その日アキラがいつも通りに出社すると、一人の騎士が土下座していた。
「アキラさん、おはようございま~す」
「あ、おはようアキラくん」
「……おはようございます。戻ってたんですね所長、おかえりなさい」
目の前の光景に一時停止していたアキラだったが、アヤとヒメが普通に挨拶してきたので流すことにした。
それに腹が立ったのか、土下座していたベリスが顔だけアキラへ向けて明らかに不機嫌な声で問いかけてくる。
『待て小僧。今の光景に疑問を持たぬのか?』
「……馬どこ行った?」
『……貴様わざと言っているだろう』
土下座したまま話しかけてくるベリスに対して、あまり深く関りたくないので敢えてズレた質問をするアキラ。
ベリスとしては助け舟を出して欲しいのだろうが、アヤから川でのベリスの行動を聞いている以上、アキラが好意的な感情を持って助けることなどは間違っても無いだろう。
「ほやね。丁度良いけんアキラくんもちょっと正座しとこか? 結果オーライやけど橋から飛び降りるんはいただけんなぁ」
何故正座? というツッコミは当然のように無視され、アキラはベリスと共に説教をされることになった。
説教の割合はベリス9対アキラ1だったが。
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勤務時間を終えた夕方。アキラとヒメは机を挟んで対面に座り、その上に置かれているトランプを見つめている。
そしてヒメは裏向けに置かれているトランプのうちの一枚を手に取ると、アキラに視線を向ける。
「……赤の……ハートの3」
「んー、惜しい」
アキラがトランプの絵柄と数字を言ったのに対し、ヒメは楽しそうに口元を歪めると持っていたトランプを机の上へ表向きに置く。
そのトランプはハートの5。アキラの宣言したものとは微妙に違っていた。
「とりあえずこれで百回やったんやけど……アヤちゃん結果は?」
「え~と……正当数は四回ですね~」
「そりゃまた微妙やね。誤差の範囲内かなぁ」
アヤの答えでは判断がつき辛かったのか、ヒメは片目を細めながらアヤの記録していたパソコンのデータを覗き込む。
今までアキラがやらされていたのは、ヒメの示したトランプの色と絵柄と数字を当てるというシンプルなもの。アキラの“力”に変化が表れたのを聞き、異様に高い直感がどうなっているのかを調べるための実験だ。
もっとも実際に予知や透視の類を検証するために使われるのは、星や三角形などの絵柄の描かれたカードであり、トランプの数字まで当てるというのは難易度が高すぎるのだが。
「お? でも絵柄は結構当たっとるね。大体半分かな?」
「色だけなら八割近いですね~。凄いです~」
「選択肢が多くなるほど確率が下がるんかもしれんねぇ。やっぱ予知まではいかずに、あくまでも直感やろうね。あ、でもハイ&ロウなら大活躍やん」
本人を置き去りにして話し合う二人を横目に、アキラはジョーカーを積み上げられたトランプの山の真ん中に入れ、指を鳴らすと山の中に入れたはずのジョーカーが一番上に来るという手品をピクシー相手に無言で見せている。
それを見たピクシーは笑顔で拍手をしているので、これでもコミュニケーションはとれているらしい。
「んで、直感はこれで置いとくとして、他にも人の心が読めるようになったって?」
「……読めるって程じゃ無くて、喜んでるとか苛立ってるとか、感情の起伏が感じ取れるくらいですよ。見えなくても位置が分かるのは役に立ちましたけど」
しばらく考える素振りを見せてから答えるアキラに、ヒメは何度か頷くと黙考する。
そしてその様子を黙ってみていたアキラへ向き直ると、その鋭い目をさらに細めながら口を開く。
「んー、もしかしてアキラくん小さい頃とか思春期くらいに、感受性強かったりせなんだ? 他の人の感情に引きずられたりとか」
「……友達が泣いてたら一緒になって泣いたりしてましたけど」
