネイアとマムクートや野生の竜を軍に組み込んだマケドニアでは、軍事力に大きな開きがある。
それでも、大陸の盟主国であるアカネイアには、他の多くの国に軍を要請する権限があり、アカネイアでなくてもマムクートや竜を忌避する者は多い。
いかに強大な軍事力があったとて、大陸のほとんどの国を敵に回しては勝利するのは簡単ではないし、竜は強大だが市街戦への投入は制限されるという欠点がある。
なにしろ、竜の巨体では建物を破壊せずに戦うというわけには行かないし、最大の武器である炎のブレスなんか使おうものなら、街は火の海になってしまう。
竜による殲滅戦をしかけ、生き残ったものを恐怖を持ってして支配するというのならともかく、そうでない以上、無意味に軍人でもない者たちの被害を出すわけには行かないのである。
戦争の序盤に、グルニアが同盟国になったが、それでも主力を欠いたマケドニアが勝利するのは難しかった。
と言っても、負けはないのだが。
マケドニア、グルニア同盟軍に対してに守衛ではなく攻勢に出ようというのなら、アカネイア連合軍は市街戦を捨てて、野外戦をいどみ勝利しなくてはならない。
そうなれば、マケドニア側は多くの竜を組み込んだ軍を戦に使えるし、それを突破できるのは連合軍では神剣ファルシオンを所有するコーネリアス王のいるアリティア軍くらいのものであったろう。
だけど、アリティア軍が攻勢に出てくることはなかった。
当然だろう。
連合軍にはアカネイアの貴族たちが率いる軍もあったのだ。
竜に対して優位にある唯一の戦力を出撃させて、その間に自分たちの軍が竜に襲われてはたまらないというのが、アカネイア貴族たちの考えであったのだ。
まあ、マケドニア側に、市街に陣取る連合軍相手に竜を投入する気はなかったのだが、マムクートなどという化け物と手を組む者たちに対する信用など、アカネイア貴族にはなかったということである。
そうして、どちらが優勢とも言えない状況は、夏も終わろうという頃に変化する。
自身の保身ばかりを考えるアカネイア貴族たちに対して、さっさと戦争を終わらせるように本国から指令が下ったのだ。
現場を知らない本国の貴族たちにとって、いつまでも勝ちも負けもない膠着状態と言うのは、現地の軍人たちの怠慢ゆえのものであるとしか思えないし、それも間違いとは言い切れない辺り、救われない話である。
そうして、連合軍が攻勢に出ることになった。
竜が存分に暴れられる野外戦においてのアリティア軍の活躍は、予想以上のものであったという。
なにしろ、アリティア王、コーネリアスの持った神剣ファルシオンがチートくさい。
竜殺しの特性を持つその剣は、それだけではなく剣や槍で接近戦を仕掛けてくる者の動きを封じ一方的に攻撃ができるという、FC版にみられた劣化マフーな特殊能力を持っていたのである。
まあ、魔法や弓矢による攻撃には無力だったりするが、両軍入り乱れての乱戦に、敵国の王をピンポイントで狙撃するなどということがいかに難しいことかは説明するまでもないだろう。
ついでに言えば、アリティア軍はドラゴンキラーを大量に仕入れて武装すると言う正気とは思えないことをやっていた。
竜以外には効果が薄い上に、非常識なまでに高額な武器を大量に仕入れるとか、正気の沙汰とは思えないが、今回に限ってはそれが効果的だったのだから戦争は分からないものである。
唯一つの誤算がなければ、アリティア軍の奮闘によりマケドニアは敗北していたのかもしれない。
だけど、現実は非常なもので、そのたった一つの計算違いから連合軍は瓦解することになった。
その誤算とは、ぶっちゃけてしまうとマケドニアが世界に誇る大怪獣カーマインの存在である。
同じく怪獣と言える俺や、他の火竜たちですら高く見上げなければならない巨体を誇る大怪獣を前にしては、ドラゴンキラーはもちろん神剣ファルシオンすら 一寸法師の持つ針の剣にも等しい。
