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No.7800の一覧
[0] 真・恋姫†無双 ~天人・曹仁伝~ [完結][ケン](2018/05/12 13:03)
[1] 第1話 主人公不在[ケン](2009/04/04 14:20)
[2] 第2話 主人公は遅れてやってくる[ケン](2009/04/05 23:51)
[3] 第3話 曹子孝、劉玄徳に出会うのこと[ケン](2009/04/11 14:01)
[4] 第4話 天の御遣いと劉玄徳[ケン](2009/04/16 21:43)
[5] 第5話 公孫賛との再会と趙雲との出会い[ケン](2009/04/27 19:08)
[6] 第6話 張飛拠点イベント[ケン](2009/04/27 19:51)
[7] 第7話 関羽拠点イベント[ケン](2009/05/19 22:53)
[8] 第8話 劉備拠点イベント[ケン](2009/05/19 23:07)
[9] 第9話 褚燕 前編[ケン](2009/05/24 11:10)
[10] 第10話 褚燕 後編[ケン](2009/05/30 13:23)
[11] 第10.5話 幕間[ケン](2009/06/05 18:48)
[12] 第11話 官軍の将軍[ケン](2009/06/12 20:51)
[13] 第12話 再会と1つの別れ(?)[ケン](2009/06/21 08:05)
[14] 第13話 広宗の戦い1[ケン](2009/07/05 14:39)
[15] 第14話 広宗の戦い2[ケン](2009/07/20 23:10)
[16] 第15話 それぞれの歩み[ケン](2009/08/06 22:08)
[17] 番外編 一年前[ケン](2009/08/16 19:22)
[18] 第2章 第1話 洛陽の日常[ケン](2009/08/16 19:16)
[19] 第2章 第2話 天下無双の居る日々[ケン](2009/08/30 10:42)
[20] 第2章 第3話 動き始める洛陽[ケン](2009/10/04 17:11)
[21] 第2章 第3.5話  流浪の大器[ケン](2009/11/06 21:37)
[22] 第2章 第4話 暗闘[ケン](2009/12/05 10:51)
[23] 第2章 第5話 残兵 上[ケン](2009/12/20 15:04)
[24] 第2章 第6話 残兵 下[ケン](2010/01/05 23:20)
[25] 第3章 第1話 反董卓連合[ケン](2010/01/22 16:30)
[26] 第3章 第2話 英傑達[ケン](2010/02/10 19:42)
[27] 第3章 第3話 華雄[ケン](2010/03/01 20:29)
[28] 第3章 第4話 心戦[ケン](2010/04/26 20:11)
[29] 第3章 第5話 決戦前夜[ケン](2010/05/09 18:54)
[30] 第3章 第6話 勇将達の戦場[ケン](2010/07/11 19:45)
[31] 第3章 第7話 力戦[ケン](2010/08/10 20:37)
[32] 第3章 第8話 張繍[ケン](2010/10/19 00:01)
[33] 第3章 第9話 董卓 上[ケン](2010/12/29 20:44)
[34] 第3章 第10話 董卓 下[ケン](2011/04/29 12:17)
[35] 第4章 第1話 曹操軍[ケン](2011/05/10 22:04)
[36] 第4章 第2話 青州黄巾軍[ケン](2011/07/31 12:18)
[37] 第4章 第3話 是れより始まる[ケン](2011/10/23 20:34)
[38] 第4章 第4話 臣従[ケン](2012/01/03 14:28)
[39] 第4章 第5話 曹嵩[ケン](2012/01/29 17:12)
[40] 第4章 第6話 曹孟徳の覇道[ケン](2012/03/08 22:07)
[41] 幕間 白蓮[ケン](2012/03/25 14:38)
[42] 幕間 太史慈[ケン](2012/04/12 21:40)
[43] 第5章 第1話 徐州[ケン](2012/05/12 09:45)
[44] 第5章 第2話 桃香(8/7改訂)[ケン](2012/08/07 10:52)
[45] 第5章 第3話 呂布軍[ケン](2012/08/07 11:22)
[46] 第5章 第4話 許県[ケン](2012/09/07 15:59)
[47] 第5章 第5話 河北の雄[ケン](2012/10/07 22:08)
[48] 幕間 白波賊[ケン](2012/11/25 18:39)
[49] 第6章 第1話 陳矯[ケン](2012/12/21 06:54)
[50] 第6章 第2話 赤い兎[ケン](2013/01/06 12:59)
[51] 第6章 第3話 荀彧と劉備[ケン](2013/02/17 09:29)
[52] 第6章 第4話 泰山鳴動[ケン](2013/03/30 13:28)
[53] 第6章 第5話 揚州[ケン](2013/04/27 11:49)
[54] 第6章 第6話 管槍[ケン](2013/06/22 12:13)
[55] 第6章 第7話 決着[ケン](2013/07/29 14:47)
[56] 第6章 第8話 曹家の天の御使い[ケン](2013/08/26 16:50)
[57] 幕間 西涼[ケン](2013/09/21 20:42)
[58] 第7章 第1話 華琳と桃香 その一 許での日常[ケン](2013/10/19 14:11)
[59] 第7章 第2話 王道の軍[ケン](2013/11/23 12:43)
[60] 第7章 第3話 徐晃[ケン](2013/12/15 13:28)
[61] 第7章 第4話 天子[ケン](2014/01/18 13:26)
[62] 第7章 第5話 華琳と桃香 その二 桃香とお出かけ[ケン](2014/02/08 12:23)
[63] 第7章 第6話 黄祖[ケン](2014/03/01 13:06)
