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No.7357の一覧
[0] デビルサマナー外典 ソウルガーディアン (第3期 オリジナルメガテン世界)[レッドマン](2009/10/16 14:43)
[1] 第2話[レッドマン](2009/06/19 06:52)
[2] 第3話[レッドマン](2009/06/19 06:53)
[3] 第4話[レッドマン](2009/03/15 00:10)
[4] 第5話[レッドマン](2009/03/15 00:11)
[5] 第6話[レッドマン](2009/04/23 23:15)
[6] 第7話[レッドマン](2009/04/15 15:42)
[7] 第8話[レッドマン](2009/03/26 11:29)
[8] 第9話 (15日、22時27分に追加・修正)[レッドマン](2009/03/18 02:55)
[9] 第10話[レッドマン](2009/03/16 17:10)
[10] 第11話[レッドマン](2009/03/16 21:26)
[11] 第12話 (追加・修正をしました)[レッドマン](2009/04/23 23:17)
[12] 第13話[レッドマン](2009/03/16 21:56)
[13] 第14話[レッドマン](2009/03/17 19:57)
[14] 第15話[レッドマン](2009/03/18 02:57)
[15] 第16話[レッドマン](2009/05/19 21:58)
[16] 第17話[レッドマン](2009/03/18 23:58)
[17] 第18話 (文章追加)[レッドマン](2009/03/19 19:04)
[18] 第19話[レッドマン](2009/03/26 09:19)
[19] 第20話[レッドマン](2009/03/30 18:37)
[20] 第21話[レッドマン](2009/04/23 23:21)
[21] 第22話 (追加修正)[レッドマン](2009/09/01 08:02)
[22] 小ネタ(アンケート待ちの状態での時間稼ぎともいう)[レッドマン](2009/03/26 23:16)
[23] 第23話[レッドマン](2009/03/27 21:06)
[24] 第24話[レッドマン](2009/04/23 23:18)
[25] 第25話[レッドマン](2009/03/28 15:30)
[26] 第26話[レッドマン](2009/04/23 23:23)
[27] 第27話(修正)[レッドマン](2009/04/16 11:59)
[28] 第28話[レッドマン](2009/03/30 00:32)
[29] 第29話[レッドマン](2009/03/30 13:52)
[30] 第30話[レッドマン](2009/03/31 16:07)
[31] 第31話[レッドマン](2009/03/31 17:14)
[32] 第32話[レッドマン](2009/03/31 22:47)
[33] 第33話[レッドマン](2009/04/01 13:18)
[34] 第34話[レッドマン](2009/04/02 22:23)
[35] 第35話[レッドマン](2009/04/13 02:29)
[36] 第36話[レッドマン](2009/04/16 12:22)
[37] 第37話[レッドマン](2009/04/04 22:48)
[38] 第38話[レッドマン](2009/04/05 21:30)
[39] 第39話[レッドマン](2009/05/20 23:07)
[40] 第40話[レッドマン](2009/05/10 04:38)
[41] 第41話[レッドマン](2009/05/10 04:40)
[42] 第42話(第1期終了)[レッドマン](2009/04/10 02:27)
[43] 第2期 第一話(2期突入したので板を移動)[レッドマン](2009/04/09 23:57)
[44] 第2期 第2話[レッドマン](2009/05/01 11:53)
[45] 第2期 第3話[レッドマン](2009/06/18 10:31)
[46] 第2期 第4話[レッドマン](2009/04/15 14:43)
[47] 第2期 第5話[レッドマン](2009/04/27 04:20)
[48] 第2期 第6話[レッドマン](2009/05/01 04:05)
[49] 第2期 第7話[レッドマン](2009/05/01 04:18)
[50] 第2期 第8話[レッドマン](2009/04/17 12:09)
[51] 第2期 第9話[レッドマン](2009/04/19 01:34)
[52] 第2期 第10話[レッドマン](2009/05/01 12:07)
[53] 第2期 第11話[レッドマン](2009/06/21 19:45)
[54] 第2期 第12話[レッドマン](2009/04/27 03:31)
[55] 第2期 第13話[レッドマン](2009/04/27 09:55)
[56] 第2期 第14話[レッドマン](2009/04/29 13:54)
[57] 第2期 第15話[レッドマン](2009/06/09 23:36)
[58] 第2期 第16話[レッドマン](2009/05/03 03:15)
[59] 第2期 第17話[レッドマン](2009/05/08 12:59)
[60] 第2期 18話[レッドマン](2009/05/08 13:01)
[61] 第2期 第19話[レッドマン](2009/06/09 23:36)
[62] 第2期 第20話[レッドマン](2009/05/13 09:47)
[63] 第2期 第21話[レッドマン](2009/05/13 10:14)
[64] 第2期 第22話[レッドマン](2009/08/17 05:10)
[65] アンケートまでの時間稼ぎその2(2009/05/16 追加)[レッドマン](2009/05/16 23:53)
[66] 第2期 第23話[レッドマン](2009/05/19 12:45)
[67] 第2期 第24話[レッドマン](2009/05/21 17:24)
[68] 第2期 第25話[レッドマン](2009/06/09 23:50)
[69] 第2期 第26話[レッドマン](2009/05/24 20:14)
[70] 第2期 第27話[レッドマン](2009/05/25 15:14)
[71] 第2期 第28話 (アンケート有り)[レッドマン](2009/05/25 16:10)
[72] 第2期 第29話[レッドマン](2009/05/26 01:43)
[73] 第2期 第30話[レッドマン](2009/05/27 06:00)
[74] 第2期 第31話[レッドマン](2009/05/29 08:34)
[75] 第2期 第32話[レッドマン](2009/09/01 09:58)
[76] 第2期 第33話[レッドマン](2009/09/01 10:13)
[77] アンケート[レッドマン](2009/06/03 02:57)
[78] 第2期 第34話[レッドマン](2009/06/05 21:32)
[79] 第2期 第35話 6月8日追加・修正。[レッドマン](2009/06/08 05:02)
[80] 第2期 第36話[レッドマン](2009/07/05 11:04)
[81] 第2期 第37話 修正・追加(6月11日)[レッドマン](2009/06/12 03:50)
[82] 第2期 第38話[レッドマン](2009/06/13 17:41)