なにしろ、剣を根元まで突き刺しても、内臓に届かないどころか筋肉に届くかどうかという巨体である。
そんな相手に、剣が何の役に立つというのだろう。
結果、コーネリアスはカーマインに踏み潰され、アリティア軍は敗走。
更に、ガーネフの仕込により、連合に勝ち目がないと思ったならマケドニアにつこうと考えていたグラ王国が裏切り、あっさりと連合軍は瓦解した。
そうなると、後の事態は早い。
アリティアは王を失い、主力となる騎士団は壊滅。グラは、マケドニア側についたしと、他にオルレアンなどが残っていたとはいえアカネイア聖王国の滅びは、決定的になったと言っていい。
ことここに至って、アカネイア聖王国は、和平の使者を送ってきた。
それは降服ではなく、マケドニアのマムクート受け入れを許可するから軍を引けという、あきれた要求であったが、条件つきでマケドニアはそれを受け入れた。
これには、アカネイアを除く多くの国の首脳があきれたものだが、マケドニア側にも考えというか事情というものがある。
そもそも、強大な軍事力とカーマインという大怪獣。それに、この俺レッドいう真なる竜なんかがいるとはいえ、元々がマケドニアは国力が低く政務を得意とした人材の少ない国家であり、王であるミシェイルにしても十代の半ばを過ぎたばかりの少年でしかない。
この状況でアカネイア聖王国を滅ぼしても、各国を統治する能力がないのである。
であれば、無理に占領をしようと考えるより、軍を退いて今は国力を高める努力をするべきだろうというのが少年王の考えであった。
ここで軍を退いては、またアカネイア聖王国が調子に乗って攻めてくるのではないかと言う者もいたが、ミシェイルはそれを笑い飛ばした。
この戦争で、各国はマケドニアの軍事力の強大さを思い知ったはずであり、ほとんどの国はもう二度とマケドニアを敵に回そうとは考えないだろうし、何も無条件で軍を退こうというわけではない。
マケドニアが条件として要求したのは、この戦争に参加した各国の王族の子供たちを留学させることであった。
それは、友好国として、マケドニアのことを知ってもらうためというのが名目であったが、それを額面通りに信じる者などいるはずがない。
王族、それも王位継承権を持つものを差し出せなどといったのだから、それが人質を要求してのものであるのは明らかである。
各国の首脳陣は、それに不満を持っただろうが、アカネイア聖王国ですら、それを突っぱねることはできなかった。
そもそも、マケドニアの軍事力はもちろん、山のような巨体を持つ大怪獣を相手に勝ちを拾うことなど不可能であると悟らないほどの愚か者など存在しなかったのである。
◆
そんなわけで、集められた各国の王族は何故か俺のところに預けられました。
なんでさ?
と聞いてみたら、「各国の王族ともなれば、監視と保護を欠かすわけには行かないが、閉じ込めておくのも可哀想だ。なら、どちらにも慣れてて屋外に連れ出すことも問題なく行えるレッドに預けるべきだろう」なんて言われましたよ。
そりゃまあ、エリスやチキで慣れてるけどさあ。でも、いっぺんに人が増えすぎだと思うんだよね。
グルニアから来たのは、現在、ふくらみがないせいでブラがずれそうな黄色いツーピースの水着を着たユミナと、ブーメランパンツのユベロ。二人の幼児は、木の陰に隠れて俺のことを珍獣か何かを見るような目で見ています。
いいけどさぁ、どうせ獣だし。
あと、二人の護衛としてグルニアの黒騎士、トランクス型のパンツのカミュ少年も来てますが、アリティアの王女といちゃついてますよ。もげろ。
アカネイアから来たのは、ご存知ニーナ王女。
まだまだ女性と呼ぶには不十分な幼さを残し、膨らみ始めた胸を包むは、白いブラのモノキニ。
