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No.7357の一覧
[0] デビルサマナー外典 ソウルガーディアン (第3期 オリジナルメガテン世界)[レッドマン](2009/10/16 14:43)
[1] 第2話[レッドマン](2009/06/19 06:52)
[2] 第3話[レッドマン](2009/06/19 06:53)
[3] 第4話[レッドマン](2009/03/15 00:10)
[4] 第5話[レッドマン](2009/03/15 00:11)
[5] 第6話[レッドマン](2009/04/23 23:15)
[6] 第7話[レッドマン](2009/04/15 15:42)
[7] 第8話[レッドマン](2009/03/26 11:29)
[8] 第9話 (15日、22時27分に追加・修正)[レッドマン](2009/03/18 02:55)
[9] 第10話[レッドマン](2009/03/16 17:10)
[10] 第11話[レッドマン](2009/03/16 21:26)
[11] 第12話 (追加・修正をしました)[レッドマン](2009/04/23 23:17)
[12] 第13話[レッドマン](2009/03/16 21:56)
[13] 第14話[レッドマン](2009/03/17 19:57)
[14] 第15話[レッドマン](2009/03/18 02:57)
[15] 第16話[レッドマン](2009/05/19 21:58)
[16] 第17話[レッドマン](2009/03/18 23:58)
[17] 第18話 (文章追加)[レッドマン](2009/03/19 19:04)
[18] 第19話[レッドマン](2009/03/26 09:19)
[19] 第20話[レッドマン](2009/03/30 18:37)
[20] 第21話[レッドマン](2009/04/23 23:21)
[21] 第22話 (追加修正)[レッドマン](2009/09/01 08:02)
[22] 小ネタ(アンケート待ちの状態での時間稼ぎともいう)[レッドマン](2009/03/26 23:16)
[23] 第23話[レッドマン](2009/03/27 21:06)
[24] 第24話[レッドマン](2009/04/23 23:18)
[25] 第25話[レッドマン](2009/03/28 15:30)
[26] 第26話[レッドマン](2009/04/23 23:23)
[27] 第27話(修正)[レッドマン](2009/04/16 11:59)
[28] 第28話[レッドマン](2009/03/30 00:32)
[29] 第29話[レッドマン](2009/03/30 13:52)
[30] 第30話[レッドマン](2009/03/31 16:07)
[31] 第31話[レッドマン](2009/03/31 17:14)
[32] 第32話[レッドマン](2009/03/31 22:47)
[33] 第33話[レッドマン](2009/04/01 13:18)
[34] 第34話[レッドマン](2009/04/02 22:23)
[35] 第35話[レッドマン](2009/04/13 02:29)
[36] 第36話[レッドマン](2009/04/16 12:22)
[37] 第37話[レッドマン](2009/04/04 22:48)
[38] 第38話[レッドマン](2009/04/05 21:30)
[39] 第39話[レッドマン](2009/05/20 23:07)
[40] 第40話[レッドマン](2009/05/10 04:38)
[41] 第41話[レッドマン](2009/05/10 04:40)
[42] 第42話(第1期終了)[レッドマン](2009/04/10 02:27)
[43] 第2期 第一話(2期突入したので板を移動)[レッドマン](2009/04/09 23:57)
[44] 第2期 第2話[レッドマン](2009/05/01 11:53)
[45] 第2期 第3話[レッドマン](2009/06/18 10:31)
[46] 第2期 第4話[レッドマン](2009/04/15 14:43)
[47] 第2期 第5話[レッドマン](2009/04/27 04:20)
[48] 第2期 第6話[レッドマン](2009/05/01 04:05)
[49] 第2期 第7話[レッドマン](2009/05/01 04:18)
[50] 第2期 第8話[レッドマン](2009/04/17 12:09)
[51] 第2期 第9話[レッドマン](2009/04/19 01:34)
[52] 第2期 第10話[レッドマン](2009/05/01 12:07)
[53] 第2期 第11話[レッドマン](2009/06/21 19:45)
[54] 第2期 第12話[レッドマン](2009/04/27 03:31)
[55] 第2期 第13話[レッドマン](2009/04/27 09:55)