[83] 第2期 第39話[レッドマン](2009/06/15 02:00)
[84] 第2期 第40話[レッドマン](2009/06/15 13:51)
[85] 第2期 第41話[レッドマン](2009/06/16 01:28)
[86] 第2期 第42話[レッドマン](2009/06/17 22:21)
[87] 第2期 第43話[レッドマン](2009/06/20 14:29)
[88] アンケートまでの時間稼ぎその3[レッドマン](2009/06/19 22:57)
[89] 第2期 第44話 (6月21日 追加修正)[レッドマン](2009/06/21 07:42)
[90] 第2期 第45話[レッドマン](2009/06/21 06:26)
[91] 第2期 第46話[レッドマン](2009/06/22 10:29)
[92] 第2期 第47話[レッドマン](2009/07/01 03:12)
[93] 第2期 第48話[レッドマン](2009/07/01 03:14)
[94] 第2期 第49話[レッドマン](2009/06/26 00:01)
[95] 第2期 第50話 (27日追加修正)[レッドマン](2009/06/27 12:18)
[96] 第2期 第51話[レッドマン](2009/06/27 20:44)
[97] 第2期 第52話(第2期 最終回)[レッドマン](2009/06/28 12:25)
[98] 第2期がもうすぐ終わるのでアンケート。(おまけ追加)[レッドマン](2009/06/28 23:55)
[99] 第3期 第1話 (修正・追加)[レッドマン](2009/07/05 03:13)
[100] 第3期 第2話[レッドマン](2009/07/03 06:55)
[101] 第3期 第3話[レッドマン](2009/07/03 06:56)
[102] 第3期 第4話[レッドマン](2009/07/03 12:35)
[103] 第3期 第5話[レッドマン](2009/07/12 16:58)
[104] アンケート+おまけ[レッドマン](2009/07/05 01:41)
[105] 第3期 第6話 7月7日更新・追加[レッドマン](2009/07/07 02:34)
[106] 第3期 第7話 追加修正[レッドマン](2009/07/10 11:39)
[107] 第3期 第8話[レッドマン](2009/07/10 23:00)
[108] 第3期 第9話 追加修正[レッドマン](2009/07/14 08:11)
[109] 第3期 第10話[レッドマン](2009/07/13 09:35)
[110] 第3期 第11話 7月16日更新[レッドマン](2009/07/16 22:39)
[111] 第3期 第12話[レッドマン](2009/07/19 12:54)
[112] 第3期 第13話 7月21日更新[レッドマン](2009/07/21 21:40)
[113] 第3期 第14話 追加修正[レッドマン](2009/07/25 20:21)
[114] 第3期 第15話 追加修正[レッドマン](2009/07/30 11:52)
[115] 第3期 第16話 7月31日更新[レッドマン](2009/07/31 00:59)
[116] 第3期 第17話 8月7日更新[レッドマン](2009/08/07 18:50)
[117] 小ネタ[レッドマン](2009/08/10 20:54)
[118] 第3期 第18話 8月16日更新[レッドマン](2009/08/16 03:32)
[119] 第3期 第19話 8月19日更新[レッドマン](2009/08/26 00:16)
[120] 第3期 第20話[レッドマン](2009/09/01 02:21)
[121] 第3期 第21話[レッドマン](2009/08/26 00:25)
[122] 第3期 第22話[レッドマン](2009/08/27 10:45)
[123] 第3期 第23話 8月31日更新[レッドマン](2009/08/31 22:17)
[124] 第3期 第24話 9月3日更新[レッドマン](2009/09/03 22:34)
[125] 第3期 第25話[レッドマン](2009/09/04 11:21)
[126] 第3期 第26話 9月6日更新[レッドマン](2009/09/06 23:24)
[127] 第3期 第27話[レッドマン](2009/09/06 23:13)
[128] 第3期 第28話 [レッドマン](2009/09/09 00:54)
[129] 第3期 第29話 [レッドマン](2009/09/11 10:06)
[130] 第3期 第30話[レッドマン](2009/09/12 10:58)
[131] 第3期 第31話[レッドマン](2009/09/14 09:06)
[132] 第3期 第32話 [レッドマン](2009/09/17 13:44)
[133] 第3期 第33話[レッドマン](2009/09/18 21:48)
[134] 第3期 第34話(閑話的)[レッドマン](2009/10/04 11:24)
[135] 第3期 第35話 更新[レッドマン](2009/10/08 01:53)
[136] 第3期 第36話(旧37話と統合)[レッドマン](2009/10/29 11:53)
[138] 第3期 第37話[レッドマン](2009/10/29 11:54)
[139] 第3期 第38話[レッドマン](2009/10/30 01:17)
[140] 第3期 第39話[レッドマン](2009/11/11 04:16)
[141] 第3期 第40話[レッドマン](2009/11/16 06:30)
[142] 第3期 第41話[レッドマン](2009/11/20 02:06)
[143] 第3期 第42話[レッドマン](2009/12/12 01:30)
[144] 第3期 第43話 (おまけついか)[レッドマン](2009/12/22 00:47)
[145] 第参部 の これから予告[レッドマン](2010/02/25 23:16)
[146] 第3期 第44話 (おまけを先行投下/追加)[レッドマン](2010/02/25 23:52)
[147] 第3期 第45話 [レッドマン](2010/03/09 22:06)
[148] ソウルガーディアンの世界観について(ネタバレあり・10月にて追加情報)[レッドマン](2009/10/22 12:10)
[149] ソウルガーディアン外伝『守護霊から見た人間の感想ってやつ』[レッドマン](2009/10/29 11:57)
[150] 外伝 『石動巧、陰陽道の講師になるの巻』[レッドマン](2009/11/08 02:17)
[151] 外伝 「探偵ってなにさ?」 [レッドマン](2009/12/22 01:03)
[152] ちょっと思いついたネタ[レッドマン](2010/02/18 11:55)
[153] 外伝 小ネタ詰め合わせしたり。(3月22日 追加あり)[レッドマン](2010/03/22 14:25)
[154] 生存報告 + ほんのすこしの小ネタ[レッドマン](2010/08/29 14:24)
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[7357] 第2期 第11話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/21 19:45
 小ネタ その1
 『この人が言っちゃいけない!!』

