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No.6301の一覧
[0] 東方~触手録・紅~ (現実→東方project)[ねこだま](2010/02/12 00:34)
[1] 東方~触手録・紅~ [1][ねこだま](2009/02/10 00:21)
[2] 東方~触手録・紅~ [2] [ねこだま](2009/02/19 04:05)
[3] 東方~触手録・紅~ [3] [ねこだま](2009/02/25 04:38)
[4] 東方~触手録・紅~ [4] [ねこだま](2009/03/05 01:57)
[5] 東方~触手録・紅~ [5] [ねこだま](2009/03/16 03:45)
[6] 東方~触手録・紅~ [6] [ねこだま](2009/04/02 14:04)
[7] 東方~触手録・紅~ [7] [ねこだま](2009/04/14 03:04)
[8] 東方~触手録・紅~ [8]  [ねこだま](2009/05/03 00:16)
[9] 東方~触手録・紅~ [⑨]  上[ねこだま](2009/05/25 01:10)
[10] 東方~触手録・紅~ [⑨] 下 [ねこだま](2009/06/24 02:39)
[11] 東方~触手録・紅~ [10] [ねこだま](2009/06/01 02:09)
[12] 東方~触手録・紅~ [11] [ねこだま](2009/06/24 02:38)
[13] 東方~触手録・紅~ [12] [ねこだま](2009/07/11 22:19)
[14] 東方~触手録・紅~ [13]  [ねこだま](2009/07/11 22:19)
[15] 東方~触手録・紅~ [14]  [ねこだま](2009/08/07 12:47)
[16] 東方~触手録・紅~ [15]  [ねこだま](2009/09/04 12:40)
[17] 東方~触手録・紅~ [16] [ねこだまorz](2009/10/06 17:10)
[18] 東方~触手録・紅~ [17] [ねこだま](2010/01/18 22:41)
[19] 東方~触手録・紅~ [18][ねこだま](2010/01/18 22:41)
[20] 東方~触手録・紅~ [19][ねこだま](2010/02/11 01:11)
[21] 東方~触手録・紅~ [20] [ねこだま](2011/08/05 23:43)
[22] 東方~触手録・紅~ [21][ねこだま](2011/12/25 02:06)
[23] 東方~触手録・紅~ [22][ねこだま](2012/04/11 15:19)
[24] 東方~触手録・紅~ [23][ねこだま](2012/05/02 02:20)
[25] 東方~触手録・紅~ [24] [ねこだま](2012/08/31 22:42)
[26] 東方~触手録・紅~[25] にゅー[ねこだま](2012/08/31 22:42)
[27] 東方~触手録・設定~ [ねこだま](2009/06/15 00:01)
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[6301] 東方~触手録・紅~ [23]
Name: ねこだま◆160a3209 ID:947fcd6f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/02 02:20
トトン トトン トトン

カチャカチャカチャ

ワサワサワサ

カツカツ

博麗神社へと伸びる参道は大きく枝を伸ばした木々に包まれて昼間でも薄暗く人気はまったくないものである。

割れた石畳は土が多くかぶさりわずかにその表面が地面から露出しているのみ、その石畳のかすかな面影さえ、初夏を迎える光を精一杯浴びようと成長した草花が覆い隠そうとしている。

そんな廃道じみた参道の今の姿に誰も気を止めようとしないがそれは当然と言えよう。


・・・だって博麗神社に来るやつらの大抵は空からくるのだから仕方がない。


人が来れば人の足が土をのけ、石畳を靴が磨き、草は撥ね退かれていくのだが。

悲しいかな、神社に来るのは大抵が妖魔と魔法使い程度、人の子など俺が博麗の社にやっかいになってから一人も着た記憶はない。

あぁ、いや、たしか早苗と魔理沙は一応人か?

空を飛んでビームを素手から出す輩を人と認めることに少々違和感をぬぐえないが・・・。

まぁ神社に来るほとんどが信仰なにそれおいしいのと素でいいそうな輩でばっかりで、
来たら来たで巫女と最近では俺をからかって暇をつぶしに来るのが大半だ。
つまり結局この参道を有効活用しているのはせいぜい俺ぐらいしかいないのだ。

だから唯一有効活用しているこの俺がこの参道の真ん中をあるいても誰も咎めはしないだろう?

