そして──呂布が、曹操軍八人をすべて打ち倒すのに、それほどの時間はかからなかった。 春蘭は右目を抉られ、愛用の黒刀を砕かれ、腹に致命の一撃を受けている。秋蘭は、おそらくこのなかで一番の重傷だった。方天画戟をまともにうけて、今も血だまりが広がっていっている。うちの軍には、死者でも引き戻すといわれる、奇蹟の熱血医師がいるので、心停止してから数分以内なら救い出すこともできるだろうが、それも、時間の制約がある。 残りの六人も、怪我の大小はあれ、立ち上がれないぐらい痛めつけられていることに間違いない。季衣と流琉、両腕を砕かれた凪、真桜と沙和に、思春も、一薙ぎでやられてしまっていた。 うちの軍で、まともに戦える将は、すべて使い切った。後詰めの曹仁と曹洪は、もう間に合わないだろう。 死人が出ていないのだけが、救いだった。 ──とはいえ、むろん楽観視できる状況ではない。なんとか生き残っているというよりは、生かされているというべきか。 呂布にとって、彼女たちは雑魚に等しい。 彼女の目標は、曹操の首ただひとつ。 この後に及んで、これ以上軍を統括する将が討ち取られれば、反董卓連合は、この場をもって崩壊する。逆にいえば、こちらは曹操さえ守り通せば負けはしない。それでも、状況は限りなく最悪に近かった。 呂布が、春蘭たちを殺さないのは、遊んでいるわけではない。 曹操に対して、出てこいといっているのだ。 最悪なのは、人質が八人もいることだった。つまり、ひとりふたりぐらい欠けても、人質として効果を発揮する。呂布はもう、八人のうち、誰かを切り刻むことを躊躇わないだろう。 そして── おそらくは、 ──その状況のすべてを理解した上で、 黒騎兵の少女たちを引き連れて、覇王を自負する少女は、呂布の前に立ち塞がった。「一対一の立ち会いが、望みよ。それでいいかしら」 当たり前のように、曹操は言った。 台詞に、怯えも淀みもまったくない。彼女は、この絶体絶命の状況にあって、彼女自身を貫いていた。 けれど、わからないはずがない。彼女はこれからの自分の運命を、理解しているはずなのだ。 ──殺される。 彼女に、方天画戟の一撃を避けることはできない。 例え、ここでいかなる奇蹟が起こったとしても、勝負としておそらく成立しないレベルで、曹操は、呂布に傷一つつけることもできず、絶命する。「けれど──その前に秋蘭だけでも、治療させたいわ。この砂時計が落ちるまでの間、時間をもらえるかしら」 曹操は、侍従のひとりに持たせた、一抱えほどもある大きさの砂時計を、示して見せた。完全に砂が落ちきった状態から、上下を反転させる。銀色の砂が重力に従って落ち始めた。 これが、俺たちの命が吹き飛ぶまでの時間だと思うと、笑えないところだ。 砂時計の砂が落ちきるまで、三分といったところだろう。「曹孟徳としての誇りにかけて、一度受けた決闘を、反古にすることはしないわ。もちろん、これは信じてもらうしかないけれど」「──わかった」 呂布は、それを認めていた。 曹操は、自らが胸に抱いた誇りだけで動いている。 曹孟徳には、自分の命を投げ打って、部下を助けるなどというロマンティシズムは、最初から持ち合わせていない。彼女が自分の部下を救うのは、どちらかといえば、ついでにすぎない。ただ、彼女にとって、逃げるという選択が、死よりもなお許し難いものである、というだけだった。「代わりに、それ以外のだれひとり、そこを動くな」 呂布の騎兵隊が再編される。 彼女の命令ひとつで、完全再編された騎兵隊が、すべてを引き裂くだろう。 そう、曹操の提案は、むしろ呂布を有利にするものだ。もう──俺たちは、まな板の上の鯉だった。あとは、料理人の思うがまま、料理されるだけだ。 ──俺に、なにができる? 