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No.7921の一覧
[0] 水色の星T(灼眼のシャナ再構成)【本編完結】[水虫](2009/09/18 09:45)
[1] 水色の星T 一章『魔軍を統べる者』一話[水虫](2009/04/09 20:41)
[2] 水色の星T 一章 二話[水虫](2009/04/11 19:38)
[3] 水色の星T 一章 三話[水虫](2009/04/12 20:21)
[4] 水色の星T 一章 四話[水虫](2009/04/14 05:56)
[5] 水色の星T 一章 五話[水虫](2009/04/15 19:59)
[6] 水色の星T 一章 六話[水虫](2009/04/17 04:43)
[7] 水色の星T 一章 七話[水虫](2009/04/24 20:15)
[8] 水色の星T 一章エピローグ『欲望の肯定者』[水虫](2009/04/24 20:17)
[9] 水色の星 二章『動きだした歯車』一話[水虫](2009/04/28 21:07)
[10] 水色の星T 二章 二話[水虫](2009/04/30 20:00)
[11] 水色の星T 二章 三話[水虫](2009/05/02 20:16)
[12] 水色の星T 二章 四話[水虫](2009/05/07 21:05)
[13] 水色の星T 二章 五話[水虫](2009/05/09 12:23)
[14] 水色の星T 二章 六話[水虫](2009/05/10 05:25)
[15] 水色の星T 二章 七話[水虫](2009/05/10 21:30)
[16] 水色の星T 二章 八話[水虫](2009/05/13 19:53)
[17] 水色の星T 二章 九話[水虫](2009/05/15 22:02)
[18] 水色の星T 二章 十話[水虫](2009/05/16 20:04)
[19] 水色の星T 二章エピローグ『疑惑の接触』[水虫](2009/05/17 20:28)
[20] 水色の星T 三章『炎の揺らぎ』一話[水虫](2009/05/18 21:09)
[21] 水色の星T 三章 二話[水虫](2009/05/22 04:57)
[22] 水色の星T 三章 三話[水虫](2009/05/23 05:53)
[23] 水色の星T 三章 四話[水虫](2009/05/24 16:39)
[24] 水色の星T 三章 五話[水虫](2009/05/28 04:56)
[25] 水色の星T 三章 六話[水虫](2009/05/27 21:30)
[26] 水色の星T 三章 七話[水虫](2009/05/28 23:07)
[27] 水色の星T 三章 八話[水虫](2009/05/29 21:47)
[28] 水色の星T 三章エピローグ『人間の戦い』[水虫](2009/05/30 21:37)
[29] 水色の星T 四章『銀の宣誓』一話[水虫](2009/06/01 21:54)
[30] 水色の星T 四章 二話[水虫](2009/06/03 21:17)
[31] 水色の星T 四章 三話[水虫](2009/06/05 21:51)
[32] 水色の星T 四章 四話[水虫](2009/06/09 04:07)
[33] 水色の星T 四章 五話[水虫](2009/06/10 00:02)
[34] 水色の星T 四章 六話[水虫](2009/06/10 23:48)
[35] 水色の星T 四章 七話[水虫](2009/06/12 21:27)
[36] 水色の星T 四章エピローグ『想いの閃光』[水虫](2009/09/25 19:44)
[37] 水色の星T 五章『この世の運命を賭けて』一話[水虫](2009/06/22 21:37)
[38] 水色の星T 五章 二話[水虫](2009/06/24 18:50)
[39] 水色の星T 五章 三話[水虫](2009/06/27 21:31)
[40] 水色の星T 五章 四話[水虫](2009/07/01 20:22)
[41] 水色の星T 五章 五話[水虫](2009/07/02 23:30)
[42] 水色の星T 五章 六話[水虫](2009/07/04 22:09)
[43] 水色の星T 五章 七話[水虫](2009/07/07 04:58)
[44] 水色の星T 五章 八話[水虫](2009/07/08 20:35)
[45] 水色の星T 五章 九話[水虫](2009/07/09 23:01)
[46] 水色の星T 五章 十話[水虫](2009/07/11 17:33)
[47] 水色の星T 五章 十一話[水虫](2009/07/13 21:56)
[48] 水色の星T 五章 十二話[水虫](2009/07/15 20:45)