・キョウジ・石動編(自殺者に対して言う台詞)

『死んだら御仕舞いなんだぞ!』


 お前が言うな、特に石動!



・石動編(名乗り)

『唯の平凡なサマナーだ』

 
 いや、水準満たしていないし!
 守護霊なしで大僧正を切り倒したり、ほぼ単騎で白騎士を屠っている時点で凡人じゃない。
 類義語は『私は唯の保険会社のサラリーマンです』(九鬼)。





 小ネタ その2
 『人間とは順応する生き物です。』

 これは酒飲みな三人と一体が集まった時の話。
  

「ねえパオ」

「……なんだ芹沢?」

「台湾に住んでいたんでしょ?」

「まあな…」

「海外に住むって大変じゃなかった?
 ほら、文化とか違うし」

「まあな……飯も全然違うからな。
 だが、慣れるもんさ」


 石動は無言で同意の頷きを行った。
 ラームジェルグ以外は知らないが、石動は戦中生まれで物心がついた頃には終戦……物がない時代だ。
 さらに死ぬまで山で修行漬け……。
 止めは死後はずっと闘い詰めだった。
 食事も睡眠も取る必要がないので(精神的疲労がたまれば休みたくなるが)、ほぼ丸々闘争の日々だった。
 蘇った彼にとって貧弱な幼年の身体を鍛える事よりも浦島太郎状態である状態から脱却するほうが苦行だった。
 


『(ぶっちゃけ俺のほうが順応早かったんだよなー)』

「(洗濯機とか掃除機とかカラーテレビとか当たり前に行き当たっていたのに吃驚だった。
  新幹線とかジャンボジェットとか凄い乗り物が出来た事は実のところ最初は楽しみにしていた。
  それに……経済がここまで発達するとはな)」


 本人は気がつかなかったが良い年した男が幼稚園や小学生のお遊戯に混ざるというのは……苦行だったが、鋼の精神力でポーカーフェイスを維持した。
 それに当時より恵まれた環境と判っているので噛締めるように学習を重ねた。
 当時でも一般人とはかけ離れていたが、現代になるとさらにジェネレーションギャップがついていた。
 はっきり言って浮いていた。
 具体的に言うと某侍口調のファーストフードの店員よりも遥かに高く。
 ……ラームジェルグですらその時の事をからかわない位だったのだから推して知るべき。




 と馬鹿なネタをした後に本編のはじまりはじまり。













「……魔術書は、彼に渡した。
 『彼』の遊び相手として相応しくなるだろう」



 その部屋には一人の男性しかいない。
 だが、その男性に語りかける声が聞こえる。
 男のような女のような……誰とも取れる声であるが、その声には怪物性と万物への嘲りが篭っていた。
 サングラスをかけた黒い背広の男は、それを黙って聞いている。


「おや……?
 やはり人形に魂を込めるなんてマネはするべきではなかったか? 
 君を舞台に引き上げたせいか、余計な者が出てきたよ。
 ……別に計画の支障になるわけでもないから放置するか。
 邪魔になるのならそれはそれで一興」

「………」

「今回のゲームは、特別なゲストを招くつもりだよ。
 楽しみだと思わないか?
 そう、君にも関係のある人間だよ。
 嬉しいだろう?」





















 某関東内のホテル・スイートルーム。
 普通の人間は泊まれない最高級にして最上階の部屋であり、見晴らしは抜群だ。
 眼鏡をかけ、髪をオールバックにして英国製のスーツで固めた知的な青年とその部下らしき壮年が話し合っていた。
 朝日を浴びながらモーニングコーヒーを味わう青年……彼のネクタイには拘りがあるのか『1』と刺繍されている。
 壮年は屈強な体躯を誇り、見る者が見れば、歴戦の戦士であると容易に察する事が出来るほどだ。
 恭しく壮年が青年に用件を切り出す。
 

「圭様、今日の案件ですが」

「言ってみろ、松岡」

「傘下の会社の損害保険の見積もりにやってきます。
 その後は、夜は帝国ホテルにて立食パーティーを行う予定です」

「……パーティーまでは時間があるな」

「圭様、貴方は最近は休憩時間が少なかった。
 根を詰めすぎると、後々に響きます」

「……解った、昼間は休むとしよう」


 青年は降参したような口調で休憩を認めることにした。
 デスクの上には鼈甲の老眼鏡と、青年の高校生の時期らしき写真が置かれてあった。
 青年はぽつりとつぶやいた。


「あれから……7年か」










 




「始めまして、安登羅保険の九鬼です」

「南条圭です、よろしく」


 九鬼は、南条と名乗る眼鏡の青年と握手をする。
 南条圭。
 南条コーポレイトの次期総帥であり、既に幾つかの傘下の会社を任されている。
 聖エルミン学園を卒業後、オックスフォード大学に入学。
 勉学に励みながら身分を隠し、下請け会社で営業職の二足の草鞋を履いていた。
 それにも関わらず主席で大学を卒業し、複数の子会社の経営を任され、結果を出し続けている。
 マスコミでは『日本一の日本男児』と持て囃される存在になっていた。
 九鬼は、目の前人物は噂以上の実力を持ち、修羅場を潜り抜けていると理解できた。
 とはいえ、南条は敵ではなく、商売相手である。
 円満に契約を結ぶ事になった。


「それにしてもお若いのに大したものです」

「いえ……まだまだ精進が足らないと痛感しています」


 九鬼にはその言葉は謙遜でなく、本心で言っているのであろうと推測できた。
 若き日本男児は、隙がなく、一時も無駄にすまいと計算して動いている。
 しかし、冷静ではあるが、冷徹ではなく、血の通った温かみのある人間だと九鬼は感じた。
 九鬼は、これからも良い取引が出来そうだと確信しながら、南条と会話をし、退席した。
 取引相手が去っていった後、松岡が南条に話しかけた。


「お疲れ様でした」

「松岡……あの男、只者ではないな。
 無力な羊のように見えるが、その芯には冷たい刃を抱くような……」

「その考察はまさしく正解です。
 あの男は、唯のサラリーマンではありません」


 松岡は淡々と述べている。
 だが、言葉の下に畏怖を孕んでいた。
 南条は、松岡の言葉に興味を抱く。
 松岡はさらに続ける。


「サラリーマンよりもむしろ、私側の存在です。
 裏社会……特に少なくともアジア圏内では彼の二つ名を知らぬものはモグリと言ってよいでしょう」

「そこまでの実力があるのか?」

「正直、敵に回るならば、警護の者全て刺し違える覚悟をしても止められるかどうか……。
 ですが、基本的に敵に回ることはないでしょう。
 彼は暗殺者ではないのですから」