呂布と、戦うというのは論外だ。一割どころか、一パーセントの勝率もないのに、戦おうとするのは、蛮勇とさえいわない。 ただの自己満足に、自分の命など賭けられない。「華琳さま。鞘の紐が、ほどけかけています」「ええ」 決闘に、馬は必要ない。 下馬するのに、曹操は黒騎兵の少女たちの助けを借り、死地を向かう準備をするために、今一度、服装を正させる──つもりだったのだろう。 そして── 香嵐(黒騎兵その1)は、呂布の視線の死角から、抜き取った倚天の柄で、曹操に当て身を喰らわせた。わずかな悲鳴は、密集したざわめきに掻き消される。気を失った曹操は、呂布の目には映らない。一瞬の早業だった。「程昱──これは、どういうことだ?」「打ち合わせ済みです。……このまま、おにーさんは華琳様を連れて、逃げてほしいのです」 その提案は、俺にとって、まさしく青天の霹靂だった。 ──明らかな、独断。 曹操が目覚めたら、首謀者は首を刎ねられることは間違いない。冗談ではなく、曹操は程昱相手にも、本気で刃を向けるだろう。参謀の役割は、主の求められた状況で最善の働きを見せることだけであり、これは完全に自らの権限を逸脱している。 いや、軍そのものがなくなるのだから、その仮定に意味なんてないか。「──この選択肢を残すために、夏侯淵(秋蘭)さまは、あなたを重用していたはずです。もちろん、おにーさんがいなかったら、私だってこんなことはしないのですよ」「命令違反は、俺に許された特権みたいなものか」「はい。──おにーさんの仕事は、ここからでしょう」「簡単に、言うなあ」 たしかに、誰にもできない。 それほどに、俺の失うものは、計り知れない。 単純に考えて、凪、真桜、沙和、思春。それに、敵から逃亡したとして、指揮官としての名誉も、すべて失う。ここで逃げたとしても、曹操軍を再起させるには、最低でも十年の時間を必要とするだろう。「わかった。世話をかけた」「──いいえ。臆病なのですよ。私たちは。華琳様が目覚めたときには、すべて終わっているでしょう。絶影なら、赤兎馬にも劣らないはずです。おそらくは、逃げ切れるはずなのですよ」「曹操は、俺を恨むと思うか?」「さあ、でもひとつだけ。お願いがあります。できれば曹操さまが目覚めたあとで、真名を呼んであげてください」「──考えておく」 どれだけ駒を討ち取られても、キングさえ守りきれば、少なくとも負けることだけはない。逆に言えば、だからこそ呂布は、あの八人を殺さずにいる。ここで曹操に逃げられれば、少なくとも反董卓連合を勝たせることだけはできる。 ──最悪の選択肢だった。 そう、理屈でわかっていても、それを選べるような人間が、いったいどれだけいるというのだ? わかっている。 わかっているのだ。『──だから、華琳さまを守ってくれ。私を、二度も主を守れなかった、無能な臣下にしないでくれ』 かつての秋蘭の願い。 俺は、他のすべてを切り捨てても、曹操を救うしかない。 ──詠が、そうやって、味方のすべてを敵にしたように。 ──が。 しかし── そして、俺は今になってすら、『彼女』のことを甘く見すぎていた。 呂布のことではない。 程昱のことでも、曹操のことでもない。 こんな──致命的でどうしようもないタイミングで、さらに状況をカオスに落とし込む少女を、俺はひとりしか知らない。「あー、もう!? なんか起きたら腹に硬いもので、殴られたような痛みがっ!!」「………………………………」「………………………………」「………………………………」「………………………………」「………………………………」「………………………………」「………………………………」「………………………………」「………………………………は?」 状況が把握できなかった。 曹操(?)