[56] 第2期 第14話[レッドマン](2009/04/29 13:54)
[57] 第2期 第15話[レッドマン](2009/06/09 23:36)
[58] 第2期 第16話[レッドマン](2009/05/03 03:15)
[59] 第2期 第17話[レッドマン](2009/05/08 12:59)
[60] 第2期 18話[レッドマン](2009/05/08 13:01)
[61] 第2期 第19話[レッドマン](2009/06/09 23:36)
[62] 第2期 第20話[レッドマン](2009/05/13 09:47)
[63] 第2期 第21話[レッドマン](2009/05/13 10:14)
[64] 第2期 第22話[レッドマン](2009/08/17 05:10)
[65] アンケートまでの時間稼ぎその2(2009/05/16 追加)[レッドマン](2009/05/16 23:53)
[66] 第2期 第23話[レッドマン](2009/05/19 12:45)
[67] 第2期 第24話[レッドマン](2009/05/21 17:24)
[68] 第2期 第25話[レッドマン](2009/06/09 23:50)
[69] 第2期 第26話[レッドマン](2009/05/24 20:14)
[70] 第2期 第27話[レッドマン](2009/05/25 15:14)
[71] 第2期 第28話 (アンケート有り)[レッドマン](2009/05/25 16:10)
[72] 第2期 第29話[レッドマン](2009/05/26 01:43)
[73] 第2期 第30話[レッドマン](2009/05/27 06:00)
[74] 第2期 第31話[レッドマン](2009/05/29 08:34)
[75] 第2期 第32話[レッドマン](2009/09/01 09:58)
[76] 第2期 第33話[レッドマン](2009/09/01 10:13)
[77] アンケート[レッドマン](2009/06/03 02:57)
[78] 第2期 第34話[レッドマン](2009/06/05 21:32)
[79] 第2期 第35話 6月8日追加・修正。[レッドマン](2009/06/08 05:02)
[80] 第2期 第36話[レッドマン](2009/07/05 11:04)
[81] 第2期 第37話 修正・追加(6月11日)[レッドマン](2009/06/12 03:50)
[82] 第2期 第38話[レッドマン](2009/06/13 17:41)
[83] 第2期 第39話[レッドマン](2009/06/15 02:00)
[84] 第2期 第40話[レッドマン](2009/06/15 13:51)
[85] 第2期 第41話[レッドマン](2009/06/16 01:28)
[86] 第2期 第42話[レッドマン](2009/06/17 22:21)
[87] 第2期 第43話[レッドマン](2009/06/20 14:29)
[88] アンケートまでの時間稼ぎその3[レッドマン](2009/06/19 22:57)
[89] 第2期 第44話 (6月21日 追加修正)[レッドマン](2009/06/21 07:42)
[90] 第2期 第45話[レッドマン](2009/06/21 06:26)
[91] 第2期 第46話[レッドマン](2009/06/22 10:29)
[92] 第2期 第47話[レッドマン](2009/07/01 03:12)
[93] 第2期 第48話[レッドマン](2009/07/01 03:14)
[94] 第2期 第49話[レッドマン](2009/06/26 00:01)
[95] 第2期 第50話 (27日追加修正)[レッドマン](2009/06/27 12:18)
[96] 第2期 第51話[レッドマン](2009/06/27 20:44)
[97] 第2期 第52話(第2期 最終回)[レッドマン](2009/06/28 12:25)
[98] 第2期がもうすぐ終わるのでアンケート。(おまけ追加)[レッドマン](2009/06/28 23:55)
[99] 第3期 第1話 (修正・追加)[レッドマン](2009/07/05 03:13)
[100] 第3期 第2話[レッドマン](2009/07/03 06:55)
[101] 第3期 第3話[レッドマン](2009/07/03 06:56)
[102] 第3期 第4話[レッドマン](2009/07/03 12:35)
[103] 第3期 第5話[レッドマン](2009/07/12 16:58)
[104] アンケート+おまけ[レッドマン](2009/07/05 01:41)
[105] 第3期 第6話 7月7日更新・追加[レッドマン](2009/07/07 02:34)
[106] 第3期 第7話 追加修正[レッドマン](2009/07/10 11:39)
[107] 第3期 第8話[レッドマン](2009/07/10 23:00)
[108] 第3期 第9話 追加修正[レッドマン](2009/07/14 08:11)