「じゃあ決定かなぁ。非接触型の精神感応能力――所謂テレパシーやろね。送信は出来んみたいやけん受信専用かな」
「受信専用って……」
テレビかラジオのような表現に呆れながらも、アキラは意識を集中して周囲の意識を拾ってみる。
確かに読み取ることは比較的簡単に出来るが、呼びかけるのはやろうと思ってもイメージすらわかない。
「まあ弱めで良かったやん。何考えとるか詳細に読み取れたりしたら、アキラくんみたいな人に気を使うタイプは欝になるで」
「やっぱ読める人も居るんですか?」
「そりゃ居るよ。送信側も、強力な人は勝手に脳に命令して他人操れたりするし。でもテレパシー系は人の心に関するだけあって、制御で出来んかったら悲惨やけんねぇ。アキラくん制御は出来るんやろ?」
アキラはヒメの言葉を聞いて、改めて周囲へ意識を張り巡らせる。
それは自分を中心に、世界が広がっていく感覚。その広がっていく世界に、次々と人の意識が浮かび上がってくる。
「……意識したら効果範囲が広げられるみたいです。広げなくても二メートルくらいは無意識に拾ってしまうみたいですけど」
「最低で二メートルねぇ。……最大は? 具体的な範囲は分かる?」
「少なくともこのマンションに居る人の数と位置は把握できますけど」
「……ホントに?」
さらりととんでもない事を言うアキラに、ヒメは一拍置いてから真顔で聞き返す。
アカイデザインスタジオの入っているマンションは十階建て。つまり単純に距離で考えるならば三十メートルはアキラの精神感応能力の範囲内という事になる。
その範囲自体はさほど広くないのだが、一般的なテレパスとは違い、範囲内全ての人間を同時に観測できるアキラの能力を考えれば、脳の処理が追いつくのが不思議な広さだ。
「アキラくんやっぱりデビルサマナーにならん? 付近の敵味方の動きが見んでも把握出来るて、めっちゃ指揮官向きやし」
「遠慮しときます。ピクシーは別にしても、まだ仲魔を増やせるような状態じゃないと思うので」
「へえ……」
アキラのその言葉にヒメは感心する。
以前のアキラは悪魔自体を近づけるのを忌避していたようだったが、今は自身に悪魔を従える力が無いと考えているようだ。悪魔に対する慎重さは相変わらずでも、警戒心や嫌悪感は無くなってきているらしい。
その最大の要因は、今アキラに手品を見せられて喜んでいるピクシーだろう。その無邪気さもさるものながら、共にカワアカゴという敵を退けたのは大きかったはずだ。
「んー、でもアキラくんの能力考えたら、剣より銃に先慣れたほうが良いかなぁ。今度の土日ちょっと訓練しよか」
「訓練は良いんですけど……どこでやるんですか?」
「それは当日のお楽しみにしとこか。とりあえずこれ渡しとくけん、手に馴染ませとき」
「はい?」
ヒメが懐から取り出して渡してきた物を、アキラは反射的に右手で受け取ろうとした。しかし右手で受け止めた瞬間に予想以上の重量がかかり、慌てて両手でそれを持ち上げる。
一体何なのかと受け止めた物へ視線を向けると、そこには見慣れたくないのに見慣れてしまった物とよく似た物体が収まっていた。
「……何ですかこれ?」
「新しい銃。趣味で使うならSAAで良いんやけどねぇ、やっぱダブルアクションの方が使い勝手が……」
「だから無造作に危険物を出さないで下さい!?」
何やら腕組みをして語り始めるヒメに向かって、未だ常識を捨てきれない男が叫ぶ。
その様子をアヤとピクシーは呆れ混じりに見つつ思った。精神感応関係なく、今一番アキラに精神的負担をかけているのはヒメだろうと。
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アカイデザインスタジオから少し離れた場所にある中心市街地には、大手通、天橋街、水岐タウンという三つの商店街が存在する。
