『金崎玄之丞の憂鬱』
尸魂界の大虚襲撃事件から数ヶ月の月日が経った。
なんと言うか、正に総力戦といった戦いで、割りと多くの死神が死んだし、席官も数人亡くなった。
公式では、副隊長の死者は無し、藍染惣右介、市丸ギン、東仙要の三人の隊長が最大級大虚(ヴァストローデ)と戦い命を落とした事になっている。
なっていると言う事は事実とは違うわけで、どう言う経緯かは判らないが、ハッチさんが張った結界の中で平子さん等に倒されたようだ。
後で、聞いた話によると、ルキア嬢ちゃんの体の中から取り出された石みたいなのは藍染が欲しがってるものじゃなかったようだ。
浦原さん謹製の特定の霊圧を感知して暫くすると所持者の霊体を分解する一種のトラップの類だったらしい。
特定の霊圧って言うのがルキア嬢ちゃんから石を摘出する為に使った道具の操作霊圧だって言うから驚きだ。
罠が発動して腕がドンドン崩壊していく藍染を見て。
「そう言えば昔に言っとったなぁ、見える裏切りより、見えへん裏切りの方が怖いて。俺も言っとくわ、見えへん反撃を受けた気分はどうや?」
とか、まぁ、そんな事を言ってやったらしい。
よっぽど頭に来てたんだろうなぁ、当然だとは思うけど、うん、人に恨まれないように生きていこうと思う。
双極の丘の結界が解かれたのは大虚を撃退してからだいたい一日後。
殆んどが満身創痍だったが一人も死者は出なかったそうな。
彼等は数日の間、尸魂界に滞在して皆現世へ帰っていった。
多分、四十六室が生き残ってたら彼等は全部処刑せよとかそんな命令が出てたんだろうけどな。
その命令を出す四十六室は既に無く、その権限を一時的に受け継いだ山本総隊長は彼等の助力と尸魂界に現れたと言う事実を無かった事にした。
つまり、旅禍に偽装した虚の先遣隊が瀞霊廷で暴れて、後続の大虚を先遣隊ともども護廷十三隊で撃破したとかそんな感じの筋書きになった。
結果、彼等には恩賞も罰も共になし傷を治した後、極秘裏に現世へと追い出される事になったわけだ。
ただ、浦原さんと尸魂界の繋がりが再び結ばれたらしいので、虚化の治療が出来たなら尸魂界への帰還は許す事になった。
京楽隊長たちみたいに、平子さんたちと個人的な友誼があった人間が色々と取り成すように努力した結果らしい。
リサちゃんと沢山話をしていた京楽隊長と副隊長の眼鏡委員長ちゃんが印象的だった。
あと、何故か修兵君が六車ヤンキーさんに懐いてた、向こうは誰だっけ的な顔してたんだが、修兵君、ビジュアルに似合わず結構影薄いからなぁ。
青春嬢ちゃんは朽木家に戻って、白哉君、銀嶺元隊長、ルキア嬢ちゃん、そして何故か俺で色々長い話をした。
嬢ちゃんの扱いも平子さん等と同じ扱いな訳で、数日後には尸魂界から出て行かないといけない。
白哉君と銀嶺元隊長にちゃんと戻って来いよと言われていたし、ルキア嬢ちゃんも姉上の帰還、お待ちしています、そう言って友好関係を築いているようだ。
旅禍達も無事に現世へと戻っていった。
戦闘馬鹿繋がりでオレンジ君は十一番隊と仲良くしてたなぁ。
剣八のおっさんの機嫌が滅茶苦茶良かった、矛先が他所向いてると安心できて良いね。
織姫ちゃんには尸魂界に居る間に写真を大量に撮らせて貰った。
うん、撮った写真は登山の会の会報に載せたんだが、エライ反響だったなぁ。
企画予定の現世の空座町ツアーへの予約申し込みがひっきりなしだ。
京楽名誉顧問も加えて、登山の会はますます盛況だったりする、おっぱい。
そう言えば京楽名誉顧問の所の第三席がここの事を聞きつけてちっぱいちっぱいとか叫んでる。
砕蜂萌えとか無謀すぎると思うんだけどなぁ、そのうち弐撃結殺とかされるんじゃなかろうか?
