Episode 2: Reason Seeker11 「コントロールと、質問」***Side Wilhelmina*** 今日も今日とてブリーフィングルームである。 毎度思うけど此処ってすげぇ教室っぽいよな…… 学園ウィッチーズ! とかどうよ、スピンオフ作品でさ。 ミーナ先生の誘惑授業とかエイラがサーニャの首にロザリオかけてお姉さま……とかやんの。 もう第二次世界大戦とかメカ少女とかまったく関係ないけど、資源の無理な使いまわしから来るぐだぐだ感が良いんじゃなかろうか? ああ、いや、思考がそれたな。 あれから――芳佳さんの顔見せから二日経ったけど、多分なんか色々手続きが必要だったんだろう。 今日が、航空団のみんなと芳佳さんの正式な顔合わせとなる。 そのため、傷病人であるところのオレもこうやって出てきている訳だ。 そろそろ身体動かせるようになってきたからある程度は無理矢理動かした方がいいんだけどね。 あまり動かさないと体固まっちゃうし。 オレも普通に安静に寝込んでたわけで。 その間、暇だったので英語で書かれてる本とか解読作業してました。 とりあえず世界を知るのには歴史が一番いいと思い、世界史の本を図書室で借りて読みましたが……全然読めねえよ。 もっと英語の授業真面目に受けとけばよかった! さて、筋肉痛や関節痛はこの二日間寝たらかなり何とかなった……若いっていいよね。 だけど、左腕の痛みはどうにもならん。 今も首に包帯かけて吊っております。 そりゃあ骨までやっちゃったらそうそう簡単には直らんだろうし……ミーナさんとの飛行訓練も延期しております。 で、そのミーナさんは、昨日ロンドンに出張してました。 帰ってきた時不機嫌だったなぁ……あれか、お偉いさんに呼び出されて牽制食らってたんだか牽制してきたんだか。 原作だと芳佳さん一人で変な事言われてたし……今はオレもいるから上乗せで無茶な事言われたんだろうなぁ……。 なんともはや……現場と上の意見が行き違うってのはどうも解決できない問題なのかねぇ。 いやまぁ、現場の人間と上の人間の見るべき物は全く違うから、行き違っちゃうのは仕方のないことなんだけど。「ヴィルヘルミナ中尉」 そんなどうしようもないことをぼんやり考えていると、声をかけられた。 んあ……オレか? 誰だっけなこの声。 聞きなれないんだが……「……誰?」「おいおい、一緒に戦った相手を忘れたのか? ん、そういえばしっかりと自己紹介するのはこれが初めてだったか?」「美緒……少佐?」「みっ!?」 ペリーヌがなんか奇声をあげたがまぁいい。 ボーっと黒板を見ていた視線を脇に向けると、そこには右目に眼帯をした、黒髪の美人さんが居た。 坂本美緒さんである。 ああ、畜生……もっさんもえらい美人だなオイ。 ウィッチには美人しか居ないのか。 いや、美人だったほうが目にうれしいのでそれは構わないんですが。 なんだ、魔力の働きとか遺伝形質がどうのこうのとかそういう理由ですか? とりあえずモンゴロイドでもう二十歳らしいので、ウィッチーズの中では一番身近に感じるんだぜ。 男だったときにお知り合いに以下略!「どうしたペリーヌ?」「な、何でもありませんわ!」「そうか。 ああ、自己紹介だったな。 私は坂本美緒。 扶桑皇国海軍、少佐だ。 ミーナに聞いていると思うが、この航空団の副長を務めている。 これからもよろしく頼む」「……ヴィルヘルミナ……ヘアゲット・バッツ。 カールスラント、空軍……中尉」「はっはっは、覇気のない奴だな。 私の事を馬鹿だと言い切ったあの時の威勢はどうした?」 そう豪快に笑う美緒さん。 覇気がないんじゃない、上手く喋れないだけです! あと、あんまり根に持ってないみたいで良かった。 っていうか、それよりも、ペリーヌの前でそんな発言しないでよー「さっ……さささささ」「さては……南京……たま、すだれ?」「坂本少佐のことを、ばばばば、馬鹿ですって……ッ!?」 誤魔化されなかったか! というか無理がありすぎたか。 ほらねー、ペリーヌが噴火しちゃうじゃないか。 後ろの席で寝転がってたルッキーニが不機嫌そうなうなり声を上げ。 あ、エイラがさりげなく寝てるサーニャの耳を塞いでる。 オレの耳も誰か塞いで欲しかったです。「ああ。 