「そうか……」



















 九鬼は、契約を結んだ事を上司に連絡すると、帝国ホテルのパーティーに出席するように命じられた。
 普段ではありえないことであったが、九鬼はその命令を受け取った。
 なお、時間が有るので、その間は好きにして良いとの通達だった。
 そこで、九鬼はウーリの研究所へ向かった。


『………』

「ああ、旦那」

「お前が此処に来るとは珍しいな」


 丁度、石動がやってきていた。
 ラームジェルグがまるで魂が抜けたかのように、地べたに倒れている。
 石動とウーリはそれを無視してフリーダーの強化を図っている。
 無数の計器と呪術具につながれているフリーダーは眠っているかのように目を瞑っている。
 その様子を見た九鬼はあえて問い詰める事はしなかった。
 九鬼は互いの近況を語り合う。


「どうですか、最近は?」

「早乙女は……順調にサマナーの腕が上がっている。
 中国でベナンガルを仲魔にしたんだが、アメリカで色々あって幻魔『猿飛佐助』に変わった。
 さらに武器も雷神剣に進化した……思わぬ収穫だった」

「それは……良いことですね」

「逆に言えば成長せざるを得ないほど不運が身に降りかかっているわけだが。
 ……旦那も興味あるんじゃないのか?」


 猿飛佐助は甲賀の伝説的な忍びとして名高い存在である。
 九鬼は伊賀忍だが、そのことは変わりない。
 石動がそう問いかけるのも無理もない。
 九鬼は頷きながら答える。


「ええ、伊賀と甲賀……流派は違えど偉大な先達ですからねえ」

「旦那だって立派な名前が……」

「まだまだ名前負けしていますよ」


 照れ隠しなのか、視線を下に向ける九鬼。
 石動は更に続ける。


「そういえば四鬼を探しに行ったそうだが……」

「ええ、水鬼を従えられました。
 召還……!」


 九鬼の横に三つの稲妻が走る。
 九鬼配下の仲魔が現れた。
 金鬼の隣に、負けず劣らず大きな体の紫色の鬼が立っていた。
 さらにその横に山伏のような長身の天狗が現れた。


「よう、石動!」

「石動殿、私です!
 この度、修行の甲斐あって鞍馬天狗になった鴉天狗だったものです!」

「……」


 鞍馬天狗と金鬼は親しげに話しかけてくるが、紫の鬼……水鬼は、石動をじっと見ている。
 石動はそれを気にせず見つめている。
 しばらくして水鬼は、石動に声をかけた。
 大げさに手招きをしながら。


「俺は水鬼。
 へっへっへ、何もしないからよぉ、こっちに来いよ」

「解った」


 石動は、あえて水鬼の誘いに乗った。
 神速の歩法で水鬼の懐に飛び込んでいた。
 侮っていた水鬼では認識出来なく、首筋に妙法村正を突きつけられていた。
 少し力を入れただけで血がほとばしる事だろう。
 あっけに取られた水鬼だったが、大笑いした。
 石動は刀を納めた。


「はっはっは!
 親分と同じく、つかみ所のない奴だな!
 おまけに度胸もある……気に入ったぜ!!」

「だぁからいっただろう?
 只者じゃねえって」


 金鬼は、それ見たことかと言わんばかりに水鬼の背中を強く叩く。
 どうやら石動の実力を測っていたようだった。
 気に入ったようで、石動の背中を叩く水鬼。
 やれやれと石動はため息をつき、フリーダーの強化を続ける。
 しばらくしてウーリが語りかけた。


「ふむ………新たなスキルができた。
 『ディアラハン』『メディラマ』『アギダイン』『火炎高揚』『絶対零度』『氷結半減』だ。
 以前の『紅蓮真剣』『銀氷真剣』『サマリカーム』『吸血』と随分スキルが増えたな」

「アンタのお陰だ」

「短期間でよくぞ此処まで強くなったものだ」


 ウーリが手放しで褒め称えた。
 通常の育成より遥かに遠回りにも関わらず、順調に強くなっていたからだ。
 だが、石動は首を横に振った。


「……それでも二対多数となると骨が折れる」

「フリーダー君も成長しました。
 石動君もまた一段と伸びてきていますし」


 九鬼の言葉を聞き、フリーダーが答える。


「私がどれくらい強化されたのか……あまり実感していません。
 マスター、次に備えて、スキルの調整をお願いします」

「ああ、解った……旦那すまないが……」

「ああ、かまわないよ……そろそろ、私もそろそろホテルに向かわないといけないからね。
 では、私はこれで」

「九鬼様、ごきげんよう」


 そうして、九鬼はウーリの研究所を去っていった。
 石動は再び、フリーダーの調整の為に作業に没頭した。
 次なる闘いのために。












 帝国ホテルのパーティーが開催された。
 南条コンツェルン主催ではないが、南条や九鬼も参加していた。
 南条は、南条コンツェルン次期総帥らしく堂々とした立ち振る舞いを行っている。
 周りには人だかりが出来ており、それらに丁寧に応対していた。
 一方、九鬼は慣れない場所に呼び出され、疲労して会場の隅に休んでいた。


「こういう場所は慣れませんね……。
 三日三晩走り続けるほうが楽ですね。
 それにしても……私が行くようにといったからには何かが起こるのでしょうかね?」


 上司の言葉を考えながら水を飲む九鬼。
 酒は飲まない……緊急事態に対応できなくなる可能性があるからだ。
 気の休まらない時が続いていた。
 そうしてしばらく時間が経過した時、張り詰めた空気を感じた。
 突然、銃器を持った三十名ほどの人間が入り込んだ。
 黒い動きやすい戦闘服にさまざまな種類の銃器が装備され、人相を隠す為かガスマスクが装着されていた。
 銃声が響き、来客の大半はパニックで逃げまとう。
 そうして乱入犯以外に残ったのは南条、松岡と九鬼、そして逃げ遅れた数名の女性だけであった。
 松岡は襲撃した人間が雇われ者の流れの傭兵だと判断した。
 九鬼は南条に犯人達を刺激しないよう、直接話さずにモールス信号で会話を行う。