彼の冥福を祈る、いや、死んでないって?
時間の問題だと思うんだがなぁ……
旅禍と言えば、一つだけ、驚きの事実が判明した。
事件の後、任務で俺が現世に行った時、義骸に入って青春嬢ちゃんと一緒に空座町をうろうろしてたんだが、最近見かけない知り合いを見かけた。
十一番隊の元隊長、涅印の栄養ドリンクのせいで霊力を失ったあの人が町を歩いていたんだよ。
何で居るのか判らないが、声を掛けると正に本人、人間と全く代わらない義骸に入って第二の人生をエンジョイしてるらしい。
これって良いのかと思ったが、思いっきり違法だけどばれなきゃいいんだよとか言ってるよこの髭達磨。
医者をやってるとか、本気で似合わないなぁ。
でもまぁ、このおっさんには世話になったし、絶対ばれるなよと念を押してからその場は別れた。
ちなみに話してる間中、青春嬢ちゃんはぽかーーんとしていた。
「玄之丞、なんで一心さんと知り合いなのよ」
とか叫ばれてもなぁ、おっさんが十一番隊の元隊長で剣八のおっさんの前任者だと説明したら意外すぎる繋がりとか呆れていた。
こんな所で正体判明するとか、流石の私でも意外だわとかなんとか。
この後、おっさんがオレンジ君の父親だと言う話を聞いた、奥さんが美人だと言う事も。
遠くから見てみたら、マジデ美人過ぎる、なんと言う美女と野獣とか唖然とした。
顔は母親の血で見れるけど、中身はまんま父親似立ったわけだ、オレンジ君は、そりゃ十一番隊と肌が合うわけだなぁ、納得。
しかしまぁ、変な所で変な縁があったもんだわ。
あぁ、それと、とうとう俺がタイムスリップした原因がわかった。
事件が全部終わって、俺のタイムスリップの原因を探る為に一時期、地上勤務をしていた訳だが、過去に飛んだはずの時期になっても一向に飛ぶ気配が無い。
困った時の浦原えもん、青春嬢ちゃんを伴って相談に行った。
飛ぶ直前に何処に居たか、何時の時期か、何か代わった事は無かったかと色々話をしていたんだがどうもよく判らない。
そんな中、青春嬢ちゃんがもしかしてと思い当たる所があったそうな。
原作とやらに関わる話らしい。
俺が過去に飛んだのは藍染の事件があった数ヵ月後、場所は空座町に用事があってたまたまそこに行ってた時の話だった。
ちゃんと俺は空座町に訪れてたし、用事を済ませて無事に出て行った。
この話を聞いて、青春嬢ちゃんはもしかして断界で拘突に巻き込まれたんじゃないかって推理した。
確かに無理やり尸魂界に行こうとすれば時々過去や未来の尸魂界に辿り着く場合がある。
だが生身の人間が、更に過去に100年単位で飛ぶとかありえないと思うんだがなぁ。
そう言ったら、原作とやらで町ごと尸魂界に避難させるって言う事件があったんだそうな。
個人で行くよりよっぽど安定しないだろうし、尸魂界から現世に戻る時に人間一人が過去に飛ぶ事だってあるんじゃないかって。
それを聞いた浦原さんがその可能性はゼロじゃありませんねと言って青春嬢ちゃんの意見を肯定して見せた。
なるほど、じゃあ、その事件が無かったから無事過去に飛ばなかったわけだと、一応納得。
しかしその事件、藍染関係の事件らしい、つまり奴のせいで俺は過去に飛んで死んだのか。
知らずに自分の敵討ちの手伝いをしてたんだなぁ、我ながら驚きだ。
これで、俺の問題はひとまず完全解決って事だなと、安心した。
そう言えば、白髪少年とか卯ノ花隊長が何してたかに触れてなかったっけなぁ。
簡単に言えば、白髪少年は市丸が怪しいと睨んで色々調べてたらしい。
で、藍染の策略手紙に踊らされて五番隊の副隊長である雛森ちゃんとあれこればとったりしてたようだ。
その流れで、四十六室が怪しいと処刑当日に其処に向かって生きてた藍染に手玉に取られて雛森ちゃんは刺されて、自分も危なく切り捨てられるところだったらしい。
そこでたまたま、浮竹隊長と京楽隊長の要請で卯ノ花隊長が調査にやってきて、間一髪、藍染の一撃を卯ノ花隊長が防いだんだとか。
その後、空間転移で藍染は去り、雛森ちゃんを治療しつつ、双極の丘に白髪少年と卯ノ花隊長はやってきたと、そういう流れだったらしい。
そういえば、この事件の間、全く白髪少年とグレートおっぱいを見かけないなぁと思ってたら見事なまでに全然別の所で頑張ってた見たいだなぁ。
うん、これでこの事件の事後処理関係の話は終わりだ。
まぁ、色々大変だったけど、なかなか有意義な百年だったと思うよ。
え、俺がどうなったかって?