[64] 第7章 第7話 華琳と桃香 その三 喧嘩[ケン](2014/03/22 07:58)
[65] 第7章 第8話 華琳と桃香 その四 旅立ち[ケン](2014/04/18 06:09)
[66] 幕間 曹仁と華琳[ケン](2014/06/03 06:16)
[67] 第8章 第1話 官渡城[ケン](2014/07/04 05:53)
[68] 第8章 第2話 江夏争乱 上[ケン](2014/08/01 17:26)
[69] 第8章 第3話 江夏争乱 下[ケン](2014/08/22 16:48)
[70] 第8章 第4話 窮地[ケン](2014/09/18 06:17)
[71] 第8勝 第5話 官渡の戦い その一 秘策[ケン](2014/10/17 05:42)
[72] 第8章 第6話  官渡の戦い その二 神速[ケン](2014/11/14 07:07)
[73] 第8章 第7話 官渡の戦い その三 陥穽[ケン](2014/12/06 11:48)
[74] 第8章 第8話 高順漫遊記[ケン](2015/01/10 11:06)
[75] 第8章 第9話 官渡の戦い その四 麗羽[ケン](2015/03/07 11:32)
[76] 第8章 第10話 官渡の戦い その五 蹋頓[ケン](2015/04/04 13:46)
[77] 第8章 第11話 官渡の戦い その六 勁草[ケン](2015/05/10 14:35)
[78] 幕間 再起[ケン](2015/05/31 01:25)
[79] 第9章 第1話 凱旋[ケン](2015/06/22 19:44)
[80] 第9章 第2話 蜜月[ケン](2015/07/16 06:48)
[81] 第9章 第3話 入朝[ケン](2015/08/03 23:57)
[82] 第9章 第4話 雪蓮[ケン](2015/08/23 11:33)
[83] 第9章 第5話 鄴[ケン](2015/09/11 12:00)
[84] 第9章 第6話 江陵[ケン](2015/10/09 23:25)
[85] 第9章 第7話 外征[ケン](2015/10/30 20:31)
[86] 第9章 第8話 露呈[ケン](2015/11/20 13:18)
[87] 第9章 第9話 兄妹[ケン](2015/12/11 16:44)
[88] 幕間 張衛[ケン](2016/01/08 19:50)
[89] 第10章 第1話 召集[ケン](2016/02/05 06:20)
[90] 第10章 第2話 潼関[ケン](2016/03/10 05:58)
[91] 第10章 第3話 急襲[ケン](2016/03/25 18:54)
[92] 第10章 第4話 荊州[ケン](2016/04/15 23:01)
[93] 第10章 第5話 厳顔[ケン](2016/05/03 01:53)
[94] 第10章 第6話 追走[ケン](2016/05/27 19:05)
[95] 第10章 第7話 長坂橋[ケン](2016/06/17 18:51)
[96] 第10章 第8話 燕人[ケン](2016/07/15 21:31)
[97] 第10章 第9話 雛里[ケン](2016/08/10 22:16)
[98] 第10章 第10話 舌戦(口喧嘩)[ケン](2016/09/01 21:06)
[99] 第10章 第11話 交馬語[ケン](2016/09/22 19:17)
[100] 第10章 第12話 速戦[ケン](2016/10/07 18:51)
[101] 第10章 第13話 好敵手[ケン](2016/11/18 18:48)
[102] 第10章 第14話 家族[ケン](2017/01/11 21:42)
[103] 第10章 第15話 韓遂[ケン](2017/01/27 19:41)
[104] 幕間 江陵後事[ケン](2017/02/03 18:47)
[105] 第11章 第1話 入蜀[ケン](2017/02/25 13:36)
[106] 第11章 第2話 宛城[ケン](2017/03/18 12:04)
[107] 第11章 第3話 帰順[ケン](2017/04/01 17:17)
[108] 第11章 第4話 秋蘭[ケン](2017/04/14 21:13)
[109] 第11章 第5話 急報[ケン](2017/04/28 17:43)
[110] 第11章 第6話 張燕[ケン](2017/05/18 07:00)
[111] 幕間 冊立[ケン](2017/06/17 13:18)
[112] 第12章 第1話 雛里[ケン](2017/07/11 17:14)
[113] 第12章 第2話 前哨戦[ケン](2017/07/29 12:54)
[114] 第12章 第3話 連環[ケン](2017/08/20 13:56)
[115] 第12章 第4話 強風[ケン](2017/09/07 19:56)
[116] 第12章 第5話 敗走[ケン](2017/10/16 20:46)
[117] 第12章 第6話 曹仁[ケン](2017/12/17 12:15)
[118] 第12章 第7話 天佑[ケン](2018/01/13 13:14)
[119] 第13章 第1話 喪失[ケン](2018/02/07 19:54)
[120] 第13章 第2話 集束[ケン](2018/02/28 20:00)
[123] 第13章 第3話 終結[ケン](2018/03/24 12:38)
[124] 第13章 第4話 終幕[ケン](2018/04/11 19:35)
[125] 再演[ケン](2018/05/12 13:01)
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[7800] 第3章 第4話 心戦
Name: ケン◆f5878f4b ID:ece1c451 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/26 20:11