『貴方も残っていたのですか?』

『……他の人々を逃がしているうちに逃げそびれましたよ。
 それに……俺の感覚が何か引っかかるモノを感じたので、都合がいいのですがね』


 その会話に松岡が入る。
 危機的状況にも関わらずこの忠実な部下の表情は変化していない。 


『わざわざ危険な所に身を投じるとは……
 仮にも南条家の未来の当主にあるまじき事ですな』

『まあ、私のほうは上司はコレを見越して寄越したのかもしれませんので。
 此処は一つ、協力しましょう』

『それは心強い。
 圭様をお守りしていただきたい』

『俺よりも逃げ送れた者の安全をお願いしたい。
 よろしいですか?』

『ええ……』


 しばらくして、護衛を二人連れた女性が現れる。
 おそらく、この犯行のリーダーなのだろう。
 リーダーらしき女性は派手なドレスを纏っているが、美人ではない。
 さらに、高慢そうな態度が醜さを助長している。


「オホホホホホ。ごきけんようみなさま!!」

『奴は……』

『知っているのですか、南条さん?』

「無様ですわね、南条圭!
 この松平美知恵に与えた屈辱は忘れませんわよ!!」

「経営の何たるか解らぬ痴れ者である事を言ったのが悪いのか?」


 あえて尊大に語る南条。
 後に彼は九鬼に彼女について次のように語っていた。
 松平美知恵……旧華族の名家であったが、経営が困難になり、美知恵を嫁にする条件で南条家に融資を申し出たが断られたのだった。
 南条は松平家の経営能力のなさから断ったが、それを逆恨みしていたそうで、一家離散し、消息が不明であった。
 (もっとも、女性としても南条にとって琴線にふれることはなかったそうだ)
 融資や資金援助の件は日常茶飯事であり、記憶力のある南条ですらすべて記憶する事はできないほどだ。
 しかし、南条は松平美知恵の印象をよく覚えていた。
 なぜなら松平美知恵の姉・美智子を知っているからだ。
 エルミン学園に通っていた松平美智子(美知恵は別の学校に進学した)……かつて聖エルミン演劇部伝統の『雪の女王』という演目の主役を演じた。
 「雪の女王」は、仮面をつけて演じる習わしだが、「雪の女王」役の生徒が次々と変死しており、彼女も例外ではなかった。
 そして『雪の女王』に取り込まれ、当時、 「セベク・スキャンダル」事件に巻き込まれていた南条は、学園を凍らせた『雪の女王』とも戦った。
 その時、美智子は『雪の女王』のしもべとして敵対し、南条はそれを撃破したのだった。
 閑話休題。
 美知恵は蔑むような視線を南条に送る。


「オホホホホホ。
 今となってはアナタは子犬も同然!!
 ワタクシに殺されるより、ワタクシのペットになりませんコト? 」


 高慢極まる美知恵の発言であった。
 それに対して、松岡は呆れるかのように首を横に振っていた。
 南条は冷然として口調で返した。


「断る……この南条圭、人後に立つ真似はしない。
 ましてや、社員を抱えながらも無責任な経営をするような愚物の愛玩動物には断じてならん!」

「な……キイイ!
 こ、この美知恵がせっかく、せっかく、な、情けをかけてやったというのに!
 フ、フン!
 下々の者に、このワタクシの偉大さを理解しろというのがムリな相談だったわけね。
 …いいですわ、南条圭。
 一匹残らずワタクシの手で壊してさしあげますことよ…。
 おい、アナタ達!
 まずはこのうだつの上がらない底辺な男と南条の部下から殺しなさい!!」


 そう美知恵が言ったとき、一人の目つきの悪い、不健康そうな傭兵が懐から札束を取り出して、美知恵に渡す。
 傭兵は、背中に忍者刀を背負い、身軽な装備をしている。
 美知恵は不機嫌そうに聞いた。


「どういうことですの、テュルゴーさん?」

「仕事と聞いたがよ……こんなくだらない事をする為に雇われたんじゃない。
 ましては唯のサラリーマンを殺せだの……だから辞める。
 コレが違約金だ」

「……後悔しないことね!」

「おい、帰るぞ!!」


 彼の部下らしき人間が五,六人おり、彼らもそれに習い、違約金を出して部屋から出た。











 傭兵達は、ホテルの地下から脱出して大型車に乗り込む。
 全員がガスマスクを外し、大きく新鮮な空気を吸った。
 テュルゴーの顔は真っ青になっている。
 手もしばらく痙攣していた……それは疲労ではなく、恐れによって生じたものであった。
 しばらくしてから不思議に思った部下が声をかけてきた。


「兄貴らしくないぜ?
 気が進まない仕事でも確実な仕事なら進んでやるのに」

「馬鹿……!
 ……アイツはダメだ!」

「兄貴のカンって奴ですかい?」


 このテュルゴーは優秀な傭兵にしてサマナーであるが、特に優秀なのは危機察知のセンスがあることだ。
 普通の人間が絶対察知できない危機に対して吐き気を感じるくらいである。
 部下達はその神がかり的なカンが正しい事を知っており、実際幾度も彼らを救っていた。
 その彼が顔色を悪くして語っている……。


「あのサラリーマン……『ミスト』だ」

「!?
 う、嘘だろ、兄貴!?
 あんな平凡そうな……!!」


 皆、動揺が走った。
 特殊部隊を相手にする時に匹敵するほどの衝撃が走っていた。
 テュルゴーは話を続けた。


「アフリカで小国を分捕ったテロ組織があっただろ?
 俺も仕事になると思ってやってきたが……既に壊滅させられていたんだよ、アイツ一人で。
 その時、俺はアイツの顔を見たんだ」

「ま、マジかよ!
 幾ら烏合の衆でもアレを制圧するには特殊部隊を30名必要って言われてたんじゃ……」

「それを一人でやったんだ……解るだろ?
 噂じゃ台湾の『天道連』、南米の『鍵十字団』、アメリカの『愛の使節団』……」


 テュルゴーの語る団体を聞き、顔色を変える。


「武闘派マフィアやカルト教団じゃないか!」

「そう……それをたった一人で潰す化け物だ。
 改めてみて、思ったぜ。
 アレに喧嘩を売るのは狂気の沙汰だ!」

「あ、兄貴がいうから本当なんだろうけど……人は見かけによらないんだなあ」









 
  