[109] 第3期 第10話[レッドマン](2009/07/13 09:35)
[110] 第3期 第11話 7月16日更新[レッドマン](2009/07/16 22:39)
[111] 第3期 第12話[レッドマン](2009/07/19 12:54)
[112] 第3期 第13話 7月21日更新[レッドマン](2009/07/21 21:40)
[113] 第3期 第14話 追加修正[レッドマン](2009/07/25 20:21)
[114] 第3期 第15話 追加修正[レッドマン](2009/07/30 11:52)
[115] 第3期 第16話 7月31日更新[レッドマン](2009/07/31 00:59)
[116] 第3期 第17話 8月7日更新[レッドマン](2009/08/07 18:50)
[117] 小ネタ[レッドマン](2009/08/10 20:54)
[118] 第3期 第18話 8月16日更新[レッドマン](2009/08/16 03:32)
[119] 第3期 第19話 8月19日更新[レッドマン](2009/08/26 00:16)
[120] 第3期 第20話[レッドマン](2009/09/01 02:21)
[121] 第3期 第21話[レッドマン](2009/08/26 00:25)
[122] 第3期 第22話[レッドマン](2009/08/27 10:45)
[123] 第3期 第23話 8月31日更新[レッドマン](2009/08/31 22:17)
[124] 第3期 第24話 9月3日更新[レッドマン](2009/09/03 22:34)
[125] 第3期 第25話[レッドマン](2009/09/04 11:21)
[126] 第3期 第26話 9月6日更新[レッドマン](2009/09/06 23:24)
[127] 第3期 第27話[レッドマン](2009/09/06 23:13)
[128] 第3期 第28話 [レッドマン](2009/09/09 00:54)
[129] 第3期 第29話 [レッドマン](2009/09/11 10:06)
[130] 第3期 第30話[レッドマン](2009/09/12 10:58)
[131] 第3期 第31話[レッドマン](2009/09/14 09:06)
[132] 第3期 第32話 [レッドマン](2009/09/17 13:44)
[133] 第3期 第33話[レッドマン](2009/09/18 21:48)
[134] 第3期 第34話(閑話的)[レッドマン](2009/10/04 11:24)
[135] 第3期 第35話 更新[レッドマン](2009/10/08 01:53)
[136] 第3期 第36話(旧37話と統合)[レッドマン](2009/10/29 11:53)
[138] 第3期 第37話[レッドマン](2009/10/29 11:54)
[139] 第3期 第38話[レッドマン](2009/10/30 01:17)
[140] 第3期 第39話[レッドマン](2009/11/11 04:16)
[141] 第3期 第40話[レッドマン](2009/11/16 06:30)
[142] 第3期 第41話[レッドマン](2009/11/20 02:06)
[143] 第3期 第42話[レッドマン](2009/12/12 01:30)
[144] 第3期 第43話 (おまけついか)[レッドマン](2009/12/22 00:47)
[145] 第参部 の これから予告[レッドマン](2010/02/25 23:16)
[146] 第3期 第44話 (おまけを先行投下/追加)[レッドマン](2010/02/25 23:52)
[147] 第3期 第45話 [レッドマン](2010/03/09 22:06)
[148] ソウルガーディアンの世界観について(ネタバレあり・10月にて追加情報)[レッドマン](2009/10/22 12:10)
[149] ソウルガーディアン外伝『守護霊から見た人間の感想ってやつ』[レッドマン](2009/10/29 11:57)
[150] 外伝 『石動巧、陰陽道の講師になるの巻』[レッドマン](2009/11/08 02:17)
[151] 外伝 「探偵ってなにさ?」 [レッドマン](2009/12/22 01:03)
[152] ちょっと思いついたネタ[レッドマン](2010/02/18 11:55)
[153] 外伝 小ネタ詰め合わせしたり。(3月22日 追加あり)[レッドマン](2010/03/22 14:25)
[154] 生存報告 + ほんのすこしの小ネタ[レッドマン](2010/08/29 14:24)
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[7357] 第39話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/20 23:07
 モー・ショボーが石動の遺体に縋って泣いていた。
 早乙女も突然の訃報で涙した。