[49] 水色の星T 五章 十三話[水虫](2009/07/17 19:16)
[50] 水色の星T 五章 十四話[水虫](2009/07/20 05:29)
[51] 水色の星T 五章 十五話[水虫](2009/07/22 05:42)
[52] 水色の星T 五章エピローグ『両界の狭間へと』[水虫](2009/07/23 07:30)
[53] 水色の星T 六章『黒蛇への旅路』一話[水虫](2009/08/24 12:54)
[54] 水色の星T 六章 二話[水虫](2009/07/26 14:09)
[55] 水色の星T 六章 三話[水虫](2009/07/29 06:37)
[56] 水色の星T 六章 四話[水虫](2009/08/05 08:49)
[57] 水色の星T 六章 五話[水虫](2009/08/07 06:09)
[58] 水色の星T 六章 六話[水虫](2009/08/07 21:30)
[59] 水色の星T 六章 七話[水虫](2009/08/09 06:24)
[60] 水色の星T 六章 八話[水虫](2009/08/10 05:53)
[61] 水色の星T 六章 九話[水虫](2009/08/10 13:56)
[62] 水色の星T 六章 十話[水虫](2009/08/11 11:41)
[63] 水色の星T 六章 十一話[水虫](2009/08/12 05:28)
[64] 水色の星T 六章 十二話[水虫](2009/08/21 21:23)
[65] 水色の星T 六章 十三話[水虫](2009/08/23 17:49)
[66] 水色の星T 六章 十四話[水虫](2009/08/23 17:45)
[67] 水色の星T 六章 十五話[水虫](2009/08/24 20:02)
[68] 水色の星T 六章エピローグ『激突の星炎』[水虫](2009/08/25 19:05)
[69] 水色の星T 七章『交錯する炎』一話[水虫](2009/08/26 13:57)
[70] 水色の星T 七章 二話[水虫](2009/08/27 19:47)
[71] 水色の星T 七章 三話[水虫](2009/08/28 15:34)
[72] 水色の星T 七章 四話[水虫](2009/08/29 12:32)
[73] 水色の星T 七章 五話[水虫](2009/08/31 08:25)
[74] 水色の星T 七章 六話[水虫](2009/09/25 19:36)
[75] 水色の星T 七章 七話[水虫](2009/09/03 05:25)
[76] 水色の星T 七章 八話[水虫](2009/09/25 19:42)
[77] 水色の星T 七章エピローグ『再臨の大縛鎖』[水虫](2009/09/25 19:39)
[78] 水色の星T 八章『天壌を駆ける者たち』一話[水虫](2009/09/04 16:13)
[79] 水色の星T 八章 二話[水虫](2009/09/05 11:26)
[80] 水色の星T 八章 三話[水虫](2009/09/06 09:23)
[81] 水色の星T 八章 四話[水虫](2009/09/07 20:57)
[82] 水色の星T 八章 五話[水虫](2009/09/08 15:38)
[83] 水色の星T 八章 六話[水虫](2009/09/09 19:46)
[84] 水色の星T 八章 七話[水虫](2009/09/10 17:53)
[85] 水色の星T 八章 八話[水虫](2009/09/11 14:29)
[86] 水色の星T 八章 九話[水虫](2009/09/12 11:24)
[87] 水色の星T 八章 十話[水虫](2009/09/14 06:22)
[88] 水色の星T 八章 十一話[水虫](2009/09/13 22:02)
[89] 水色の星T 八章 十二話[水虫](2009/09/14 18:57)
[90] 水色の星T 八章 十三話[水虫](2009/09/15 16:34)
[91] 水色の星T 八章 十四話[水虫](2009/09/16 20:11)
[92] 水色の星T 八章 十五話[水虫](2009/09/17 16:21)
[93] "水色の星"フィナーレ《完》 『そして世に咲く、緋願花』[水虫](2009/09/18 19:33)
[94] 『あとがき』[水虫](2009/09/18 09:44)
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[7921] 水色の星T 五章 十三話
Name: 水虫◆70917372 ID:31cfef67 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/17 19:16
 