 傭兵は、アサルトライフルを九鬼につきつける。
 目の前の人物が羊の皮を被った狼とは知らずに。


「へっへっへ、悪いな、おっさん」

「一つ言っておきます」

「はぁ?」

「私は28ですよ」


 九鬼はそう言うと傭兵の視界から消える。
 その異様な事態に左右に視線を向けた。


「ど、どこだ!?
 うぐっ!!」


 九鬼に背後に回られ、手刀を落とされ、昏倒する。
 松岡はすぐに銃を拾う。
 南条に特殊警棒を渡し、松岡はアサルトライフルを発砲した。
 たちまち数人の肩を撃ち抜く。
 慌てて反撃に移る傭兵達。
 九鬼は隠していた手甲型COMPを起動させながら移動していた。


「油断大敵です。
 召還!!」


 人質を守るように四体の悪魔が召還される。
 鎧武者の義経、修験者のような鞍馬天狗、そして四鬼である、金鬼と水鬼。
 一騎当千の精鋭たちであった。


「義経と金鬼は人質の護衛を」

「よかろう」

「ま、俺様の力を頼るなら当然か」


 義経は簡潔に、金鬼は自慢げに答える。
 さらに指示を飛ばす九鬼。


「水鬼と鞍馬天狗は敵の打倒を」

「ハッハッハ、いいぜぇ。
 合法的に弱いもの虐めできるのは楽しみだぜ」

「承知しました、大殿!!」


 舌なめずりするように棍棒を構える水鬼に、忠義を尽くさんとする鞍馬天狗。
 それを見た南条は驚いた。


「こ、これは……」

「圭様、彼は現代に生きる忍びにしてデビルサマナーです。
 デビルサマナーとしての方はともかく、私にとって忍びのほうである彼の方ならよく知っています。
 彼は四代目『霧隠』服部才蔵……伊賀の上忍です」


 松岡は淡々と説明した。
 戦国末期、伊賀の忍びは徳川家に仕えていた。
 だが、ただ一人、豊臣……いや真田幸村に仕えた伊賀忍がいた。
 それが初代『霧隠』。
 徳川方の大名達を翻弄した稀代の忍であり、『真田十勇士』として名高い存在であった。
 しかし、彼の活躍を持ってしても末期的だった豊臣家を救うことは不可能であり、結局は幸村と豊臣家は滅んだ。
 『霧隠』は、真田幸村が討ち死にした後も生き残り、伊賀の里に戻り天寿を全うした。
 その卓越した能力は、伊賀随一と言われており、それゆえ名を継ぐ事は難しい。
 初代が没して300年間で二人しか継ぐ事が出来ず、4代目が生まれるまで百年以上空位であったことからも困難であった事が伺える。
 同じく、甲賀で随一の忍び『猿飛佐助』、歴代の風魔の頭領に冠する名である『風魔小太郎』よりも名を継ぐのが困難であった。
 なお、佐助の方が優秀でないという意味ではない。
 『霧隠』の性格が捻くれており、その試練がより困難であっただけである。  
 南条も驚きながら警棒を構える。


「デビルサマナーか……噂に聞いていたが実際に見たのは初めてだ」

「圭様、くれぐれも不覚など取らぬように」

「解っている、松岡。
 いくぞ……ペルソナ!」


 青い身体の人型の幻影が南条から現れ、神速の拳が傭兵の一人に打ち込まれる。
 その強烈な一撃を受けた傭兵は、胃液を吐きながら昏倒した。
 降り注ぐ銃弾から人質を守る金鬼が呟く。


「やるな……!
 それにありゃあ、愛染明王だな」


 愛染明王。
 密教特有の尊格である明王の1つであり、キューピッドと同じ原型を持っているといわれている。
 『煩悩と愛欲は人間の本能である。
  これを断ずることは出来ない……むしろこの本能そのものを向上心に変換して仏道を歩ませる』
 とする功徳を愛染明王は持っている。 
 本来は、一面六臂で他の明王と同じく忿怒相であり、頭にはどのような苦難にも挫折しない強さを象徴する獅子の冠をかぶり、叡知を収めた宝瓶の上に咲いた蓮の華の上に結跏趺坐で座るという、大変特徴ある姿をしている。
 また、天に向かって弓を引く容姿で描かれた姿や、双頭など異形の容姿で描かれる事もある。
 「恋愛・縁結び・家庭円満」などを主につかさどる。
 南条がペルソナ能力者であることに驚く九鬼だが、すぐに他の敵へ攻撃を開始する。
 松岡は、九鬼や南条の援護射撃を行う。
 水鬼は冷気を撃ち出し、鞍馬天狗は風の弾丸を発射する。


「オラオラ!」

「成敗ッ!!」

「うああ!!」


 敵は、銃弾を発射するが、九鬼は尽く避け、金鬼は平気な顔で受ける。
 その奇怪な光景に驚き、更なる動揺が生まれる。
 そこに付込まない九鬼たちではなかった。
 義経は地面に手をつくと壁が生まれ、銃弾を撃った本人にそのまま撃ち返す。
 


「ぎゃああ!!」

「凡愚が」


 反射した銃弾をまともに受け、戦闘不能になる傭兵。
 それに対して、冷たく嘲るように義経は言い放つ。
 一部の傭兵はサマナーだったらしく、彼らは悪魔召還を行い、悪魔に人質を取るように命じた。
 だが、そこに金鬼の豪快な一撃で纏めて打ち倒す。


「弱いぞ!!」

「ギャア!」


 壁に叩きつけられ、気絶をするサマナー。
 もはや大勢は決した。 
 形勢が逆転され、残った傭兵達は逃走を図ろうとしたが、美知恵がカードを取り出した。


「『ネメシス様』…ワタクシを守る鎧となり!
 『ネメシス様』…アイツらを滅ぼす剣となれ!
 来れ!『ネメシス』!!
 ワタクシの元に!
 『ネメシスパワー ビルドォアァップ!』」


 カードが輝き、美知恵を包み込む。
 カードに描かれた美しい女神の姿に変化した。
 金髪の髪に槍と盾をもった姿は美知恵とは異なっている。
 美知恵は電撃を飛ばし、逃げようとした傭兵達を感電死させた。
 南条の目が細くなる。
 美知恵は高慢な口調で言い放つ。