戦闘中に負傷したときに言ったんだが、なに、興奮して口調が荒くなるのは誰だってあることだぞ、ペリーヌ。 一々目くじらを立てていては日が暮れてしまうからな……お前も気にするなよ、ヴィルヘルミナ」「う……坂本少佐がそう仰るなら」 しゅんとなるペリ犬。 坂本教・教祖の肩書きは伊達じゃないな美緒さん……信者の暴走も一発鎮静! ……いや、しゅんとしてねえな、普通にこっち睨んできたし。 これはキレちゃったオレも悪いので甘んじて受ける。 ごめんなさーい!「それよりも、私はお前の無茶な戦い方のほうが気になってな。 ……私や扶桑艦隊を援護する為だったのだろう。 遅くなって悪いが、皆に代わって礼を言わせてくれ。 お前が居なければ今頃はどうなっていたか解らない」「オレの……ストライカーの、速度が……速かっただけ、だから……。 戦い方は、皆にも……言われた……。 今度からは……気を、つける。 それに、オレが……来なくても、あの子が……飛んでたと、思うから……」 ああもう皆に突っ込まれまくるなオレの無茶……しばらくはこれで怒られたりからかわれたりするんだろう。 あと、オレが居なくても芳佳さんが飛んで何とかなってたはずですよ? ……あ、今気づいたけど芳佳さんストライカーは履いても飛んでねえな……この手の変化はまずかったりするんだろうか?「……確かにそうかも知れんが、私としてはほっとしているよ……宮藤は特別な訓練を受けているわけではないからな。 飛ぼうという決意と度胸はすばらしいものだが、結果として素人をいきなり実戦に出さずにすんでよかったと思っている」 流石に考え方が普通である。 ミーナさん十八歳より年上なことだけはあるね! あ、なんかペリーヌが会話に参加したそうだな。 「その……ミヤフジ、というのは、坂本少佐が連れてきた子のことですわよね?」「ああ、そうだ。 魔力のコントロールがいまいち下手だが、治癒魔法の使い手で、魔法の素質もなかなかのモノだ。 芯もまっすぐだし、勝負度胸もある……あれは磨けばきっと良いウィッチになるぞ。 いや、私がそうしてみせる」「わ、私もお手伝いさせてもらっていいですか!?」「ん? ああ、そのときはよろしく頼むぞ、ペリーヌ」「はいっ!」 ほほを染めて満面の笑みで応えるペリーヌさん。 だがな、美緒さんべた褒めの相手に対する微妙な嫉妬心とか……隠せてないぞ? 原作知ってるからよーく透けてみえる。 うーん……でもまぁ陰湿ないじめとかに発展しないはずだから可愛いものか。 二人の会話を適当に聞き流していると。 ドアノブが握られ、ドアが開く音がして、ミーナさんと……可愛らしいといって差し支えない、栗色の髪の少女が部屋に入ってくる。 ペリーヌも美緒さんも自分の席に帰っていった。 そしてオレは「――ふぐ」「大丈夫、ヴィルヘルミナ?」「ん……平気」 思わず吹いてしまいそうになったのを飲み込んだのが、傷が痛んだと思ったのか、前の席のエーリカが心配してくる。 ……いや、うん、この世界の標準、すなわち下半身丸出しにも随分慣れてきたと思ったけれど。 これはちょっとインパクト強すぎたね……スク水セーラー服。 どこの風俗だよパート2である。 なまじ芳佳さんが純朴系で可愛いもんだから、ミスマッチがすごい事この上ない。 坂本さんは士官服で大部分が隠れてたからいいものの……あの人も、上着の下スクール水着なんだよな。 二十歳がスクール水着。 想像したらなんかエラくエロい事に、というか企画モノAV、とかそういう単語が浮かんできたので、オレは考えるのをやめた。 ミーナさんが講壇の前で軽く手を叩き、皆の注意を集めて言う。「はい、皆さん注目。 改めて、今日から皆さんの仲間になる、新人を紹介します。 坂本少佐が、扶桑皇国から連れてきてくれた、宮藤芳佳さんです」「宮藤芳佳です、皆さん、よろしくおねがいします!」 ……うーん、やっぱこっちをちらちら見てやがる。 服はバルクホルンのお古をもう一着借りてるから、相変わらずだぼだぼでオレの胸のサイズは目立たないはず…… どういうことだ……? ***Side Witches***「宮藤さんの階級は軍曹になるので、同じ階級のリーネさんが面倒を見てあげてね」 「あ、はい……」 そんなやり取りではじめられた、略式の入隊式という名の挨拶はおおむね滞りなく進んだ。 