「先生……」

「石動ぃ……起きて……起きてよぉ!
 一人に……一人にしないで!!」


 風間は唇をかみ締めていた。
 九鬼が空を仰ぎ、悔しげに拳を握る。 
 原野は、呆然としていた。 


「あまりにも…あっけなさ……すぎる」


 眠っているような死に顔だ……。
 風間は、原野の胸元を掴みあげる。


「石動の死を無駄にするな!
 俺達は……俺達ですべきことがある!!」

「……そうですね……最早、交渉で済む問題ではないのでしょうね」

「ああ……さきほど生け捕った奴から情報を引き出した。
 奴らの目的は、『唯一神』を現世に招く事だ」

「馬鹿な……そんなことはできるはずがない!!」


 原野は、オカルトの知識に造詣が深いが故に知っていた。
 風間も言い返す。


「ああ……だが現実問題、関東の地脈が荒れ始めている。
 それに、奴の記憶からまんざら出鱈目ではないようだ。
 奴らは何処から見つけてきたのか、神の器を作り、そこに神を降臨させるつもりのようだ」

「それは……今の科学でも錬金術でも、魔術でも到達できないはず」


 九鬼は、驚くが……器さえあれば神を下ろす事が可能であると判断した。
 彼らも、これを計画した小林も知らない事ではあるが、『器』の設計を行ったのは人間ではない。
 これは、遥か未来……いや、もう行き着くことのない平行世界の未来の事だ。
 大天使達は人々を管理していた。
 その体勢を強化するために『神』を模した存在を作り上げた。
 自分達が現世を支配するために。
 だが、一人の救世主がそれを阻び、偽りの神は滅んだ。

 話は少し遡る。
 彼らが偽りの神を作り出した頃、テンプルナイトにして第四十代目の葛葉雷堂が世界の改変の為に自身の影を過去に飛ばした。
 その際にあらゆる記憶・記録を持ち出そうとした。
 その中にその『神』の設計図があった。
 如何なる目的で持ち出したのか……神に成り代わる為か、未来の敵を討ち果たす『きっかけ』にする為か……。
 それがこの世界に流れ着き、『神』の器として利用するとは皮肉な物であった。
 閑話休題……。
 風間は九鬼と原野に協力を要請した。
 

「恐らく、時間がない。
 我々は、教団のアジトへ突入する。
 あの魔人を相手にしなければならない。
 最悪、『神』を相手にしなければならない……。
 ヤタガラスのサマナー達も招集をかけているが……集まるまで時間がかかる。
 だから、頼む……力を貸してくれ」

「その依頼を受けましょう。
 石動君の死を無駄にはしない」

「ええ……これは僕の失態でもあります」


 原野と九鬼の言葉を受け、無言で頭を下げる風間。
 彼らは、突入の準備を行い、早乙女とモー・ショボーはニュクスの店に預けられた。
 誰一人居なくなった霊安室だったがやってくる者がいた。
 髪を伸ばした汚れた僧侶……道摩法師が現れた。
 石動の遺体をしばらく眺め、楽しげに哂った。