それぞれの商店街は、中心市駅や大型百貨店といった施設を結ぶように隣接しており、まとめて中央商店街と呼ばれることもある。
アキラはヒメに案内されて、三つの商店街の中でも一番スタジオから近い大手通へ来ていた。大手通を含む中央商店街は、不況の中でも良好な通行量と集客率を誇っており、今日は週末という事もあり家族連れなどで賑わっている。
それでも歩くのが困難というほどでは無いのだが、ヒメはアキラの表情が何故か優れないことに気付き立ち止まる。
「どしたんアキラくん? また寝不足?」
「いえ、しっかりと寝てますよ。ただすれ違う人の色が飛び込んできて、混乱するというか気持ち悪いというか」
「ああ、なるほど……完全に能力カット出来んのは不便やねぇ」
どこか覇気の無いアキラと、それを胸ポケットの中から心配そうに見上げるピクシーを眺めつつ、ヒメは腕組みをしてうなる。
仕事中にヒメやアヤがそばに居ても平気だったので、人ごみの中で次々に他人が能力の範囲内に出入りした場合の事を考えていなかった。かと言って予想していたとしても解決方法など思いつかなかっただろうし、今現在も分からない。
魔法や術といった連綿と受け継がれてきたものと違って、超能力と呼ばれる力は血筋に関係無く突然変異的に目覚める事が多い。
その能力も一応は幾つかのカテゴリーに分類されてはいるが、例えば同じテレパスでも個人によって細かい能力は千差万別であったりするし、少数ではあるが前例の無い能力に目覚めるケースもある。
各国で超能力の研究は行われてきたが、その能力を技術として体系化出来ないため、効果的な訓練方法も確立されていないのが現状だ。
「とりあえず目的地は近いけん、さっさと移動しよか。というかアキラくん何で休みの日までスーツなん? 今日結構暑いで?」
しばらく悩んだ後、解決しない問題を悩んでも仕方が無いとヒメは判断し、歩き出しつつ気になっていた事を指摘する。
「最初は私服で来るつもりだったんですけど、俺の持ってる薄い上着じゃ肩の物騒なものが目立つ気がして。それに所長だって珍しくスーツだし」
「ん? まあその辺は人の居らんとこで説明しよか。ついたでー」
ヒメが例の黒いスーツを着ているのを指摘したアキラだったが、ヒメは話題を区切って近くの店へと入って行ってしまう。
その後を追いながらアキラが見上げた看板に書かれていた店名は「BARアーセナル」。
その名前にそこはかとない不安を覚えながら、アキラは「CLOSE」と書かれた札の下がっている、木製の時代がかった扉へと手をかけた。
BARアーセナルの店内は雰囲気作りのためか薄暗く、入り口から奥に向かって細長い作りになっていて、アキラはどこか息苦しさを感じた。その息苦しさの原因は、アキラがこのような場所に慣れていないというのもあるのだろうが。
「あら、いらっしゃーいヒメちゃん!」
「マスターおひさー」
店内へ入ったアキラ達を、カウンターの奥から甲高い声で出迎えたのは、長くウェーブのかかった髪を紫色に染め、黒いドレスのような服を着た体格の良い三十代くらいの女性。
だがそのどこか無理しているような声と、女性にしては広すぎる肩幅を見て、アキラは即座に彼女(?)が女性でないことを悟る。
もっともそれをわざわざ指摘するような無粋な真似をしたりはしないが。
「こっちは社員兼弟子みたいな存在のアキラくん。アキラくん、この人はここのマスターのミキさん」
「どうもミキでーす。本名は御木本コウタロウ。君の予想通りオカマだが、誇りあるオカマであるが故にパンピーには手を出さないから安心しろ!」
そしてその気遣いを、自己紹介の途中から野太い声になって粉砕するマスターミキ(本名コウタロウ)。今ここにアキラの常識を違う意味で破壊する新たな存在が現れた。
「えーと……深海アキラです」
「ええ、ヒメちゃんからお話は聞いてるわ。成人してからこの世界に入るなんて、見た目によらず豪気ねぇ」