参道は本来神が通る道であり、そのため人は参道の左を歩き、神様に参道の真ん中を譲るのが正しい参拝方法である。

が、生憎、俺の居候先の神社に神がいるとは、残念ながら、思えない。

何度も言うが巫女があれだからな。

なので居もしない相手に道を譲るなどという一人芝居に似た行為に必要性を感じえなかった俺は、
人里で買い付けた多くの燻製された山魚やら旬の野菜を入れた籠やら酒瓶やらと、ついでに立派な角を頭にこさえた鬼の幼女を背に乗せて参道の真ん中を堂々と、最近では定着しつつある巨大な山犬の姿で登っている最中である。

人の身でこれらの荷物を持ち、足場の悪いこの参道を登るのは結構な重労働になっただろう。

もともとの頼まれた買い物量はそれほどでもなかった、おそらくは萃香ひとりでも十分な料であっただろう。
しかしまぁ、ちょうど神社の醤油や出汁用の煮干、昆布などが切れかけていたはずなのでついでに買っておいたのだ。
お金はなんとか事足りた、それは俺の背中で器用に寝そべってくつろぐ彼女のおかげである。

最初はその立派な角を隠さずに人里へ堂堂と入っていく彼女を引き止めたのだが、

ある店では彼女の角を今日も立派だと褒め、おまけといって少し値引きしてくれたり、ある店の主人は彼女におまけの品を交渉の材料に酒の席に誘っていた。

その様を見る限り、人里の住人はむしろ彼女をキチンと鬼と認めながら軽く接していたようだった。さもなくば角を褒めもせず、見た目幼い彼女を酒の席にも誘わないだろう。
(余談だが後者の店主はその後にこやかに微笑む奥さんに肩をつかまれて誘うの諦めた。)

まったくこちとらわざわざ人里に近づく前に普通の犬に変化してビクビクしながら里入りしたというのに、なんだこの扱いの差は。
どこの世もかわいいは正義なのかとどこかの誰かに問い詰めたくなる。

俺もどうせならかわいい妖怪にとりつきたかった。そうすればこんな苦労もなかったかもしれないのに。
買った品々を絡め持った触手に意識を集中させて持ち直し、ずり落ちるのを防いぎつつ、俺は世の理不尽さに肩を落とした。
すると尻の下でうごめく感触に違和感を覚えたのか

「こらぁ、」

という声とともにビシっと萃香のちいさな手が俺の頭頂部をはたいた。
いきなり人の頭を叩くな。

「んん?べーつにぃ?人の顔を恨めしそーにみてたからちょっとばちをあててやったんだ」

そんな目で女の子を見るのは失礼だぞ!と大平原な胸をふんぞり返す彼女に鼻で笑いかえす。

今度はこぶしが飛んできた。物理的に頭が凹むからやめてくれ。

「うわ、ほんとに凹んだ・・・。」

だからやめてくれ、試すな。
仕返しに体から触手を一本新たに出して彼女の角を小突く。
しかし「ごめんごめん」とくすぐったそうに、まったく悪びれた様子もなく笑いかえされた。
そして

「んんー、ねぇ黒助、なんか里でいいことでもあったのけ?」

と萃香はぽんぽんと俺の背中を叩いて唐突にそう聞いてきた。

「なんか黒助機嫌よさそうだからさ?
 里に行く前はめちゃくちゃ足重そうにしてあるいてたじゃない?」

ただでさえ黒い顔を暗くしてまっくろくろだったよと萃香は笑った。
あー、確かに行きの道中はとても憂鬱な物だった。
何せ今回の用向きは買い物であり、物を買う上で人間に会うことが確定しているわけで、
この間里に入ったときのようなことがなければいいがとビクビクしていたのだ。
だが、その、まぁ、そんな不安はある一件でいい意味で裏切られた。





別に何もなかったよ、と電子辞書で萃香に伝える。
あやしーなーと俺の体を小突き返してくる萃香をいなしながら俺は先ほどの出来事に思いをはせた。


買い物中、じっくり吟味して買いたい、という萃香の言葉で結局最後に立ち寄った酒造の直営店。
萃香はこの酒造の主人とも顔見知りだったらしい。
主人は角の生えた幼女に対し、まるで旧友に出会ったかのように丸い顔に人懐こそうな笑みを浮かべて俺共々快く迎えてくれた。

だがココで少々問題がおきた。
主人を急かして目をキラキラと輝かせながら彼女は酒造の蔵へと俺を置き去りにヅカヅカと店の中に入っていったしまったのだ。
一方一人残された俺はと言うとさすがに気まずかった。
チラチラと番頭さんや丁稚の不思議そうな視線がどうも、ね。

店の中で黒い大型犬がじっと座っていては他の客や店の迷惑になるだろうと思い、
外で待たせてもらおうと腰を上げたときだったか、その際にある女の子と目が合ってしまったのだ。

丁稚の服装とは違った質のよい着物を身にまとった少女、その顔には見覚えがあった。
そう、あの少女だ。

数日前に博麗神社の参道で遭遇し、気付けば俺が幻想郷の中で迷子になった原因となったあの少女、確か名前は・・・鈴、だったか?