 攻城の手が一瞬とまった。直後、兵の波をかき分け、巨大な衝車が姿を現した。台車の上に乗せられた丸太は、通常の衝車のものよりも二回りほども大きいだろうか。衝車を引く兵の数も、当然相応に多い。

「如何にも袁紹らしいやり方だな」

 巨大な衝車で一息に城門を打ち破ろうというのだろう。攻城軍が掲げた袁の旗を見つめながら、皇甫嵩は呟いた。
 あれ程の大樹となれば、探すのも一苦労であっただろう。元より一本の丸太にこだわらずに、複数の丸太を組み上げれば良いだけの話だが、そうはしないところも袁紹らしいと言えた。
 無謀とも思えるような力攻めを、袁紹軍は繰り返している。総大将として連合軍を束ねる立場にありながら、ここまで活躍らしい活躍を見せてはいないことが袁紹を駆り立てているのかもしれない。実際、戦が始まってより将兵の間から聞こえてくるのは、劉備軍の精強さであり、曹操の戦術眼であり、孫策の武勇であった。
城門に向けて衝車が動き始めた。馬鹿げた代物ではあるが、実際あの大きさの衝車が充分な速度でもってぶつかる衝撃には、如何に堅牢な虎牢関の城門といえどもそう何度も耐えられるものではない。
 衝車を援護する形で、井蘭から矢が放たれる。移動式の矢倉である井蘭は、高みから矢を降り注ぐための攻城兵器だが、この虎牢関を相手とするには高さが足りていなかった。弓勢の落ちた矢をかいくぐって守兵が放つ高みからの矢が、衝車を引く兵に降り注ぎ、一人また一人と欠けていく。それでも、並走する兵の持った楯に身を隠しながら、前へ前へと衝車が引かれる。袁紹の焦りが伝わったのか、兵達にも鬼気迫る勢いがあった。
 一度ぐらいの衝突は覚悟しなければならないか。皇甫嵩がそう思い始めたとき、恋が、弓を手に城壁から身を乗り出した。特に狙いを定めるという感じもなく、無造作に矢が放たれる。その一矢は、敵兵の持つ楯へと真っ直ぐ吸い込まれていく。本来ならば捕らえ得るはずのないその神速の軌跡が、皇甫嵩の目にはっきりと見て取れたのは如何な奇跡か。
 その勁矢は、文字通り敵兵の持つ楯へと吸い込まれた。すでに幾本もの矢が突き立ったその楯に、新たに一矢が加わることはなく、ただひとつ、貫き通された一穴が加わるのみだ。
 敵兵は自身が射られたこと気付いてすらいないとでもいう様に、楯を持ったまま数歩駆けた。それから、ゆっくりと崩れ落ちる。守兵から喝采が上がった。
 しかし、そんな喧騒を打ち払うように、衝車を引く兵は愚直に駆け続けた。城門までもう距離がない。間に合うか。

「恋、右側だけを狙え!」

「んっ」

 皇甫嵩の言に疑問を差し挟むことも無く、恋はまさに矢継ぎ早に矢を放った。楯を持つ兵が、続け様に倒れて伏していく。城壁から降り注ぐ矢に、身を守るすべを失った衝車を引く兵達も次々に倒れていく。さらに、引く者が片側だけに集中したことで制御を失い、衝車の動きに乱れが生じ始めた。それは、城門へと迫る動きが止まるほどではない。だが、引く兵と楯を持つ兵の動きに齟齬を生じさせるには十分であった。楯から身をさらけ出した敵兵に、矢が降り注いだ。