本人に責任はないとはいえ、去年の戦争やらなにやらの原因であるアカネイアの王族であるだけあって、王宮での風当たりも強く、まだ他の子供たちとも上手く馴染めていないらしく、一人でシートの上で体育座りしてます。
なんとかしてあげたい気もするけど、一番警戒されてるのは俺だしね。
それにメンドクサイし。
あと、カミュとはフラグが立ってないようです。
まあ、特に接点がないしね。
グラからはピンクのベアトップのワンピースで、他の少女たちよりは大きめな胸を強調したシーマ王女。
なんでも、マケドニアに人質として送るためだけに王位継承権を与えられた庶子だとかで、他の国は王位継承権上位の子供たちを送ってきているのにと、ニーナとは別の意味で王宮の風当たりが強かったりする。
本人は、貴族の生活には慣れないとかで最初は他の子供たちと距離をとっていたけど、いまは元気なマケドニアっ子たちと仲良くなって、水竜を追いかけて泳いでたりします。
マケドニアの子供たちは、貴族や王族だって元気に野山を走り回ってるしね。
少なくとも俺の知る限りは。
アリティアからは、ユベロと同じブーメランパンツなマルス王子。
エリス王女も、こっちにいるしコーネリアス王も死んだしで国は大丈夫かと思わなくもないけど、王妃が生きてるからなんとかなっているらしい。
本人がどう思っているのかというと、エリスがいるのならと納得してるっぽい。
なんと、アリティアの盗賊王子はシスコンだったようです。
しかし、本人は年下の女の子に懐かれやすい属性でも持っているのか、スカートのついた薄桃色のお揃いのワンピースを着たチキとハイドラに手を引っ張られて鬼ごっこの鬼から逃げています。
そして、そんな三人を妬ましそうに睨みながら追いかける鬼役のビキニパンツの老人が二人。
子供相手に嫉妬してんなよ。
自重しないジジイ共だよ、メディウスとバヌトゥ。
というか、ドルーアの皇帝が娘にせがまれたからなんて理由で、度々遊びに来てるんじゃねえ。
でまあ、当然マケドニアの子供たちもいつも通りに来ていて、王女二人はおそろいの赤いタンキニを着て、ミネルバはスイカ割りをしてるわけでもないのに棒っきれを持って素振り──戦争に参加できなかったのをまだ気にしてるらしい──をしていて、マリアは海のその辺を泳ぐ水竜、ブルーの背中に乗って遊び、それを追ってダロスが泳いでいる。
そして、いつものようにミネルバにはパオラ、マリアにはエストがつき合わされていて、 三姉妹は緑、青、オレンジの色だけが違うホルターネックのワンピースを着ていて、いつの間にかカチュアの膝枕で寝ているミシェイルはトランクスタイプの水着を着ている。
ちなみに王宮では、ミシェイルの代わりにガーネフが政務を取り仕切ってくれている。
「もう、いっそ国を乗っ取ってくれてもいいぞ」
とは、ミシェイルの弁。
苦労してるからね。
でもって、レナは泳ぐ気がないのが丸分かりのストラップレスの白いワンピースを着ていて、小山のような巨体を猫のように丸めて眠ってるカーマインの首に顔をうずめて目を閉じたりしています。
てか、仲いいよね。カーマインなら、そのうち人間の姿を手に入れてレナと恋人同士になっても驚かない自信があるね。なんかもう、ホントに竜なのかも怪しい怪獣だし。
ぼけっと子供たちを見てたら、また眠くなってきたので目蓋を下ろそうと半眼になったところで、またペチペチと顔を叩かれた。
薄目を開けて見ると、戻ってきたユミナがユベロの手を引いてつれてきて二人でやっていた。いやもう、何がやりたいのよこの子。
まあ、どうでもいいか。
目を閉じて、もう一度眠ろうとしたら、今度はバシバシと叩かれた。
って、ホントに何やってんだよ。俺じゃなきゃ怒った竜にかみ殺されても文句を言えないぞ!