・・・さて、時に子供は妙に勘がいい時がある。
いつもは何を考えてるか分からないほどやんちゃなガキでも時として物事の核心をついてくるときがある。

そしておそらく、目のあったその子は間違いなく例のあの子であり、
運悪く、彼女の感はここで冴えわたってしまったようだ。

俺の顔を凝視し顔を強張らせる様子を見て、俺はあわてて入り口のほうへと頭を向けた。
振り返らず足早に店から出て数秒、思わず肩を落としてしまう。
しかしまぁ、あの場で泣かれずにすんで本当によかった。
店の外に出る際、店の者が顔をこわばらせる彼女を「鈴お嬢さん?」と呼んでいた。
もしかして、いや、おそらくこの店の主人が彼女の親なのだろう。

まったくどういうことだ、萃香の顔なじみの店があの子の店とは、なんという不運。
不幸中の幸いとして騒がれなかっただけまだましと考えよう。

あとは、自分が前回のように飛び出して走りだすような愚行はせずにすんだ事にも思わず安堵してしまう。

あの時はまだ、そうだな。
・・・あの時はまだ自分が偶に妖怪であることを忘れてしうことがあったのだ。
博麗神社での生活は忙しく、家主はとてもめんどくさがりで暴力的で、でもそれでもやさしすぎるのだ。神社の境内だけの生活は中途半端に人間として扱われることがあり、それで気付けば何も考えずに人に近づいてしまったんだろう。

ここ数日間に渡る放浪期で良くも悪くも自分の未熟さを実感させられた出来事は多い。
とりあえず、俺はもう人間ではないがまだ妖怪である。
それもいろんなところから目をつけられてる厄介者。
それだけ理解できただけでも十分な成長だろうか。

とはいいつつも以上のことを気にしているから、つい考え込んでしまうわけで。
萃香まだ帰ってこないかなーと忠犬のごとく、買ったもの山の前で座り込み、
人が多く行き交うおとなしくお座りしながら悶々と考え込んでいた。

思考の海に現実逃避気味におぼれていた俺は「ぁの・・・。」というまるで蚊の鳴いたような声に気付くのにしばし時間を要した。

「ぁ、あの!」

うぉぅっ!?

突如かけられた知らない声に俺は思わずビクンとその場を飛びのき姿勢を低く身構えてしまう。
そして声の主を見て俺の脳内は思考の海のど真ん中で漂流しそうになった。


「っ・・・あ、あの、もしかしてくろまるさん・・・ですか?」


そういって妹紅が俺を呼ぶ際に使っていた名前を口にしたのは、
あの娘だった
彼女はひざを抱きかかえるようにしゃがみ、
犬の姿を模る俺の視線の高さに今にも泣きそうな顔で合わせた。

それに対して俺はふいと顔を背け、喧騒に包まれる道へ視線を向ける。
顔を合わせるのがなんだか怖かった。
そして彼女の問いかけに俺はどうしてよいか分からなかった。

「・・・」

 ・・・。



今の俺は萃香の連れのタダの犬、と言うことになっている。
ここで彼女を無視してただの犬になりきれば最悪面倒事は避けられるだろう。
それに根本的な問題としてどうやってそれを伝えればいい?
いきなり体の中から電子辞書を取り出すわけにはいかない。
里を行きかう人の目もある。
そうして彼女をいない物として押し黙っていると
徐々に彼女の目にしずくが溜まっていくのが視界の端に写る。