 汜水関の守兵五万の内、無事虎牢関へと無事たどり着いたのは四万七千程だった。三千の犠牲を多いと感じるか、少ないと感じるかは人によるのだろう。
虎牢関にて合流した月は多いと感じたようだった。失った兵の大半は華雄率いる董卓軍の者たちである。月にとっては涼州から長く自分に付き従ってきてくれた兵達である。その心痛は想像に難くない。
 同じく合流を果たした詠は、少ないと感じたようだった。実際、地勢や状況を考えると驚異的な少なさと言っていいだろう。大軍の移動に不向きな狭隘な地形。そして虎牢関に辿り着いたところで、五万の大軍の入城は容易いことではない。二万、三万の兵が敵軍と自らを守るはずの城塞に圧殺される可能性も十分に考えられたのだ。
 三千で済んだのは、その三千の献身あったればこそだった。先に城外に出て包囲された兵達、そして華雄に従った兵達。合わせて約三千の兵が、一歩も引かぬと言う殿軍の構えも見せたのだ。結局、彼らの内で生き残った者は意識を失った華雄を送り届けた数人の兵達だけだった。
 その三千を、月は多いと感じ、詠は少ないと感じた。そして皇甫嵩は、やはり多いと感じていた。自ら軍を率いた戦でこれ程の犠牲を出したのは、皇甫嵩にとって初めてのことだった。そもそも将軍と呼ばれる地位に就いてより、敗戦らしい敗戦というものを経験したのも初めてのことである。
 皇甫嵩は、珍しく幾分弱気になっている自分に気が付いた。

「戦況はどう、皇甫嵩?」

「詠。……それに月までいるのか。ここは危険だぞ」

 詠と月が、城壁に姿を現した。月を庇う様に詠が立ち、さらにその周囲を楯を持った兵が囲み、飛矢を防いでいる。巨大な衝車を打ち払ったことで、攻城軍の動きは小康状態となっているが、矢や投石は変わらず飛び交っていた。皇甫嵩の傍らにも、常に楯を持った兵が緊張した面持ちで控えている。

「わかっているわよ」

そう返しながら、詠が不機嫌そうな横顔を一瞬月に向けた。視線に気付くことなく月は、集まってきた兵達へと温顔を向けている。彼女がどうしても前線の兵を励ますと言って聞かなかった、というところだろうか。
 もっとも、二人の周囲を守るのは照が育てた月の旗本の兵達だ。他に例のない、まさに精強無比な一団と言っていい。注意を促しはしたものの、二人の身に危険が迫ることはまずないだろう。皇甫嵩も月にならって、兵達に目を向けた。
 月の姿を目にして、一部の兵達が気勢を上げている。一方で、その様に冷やかな視線を送る兵達もいた。
 董卓軍と官軍。両者の溝はもはや埋めようがない程に深刻なものとなっていた。





 城門前で巨大な衝車が、炎を上げて燃え盛っていた。制御を失い横倒しになったところを、すかさず油を撒かれ火矢を射かけられたのだ。それが、炎の壁となって攻城を妨げている。袁紹軍の兵が回収に当たっているが、守兵の矢に狙い撃ちにされている。撤去にはもう少し時が掛かりそうだった。
 満を持してとでも言う様に麗羽が持ち出した衝車の、その成れの果ての姿を、華琳は連合軍の本陣に築かれた高台から見下ろしていた。傍らに控える春蘭を除き、高台には人の姿は無い。駆ける衝車を興奮気味に見つめていた春蘭も、今は悄然としていた。
 前方に広がる戦場では袁紹軍と孫策軍の総勢四万が攻城に当たっていた。汜水関攻めの時の様に三段に分けての攻撃ではない。前線の兵を絶えず入れ替えながら、全軍が一斉に攻城に参加していた。
 兵に配られる糧食は三分の一にまで減らされている。兵の餓えは極限まできているだろう。ここに来ての力押しも、兵達に苛立ちをぶつける先を与えるという狙いがあった。本来自分達将校に向かうべき不満の矛先を逸らしているに過ぎないが、他に取るべき手段も無かった。後方部隊による兵糧の確保も、想定していたほどの成果を上げてはいない。曹仁が率いていると思しき敵騎馬隊が、兵站線をかき乱しているためだ。二十万を維持する兵糧の確保というのは、やはり容易いことではない。現状では遊ばせているだけの十二万も、虎牢関を抜いた先のことを考えれば、解散させるという訳にもいかない。董卓軍が野戦による決戦を選ぶにせよ、洛陽に籠城するにせよ、その際には少なくとも拮抗した兵力が必要なのだ。

「あっ、曹操さん」

 気の抜けた声に振り返ると、劉備が高台に昇って来ていた。ぴったりと寄り添っているのは、呂布との一戦で名を上げた関羽だ。

「劉備。……こうして余人を交えずに話すのは初めてね」

 軍議の場以外で、こうして顔を突き合わせるのは初めてのことであった。お互い傍らには春蘭と関羽がいるが、春蘭は華琳にとって自らの右腕も同然であるし、劉備とは義姉妹だという関羽もそれと同等の存在なのだろう。劉備も特にそのことには言及せず、相槌を打つと、にこりと微笑んだ。