別に聞いても楽しい事じゃないと思うんだがなぁ。
あの後、隊長が三人死に、新たに隊長を選ぶ事になったわけだ。
白哉君に卍解を見せてどうどうと瀞霊廷内で暴れた恋次君は見事に候補に選ばれた。
当然、大虚相手に卍解を見せた俺も砕蜂に浮竹隊長、京楽隊長に剣八のおっさん、白哉君に卯ノ花隊長にまで推薦を受けた。
流石にここまで来たら第三席が良いとか言ってる場合じゃ無いわなぁ。
隊長になるのはしょうがないとしても、出来れば九番隊辺りで修兵君とおっぱいおっぱいやっていたかったんだがなぁ。
わりと隊長への忠誠心が強かった三番隊と五番隊から優先して個人の影響を取り除きたい、そんな思惑があったらしい。
恋次君は三番隊の隊長に、俺は五番隊の隊長に任命されてしまった。
副隊長は据え置き、当人である雛森ちゃんは、まだ藍染の事が好きらしい。
好きな人に裏切られたのは辛いんだろうな、俺の周りにはなんだかんだで良い奴ばっかだったから気持ちが判るとは言えんけど。
とりあえず、ゆっくり傷を治すといいんじゃないかねぇ、白髪少年も何度も足を運んでくるし、俺としてはおっぱい乱菊ちゃんが一緒に顔出してくれてバンバンザイなわけだが、うん、案外五番隊も悪くない。
「おい、そろそろ行かないと隊首会に遅れるぞ」
あぁ、もうそんな時間か、面倒だなぁ。
「ふん、相変わらず貴様はだらけきっているな」
そうでもないよ、割りと仕事はちゃんとしてるはずだけど。
「そうだな、だらけきっているのは貴様の顔だったな」
ひでぇ、ひでぇよ、もう少し言葉をオブラードに包んで欲しいなぁ。
「そう言えば……朽木青春とは会ってるのか?」
現世に降りた時は大体会ってるなぁ、仲良く玄海嬢ちゃんと遊んでるよ。
「そうか、虚化は治りそうか?」
浦原さんが何かいい案が出来たそうな、尸魂界に戻ったら、また一から死神として再スタートするとか言ってたっけなぁ。
「まぁ、そんな事はどうでも良い。今晩は何か酒が飲みたい気分だ」
おーけー、良い酒持ってくよ。
「そうか、じゃあ、私は先に行く」
ういういっと、じゃ、そろそろ俺も準備しますかね。
そう言えば、日記も大量に溜まったなぁ。
これって、青春嬢ちゃんとか砕蜂に読まれたら俺死ぬんじゃね?
こっそり燃やしといた方が良いかもな。
ん? どうした玄海嬢ちゃん、いきなり具象化して。
「……砕蜂と青春は好き?」
あー、その話題かぁ、難しい問題だなぁ。
砕蜂は飲み友達って感じかな、青春嬢ちゃんはどうだろう。
「青春は玄之丞の事が好き」
それは、一応判ってるんだけどな。
ずっと、なんと言うか、妹分って感覚だったからなぁ、恋愛対象として見るのが酷く難しいんだわ。
「うん、判る。それって私の事もだよね?」
あぁ、そうだな、そんな感じ。
てか、やっぱ、冗談抜きで本気なんだよな?
「うん、そうだよ、でも、別に急がないけど」
そうなん?