「ほほう……コイツの魂とこの肉体の『つながり』は完全に切れておらんな。
 面白い……」


 石動は、光の矢を無効化しようと小角と交代しようとした。
 だが、間に合わず命を落とした。
 それでも、入れ替わろうとした為に威力が抑えられた。
 そのため、石動の魂の消滅を防ぎ、現世のつながりを保った。
 道摩法師は腕を伸ばそうとするが、大きな腕で止められた。
 視線を巡らせると青い巨大な鬼が腕の主のようだ。


「悪いが主の命だ」

「前鬼か……ならば来ているのか、小角よ!」

「お前が生きているとはな、道満」


 白い衣に長い髭を生やした男……役小角が現れた。
 小角は、瓢箪の蓋を開け、中身を石動の口から流し込んだ。
 道摩法師はニヤリと笑った。


「随分入れ込んでおるの」

「数少ない酒蔵だからな。
 それに……覗いていて退屈しないからな。
 だが……これで蘇るかは解らん」


 そう言って二人と一体は煙のように消えてしまった。



























 『彼』の始まりは古い。
 『彼』が物心をついた時は太平洋戦争が終わった時だった。
 山奥の人口の少ない、戦火にあまり見舞われない所だったのだろう。
 父親は戦争でなくなり、母親は病で亡くなっていた。
 『彼』を育てたのは祖父であり、先祖代々、剣術を行っていた。
 先祖代々様々な流派と闘い、その流派の秘伝の数々を記録した。
 技を知っていれば打ち破る術が見つかるからだ。
 また、優れた技ならば流派に取り入れる事もできる。
 周りは時代錯誤と言っていたが、『彼』は剣術というモノに没頭した。
 祖父がそうしむけたのか、『彼』が本能的・遺伝的にその道を選んだのかは解らない。
 ただ、『彼』には天稟があったのだろう。
 水瓶から水瓶へ水を移すかのように祖父の技を吸収していった。
 厳しく、常人では耐えられない修練をモノにしていく。
 そのせいか、『彼』には友人はいなかった。
 『生き方』というより、『有り方』が違うと言うべきか……最早『彼』は『人間』というより、『剣客』という生き物になったといって良いかもしれない。
 『彼』は普通とはどこか違っていた。
 古流の哲学的な教えも理解を示しながら近代的な学問も取り入れた。
 いかに効率よく動くか、いかに身体を鍛えるべきか?
 自然や人体の仕組みを理解し、それを戦力にせんと必死に学んだ。
 また、彼は普通の人間に見えないモノが見えた……気、魔力、そして悪魔の類が。
 もし、彼に何事もなければ警察官などの職業に就き武芸を生かすか、サマナーに出会い一角のサマナーになっていただろう。
 だが……、ある日の事、薪を調達していた彼が戻ってくると、村は地獄絵図に変わっていた。
 人々は射殺され、強かった祖父ですら炎で焼き殺されていた。
 『彼』はキリスト教徒でないため、白騎士が何者かは知らない。
 だが……アレが死神なのだと確信した。
 白騎士が彼に狙いを定めた時、生き延びるために抵抗をした。
 だが、彼はあっけなく殺された。
 普通ならば、そこで全てが終わるはずだった……。












『オデはしんじまったか~♪』

「……ここは?
 それになんだその歌は?」


 石動は目が覚めた。
 ラームジェルグは相変わらず陽気だった。
 周りを見渡すと見たことのある風景。
 この世にはないその光景は……。


「無間地獄にまた来たのか……」

『みたいだな……懐かしいな、コンチクショー!!』


 石動は、前世で死に閻魔の裁きを受け、地獄行きになった。
 なんでもカオスでないからだそうだが。
 なにやら色々立て込んでいたらしく、石動は隙をみて抜け出し、歩き回っていた。
 そのとき牢獄のような場所にいたのがラームジェルグであった。
 彼は絶望と憤怒に満ちていた。
 彼がなぜ、ここにいるのかは本人も記憶が風化していたようだ。
 石動の事など虫けらを見るような目で見ていた。
 だが、石動は情報を収集し、地獄から抜け出す為には地獄の住人を倒す力が必要であると知った。
 その力を得るためにラームジェルグに接触を始めた。
 何度も石動を殺すつもりで痛めつけたが、根負けしたのか、気まぐれなのか、はたまたマグレなのか、彼を打ち倒し協力を取り付けた。
 