「―――っ。……ふふっ、蘭々の言っていた通りね」

その無防備な微笑みは、対峙する相手の警戒心までをも取り除いてしまうようであった。 ごく自然に、同じく無防備に微笑み返そうとしている自分に気付いた華琳は、誤魔化す様に皮肉気な笑みを浮かべた。

「黄巾賊討伐の折には“うち”の仁が、世話になったみたいね」

「お世話だなんてとんでもない。曹仁さんはわたし達のご主人様になっていただく人ですから」

 劉備が、顔の前でぶんぶんと手を振りながら言った。華琳の言葉にまるで対抗するかのような発言だが、敢えて“うち”と強調した華琳とは違い、極めて自然な口調である。
 対して、後方に控える関羽は華琳の意図を察したのか、色めき立った強い視線を向けてくる。そんな様子に持ち前の苛虐嗜好を刺激された華琳は、わずかに口端をつり上げながら言った。

「それなら貴方達は、いずれは陪臣として私のために働いてくれるということかしら?」

「桃香様と曹仁殿を主と仰ぎ、天下の民のために働くということだ!」

 鼻息も荒く詰め寄ってきたのは案の定関羽だった。割って入ろうとする春蘭を手で制しながら、華琳は続けた。

「仁には臣従を断られたと聞いているけれど?」

「くっ。……しかし、それは貴様とて同じであろう、曹操。曹仁殿は曹家を離れ、独立独歩の道を進んでおられるのだから」

「うふふっ、仕方ないわ、あの子はまだまだお子様だから。反抗期が長引いてはいるけれど、いずれは帰るべき場所が“家族”の元を置いて他にないことを悟るわよ」

 今度は“家族”を強調しながら、余裕有り気な笑みを浮かべて告げた。曹仁のことは家族である自分達の方が遥かによく理解しているのだと、そう言外の意味をたっぷりと匂わせる。華琳の言葉を後押しするように、隣では春蘭がうんうんと大きく首を縦に振っている。関羽は不快気に眉を顰めながら押し黙った。

「ふふ。…………劉備」

「ふぇっ!?」

 華琳は関羽の様子に満足を覚えると、劉備へ話を向けた。劉備は調子外れな声を漏らして、慌てふためく。

「黄巾賊鎮圧の功績で得た官職を捨て、義勇軍を率いて各地を転戦していたそうね」

 関羽をからかっていた時とは違う真剣な表情で華琳は言った。劉備は急な話題の転換に戸惑ったのか、しばしの沈黙の後、はい、と不安げな表情で小さく答えた。

「漢室から定められたというだけで土地を治めるのは難しい時代になっているわ。貴方達ほどの実力と盛名があれば、召抱えたいという有力者はいくらでもいるでしょう? 何故、放浪の様な事を?」

 劉備は一瞬だけ考えるように目を瞑ると、いまだ戸惑いを引きずりながらも、迷いのない口調で言葉を紡ぎ始めた。

「今、世の中は乱れ、国中のみんなが苦しんでいます。県尉になって、その土地のみんなのために働いて、みんなの笑顔を見ることが出来て、それはすっごく幸せなことだったけど―――」

 劉備は、そこで一瞬言葉を止めた。真っ直ぐな視線が、華琳を射抜く。吸い込まれる様なその瞳に負けぬよう、華琳は眉間に力を込めた。

「わたしは、困っている人達みんなを、この国のみんなを助けたいんです」

「――――――っ」

 思わず華琳は息を飲んでいた。土地に縛られず国中の民を救うために各地を放浪していたのだと、そう劉備は真摯な瞳で告げていた。
 目先のことだけにとらわれた馬鹿げた考えだと、一笑に付すことも出来た。しかし、そんな当て所も無く彷徨い義を成す劉備軍を、民が英雄視し始めていることも、兵は離れるどころか集まり増え続けていることも、華琳は知っていた。

「あの子の目も、節穴というわけではないみたいね」

 劉備を英雄と見た従弟の姿を、華琳は思い浮かべた。
少なくとも自分は劉備と同じような真似はする気も無いし、それ以上に出来はしないだろう。劉備は自分には無い何かを持っているのだと、華琳は認めざるを得なかった。