「だって、玄之丞と私は死ぬまで一緒だし」
それは確かにその通りだなぁ。
「だから死ぬまでに絶対私の玄之丞になってね?」
あぁ、考えとくよ。
そんな会話が有ってから数日後。
なんとなく地上で青春嬢ちゃんと会話をした。
「そろそろ尸魂界に戻れそうよ」
おぉ、そりゃめでたいな、平子さん達はどうするんだ?
「リサちゃんは京楽隊長の家に転がり込むんだって、七緒ちゃんが本妻であたしが愛人やとか言ってたけど、本気かな?」
七緒ちゃんかぁ、眼鏡委員長の子だな、真面目そうだからリサちゃんの良い玩具になりそうな気がする。
なんと言うかご愁傷様かなぁ、傍から見てて京楽隊長ラブだし、素直になればいいのに。
「それを玄之丞が言う? 私が言うのもなんだけど、多分、私が尸魂界に戻ったら墓場行きになるよ?」
あぁ、やっぱり?
白哉君とか、銀嶺隊長とか、ルキア嬢ちゃんとか滅茶苦茶乗り気なんだよなぁ。
隊長にまで上り詰めたなら朽木家の婿として相応しいですなとか家令の爺ちゃんとかがボソッと言うんだぜ。
「別に嫌なら、私がなんとか言ってあげても良いけど……え~っと、あの、どうする?」
お前なぁ、嫌なら嬢ちゃんの前でわざわざ悩むかよ。
俺って、巨乳とか本気で好きなんだけどなぁ、なんで青春嬢ちゃんが嫌じゃないのか謎過ぎる。
「……なんか、大いに不満があるけど、まぁ、言いたい事は判ったつもり、勘違いしてないよね?」
まぁ、してないんじゃないか?
多分、色々大変だと思うけどな、具体的に言えば玄海嬢ちゃんとか玄海嬢ちゃんとか、玄海嬢ちゃんとかな。
「大丈夫よ、ぶっ飛ばしてから何とかするし」
頼もしいこって、じゃあ、さっさと虚化治療して尸魂界に戻って来いよ?
「りょーかい、首を洗って待っときなさいよ?」
へいへい、あーあ、とりあえずもう暫くは楽しい楽しい独身生活をエンジョイさせてもらうとするかねぇ。
登山愛好友の会の会合も出治めかー。
「登山とかするんだ、知らなかったなぁ、ちゃんと健全な趣味あるんじゃない」
おう、健全健全、男として生まれたからには山を愛さない奴の方が不健全って奴だ。
「良く判んないけど、別に止めなくていいよ? 私が趣味とかにまでいちいち口出しとかする面倒な奴に見える?」
お、マジで、そりゃ助かる。
そっか、公認なら安心できるなぁ、よし、登山の会、超頑張りますか!
とまぁ、こんな所で俺の死神ライフはまだまだ続くわけだがひとまずの区切りを迎えたわけだ。
ちなみにこの後、登山の会の活動内容がばれて春雷王を振り回しす青春嬢ちゃんから逃げ回るなんて事もあったりした。
玄海嬢ちゃんは相変わらず、気まぐれに具象化して気まぐれに俺にまとわり付いてくる。
特に青春嬢ちゃんと一緒の時には確実に出てきて喧嘩になったりするのが日常風景ってのは悲しむべき事だと思うんだがなぁ。
砕蜂とは相変わらず酒飲み仲間だ。
酔っ払ってごろ寝して翌朝なんでか寝ぼけた砕蜂に関節技を掛けられて目を覚ましたり、それを青春嬢ちゃんに目撃されたりなんて事もあったが概ね良い友人関係を結べていると思う。
友人、友人だ、本当に友人だって、落ち着け、青春嬢ちゃん。
うん、まぁ、あれだ、色々気苦労が耐えない憂鬱な日々だけど、わりとそれが気に入ってるんだよなぁ。
よし、今日も登山の会に顔出して( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!してくるか!
( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!
金崎玄之丞の憂鬱 完
後書き
とりあえず完結です。
スイマセン、超お待たせしました。
当初のペースなら4月には終わってても不思議じゃなかったんですけどね。
某SS書きの人には玄之丞より先に完結するとは思わなかったと言われてリアルに凹んだりしましたしorz
とりあえず、色々微妙に張ってた伏線は一応、回収したつもりです。
長らくお付き合い頂き、ありがとうございました。