パチリと目を開けたら、そこには俺の鼻先を手に持った棒っきれで叩き続けるミネルバの姿が……。
ってオイ。何やってるのさ。
聞いてみたら、「起こそうと思って」などと、悪びれもなく答えてきた。
何この子怖い。
パオラなんかは、俺がぶちきれて暴れるんじゃないかと怖がって引いているのが印象的です。
人──竜だけど──の顔を棒で殴って悪びれないミネルバと、長い付き合いなのに俺がこのくらいで怒るはずがないと理解していないパオラでは、どっちが正常なのかしら。
考え込んでたら、また棒で叩かれました。何なのよ。
「遊びに来た先で、寝てないで私たちの相手もしろ」
むう。ミシェイルだって寝ているのに、俺は叩き起こされるこの理不尽。
「兄上はいいんだ。政務で疲れているからな」
まあ、その通りだけど俺だって日々働いているのよ。子守りの仕事を。
「なら、今も働いたらどうだ。居眠りなんかしてないで」
ごもっとも。だけど、俺にも言い分があるんだよ。
マケドニアの子供たちを含め、各国の王族の子供たちの監視と保護なんて、24時間休まずやってるんだから、たまには気を抜いてもいいじゃない。
「そのくらい、寝ながらでもできる癖に何を言っている」
うっ、バレてる。
その通り、最近分かったんだけど、俺には寝ながらでも意識を世界に溶かし夢を見るようにあらゆる場所を視て、そこに見えざる手を伸ばす能力があるのだ。
その気になれば、アカネイア大陸の他の国でマケドニアに対して行われようとしている陰謀の全てをリアルタイムで知ることも、不埒な者にたちに見えざる手でお仕置きすることもできるわけで、それに比べれば王宮内にいる子供たちの監視なんて簡単だったりするのだ。
「それに、レッドは本当に寝ないで働いたりしても別に疲れたりしないだろう」
むう。そこまで知られていたか。
他の竜は知らないけど、俺──とカーマイン──には肉体的な疲労というものがない。
だから、どれだけ体を動かそうが、休まなかろうが疲れて動けなくなるという事態がありえない。
もっとも、精神的な疲労はあるんで休息や睡眠が不要というわけでもないのだが。
しかし、なんでそこまでミネルバに知られてるのだろう。
「レナに聞いた。カーマインが教えてくれたと言ってたぞ」
むう、恐るべしカーマイン。俺の能力を把握するとは並みの火竜にできる事ではないぞ。元々、並みの火竜じゃないだろうという話は置いといて。
人語を解さないカーマインの言ってることが理解できるレナも大概だが。
まあ、どうでもいいけどね。
じゃあ、空中水泳をしたい子は集まれー!
言ってみたら、何だろうと好奇心を持った子供たちが集まってきた。
集まってこないのは、カーマインに付きっ切りのレナ以外では、寝てるミシェイルと、膝枕をしているカチュアと、二人の世界を作っているカミュとエリスだけです。チッ。
「舌打ちしてないで、どんな遊びなのか説明しろ」
へいへい。つっても、そんな凄いことはやらないからね。メディウスとバヌトゥまで期待に満ちた目でコッチ見んな。プレッシャーきついから。
まず、海水を持ち上げる。
バケツ一杯とか、そんなしょぼい量ではなく、直径が数百メートルにも達する球体の海水が海の魚やブルーごと持ち上がり、光に照らされ宝石のように青くきらめく。
うん。前に試しにやった時よりも大規模だけど、思いのほか上手くいったな。
「これは……、なんというか凄いですな」
メディウスなんかは感心したように呟くが、子供たちの年少組なチキやハイドラは好奇心を刺激されたらしく、中空に浮かぶ海水に手を伸ばし沈み込ませ、ユベロの手を引いたユミナなんかも近づき球体内の魚を見て眼を輝かせている。
「これは一体?」
空中プールとでも名づけよう。普通に泳げるよ。
尋ねてくるミネルバに答えてあげてたら、チキとハイドラの二人が、地上50センチほどの高さに浮かぶ海水球に飛び込みました。
物怖じしないマムクート幼女たちです。
面白そうに海水球の中を泳ぐ二人は、しばらくして苦しそうにもがき始めました。
そういえば、息継ぎのことを考えてなかったなー。とか考えてたら、力尽きて沈んだ二人が海水球からボトリと砂浜に落ちました。
溺れても、こういう風に落ちてくるだけだから救助が簡単だとか考えてたんだけど、よくよく考えてみたら息継ぎなしで数百メートル泳いで上まで行かないと溺れるのが前提になってしまってたらしい。横から顔を出す手もあるけど、それだと勢いあまって海水球から飛び出してしまう恐れがあるしね。その場合は見えざる手で拾う用意があるけど教えてなかったしね。いや、失敗失敗。
「言いたいことは、それだけですかな」
ん? と振り返ると、なぜか地竜と火竜に変身したメディウスとバヌトゥがいる。
えーと? ひょっとして怒ってる?