 劉備と関羽はしばし戦況を見据えると、その場を後にした。高台にはまた、華琳と春蘭の二人だけとなった。

「人を見られたというだけでも、連合軍に参加した意味は大きいわね」

 脈絡も無く囁いた言葉に、どう返したものかと春蘭が口ごもる。華琳は連合軍の結成からこれまでに出会った者達に思いをはせた。
 なかでも、華琳の胸中に強烈な印象とともに居座りつつある者が二人いた。その背を見送ったばかりの劉備と、ほんの一瞬交錯したのみの呂布である。前者はその存在の不可思議さがゆえに、後者はその武ゆえに、両者共に華琳には測り得ないものがあった。
 武を言うならば傍らに侍る春蘭もまた華琳よりも優れているが、さりとてそれは手が届く範囲の話であり、自身の武を物差しとすることで十分に推し量ることが出来た。しかし、呂布の武は自分や春蘭のそれとはまるで存在を異にしていて、ただ例外的な強さだということが分かるだけだった。自分には呂布の武を推し量るだけの武が不足しているということだ。他者と比して自らに不足を感じるということ自体が、華琳にとっては新鮮な驚きであった。
 他に気になる人物としては孫策がいた。華のある武人、という表現がしっくりくるだろうか。大軍略家である孫武の後裔を名乗ってはいるが、理屈よりも直感で戦をしているように思える。そして、戦は間違いなく強い。黄巾の乱での功績を思えば、他の連合軍に参加した諸侯と並ぶ立場にあってもおかしくはなかった。それが、未だに袁術の客将などという地位に甘んじている。古くは遠祖孫武、そして母である孫堅が親しんだ地への拘りが、孫策の飛躍の妨げとなっているように思えた。華琳をしてそれを惜しいと思わせるものが、孫策にはある。

「華琳様、まもなく時間です」

 振り返ると、幸蘭がいつもの感情の読み難い笑顔で立っていた。辺りは夕闇に沈みつつある。攻城軍交代の時間だった。





「皇甫嵩!」

 兵舎での仮眠を終え、真っ直ぐ城壁へ向かうその背を、詠は呼び止めた。

「詠か。どうした? 月は一緒ではないのか?」

「……いまさらボクが言うまでもないことだろうけど、将兵の間に互いへの不信感が募っているわ」

 兵糧も残り少なく、連合軍ゆえにまとまりも悪いはずの敵軍よりも、難攻不落の城砦にこもる自軍の方が逆に精神的に逼迫しつつあった。
 一人で来たのは、別に月に状況を秘しておきたいというのではない。涼州では長く敵意に囲まれたような暮らしをしていた月である。他人から向けられる好意にも悪意にも、人一倍敏感にならざるを得なかったと言っていい。当然、兵達の間での諍いも察知しているはずだった。ただ、何でも一人で抱え込もうとするところのある月の前では、負担となるような話題は避けたかったのだ。

「わかっている。心配するな、一応手は考えてある」

「一応、ね。大丈夫なの?」

「賭けだが、うまくいけば一手で戦況は決するし、失敗しても時間稼ぎ位にはなるだろう。……お前は、董卓軍の手綱をしっかりと握っておいてくれればいい」

「ふんっ、そんなことわかっているわ」

 強い口調で言い返しはしたものの、照と華雄という最上位の将軍二人の不在は深刻な問題だった。
 華雄の後任には徐栄を当てている。軍略においては華雄を凌ぐだろう彼女を、詠は高く評価していた。ただ、華雄ほどに驍名を誇る将ではない。そこは、兵の士気に強く影響してくる。洛陽に搬送された華雄に代わって、月と共に虎牢関で軍と合流したのも、兵を鼓舞するためである。結果、董卓軍の将兵の士気は盛り返したが、月を中心にまとまることが官軍との確執を深めることにつながってもいた。月を守ろうとする気持ちが暴走しているのだ。兵に慕われてはいても、それを先導する力が月には不足していたし、詠自身は兵からはあまり良く思われてはいない。それは元々の性格というのもあるが、照を含めた三人の間で自然と出来上がった役割分担でもあった。敬慕の対象である月の元、照が厳粛に命を下し、詠がそこから生じる不満を引き受ける。それで、董卓軍の均衡は保たれてきた。最近では華雄が台頭してきたため、照も今回のように本陣に縛られずにある程度自由に戦場を駆けることが出来るようになっていた。しかし、その華雄も今はいない。

「……洛陽からは何か言ってきたか?」

 顔色でも読んだのか、皇甫嵩が何の前置きもなく聞いてくる。詠は軽く首を横に振って、それに答えた。
 華雄が一命を取り留めるかどうかは微妙なところだった。意識が戻る気配がまるでないのだ。それが、落馬時に頭を打ったためなのか、失血のためなのかは判然としなかった。安静にしようにも、投石や矢が降り注ぐ虎牢関ではそれもままならない。それで、華雄は洛陽に運ばれていた。華雄の意識が戻れば、連絡がくる手筈になっている。あるいは彼女のことだから、怪我を押してでも自ら馳せ参じるかもしれない。