途中、芳佳の、拳銃は必要ないという甘さの残る発言に対する一言を、まるで真面目に聞いていないルッキーニに無視されたペリーヌが一瞬激昂しかけたものの。 手伝うと言った手前、中座してしまうわけにも行かず、美緒のおかしなヤツだな、という笑い声に飲まれるように誤魔化された。 これから新聞の取材――ネウロイ200機撃墜達成の件――のあるエーリカと、その付き添いであるバルクホルンは簡単に名前だけ交換したあと、早々に退室し。 ミーナも、改めて、という形で自己紹介をし、後を美緒に任せて部屋を出ていった。 後に残った者が、各々簡単に自己紹介をしていく。 相変わらずマイペースなエイラと寝ぼけているサーニャ。 ペリーヌは美緒の手前、友好的な態度は崩さなかったものの、階級を付けずに坂本さん、と美緒のことを呼ぶ芳佳に憤ったりした。 尤も、その後、芳佳の胸をもんだルッキーニの「残念賞……あれ、だけどペリーヌよりちっさい……かな?」という発言に。 美緒の後ろでひそかにガッツポーズを取ったりしていたのだが。 シャーリーのいつもどおりの、胸を強調する自己紹介のおかげで、彼女の胸に期待、嫉妬などのさまざまな種類の視線が向けられたり。 リネットが逆にその積極的な胸を隠して消極的な挨拶を経たりしたが。 その間中、話が途切れたり、小さな間が生まれたりするたびに。 芳佳は視線を頻繁に一人の少女に向けていた。 ヴィルヘルミナである。 「あ、あの……!」「ん、どうした、宮藤?」「坂本さん、あの子って……私たちを助けてくれた」「ああ、そうだ。 おい、ヴィルヘルミナ、ずっと黙っているなんて人が悪いぞ? 自己紹介してやってくれ」 美緒の言葉に反応し、ヴィルヘルミナがゆっくりと立ちあがる。 左腕を包帯で吊っている姿は痛々しくて。 顔の火傷が、余計にそれを芳佳に感じさせた。「……ヴィルヘルミナ。 ヴィルヘルミナ……ヘアゲット・バッツ……カールスラント空軍、中尉」 感情の読めない、しかし左目周りの火傷痕がかすかな威圧感を与える視線が芳佳に向けられ。 涼やかな声で、しかし極めてぶっきらぼうに、言葉がぶつ切りに放たれる。 その後に何か続くと思って黙っていた芳佳だったが、ただよろしく、と言われ。 軽く頭を下げ着席しなおす彼女に、拍子抜けした。「えと、よろしくおねがいします!」「……ん」「あの、その! 先日はどうも本当にありがとうございました!」「……ああ、いい……任務、だったし……」「えっと、それで、傷……悪いの?」 ヴィルヘルミナは首を振るが、良くは無いだろう。 芳佳はそう思う。 実家の診療所にも、こういう処置を必要とする人が来ることもある。 腕を吊るのは、つまり関節や骨に負担をかけないためだ。 被弾した瞬間は見ていなかったが、ヴィルヘルミナが戦闘傷を負ったという話は美緒から聞いていたから。 その話を聞いたときから、ずっと思っていた。「あの、私に治させてもらえない……かな?」 ああ、そういえばミーナ隊長も言ってたな、治癒魔法が使えるって。 へぇ、お手並み拝見かな。 そんな声が外野から漏れ、ヴィルヘルミナは問う様に視線を美緒に向けた。 それにつられて美緒を見る芳佳。「ん? なぜ私のほうを見る?」「……これから、芳佳の、訓練……あるんじゃ」「ああ、宮藤の消耗のことを気遣っているのか? そうか……そうだな、別にこの後すぐに始めるわけじゃないから大丈夫だろう」 どうせ午前中は所用があるからな、と美緒は続けた。「……じゃあ……お願い」「はい!」 一歩、ヴィルヘルミナのほうに近寄り、両手を肩にかざし。 芳佳は己の魔法を行使した。 柴犬の耳と尻尾が生え、体が青白い光を放つ魔力を纏う。 かざした手のひらからも、強く、暖かな光が生まれていった。「へぇ、これは……」 美緒とヴィルヘルミナ、芳佳以外の誰かがそんな声を上げた。 その治癒の光の大きさと強さから、芳佳の魔力量や適正が見て取れるためであり。 それは、彼女の潜在能力の高さを思わせる。 周囲の感嘆とは裏腹に、芳佳は自分の未熟さをかみ締めていた。 自分達を守って負傷したヴィルヘルミナの傷を治してあげたい。 自分が至りたい高みに居る彼女に少しでも近づきたい。 思いは力を生み、しかしそのほとんどが単なる魔力として放出されていった。 