「敵前逃亡は、死あるのみですわ!!」

「外道め……!」

「オーホホホホホホッ!
 神条様から頂いた力!!
 こーれがワタクシの本当の姿よ!
 ビューゥチィホォーッ!
 アァーンドォエェレェガァーントォッ!!」

「自分の醜さに目をそむけるとはな。
 『姉』と同じく……な」

「おだまりっ!!」


 南条の一言に怒鳴り散らす。
 何条は、無駄に命を散らせる美知恵のやり口に怒りをもったようだ。
 九鬼も同様だったらしく、やんわりと言い放つ。


「部下に見捨てられるのは自業自得ではないでしょうか?
 それに部下に対する仕打ち……感心できませんねえ」


 その言葉の内に冷たい怒りが篭っていた。
 同時に美知恵の力は、原野の能力と同質のものであると分析した。
 原野はその力を道具として発現しているが、美知恵はギリシア神話の中で復讐の女神『ネメシス』と融合しているようだ。
 愚鈍な美知恵は、九鬼の怒りに気がつくことなく言った。


「オーホホホホホホッ!
 愚鈍な民衆はワタクシに従えばよろしいのです!」

「……貴様は部下を無駄死にさせている。
 部下を殺すならもっと上手に殺しなさい」


 松岡は、冷たく言い放つ。
 金鬼は面倒臭げに言い放つ。
 彼女に対して良い評価を下すものは誰もいない。


「俺はこんなブスが生まれたら間引きするな。
 もっとジェシカみたいないい女と仕事するほうがいいなぁ!
 あと、同じ小娘でも早乙女のお嬢ちゃんのほうが面白いぜ!!」


「キイイイイッ!
 うるさいッ!うるさいッ!!うるさいですわッ!お黙り!!
 つまり何?
 アンタ達は世界一美しいワタクシが劣っているというの??
 この美しいワタクシが??
 なんてこと??
 おォ!!おおォッ!!
 やはりアンタ達のような犬コロ風情に、ワタクシのたてた素晴らしい美貌はハイブラウすぎましたのね!
 おォォお!おゥッ!!
 やはりこの部屋に入った時点で皆殺しにしておくべきでしたわ、おおおおゥッ!! 」


 温厚な九鬼ですら、呆れ果てる戯言を言い放つ美知恵。
 南条はそれを一喝する。


「戯けが!!
 貴様のような外道、どうあっても許せん!」

「キイイイイイ!!
 おダマり!おダマり!おダマり!
 アンタ達の、そのこまっしゃくれた顔ォッ、そぎ落としてくれましてよッ!」


 美知恵が腕を掲げると、死体達が起き上がる。
 悪魔の力の性であろうか?
 少なくとも、美知恵には呪術を修められるほどの技量があるか問えば疑問である。
 そのおぞましい光景を眺め、瘴気に当てられ気絶する人質達。
 こうして戦闘が再会された。


「痴れ者が!そこを退け!
 ペルソナ!!」


 愛染明王は、破魔の光を降り注がせた。
 ゾンビ達は怯む。
 屍鬼達は、例外なく破魔の力に弱い。
 更に水鬼が凍らせ、そこから二度と動かぬように金鬼の一撃で粉砕する。
 鞍馬天狗も南条と同様に聖なる光を放つ。
 九鬼と義経は、美知恵に連続して攻撃を打ち込む。


「ぎゃああ!
 よくも……!
 こうなったら!!」


 美知恵は、南条に向かって光を放つ。


「……ペルソナが出ない!?」

「オーホホホホホホッ!
 そのペルソナは封じましたわよ!
 それさえなければ無力な子犬ぅ!!」


 たしかに、南条の現在使えるペルソナは一体だけだ。
 さらに美知恵は言う。


「この神条さまから頂いた力は、脆弱な人間を操る能力がありますの!
 南条コンツェルン次期後継者という孤独で嫌われる貴方では耐えられなくって?
 オーホホホホホホッ!」

「それは違う」

「ひょ?」


 ペルソナを封じられても南条の精神は揺らがない。
 圧倒的な精神力は美知恵を黙らせる。


「確かに昔の俺ならば結果は違うものだったかもしれん。
 日本一の意味が解らず、煩悶していただろう。
 ……確かに、俺の行く道は奇麗事では済まん」

 
 南条の脳裏には、自分を支え、忠義を尽くして逝った者や共に大きな困難に立ち向かった友がいた。
 友との友情は、たとえ距離や時間があっても色あせる事のないものであった。
 南条は、上段に刀を構えた。
 その美しさ、威厳は美知恵では到底持ち得ないものであった。
 無意識に美知恵は後退していた。
 南条は更に言った。
 
 
「だが、今は違う。
 どこまでも、正しいと思うことを貫き通す。
 南条圭のまま、な……」


 その言葉に信じられぬ表情をする美知恵。
 中身のない、空虚な彼女には理解できない事であった。


「認めない!
 ワタクシに従わない存在はみとめなぁい!!!」

「圭様!!」


 松岡が思わず叫ぶほどの美知恵の鋭い突きが放たれた。
 だがそれは、身体能力が上がろうとも所詮素人の技。
 南条はそれを容易く受け流し、美知恵の肩に一撃を打ち込む。


「ぎゅああああ!!」

「電光石火、変幻自在の南条一刀流……しかと見よ!」


 それは、日本一の男児になるべく鍛え続けた剣。
 力に溺れた者は、力を磨き続けた者には決して勝てないという真理を示している。
 南条のペルソナを拘束していた力が消えた。
 だが、往生際が悪い彼女は、零距離から魔法を放とうとする。


「しねえええええ!!」


 だが、南条に恐怖はない。
 松岡が無数の銃弾を撃ち出す。
 軍隊経験があるのか、正確に標的を撃ち抜く。
 大きく吹き飛ばされる美知恵。
 さらに九鬼が追い討ちの連撃をかけ、止めとばかりに義経が太刀を振り下ろす。
 ダメ押しとばかりに南条は、愛染明王の鉄拳を美知恵の顔面に叩き込んだ。


「ぎゃああああ!!」


 美知恵は壁に激突した。
 その現実を彼女は認めなかった。
 駄々っ子のように、地面を叩く。


「わ、ワタクシが、ま、負けるなんて!
 そんな!…そんなことが!!
  それも!よりによってこんな人間風情に…おぉ!?
 どうしてなんですの?おぉ!!
 おおォおゥ!! 」