「そうか。……私はもう行くぞ。作戦の詳細は追って伝える」

 一瞬苦い表情を覗かせた皇甫嵩は、気を取り直したように別れを告げると、再び城壁へ向けて歩き出した。その背がいつもより小さく見えるのは、やはり先の敗戦が響いているのか。
 報告された当時の状況に、詠は拭いがたい違和感を覚えていた。
あえてすぐに城門を閉ざすことなく、華雄に従う兵を行くに任せていたようにも思える。それが、敵軍に城門を押さえられるという結果を招き、汜水関を放棄する一因となっていた。
 皇甫嵩らしくない、とも言い切れない。時に無謀と思える策をとるのが、皇甫嵩の常勝たる所以でもあった。しかし詠の知る皇甫嵩は、そんな時必ず自軍を大勝へと導いていた。
 皇甫嵩は連合軍に通じていて、あえて砦を放棄するような戦をしたのではないか。そんな噂まで董卓軍の兵達の間では囁かれていた。涼州の兵にとって皇甫嵩の名はやはり絶対的なものがある。その反動が疑念を後押ししているのだろう。
 常勝を誇る皇甫嵩が負けた。自分も、だから違和感を覚えているだけなのか。遠ざかる皇甫嵩の背が、詠の瞳には妙に不確かなものに映っていた。





 夜間でも、城壁の上には多くの篝が並び、守兵の姿を照らし出していた。さらには城壁の外、華琳達が攻める側も、炎が闇を払っていた。大量の火矢が惜しげも無く射込まれ、時に松明や油の入った壺が投げ落されてくるためだ。対峙する城塞は漢朝の都洛陽を守る虎牢関である。物資は豊富に蓄えられているだろうし、洛陽からの補給も容易い。麗羽や袁術は愚直な攻めを繰り返しているが、物量戦となれば遠征軍である連合側の不利は覆し様がない。実際、袁紹があの巨大な衝車を持ち出してから数日が過ぎているが、戦況には何の変化も見られていない。

「桂花、例のものは準備出来ている?」

「はい、ここに」

 差し出されたのは、一枚の紙片だった。華琳はそこに書かれた文面にざっと一巡目を通した。

「あまり、気は進まないけれど。……秋蘭、頼めるかしら」

「はっ」

 差し出した紙を受け取ると、秋蘭はそれを矢にくくり付けた。いわゆる矢文である。兵から松明を受け取ると、秋蘭は虎牢関へ向けておもむろに馬を進めた。
遠ざかる松明の明かりは存外早く動きを止めた。城壁の高みから放たれる敵兵の矢も届かない距離。そこから城内まで矢を射込むことが出来るのは、曹操軍にあっては秋蘭唯一人であろう。松明が合図でも送る様に、二度三度大きく振られた。
 文には、虎牢関に詰める官軍の内応を臭わせることが書かれている。
 桂花の策だった。皇甫嵩のような相手とは、そういった権謀術数を交えず、純粋な軍略を競い合いたいところではあった。しかし、連合軍中最小の兵力しか持たない今の華琳には、それは望むべくもないことだった。

 戦場に動きがあったのは翌日のことである。
攻城を再び袁紹軍と孫策軍とに交代した華琳は、城門が静かに内側より開かれていく様を、本陣の高台より眺めていた。
 城門へと向けて、袁紹軍が押し寄せる。遅れずに孫策軍も動き始めているが、城門正面に陣取っていた袁紹軍に阻まれる格好だ。
 矢文の効果が現れるにしては、早過ぎないか。あるいはそれとは関係なく、また敵軍の将士が暴走したのか。華琳の胸中に一瞬疑念が生じた。袁紹軍の布陣に目をやる。
 三段に陣を敷いた汜水関攻めの時とは違い、実際に攻城に当たる軍勢と本隊を分けているのは馬防柵一段だけだ。袁の牙門旗は、馬防柵後方の本隊に掲げられている。その大半を攻城に当てているため本隊の兵は少なく、攻城の軍が城門に詰め寄せたことで孤立した格好だ。
 しかし、敵軍が本隊を突くにしても騎馬隊は馬防柵とそれを守る兵に阻まれるはずだし、歩兵ではそもそも城門に攻め寄せる攻城軍を突破出来ないだろう。手を講じて馬防柵を取り除くにしても、その間に本隊を後退させれば良い。
布陣には特に不備はないと思えた。武功を袁紹に譲る形になるのは不快だが、これで虎牢関を抜けられるはずだった。





「全軍進軍しなさい! 難攻不落の砦虎牢関を落とすのは、名族袁家にこそ相応しいですわ!」

 戦場にあっても名族としての余裕を常としてきた麗羽だが、珍しく声を荒げていた。
 虎牢関を落とすのは、自軍でなければならない。従妹美羽の失策と、汜水関で自ら曝した失態が、麗羽を駆り立てていた。現状、武功を上げているのは美羽の客将に甘んじている孫策であり、兵たちの間から聞こえてくるのは義勇軍に過ぎない劉備軍の精強さだった。
 劉備軍の精強さは、実際に目の当たりにした麗羽としては認めざるを得なかった。しかし、孫策はただ幸運に恵まれただけに過ぎない。敵軍の暴走が、たまたま孫策軍が攻城に当たっている時に訪れたというだけだ。そしてその幸運が、今度は自分の身に訪れていた。
 完全に開かれた城門から覗くのは、真紅の呂旗。
眼前まで迫った呂布の方天画戟が、その瞬間の恐怖が、麗羽の脳裏に鮮やかに蘇った。
 しかし、如何に呂布の騎馬隊といえども今回は張り巡らせた馬防柵がその進撃を許しはしない。明らかな失策だった。
 呂布の騎馬隊が動いた。それだけで、城門に寄せていた兵達の動きが威圧されたように鈍るのが分かった。そこに騎馬隊が突っ込んでくる。自軍が面白いように断ち割られていく。