は、今初めて長い眠りから醒めたというふうに、ぎゃーぎゃーと騒いでいる。まさか、まさかまさかまさか──よりによって一番役に立たないこのタイミングで、なんでこーなるッ!! っていうか、そもそも叩いたから直ったのか、もしかして。 曹操の姿をした彼女は、こちらに目をつけると、事態の推移についていけない黒騎兵の少女を置き去りにして、こっちにやってきた。 香嵐に叩かれた腹がまだ痛むのか、ぴょこぴょことぎこちない歩き方になっている。覇王を名乗る少女なら、間違いなくしないであろう歩き方だった。 ──間違いない。 華琳だ。「あのね、一刀?」 すぅ、と、華琳の目が細められた。 曹操とはまるで別の、それでいて重苦しい独特の重圧が、彼女の身体から発せられていた。 待ちこがれていた言葉のはずだった。 本来なら、感動的なシーンになるはずだった。 曹操軍興亡の瀬戸際のはずだった。 俺は、今から人生で二度とないほど重要な選択を迫られているはずだった。 そして──彼女は、いつもそうするように、その重苦しい雰囲気すべてを吹き払って、俺に尋問をはじめた。「蓮華ってダレ?」 ──まず、この状況で最初に訊くことがそれかい。 目が据わっていた。 なにより彼女の表情は真剣そのもので、誤魔化したりはぐらかしたりはできそうにない。「いや、待て。質問の意図がわからない。そもそも、どうして蓮華のことを知っている? できれば三十字以内で答えてくれ」」「曹洪が──」「ああ、うんわかった。それ以上、言わなくて良い」 日和りやがったな、あのガキ。 蓮華と思春を引き入れてからすぐ、曹洪は曹操に捕まって、洗いざらいぶちまけさせられたんだろう。予想はしていたが。むしろ、やってないほうがおかしいと思っていたけれど。 一応、これを警戒して、あらかじめ曹仁と曹洪の前では、詠をただのメイドとして扱っていたので、核心の部分まではばれていないだろうが。「いや、曹操だったときの記憶は、そのままあるのか。っていうか、おい。それなら今は、どれだけせっぱ詰まった状況なのか、わかるだろう」「当然じゃない」 なぜだが、華琳は胸を張っていた。 脱力しそうになったが、考えてみればやることは、なにも変わらない。砂時計の砂は、もう半分以上落ちている。もう猶予はほとんどない。「ふたりで、逃げよう」「──どういうこと?」「ここに留まることに、なんの義理もない。普通の女の子であるはずのお前が、こんな戦争に駆り出されてることのほうがおかしいんだ。お前は、曹操とは違う。なんの責任も感じる必要はない。だから」「みんなを見捨てろってこと──?」 華琳を目の前にして、心の箍がはずれたのか。 今、俺が話している言葉が、本心なのか、彼女を説得するための方便なのか、俺自身にも判断がつかない。「一刀は、それでいいの?」 華琳は、責めるでもなく、そう聞いてきた。「私は、嫌よ」「──華琳?」「そうね。私はもうひとりの私とは違う。私が、ここに留まる理由は、『彼女』とは、きっと全然、別の理由だと思うから」「………………」「自分自身の誇りなんてどうでもいい。でもね、私はここにいるみんなを見捨てられない。春蘭は、私を支えてくれた。一番最初に敵にぶつかるのは、彼女の役目だし、今も、私のために傷ついてる。他の誰がそっぽを向いても、春蘭だけは私に対する態度を変えずにいてくれた。私は、春蘭に本来返しきれないぐらいのものをもらってる。 そして、秋蘭は厳しかったけど、私に優しくできない分だけ、一刀の立場を保とうと努力してくれた。秋蘭がいてくれたから、私はなにも考えずに、笑っていることができたと思う。 季衣は、一番付き合いが短いけど、純粋に私を慕ってくれた。まだ、果たしてない約束も、たくさん残ってる。流琉は私の店の調理主任だもの。