魔力をコントロールしろ、と美緒に言われたことを思い出す。 コントロール、コントロール、と心中で何とも呟きながら、それが出来ない。 焦りが焦りを生み、脂汗が額から一筋流れた瞬間。「……」「ぐにゃ」 芳佳は奇声と共に魔力の集中を解いた。 「な、なにふゆのぁ」 ヴィルヘルミナが、無表情のまま芳佳の鼻をつまんでいた。 そのまま上下左右、さらには右回転左回転。 突飛な事態に混乱していた芳佳の意識が戻りかけた瞬間、弾くように放した。 少し赤くなった鼻をさするように、芳佳は抗議の視線をヴィルヘルミナに向ける。「……緊張……しすぎ」 「ふぇ?」「もっと……手抜きで、いい……。 あと……もう、良くなった……ありがとう」 立ち上がり、吊っていた包帯をはずして肩を回すヴィルヘルミナ。 その動作にはややぎこちないものがあったが、何回か動かすうちにスムーズになっていった。 最後に、軽くジャブを放ってから、満足したように頷く。「十分……動く。 ありがとう……」「うん、私にはこれくらいしかできることないから」 芳佳はヴィルヘルミナの快復した姿に安堵のため息を吐き。 その様子と壁に掛けられた時計を見て、頃合いか、と美緒は呟いた。「よし、挨拶はその辺で良いだろう。 各自、任務に就け。 リーネと宮藤は午後から訓練だ」「はいっ!」「はは、返事だけはいいな。 リーネ、宮藤に基地を案内してやってくれ。 あと、ヴィルヘルミナ。 私と一緒にミーナの所に行くぞ」「……え?」 美緒の言葉に、席を立ってそのまま退室しようとしていたヴィルヘルミナの動きが止まり。「おっ、ヴィルヘルミナ、いきなり呼び出しかぁ? 少佐も厳しいねぇ」「やーい、叱られるー」 シャーリーとルッキーニの茶化すような言葉に、困ったような怯えたような視線を美緒に向けた。「そんなんじゃないさ。 確かに余り無茶が続くようならこうやって呼び出さなければならないだろうが……本人も反省している様だしな。 ヴィルヘルミナの配置についてミーナと話し合うのに、本人の意見も必要だと思ったんだ」 ああ、なるほどね、とシャーリーやエイラは納得し。 ルッキーニはよかったね! と笑みをヴィルヘルミナに向けた。「それでは、解散」 美緒の声によって、少女達は己の仕事のために各々退室していく。 ヴィルヘルミナも、美緒と連れだって部屋を出て行った。***Side Wilhelmina*** 左腕を振りながら美緒さんと一緒に廊下を歩く。 動かすたびにまだ鈍い痛みが残るが、芳佳さんの魔法を受ける前よりか全然良くなっております。 いやー、しかし芳佳さんの魔力すげーわ。 この世界に来てすぐに病院でも治癒魔法貰ったけどアレとは段違いの威力……じゃない、気持ちよさです。 なんつーの? 病院を温湿布とするなら芳佳さんは温泉……? 暖かさは一緒くらいなんだけど、染み渡り方が全然違いました。 美緒さんを放置してそんな事考えてると、話しかけられました。 放置プレーはお好きでないらしい。 「ヴィルヘルミナ」「……?」「宮藤の事に気を遣わせた様だな……礼を言わせてくれ」「何の……事?」「惚ける気か? 謙虚な奴だな…… あいつの消耗を気にしたこともそうだが、治癒魔法を途中で止めさせただろう」 ああ、あれですか。 うん、実を言うと、痛みが完全に消えるまでもっとやってて欲しかったんですが。 なんて言うか……「……肩に、力が……入りすぎ……てた、から」「そうだな……あいつは素質は良い物を持っているんだが、どうにもコントロールが苦手でな……」 余分に魔力と体力を消耗してしまうんだ、と続ける美緒さん。 うん、見ればわかるし。 どうも、なんていうか気持ちが空回りするんだか先走るんだか、そんな風ですよね。 アニメでもそんな感じだったし。「魔法のコントロールは本人がコツをつかまないとどうしようもないから、言葉ではどうにもな……」 「もっと……気を抜いて……やれば、いいと……思う」「そうだな……それは解っているんだが、余り気を抜かせるのもな……」 どうした物か、と唸る美緒さん。 うーん……一生懸命なのが芳佳さんの良いところだからねぇ。 一生懸命すぎるというか常に乾坤一擲な感じもするけど。 短所を治すのは簡単だが、あの子の場合は長所が行き過ぎて弊害が起こってるから。 