再び高い声に戻るミキ。どうやらこちらが基本らしい。生物学的に考えれば、野太い方が素だろうが。
「マスターは悪魔相手にしとる人らに銃器の販売しとるけん、銃関連で困ったことがあったらマスターに相談してぇや。地下に射撃訓練場もあるけん、練習したい時は言うてくれたら弾代経費で出すよー」
「うふふー。ヒメちゃんとは付き合い長いから、アキラちゃんが使うときも代金はお勉強させてもらうわね」
「…………」
返事を返したいが、色々と予想外の事が起きすぎて言葉が出ないアキラ。いつのまにか肩に乗っているピクシーも引き気味だ。
それにも関らずヒメが平気なのは、やはり付き合いの長さの差だろうか。
「それじゃあ二名様ごあんなーい!」
「行くでーアキラくん」
呆気にとられたままの一人と一匹を置いて奥に移動するヒメとマスター。
アキラは再び返事を返せずに、ただ無言でその後へ従った。
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BARの地下にある射撃訓練場。
上にあるBARとは違い、コンクリートで覆われただけの殺風景な印象のその中で、アキラはヒメから渡された二つ目の銃――S&W M19を構えている。
目元を覆う黒いゴーグル越しに見つめるのは、十メートルほど離れた場所にある人の上半身の描かれた的。そこには既に幾つかの弾痕が残っており、それらは絵の肩から鳩尾の辺りまでにばらけている。
「……ヒメちゃんも大変な子を引き受けちゃったかもしれないわねぇ」
「大変て何で? 基本的に手がかからんよ?」
アキラが引き金を引くのを眺めながら呟いたマスターの言葉に、ヒメは意図が掴めず問う。危険なためその肩に避難しているピクシーも、気になるのか耳をピンと立ててマスターへ視線を向ける。
アキラは確かに行動の予測のつかない所があるが、人の言う事はちゃんと聞くし要領もいい。仕事においても戦いにおいても教えたことをすぐに、あるいは時間をかけても諦めずに吸収するので、ヒメはむしろ楽だと思っている。
「そうねぇ……今も最初に教えた基本に忠実に撃ってるし、集中力もかなりのものだわ。でもね、間違わない人間なんて居ないの。普段間違わない人間ほど、いざ間違えた時に修正するのが難しいのよ。手がかかる子なら、普段から目が離せないからすぐに修正出来るんだけどね」
「あー……つまり出来が良いけんて、安心して目を離したらいかんと」
とは言えアキラは成人男子。ヒメとしてはどこまで干渉して良いものか、測りかねている所もある。
技術や知識は普通に教えればいいだろう。だが心構えや思想、信念といったものは人によって違うものだ。アキラが折れそうなら当然助けるが、自分の思想にアキラが染まることがヒメには何故か許容出来そうに無い。
「所長、全部撃ち終わりました」
「ん、いきなりマグナム弾撃ってよくそこまで当たるねぇ。何か不具合とかあった?」
今までのアキラの撃ち方と弾痕の残る標的を見て、ヒメは特に指摘することも無かったのでアキラ自身に何か不便な部分が無かったか聞く。
それに対してアキラは少し間を置くと、耳当てとゴーグルを外しながら答える。
「……連射だと狙いがますます定まらないのと、反動が前の銃と比べて激しいというか鋭いというか」
「連射で狙いが定まらんのは仕方ないかなぁ。ダブルアクションはどうしても引き金が重くなるしね。狙いを定める時はあらかじめ撃鉄起こしといた方が良いし。距離があったら撃鉄上げといて、接近戦になったら連射って感じで使い分けるんが一番かな。
あと反動が激しい? 口径自体はSAAよりM19の方が小さいんやけど、使っとる弾の火薬が多いけんそのせいかなぁ。撃ち辛いんかもしれんけど、それは慣れるしか無いね」
ヒメの説明を黙って聞いていたアキラだったが、ふと気になることを思い出して口を開く。