「見苦しい……」


 寡黙な松岡が思わず言葉を漏らす。
 同時に変身が解け、醜い顔が露になった。
 更に南条も言い放つ。


「やかましい女だ。
 貴様が負け、俺達が勝ったのは曲げようのない現実。
 貴様の見苦しい顔をさらに醜くして騒いだところで、この現実は変わらんのだ。
 敗者は敗者らしく、さっさと俺達の目の前から消えるがいい…。
 いや消えてくれ。頼むから」

「待ってください。
 その前に聞くことがありますので。
 その力を与えたのは誰ですか?」


 南条の言葉に待ったをかけたのは九鬼であった。
 本当に疲れた顔をした南条だが、その意見はもっともだと納得した。
 ダメで元々と思って質問したが、思わぬ言葉が返ってきた。



「キイイイイイイ!キイイイイイイイイイイ!!
 なんて!なんて!!なぁんて!!!
 自分勝手でヒドイ人間どもなの!!アンタ達は??
 7人がかりでよってたかって、何もしていないワタクシをいぢめて勝ち誇るなんて!!
 そう!人間なんていつもそうなんですわ!
 アンタ達も! ワタクシの部屋の壁にその醜い顔をさらしている、昔、理由もなくワタクシをいぢめたヤツらもね!
 アンタ達に理解できる?
 ありあまるお金にモノをいわせてサークルの部長の座を手に入れたり!
 あこがれの先輩の横で、彼女ヅラしてるヤな女を退学にしてやったり!
 教授を買収してワタクシの成績に少々イロをつけてもらったりしただけなのよワタクシは!!
 なのにクラスの馬鹿どもは、か弱いワタクシを罵りカゲ口をたたきツマはじきにしたわ…。
 そんなワタクシにやさしく手を差し伸べてくれたのは「豹頭の天使」と神条様だけでしたわ!
 ワタクシの悲しみを!
 不幸をわかってくれたのは、あの人達だけだったんでしたのよ!
 ねぇ?何の権利があって人間達は、このかわいそうなワタクシをいぢめるの??
 美知恵…まったく理解できませんわ!」

「……」

「なんじゃこりゃ?」

「それはひょっとしてギャグを言っているのか?」


 美知恵のあまりの珍言に頭を抱える義経。
 水鬼は信じられない生物を見た顔になり、金鬼も処置なしと肩をすくめる。
 九鬼はその中の言葉に大きな引っ掛かりを得たが、松岡もまたポツリと『世も末か』と呟いた。
 鞍馬天狗や南条に到っては激昂していた。


「この戯けが!!
 親の顔が見てみたいわ!!
 まったくおかしいぞ!!」

「それは…全面的に貴様が悪いんだろうが!!
 姉も同じ戯けた事を吐いておったが…。
 貴様…本当にそれが理由での悪魔の力を得て、このような犯行に及んだのか?
 あきれて物も言えん!!」

「キイイイイッ!!!
 この涙なしでは語れない、このワタクシの悲しい過去を聞いても、まだワタクシをバカにできるの?
 美知恵信じられませんわ!
 もうよろしくってよ!!
 しょせんアンタ達のような心の貧しい者に、ハイソなワタクシの悲しみを理解しろというほうが無理な相談だったようですわね!
 フン!もういいですわ!!今回だけは、アンタ達の勝ちと言うことにしておいてあげましてよ!!」


 そう言って腰につけた宝石を握ると、魔法陣が現れる。
 勝ち誇るように笑う美知恵。
 その様子に南条は叫ぶ。


「まさか……逃走するつもりか!?」

「ただ覚悟しておくことですわ…。
 ワタクシの心に渦巻くアンタ達への復讐の念が、今再び時をへて満ちた時!
 ワタクシはアンタ達に、また地獄を見せてさし上げますことよ!!
 おぉーぼえてらっしゃい!!
 ワタクシは何度でも何度でもアンタ達の前に現れましてよ!
 その時を楽しみにしておくことね!!
 ではごきげんよう!
 オーホホホホホッ!オォーホホホホホホホホホッ!」

「大殿、南条殿、離れて!!」


 術理に精通した鞍馬天狗はその異変にいち早く察し、警告した。
 その言葉に皆が飛びのいた。
 石から幻影……禍々しいペルソナが飛び出してきた。
 同時に石が爆発した。
 美知恵の四肢が飛び散り、首がテーブルの上に落ちた。
 松岡は、その様子を見て呟いた。


「どうやら、相手はこのような無能を飼うつもりはなかったというわけか」

「そのようですね……豹頭の天使ですか。
 石動君、君の敵はまた何か企んでいるようですよ……」


 南条は険しい表情をしていた。
 信じられぬものを見たかのように。


「あのペルソナ……まさか。
 いや……そんなはずはない。
 奴は、確かにあの時倒した……」


 事件は解決したが、また新たな災厄が生まれる予感が漂っていた。









 あとがき。 

 オセはまだまだ健在だ!!
 というわけで、今回のゲストは『なんじょうくん』にその部下『松岡』。
 松平美知恵はオリキャラです……といってもペルソナ1の美智子の妹という設定で性格も姉と同様、アレです。
 ぶっちゃけ、台詞も同じような部分も。
 そして神条さん登場!!
 謎の敵ですね~(わざとらしい)
 第2期の敵は最初は存在せず、小話ばかりだったはずなのに~。
 第1期が終わるころにはプロット組み立てているうちに大きく変わった……第一期のラスボスがアレだし、丁度良いのかもしれない。
 ニャル様登場した為に中ボスが現れた!
 お陰でオセが陰謀専門にならずに済み、蠅本の主に(ある意味相応しいと思う)。

 九鬼さんの過去が現れました。
 ……どこのサラリーマン忍者だよ!
 ともかく、部下の鴉天狗はとうとう鞍馬天狗に。
 そして四鬼の一角、水鬼が仲間に。
 後一体、隠形鬼が仲間になる予定です。
 風鬼?
 鞍馬天狗と属性が被るので、早乙女あたりが引き取るでしょう……遠い未来に。


 解説役のテュルゴーは、BUSIN0の忍者テュルゴーから。
 どうしようもない危機を感じると吐くという危機察知の才能を持っている人です。
 

 次回は長らく放置していた魔人の追討編です。


 


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