『そして、石動巧という交通事故で魂が抜けた体に取り付いて新たな人生が始まった……か』

「そして、俺が死んでから四半世紀以上時間が経っていたのは予想外だった……」



 見渡すとかつてラームジェルグが幽閉された部屋だったようだ。
 ラームジェルグが目つきを変え、無気力そうに言い放つ。


『なんだ……貴様は』

「俺は……アンタの力を借りたい。
 そして地獄から抜け出したい!!」

『帰れ……お前風情に従う義理などない』

「なら解らせてやる……力ずくでな!!」

『……ふっふっふ。
 懐かしいな』


 かつてのやり取りを再現する二人。
 互いに考えている事は同じであった。


『行くか』

「ああ……二度もやられっぱなしは我慢できんからな」

『なごみんが俺を待っているからな!
 Kたんも!』

「……昔のお前は尖っていたのにな。
 何を間違えたのか……」


 18禁ゲームのキャラの名前を叫ぶ相棒に呆れながら、再び無間地獄から脱出しようとする二人を呼び止めるものがいた。


「『石動巧』の名を背負う者よ……」

『お前は……』

「なんの用だ、ザイン
 物見遊山に無間地獄に来た訳ではあるまい?」


 彼らの前に黒い皮のジャケットを着た壮年……ザインが立っていた。
 生者が来れないこの地に現れた彼は、何者か?
 二人は計り知れないものを感じた。


「死の嵐がお前を襲い、死して冥府へ再び堕ちた。
 それなのに何故足掻く?」

「……それしか知らないからだ。
 俺の魂はまだ戦える……」

「三度死ぬとしてもか?
 お前はなぜ抗う?
 たとえ倒してもその後にはより強大な敵がいる」


 ザインは石動の行く末を純粋に案じているようだ。
 それでも、石動は歩みを止めないだろう。
 ザインは更に続ける。


「お前は奴と戦えば惨めな死が訪れる、そういう運命だ。
 恐れはないのか?」

「あるさ……だがな、俺の内にあるものが『逃げるな』と囁く。
 だから行くさ」

「ならば……運命を変えるモノを与えよう」



 ザインが手を広げると二つの台が現れた。
 左の台には小さな蟲が痙攣を起こしている。
 右の台には陶器の杯に透明な液体で満たされている。


「どちらもお前を強くするものだ。
 左の蟲を飲み込めばお前は悪魔となり、魔人すら屠り、百邪を統べるほど存在になることもできるだろう。
 右の聖杯に満たされた聖水を飲めば洗礼を受け、お前も救世主となれるだろう。
 どちらの道を選んでも良い……ただ、できれば洗礼を受け私と共に歩んで欲しい」

「……」

『如何する……巧』


 石動は迷わず行動した。
 右の聖杯を取り、飲むと見せかけて左の蟲にかけた。
 蟲はおぞましい断末魔とともに消滅した。
 石動は右腕を挙げながら出口へと歩みさりながら言った。


「猫の手はいらない」

『さすが、せっきー!
 皆がやらない事をやっちまう、そこにしびれる、あこがれるぅ!』

「なぜだ……このままでは死ぬぞ?
 お前は運命を変えられると信じているのか?」


 ザインの呼びかけに背を向けたまま立ち止まり、その質問に答える石動。


「……思わんな。
 運命というものがもし存在するのならば……それは努力や根性程度で覆せるものではないだろうな」

「ならば……」

「俺はな、嫌う事がある。
 普段信じもしないのに正月だから信仰していない初詣にいったり、苦しい時の神頼みってやつをな」


 突然の話題に沈黙するザイン。
 石動は続ける。


「俺が信じるのは『剣』だ……。
 剣客として生き、剣客として死ぬ……俺の腕一本で生き死にを決める。
 だから悪魔にも神の使徒にもならん……人として戦う、それだけだ」