無言で噛み付いてきた。うん。ごめんなさい。
◇
というわけで、空中プールバージョン2が用意できましたよ。
「何が違うんだ」
即座に突っ込みを入れてくるミネルバの眼は冷たい。うん、自業自得だね。
で、何が違うかと言うと、今度の海水球は飛び込むと顔の周りに気泡ができて息継ぎができるのです。気泡内の酸素を消費しきって窒息するなどということのないよう、海水中の酸素を集める機能付き。完璧だ。無駄に器用だぞ俺。
「本当に大丈夫なんだろうな?」
疑わしそうに聞いてくるミネルバ。
むー、そんなに俺が信用できないのか。傷つくぞ。
「人を溺れさせておいて悪びれもしないような奴のことが信じられると思うのか?」
ポカリと手に持った棒っきれで殴りつけてくるミネルバ。
歯形の上を殴るのは止めてよ。さすがに痛いから。
「歯形のない所なんてないだろう」
うん、全身くまなく噛まれたからね。怒りすぎだろ大人気ないジジイ共め。
ともかく、今度は大丈夫だから、安心して飛び込みなさいって。
俺が言うと、わーいと飛び込もうとするチキとハイドラ。そして、慌てて二人を止めるバヌトゥとメディウス。
あんまり過保護なのは子供に嫌われるよ。
「一度溺れてるんだから、当然だろう」
絶望した! 一度の失敗で、信用されなくなる世間に絶望した!
「信用されたいのなら、レッド様が飛び込んで見本を見せればいいんじゃないですか」
急に口出しして来て、余計なことを言ってくるアリティアの王子。
そして、それはいい考えだなどと同意する皆さん。
だが断る。溺れたら嫌じゃないか。
「へー?」
ああ、みんなの視線が更に冷たく。
いやいやいや、俺は火竜だから溺れるかもしれないってだけで、君たちは問題ないはずだよ。
俺の言葉に、顔を見合わせる子供たち。そして、レナの手を引いてこっちにつれてくるマリア。なして?
「カーマイン!」
騎乗を許した唯一の少女の言葉に答え、こちらに歩み寄る巨竜。
うう。なんか、ものすごく悪い予感がするぞ。
大型猫科が子供にそうするように、俺の首を咥え持ち上げるカーマイン。うん。なんかもう、オチが読めたよ。
パシャーンッ、という音を上げて海水球に放り込まれた俺が無事なのを確認してから次々に水に飛び込む子供たち。
扱い悪いよなぁ。
海水が、噛み傷にしみるし。
しかしまあ、退屈をしない、こんな毎日がいつまでも続くことを望んでいたんだなぁと思ったのは、かなり後になってのことであった。
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Q. なんで、Act.18なんですか? Act.14~17はどうしたんですか?
A. PCの修理→ハードディスク初期化で消えた書き溜めを、もう一度書き直す気力が湧かなかったからです。
Q. ということは、Act.17まで四話も書き溜めてあったんですね。
A. ……。
Q. なぜ、眼を逸らす?
いっぺん消えて、続きを書く気力も消えたので、終わりにします。
水着の説明は適当。