教え込まなきゃいけないことも、教えて貰わないといけないことも、まだまだたくさん残ってる。 春蘭も、秋蘭も、なんの実績もない私を支えてくれたの。だから、逆の立場になった今、私が最初に逃げ出すわけにはいかない。でしょう?」 ──そう、か。 彼女が、死地に赴こうとするのは、義務感なんかじゃあない。 彼女は、曹操の影に負けることなんてなく、彼女自身の人生を生きている。 呂布の前に立つ。 それは──自分がそうしたいからで、曹操の意志など、一粒も入っていない。「………………」「一刀。はやく、私をあそこまで連れて行きなさい」 華琳は、もう揺るがないようだった。 わかっている。俺は、この娘に勝てたことは一度もない。「──ダメだ」「一刀。お願いしているわけじゃないの。これは、──命令よ。いままで、一度もあなたに命令なんてしたことなかったけど、私の最初の命令として、これを聞きなさい」 華琳の言葉に、俺は顎を噛み合わせた。 自分自身の声が震えていた。俺は、そうやって、次に用意していた説得の言葉をすべてかみ砕いた。「そうか、命令か。──命令なら、仕方ないな」 秋蘭、すまない。 約束を守れなかった。 心中する覚悟は、決まった。彼女がその道を選んだのなら、俺はそれを輔佐することしかできない。「ごめんね。私の、わがままにつきあわせて」 呂布は、背後に騎馬隊を整列させていた。あれがこちらになだれ込んできたが最後。曹操軍は終わる。それで、いい。天下取りも中途半端だったが、ここでこうやって終わるのも、仕方がない。 華琳は、そうやって、呂布の前に立った。 倚天の剣を掲げる。奇蹟は起きない。彼女が呂布に勝てる可能性など、ゼロに等しい。「……首を差しだせば、部下の命は助けるが」「逆なら、話し合いの余地もあるのだがな。私の屍を乗り越えていけ」 貫かれた右目を押さえたままで、春蘭は立ち上がった。砕けて使い物にならなくなった七星餓狼を捨てて、沙和の双剣を手にしている。次に、凪が立ち上がった。砕けた両腕をもてあまして、それでも盾ぐらいにはなれるだろうという覚悟だった。 堤がきられた。 大地の鳴動とともに、呂布の騎兵隊がすべてを埋め尽くす。 槍を構えた鋼鉄の質量が曹操軍に襲いかかる。たちまちに、華琳の姿はこちらに突撃する騎兵たちに遮られて見えなくなった。手負いの春蘭たちが、再び叩き伏せられるまで、それほどの時間は必要としないはずだった。 そして、大陸最強の騎兵隊が、曹操軍のすべてを刈り尽くす。 ──寸前で、突如乱入してくる戦力があった。いや、それは人ですらない。人の手によって解き放たれたブタの群れは、呂布の騎兵隊と曹操軍の間に乱入し、バリケード代わりになっていた。 勢いは止まらない。 騎兵隊が、ブタに足をとられて落馬している。「──なんだ、これ」 踏みつけられるブタと、落馬する騎兵たちの悲鳴で、戦場が大混乱に陥っていた。それでも、すべての騎兵を止めるまでには至らない。 五騎がほどが、こちらを向いた。 兵士達を踏みつぶしながら、大将首ひとつを狙ってくる敵。手に馴染んだ、馬上棍を構える。大将自らが闘わなければならない時点で、すべに敗色濃厚だが。近くで見る限り、隙はいっさいない。五騎すべての馬は、立ち回りを見る限り、能力も絶影と遜色はない。勝てるか──?「なっ──」 飛んだ。 歩兵の頭上をまたぎ、こちらの首を一直線に狙ってくる。 あ、やばい。 落下の速度と馬の体重の乗った、凄まじい一撃だった。ひとつめの槍を、なんとか避けたあとで、残りの四騎がこちらに迫っていた。 一斉に槍が突き出される。「──にゃははっ。お兄ちゃん。だらしないのだ」 ──死んだ、と思った。 走馬燈が見えたほどである。一瞬に濃縮された十七年間を幻視したのちには、向かってきた騎兵は、すべてが叩き伏せられていた。 