「呂布は放っておきなさい! まずは左右から迫って城門を確保するのです!」

 斗詩と猪々子、二人の腹心が率いる軍が、左右に分かれてそれぞれ城門へと向かった。
その間も、呂布の騎馬隊は駆ける。すぐに本隊前の、馬防柵まで到達した。そこで、止まる。やはり、馬防柵で進軍を抑えられている。柵のこちら側から突きだされる槍に、柵自体に近づくこともままならずにいる。麗羽はほっと安堵のため息を漏らした。

 直後、馬防柵の上に、一つの影が身をもたげた。





 恋が馬防柵に飛び移り、弓を引き絞った。

「――――――っ!」

 何の前触れもなく巻き起こった突風に、城壁の上で事の成否を見守っていた皇甫嵩は、思わず顔を背けた。
 狭道を抜けた先、洛陽のある平原は風と黄砂に常に悩まされる土地だが、ここ虎牢関は風向きの関係で強風に襲われるということは滅多にない。それだけに狭道を抜けて城壁の上まで吹きつけた強風は、戦場の動きを数瞬止めた。
皇甫嵩が再び視線を戦場に戻すと、ちょうど恋が馬防柵から馬に飛び乗ったところであった。視線をさらに先に、袁紹の本隊、掲げられた牙門旗の元へと延ばす。

「……うまく、行ったか?」

 旗の下、空馬が一頭跳ね回り、周囲の兵達が騒然としていた。
 先日恋が披露したもはや神域にあると言っていい弓の腕に頼った、策とも言えないような手だった。馬防柵に上り高みから狙いをつけたところで、袁紹へと続く射線は常人の眼には皆無だろう。かすめでもすれば兵の士気は大きく上がるだろうし、失敗しても敵将にとっては大きな脅威であり攻城の手も鈍るであろうと、そんな軽い心算で打った手である。それが、図に当たったようだった。
 城壁の上に喝采が起こった。恋が騎馬隊を率いて駆け戻ってくる。開かれた城門は汜水関の時とは違い、相当数の兵に守らせている。恋の騎馬隊が背後を襲えば、城門に詰め掛けている攻城軍も潰走するだろう。皇甫嵩は、ひとつ大きく頷いた。

「皇甫嵩将軍」

 喝采の中、背後から声が掛けられた。温度差を感じさせる冷えた声に、皇甫嵩は眉をひそめた。話しかけてきた兵の顔には、わずかに見覚えがある。

「確かお前は―――」

 負傷した華雄を運んで無事撤退してきた者だった。どうした、そう続けようとした。
 無言の剣が、それを遮った。
 とっさに、皇甫嵩は地面に身を投げ出した。そのまま転がって、距離を取る。立ち上がった時には、すでに剣を振るった兵は、城壁を守る兵に取り押さえられていた。

「何のつもりだ?」

 右肩が熱かった。斬られた。傷は浅くはないようで、血が滂沱と溢れだしている。兵が駆けよってきて、出血を抑えに掛かる。

「城門を自ら開くとは。文にあった内通者というのは、やはり将軍御自身であったのだな」

 地に押しつけられた兵が、絞り出す様に怨嗟の声を上げた。
 作戦に齟齬を生じさせないため、守兵を官軍で固めたのが逆に災いしたようだった。狙いが漏れては賭けにもならないような手だけに、決行を知る者は最小限に留めてもあった。董卓軍では詠と徐栄ら数人の将軍のみで、官軍でも実際に作戦に参加するもの以外には秘してあった。兵はまるで状況が飲み込めないままに、疑心暗鬼にとらわれたまま暴挙に移ってしまったようだ。
ただ一点、兵の言葉には気になる単語があった。

「文? 何の話だ?」

 皇甫嵩の問いかけには答えずに、すっと兵は息を吸った。まずい、そう思った時には既に遅かった。

「董卓軍の兵よ! 城門を奪い返せ! 官軍は敵にまわったぞ!」

 叫ぶような声が、虎牢関に響き渡った。










*衝車について
 作中にも出ている一般的にイメージされる丸太に台車を組み合わせた攻城兵器は、撞車(とうしゃ)というのが本来正しいようです。
 実際に衝車と呼ばれていた攻城兵器は、台車の上の櫓を組んで、その各階層から攻撃を加えるという井蘭に似たものらしいです
 本作品では一般的なイメージに合わせ、前者の丸太と台車の組み合わせを衝車と表現しています。



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