 戦勝した将軍と、敗残の強者との一騎討ち。
 
 わざわざ自らが追っ手となってここまで来て、さらに追従してきた二人の徒の力を借りるつもりもないらしい。
 
 機を見るに敏、確かにそうとも言える。『捜索猟兵(イエーガー)』を放ち、その帰還を待ってから新たに、自分を仕留められるだけの部隊を編成してから追わせる、という過程を経れば、今という状況では致命的な時間を食ってしまうだろう。
 
 だから、こちらの狙いを看破したシュドナイ自らが出向いた、最も速く、最も確実な手段として。
 
 当然、万が一にも敗残の討ち手に『将軍』が討たれる危険を孕んだ、普通ならばまずしないリスクはある。
 
 だが、それを平気でやってのけるほどの自信があり、そしてそれは自惚れではない。
 
 それだけの実力を、この『仮装舞踏会(バル・マスケ)』の将軍は備えているのだった。
 
 今、それを身を以て、再認識させられる。
 
 
「ぬっ!?」
 
 直剣が弾け飛び、散らされた紅梅色の霞が、再び剣の柄を握って、天女の姿となる。
 
 東洋屈指を誇るフレイムヘイズ、『剣花の薙ぎ手』の戦闘形態・『捨身剣醒』である。
 
 しかし‥‥‥まずい。
 
「やるものよ、嗤尤」
 
「一世紀余の一人働き程度では、差配の腕も錆びぬということか‥‥」
 
 二人で一人の『剣花の薙ぎ手』は、ただ戦士として、目の前にいる将軍を認めていた。
 
 変幻自在に姿を変え、剛槍を振るう猛虎、初撃からこちらの動きに追い付き、灼熱の霞を払い、幾度となく剣を弾いた。
 
 だが、問題はそれだけではない。
 
(まずい‥‥)
 
(後、何合打ち合える‥‥‥?)
 
 シュドナイの体から変化した異形を斬り裂き、焼き払うも、それはシュドナイ自身にダメージらしいダメージを与えてはいない。
 
 何より、戦うにつれ、こちらの動きを掴んできているらしい。
 
 このままでは、確実に捉えられる。
 
 そんな圧力を感じる虞軒とは裏腹に、対峙するシュドナイには余裕さえ出てきていた。
 
「虞軒、全くお前は運がいい。『神鉄如意』の全力を、目の当たりに出来るぞ」
 
 両手で剛槍を腰溜めに構えたシュドナイが、息を一吸いし、
 
「ッゴァアアアアア!!」
 
 全力で、突き出した。
 
 それは只の刺突ではない、回避も防御も困難な、無数の槍の穂先に紫の炎を纏わす槍撃だった。
 
「っ!!」
 
 紅梅色の天女を散らし、直剣を当然のように巻き込んだその刺突は、眼下のビル二軒を貫き、
 
「ふんっ!」
 
 シュドナイの一閃によって、シュレッダーにでも掛けたように、横に“オロされた”。
 
 ガラガラと崩れ落ちるビルだった物に、かろうじてその一撃に耐えた直剣・『昆吾』が埋もれる。
 
(このまま、何一つ出来ぬままやられるわけには‥‥‥‥)
 
 自身の余力の無さも、今自分を見下ろす男の実力も十分に理解して、それでも虞軒の心は折れはしない。
 
 再び剣の柄を起点に、紅梅色の天女が生まれ‥‥‥‥
 
(?)
 
 その中途で、
 
(っう!?)
 
 怖気を誘うものが、虞軒の目に移った。
 
 シュドナイの『神鉄如意』に斬り裂かれたビルの断面に、まるでカビのように、無数の眼と口が生えていた。
 
「ちぃっ!」
 
 咄嗟に瓦礫を貫いて脱出する虞軒。
 
 それを追うように、“ビルの断面に生えたシュドナイ”全ての口から吐き出された濁った紫の炎が、大気を灼いて迫る。
 
「佳人の薄命は、花の散るように人を魅せる、か」
 
 
「っ!」
 
 その炎から逃げる虞軒、それを待ち構えていたように、シュドナイは数十倍の大きさに変化した『神鉄如意』を、上に振り上げた状態で“溜めて”いた。
 
 前後から迫る脅威に、虞軒は避けられない。避けられるタイミングではなかった。
 
「嗤尤ぅうーーー!!」
 
 玉砕覚悟、否、全力で前に向かうしか無いと知って、虞軒はただがむしゃらに力を振りまいて突進する。
 
 その潔さに、シュドナイは口の端を上げ、眼をギラつかせて、全力で応える。
 
「散れ! 『剣花の薙ぎ手』!!」
 
 両腕で構えた巨大な剛槍、まさに今、虞軒を容赦無用の一撃で両断しようと、それを‥‥‥
 
(っ!?)
 