「そういえば、この銃を選んだのに何か意味はあるんですか?」
「んー本当はコルトパイソンが良かったんやけど、手に入らんかったし使い勝手が悪いけんね」
「つまりヒメちゃんの趣味ね。リボルバーが好きなのよ」
ヒメの言葉だけ聞けば銃に詳しくないアキラは素直に納得していただろうが、そこに追加されたマスターによる真実。
自分の趣味で初心者の銃を選ぶヒメにアキラは呆れたが、「リボルバーの方が丈夫やけん!」というヒメの言葉に納得して文句は言わなかった。
装弾数が少なくリロードに時間がかかるという欠点には、素人のアキラでは気付けないし、気付いた所で総合的に考えてオートマチックとどちらが良いかなど、それこそ判断出来ないだろう。
「んじゃ、今日はこれで終わりやね。SAA……前の銃はどうする? 一応持っとく?」
「そうですね……予備のつもりで持っておきます。それより本当に経費で落とすんですか?」
ヒメがマスターに試射したのと新たに購入した分の弾丸の代金を払うのを見て、アキラは先ほども感じた疑問を聞く。
「ん? 経費言うても、悪魔関連の仕事で稼いだお金から出すよ。その辺りは裏と表で完全に分けとるけんね」
「いや、そうじゃ無くて。俺のための出費だから、俺が出さなくていいのかと」
「それこそ新人育成のための必要経費やん。気にせんでええよ。まあそのうち腕試しついでに実戦に参加してもらうけん、そのときの働きで返してや」
そう言ってひらひらと手を振るヒメ。それに今度こそ納得したアキラは、マスターに礼を言うとピクシーを肩に乗せて地下室を出て行った。
「……今どき珍しいくらいに良い子ね」
「やろ? 真面目やけど融通がきかんわけや無いし」
しみじみとした様子で言うマスターに、ヒメはアキラの登って行った階段を眺めながら答える。
類は友を呼ぶというのか、ヒメはアキラのようなタイプとは今まで親しくなったことが無い。ヒメはそれはアキラのようなタイプの交友関係が狭いためだと勝手に思っているが、実際にアキラの交友関係が狭いのでその認識は変わらないだろう。
「話は変わるけどね、この前私葛葉に呼び出されたんよ」
「あら、よく素直に呼び出されたわね」
ヒメから“葛葉”の事を聞いて、目を丸くするマスター。付き合いが長い故に、マスターはヒメが葛葉と呼ばれる集団を嫌っていることを知っている。
しかしヒメはマスターの言葉には特に何も返さず、ただそこで聞いた事を伝える。
「前に何度か出てきた悪魔もどき……ワードックとかワーキャットが全国各地で暴れとるんやと」
「……自然発生しえないものが全国各地で。葛葉は何らかの組織が動いていると判断したのね?」
「そういうこと。それでこの辺りは民間の同盟の力が強くて、葛葉はあんま立ち回れんやろ? いざとなったら葛葉名乗っても良いけん何とかしろ言われた。……誰が名乗るかァッ!?」
「ヒメちゃんどうどう。何かやらかしても葛葉が責任取ってくれるとでも思っておいた方が気が楽よ」
自分で説明していて怒りが再燃したのか突然叫ぶヒメに、落ち着くように促しながら利点を告げるマスター。
流石に付き合いが長いだけあって、御し方も心得ているらしい。
「うん。まあそういうわけで、下手すればアキラくんの面倒見れんかもしれんけん、アキラくんがここ来たらなるべく気にしてあげてくれんかなぁ? 多分しばらくは銃主体でいくと思うけん」
「別にヒメちゃんに何か無くてもお節介はやくつもりだったわよ? ヒメちゃん銃下手だものね」
「……良いんよ。私は剣も魔法も使えるけん、近代兵器に頼らんでも良いんよ」
気にしているのか、悔しそうに負け惜しみを言うヒメ。自分の好きなリボルバー銃を使いこなせないのも悔しい原因か。
「とにかくお願いなぁ。んじゃ今日はこれでバイバイ」
「はいはーい。それじゃあまたね」
軽く手を振るマスターに見送られて、ヒメは地下室を後にした。