たったひとりで、戦場に乗り込んできた、その少女に、戦場が押し戻されている。 彼女が、手にするは、八丈蛇矛。 一瞬の交差ののちに、新たに突撃してきた十騎を越える騎兵が、すべて宙に跳ね上げられていた。転がされた馬で、バリケードを作っているのだろう。たったこれだけで、黒きけものの突進力の、ほとんどが奪い取られていた。 彼女は彼女の思うまま、自らの身長の倍はあろうかという、特徴的なカタチの矛を、自在に振り回している。 ──強い。 理不尽なまでの強さ。 伝説とまで言われた武勇。曹操軍における誰と較べても、まるで比較にならない。三国志における、間違いなく最強の一角。 戦場に降る陽光に照らされて、未だ幼さの残る表情を不敵に歪ませている。小さな身体ながら、その繰り出される一撃は、呂布にまったく劣らない。三国志に心奪われたことがある人間なら、必ず一度は、その圧倒的な強さに憧れる。 ──張飛。 史実では程昱に、『一人で一万の兵に匹敵する』とまで言われた武勇は、この世界でもいささかもスポイルされていないようだった。「うっわー。敵がいっぱいなのだ。ここで逃げるなら、見逃してやるけど」 普通なら、黙殺される台詞も、彼女が言うとまったく別の意味に聞こえてしまう。事実、その言葉で明らかに歴戦の騎馬隊が、動揺している。完全な、武将としての格が違う。長坂で万の軍勢を食い止めたように、彼女にとっては数多くある武勲のひとつでしかないのかもしれない。 それでも、 限りなくこの戦場にあるすべての殺意が質量を伴って、彼女に殺到する。「止まらない。ならば──」 少女は、八丈蛇矛を風車のように振り回し、名乗りをあげた。「張翼徳の蛇矛の一撃ッ。受けられるものなら受けてみよ、なのだッ!!」 華琳は眼を閉じていた。 けれど終わりの瞬間は、やってこなかった。自らの悲鳴は、金属と金属がぶつかる音に、掻き消される。 彼女は眉を動かした。 そして、おそるおそる、眼を開く。 おかしいのだ。呂布の方天画戟を受け止められる武将も、そして──武器も、そんなものはこの世界に存在しないはずだった。それほど、もうひとりの自分の記憶を通して見た、呂奉先という少女の武力は常識知らずで、並外れていた。 目の前には、大きな薙刀があった。 柄に彫刻された青龍の意匠が、華琳の目を惹く。 そして──それが自分に向けて真っ直ぐに振り下ろされた呂布の方天画戟を、真っ正面から受け止めていた。 背を向けて、彼女は立っていた。 美髯公の名の由来となった、絹のように輝くしなやかな黒髪を、宙に踊らせて。手には、ふたつとない逸品として名高い、青龍偃月刀を構えて。「あなた──は?」 華琳は、声に出した。 死への恐怖と安堵がない交ぜになり、腰が抜けそうになっている。 そして──彼女の疑問を振り払うようにして、全身が鋭い刃で構成されたような黒髪の少女は、高らかに自らの戦場で名乗りをあげた。「我が名は関雲長。劉玄徳が一の配下、幽州の青龍刀なりっ!! 非情の刃、乾坤一擲となりて、その身にとくと味あわせてくれよう。呂奉先。──矛を構えろ」 凛とした、凍り付いた彼女の声に、呂布の表情が、明確に歪んだ。 呂布の嗅覚が、目の前の少女の武力が、自分の匹敵するものであることを教えている。そして、彼女との戦いが、自らのすべてを賭けた死闘になるということを。「関係ない。月(ゆえ)の邪魔になるものは取り除く。──どけ。もし、刃向かうなら、殺す」「笑止。こちらにも引けぬ理由がある。その方天画戟が飾りでないのなら、力づくでくるがいいッ!!」 関羽と呂布。 ──最強の名をかけて、青龍偃月刀と方天画戟が交差した。 次回 →『孔明、韓信の故事を警戒し、華琳、関羽にひとめぼれする、とのこと』