 振り‥‥下ろせない?
 
 まるで中空に縫い付けられたように、『神鉄如意』が動かなかった。
 
「将軍閣下!」
 
 オロバスの呼び掛け、その意味を、戦いに身を置く者として理解し、しかし採る行動は同じ。
 
「っ‥‥ふん!!」
 
 何かに縫い止められた『神鉄如意』を強引に振り抜く。ブチブチと何かが切れるような音を立てながら、剛槍が空を裂いて奔る。
 
 しかし、シュドナイが奪われた一瞬の時間は、致命的な時間だった。
 
 全速で猛進する虞軒は、本来なら自身を粉々に粉砕したはずの一撃を、一瞬の差で突っ切って‥‥
 
「ぐっ、あああ!」
 
 シュドナイの肩口に深々と食い込み、その傷口を灼熱の霞が焼いた。
 
「ぐっ‥‥‥!」
 
 槍の柄を回し、その石突きで直剣を弾くと同時に、ビルの瓦礫の断面に張りつかせた自身の目に、二つ、映った。
 
 一つはまるで何かに吊り上げられるように浮かび上がる、露店。虞軒に放たれていた炎の怒涛に直撃し、阻んだらしい。
 
 もう一つは、雨。空から間断無く降り注ぐ、光の雨。
 
 それが、崩壊したビルの瓦礫に降り注ぐ。当然、槍を握る人型から切り離され、ビルの断面に張りつかせた、“千変”シュドナイにも‥‥‥。
 
 ドドドドドドォン!!
 
 ビルの瓦礫を、切り離されたシュドナイもろとも、凄まじい轟音を立てて吹き飛ばした。
 
 自身の一部を丸ごと吹き飛ばされたシュドナイの耳に、
 
「怪我は無いかい? マドモワゼル(お嬢さん)」
 
「あんたがこんな所にいるって事は‥‥総本部はもう手遅れか?」
 
 気障ったらしい声と、重大なはずの事を淡々と言う、どこか無気力な声が響いた。
 
 続いて、
 
「キアラ! 気を抜いちゃダメよ!」
 
「生半可な相手じゃないわ」
 
「は、はい!」
 
 三者三様の女性の声が響いた。
 
(‥‥‥無用な戦闘を極力避けて外界宿を潰していたのが仇になったか。まさか、こんな連中がこの大陸に渡っているとは‥‥‥)
 
 距離を取る意味で、手近な屋上に着地したシュドナイの左右の斜め後方に、オロバスとレライエが降り立つ。
 
 一騎討ちの体裁は取っていたが、それは単にシュドナイ個人の嗜好に依るもの。相手がそれを破った所で、腹を立てる事はない。
 
 ただ、
 
(無粋だな‥‥‥)
 
 と思うだけである。
 
 虞軒のような直接的な知己ではないが、シュドナイは“この二人”についてそれなりに知っていた。
 
「横槍は歓迎しないな、“鬼功の繰り手”サーレ・ハビヒツブルグ、“極光の射手”キアラ・トスカナ」
 
 
 
 
「‥‥‥‥‥‥」
 
 自分は今、こうして『星黎殿』でのんびりと過ごしている。
 
 自身が手を下していないだけで、今この時も、シュドナイによる外界宿の孅滅は進んでいる。
 
 確実に、自分の願いがもたらした結果として。
 
「‥‥‥‥‥‥‥」
 
 割り切ってはいる。
 
 それでも断固として成し遂げる、と。
 
 だが‥‥‥そう、何となく、感傷的になっていた。
 
(子供じみた、願い‥‥)
 