「……」

「運命が存在するのか、それが変えられるのかも解らない。
 ならば運命を抗うとかそういう事をしても無駄だ。
 俺は、自分にとって『正しい心』を棄てない事が大事なんだと考えている。
 その心の中にこそ自身の幸福があるのだと信じている……。
 神や悪魔に縋って手に入るものではない」

「……たとえ神や悪魔を敵に回して言えるのか?」

「ああ……貫くさ、死んでもな。
 俺の信念に殉じるつもりだ」
 

 その言葉を聞き、石動の目の前に現れるザイン。
 だが、その後には巨大な悪魔の幻影が現れる。
 竜のように長く大きい体躯、巨大な翼……そして4本の腕があった。
 魔性と神性を併せ持つ強大な存在であった。


「これが私の真の姿だ。
 ラームジェルグよ……彼は神も悪魔にも組しない。
 もし憑いていけばお前はその時から両陣営の敵になることになるだろう。
 お前にはその義理も義務もない……それに沈み行く船にのり、共に沈むつもりか?
 今からでも遅くない……ここに残れ。
 そうすれば失われたモノを与えよう」


 強大な存在で、本気になれば恐らくあっけなく石動を消滅させる力がある存在。
 普通の悪魔ならばその命令に従うだろう。
 だが、石動と共にあった彼は臆せずに答える。


『ああ、そうだな。
 コイツがやろうとしているのは自殺に等しい事だぜ。
 もう『安息の地』はないだろうな。
 死した後ですら……な。
 そもそも、俺が憑いていったのは気まぐれだからな……』


 そう言ってザインに歩み寄る。
 だが、その後に続く言葉は強い意志が込められていた。


『だがな……俺は元々よぉ、行く所や居場所も目的なんざありはしない男だ。
 なんでこうなったか忘れたが、無間地獄で燻っていてオレが落ち着ける場所は……』


 踵を返し、石動の背中まで歩み、身体にもたれかかってから言った。


『巧……お前と一緒の時だけだった。
 だからよ、骨は拾ってやるぜ。
 それに……コイツと組めば退屈はしない。
 面白い……これは人生で大事な事だからな』


 そういって快活な笑みを浮かべる。
 ラームジェルグはその時、自分の中のものが割れた音が聞こえたような気がした。
 ザインは微笑む……幻影はすっかりなくなっていた。
 圧迫感が消滅した。


「お前達が行く道は困難だ……危険も多いだろう。
 道を違えたが、お前達がお前達自身の道を歩みきる事を祈る」

「……なあ、なぜお節介を焼く?」

『そうだな……無理やりするなり放置するなりするだろう?』

「かつての友であり、兄弟のような存在であった人間がいた。
 共に歩みきった事がある結末もあれば、敵対し私を打ち破る結末もあった……。
 彼とは全然異なるが、彼と似たモノを見出した……それだけのことだ」

「そうか……」

「また会おう、『石動巧』」

「ああ……」


 ザインの言葉に腕を挙げて応える二人。
 石動達は歩む……再び生を掴むために。










 あとがき。

鈴木……もといザイン参上。
誰かはわかっているだろうけど。
石動の前世が明らかに……何気に古い人だったり。
彼はサマナー(ヘッポコだが)とガーディアン以外の能力は基本的に持たない。
だからマガタマも飲まないし、洗礼を受けない。
なんだかんだいって良いコンビなんですよ、2人は。
何かのフラグが立ってきました。
ちなみに、小角が飲ませたのは加藤…げふんげふん、果糖水ではありません、ソーマです。


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