下手に弄ろうとすれば、一生懸命な所を曇らせてしまうかも知れない。 美緒さんも苦労してんなぁ…… 頑張ってください。 オレはオレのことで手一杯です。 因みにオレも初飛行のあと、自室で結構練習しております。 オレの魔法は物軽くしたり重くしたりするだけだから楽だね。 芳佳さんとかけが人居ないと十分な練習できなさそうだからね。 ベッド片手で持ち上げたり出来るとかどんだけ怪力だよ! と最初は思ったけど、案外良い練習になってます。 最初の頃は5分持ち上げてるだけでヘトヘトになったもんだ……今じゃもう20分くらい持ち上げてても平気だけどさ。 そのほかにも射撃訓練でMk108軽くするのもずいぶん練習になってるし。「そういえば、よくあいつが魔力と体力を大きく消耗するだろうと事前に解ったな?」「…………」 ……やべぇ、失言だったか? 普通に気遣うつもりで言ったんだが…… 何がヤバいのか解らんあたりが実にヤバイが、どうしよう、答えれんぞこの質問には。 まさか以前から知ってました、とか言う訳にもいかんし、魔力に関する知識なんてねぇから適当な事言えないし……「……なんで、だろう?」「おいおい、質問したのは私だぞ?」「本当に……わから、ない」「……そうか、そういえばミーナに聞いていたが……記憶障害だったか?」「……うん」「以前コントロールの下手な治癒魔法使いに会った事がある……とか?」 それなら、そう言う事もあるかもしれんな……と難しい顔をして呟く美緒さん。 何これ! 記憶喪失設定超便利だよ! 助かった!「まぁ、大変だと思うが、この部隊に残留する事を望んだのはお前自身だと聞いた。 あの戦いぶりを見ても、最悪足手まといにはならないだろうが……あとは、何度も言うようだがせっかく助かった命だ、無茶だけはするなよ」「……気をつける」 無茶ねぇ…… そりゃあオレだって無茶はしたくないし辛いのは嫌いだけどさ。 女子供が目の前で頑張ってるならオレだって頑張るしかないだろ。 足りない部分は無茶するかもしれんが、そこはしょうがない。 いや、しょうがなく……ないのか? オレが無茶したお陰で芳佳さん飛ばなかったし…… 今思えば飛んでないのに芳佳さんが何故ウィッチーズに入ってきたのか微妙に謎だ。 あれは確か、芳佳さんが自分も空を飛んで戦えるから。 皆を守れる人になれ、とかいう親父さんとの約束を守るためにウィッチーズに入ろうと決心したとか、そういう話だったはずだし…… オレというファクターが、物語の流れを変える事で。 もしかしたら要らん犠牲や損害を強いる事になるかも知れないのだ。 この世界がアニメの通りに進むという根拠は何もないが、今のところオレの記憶通りに進んでいる訳だし。 あー……畜生、どうすんべぇさ……寝ながらゆっくり考えたいが今は昼だしこれからミーナさんと美緒さんのどきどきスパルタン誘惑授業だし。「ああ、そういえば、ヴィルヘルミナ。 ミーナに伝えておいてくれと言われていた事があったな」「……何?」「何でも、お前の制服一式が届いたんだとか。 そのぶかぶかの服……バルクホルンのお下がりだろう?」 案外似合ってるぞ、妹みたいだ、あっはっは。 など朗らかに笑いながらの美緒さんの発言は、っていうか妹かよ! いやいや、そんな事はどうでも良い。 ついに! ついにオレの服が! ついにこの世界初めてのオレの私物が来るそうです! 注文してから一週間か……長かった! バルクホルンのお古も着心地は悪くないんだが、その、微妙に香るお姉ちゃんの残り香に慣れるまでが実は大変でした! 最初袖を通した時はどきどきしたよ…… ついに童貞心を無駄に刺激する衣服からの解放が! 解放が!「お、おい、ヴィルヘルミナ、どうした、急に足を速めて」「……急ぐ、ミーナ……待ってる」 これは急がなきゃ男が廃るね! ――――――今回もノベライズタイムから始まっております!整合性の取れるオリジナル展開考えれる人すげぇ……爪の垢を寄越すんだ。 煎じて飲むから。あと多人数シーン書ける人の爪の垢も頼む。独り言でのら抜き言葉くらい勘弁してぇ!一定規模の基地なら要員の娯楽用に小さな図書室くらいあるよね……あると言ってよバーニィ!この時期なら刑務所にすらあるくらいだから軍事施設にもそれくらいある……よね?