 だが、それを為せるだけの根拠が‥‥力がある。
 
 ヘカテーに出会わなければ、ただの無力なトーチとして消え果てていただろう自分。
 
 まさに自分の存在そのものを否定され、あの頃の『自分の世界』は壊された。
 
 自分の在り方を理解してはいても、それでも、それまでと同じ日常にしがみついた。
 
(皮肉なもんだな)
 
 ヘカテーと共に訪れた非日常、それを変えるための力は確実に、他でもないヘカテーと一緒にいた事で得られた。
 
 全く、数奇な運命だと言える。
 
(日常、か‥‥‥)
 
 『日常の中の非日常』
 
 その中で、得たものも大きかった。それこそ、それまでの日常に劣らぬほどに。
 
 だが‥‥‥‥
 
(自分で、壊した)
 
 わかっていた。彼女たちが、自分の願い、その行く先を認めはしない事。
 
 自分の願いは、結局は自身の望む在り方を世界そのものに強いる、“世界一のわがまま”なのだとも、わかっていた。
 
 “この状態で”出会って、ああなる事は必然。
 
 “銀”の正体を告げないと言った時のマージョリー。
 
(戸惑いながら、怒ってた‥‥‥)
 
 仮面を叩き割った時の、ヴィルヘルミナの顔。
 
(泣いてた‥‥‥)
 
 そして、シャナ。
 
(何か、消えてしまいそうな‥‥‥‥)
 
 迷うつもりはない。
 
 実際、かつての仲間を前にしても、自分は躊躇わなかった。
 
(甘い、かな‥‥‥)
 
 だが、殺さなかった。
 
 
 彼女たち、特にシャナは、『大命』の大きな障壁になる可能性があるのに。
 
(『天破壌砕』、か‥‥‥‥)
 
 『炎髪灼眼の討ち手』のみに許された秘法。
 
 『紅世の王』は、持てる力の総量が多いというだけの、徒の同一種だ。
 
 そして紅世の神も、通常ならばその存在は、紅世の王と大差はない。
 
 ただ一つの違い、それが『神威召喚』。
 
 供物を捧げ、祝詞を歌い、“神としての顕現”を行う行為だ。
 
 これによって初めて紅世の神は、本当の意味で自身の力と権能を発揮出来る。
 
 そしてその力は、かつての『大戦』で、“祭礼の蛇”の御業たる『大命詩篇』を粉々に打ち砕いている。
 
 ‥‥‥器たる『炎髪灼眼』もろとも。
 
 だから、『炎髪灼眼の討ち手』は、『仮装舞踏会』にとって最も具体的で、脅威的な障害なのだ。
 
 なのに、殺さなかった。
 
(あれが、精一杯‥‥‥)
 
 他の皆にも言える事だが、シャナにはそれを徹底して行った。
 
 必要以上に精神的に追い詰め、力の差を見せつけ、戦う気力を根こそぎへし折る。
 
 シャナが精神的な支柱の一つにしているであろう大太刀・『贄殿遮那』を奪い去ったのも、その一環だった。
 
 『大命』の阻止に来る事を防ぐため、来るべき大きな戦いで、万が一にも命を落とさないようにするため。
 
 彼女たちには、この戦いに参加して欲しくなかった。
 
 理屈の面でも、感情の面でも。
 
 もし、『大命』成就を左右する局面で再び戦う事になれば、今度はきっと、手加減なんて出来ない。
 
 今度こそ、殺す事になるだろう。
 
(‥‥‥やめよう)
 
 やるべき事はやった。
 
 後はなるようにしかならない。
 
 なにより、自分には今さら感傷にふけるような資格はないだろう。
 
「悠、二‥‥‥」
 
 ヘカテーが、目を擦りながらやってくる。
 
 起こしてしまったらしい。
 
 ただ、夜中に窓から外を眺めていただけなのだが‥‥‥。
 
 ぽすん、と体ごと悠二にもたれるヘカテー。そのまま安らかな寝息が聞こえてくる。
 
(寝呆けてるだけか‥‥)
 
 そのまま抱き上げ、抱き締める。
 
 ヘカテーは腕の中で「むにゃ」と幸せそうに呻く。
 
 すぐにベッドに戻してあげるべきだ、という理屈はわかっている。
 
 だが今は、もう少しの間、こうしていたかった。
 
 
 
 


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