いや、彼女が泣いたところで子供の癇癪、さして問題になるまい。

俺は彼女を無視することしかできなかった。
面倒ごとをこれ以上起こしたくはない。
霊夢にも迷惑をかけっぱなしにするわけにもいかない。
だから仕方がないんだ。

仕方がないんだよ。

俺は自分にそう言い聞かせていた。


里の中で多く生まれる音と声がどうも遠くに聞こえるなか、
俺と彼女の間に流れる空気が妙に静かに感じた。


「・・・ぁの・・・ね」


その空気にふと小さくかすれがかった声が響いた。
睫毛を伏せ、目じりにしずくを湛えながら小さく口を動かしている


「わたし、くろまるさんに、あやまらなきゃって・・・おもって、」


息をひとつ呑み、ところどころ噛んで、つっかえてはまた息を呑み、
またつっかえながら彼女はかすれていく声を必死につむいでいく。


「くろまるさんがね、ないてたって、
 もこうのお姉ちゃんがね、いってたの。
 わたしが、くろまるさんのこと・・・こわがった、から」


・・・別に泣いた記憶はない。妹紅め、余計なこと言いやがったな、
あー、子供に泣かされたとか変なうわさをとか流されてないよな・・・?


「けーね先生も・・・、ひとを見た目で判断するな、っておこられて、
 ・・・だから」

「こわがって、ごめんなさい。」

許して、くれませんか?そういって彼女は俺の顔を覗く。
思わずのさきほどのように目をそらしてしまいそうになるが、
そこでふと気付く。

これではどっちが子供だか・・・、

相手は霊夢よりも小さい子供だ。
それに対して何だ、さっきから俺は。
彼女は謝ってるじゃないか。

確かにおれの中では少々やりきれない気持ちが心の中で黒い蟠りとして残っている。
人間から向けられた恐怖心、里でぶつけられた石の感覚。
だがまぁ、その黒い物は彼女にぶつけるべき物ではないはずだ。

それにもうなんだかこの件について考えるのが嫌になってきた。
もしかしたらこれが本心かもしれない。

なんだかだんだん自分が妖怪とかどうとかの意見がどうでも良くなってきた。
結局は人間に戻るつもりなのだから、今の黒い塊の『俺』がどんな酷評を受けても別にかまう物ではないのだ。


つまりはせいぜい、後味が苦くならない道を突き進めばいいだけだ。


なんかなにかの悟りにいたったような気がして、俺は軽い全能感に一人酔いしれた。
さて、するとどうだろう?目の前にいる少女の目尻に光る雫ムクムクと湧き上がる物がある。目尻にたまる涙、赤く染まった頬、きゅっとかみ締められた唇。
だんだん目の前の彼女が叱られる寸前の子犬のように思えてきて思わず悪戯心がうずきだしてきた。


「あの、くろま≪コツン≫ ぇ?わ、わわ!?」


突然鼻先に受けた衝撃に彼女はバランスを崩し、キャンと本当に子犬のような悲鳴を上げてしりもちを搗いた。
彼女のぽかんとした表情に加虐心を満足させた俺は満足げに尻尾をふった。

俺がやったことはいたって単純明快だ、犬の鼻面で彼女の顔をトンと前から押しただけ。
鈴はしゃがむだけで尻も手も地につけていたなったので軽く押しただけですぐにコロンと転がった。

俺は何かしらの形で謝罪に対する返答をしたかった、正直言うとあの件は俺が不用意に飛び出したのがもともとの原因なのだ。彼女が一方的に謝る事ではない。
しかし今この場ではこんな形でしか返事ができないのだから仕方がない。

ならば今このときだけ犬になりきろうではないか。

何が起こったのか理解できず、尻餅を搗いたまま呆けてた鈴に歩み寄り、
彼女の頬をペロリと舌で舐めた。
汗か涙か、少しその頬に塩分を感じる。

突然頬を舐められた彼女は一瞬きょとんとして、そして次の瞬間には許された事を悟ったのか小さく花咲くように微笑んだ。


「ありがとう、くろまるさん。
 ごめんね、こわがって・・・」


そういって彼女の手は手を伸ばした。
ぎゅっと首に回される腕の感触に俺は漸く腹の置くの蟠りが溶け心地よい疲労感を味わうことができた。

まったくもってこの一週間は疲れる日々だ。
結局のところ今回のいろいろな原因は俺の容姿の醜さと人から向けられた恐怖心に餓鬼みたいに怖がってそれを感じた子供たちも怖がって。
原因は俺にあるのに一方的に謝らせて、本当に俺はひどいヤツだな。

ふと俺の首に抱きつく鈴の肩越しに見た里に見覚えのある色を見つけた。
2軒、3軒先の建物の影、その影から特徴的な赤がはみ出ており、
そして赤白リボンによってまとめられた銀糸色の髪が風に揺られてフワフワとなびいていた。

俺がそちらに視線を向けたからか、その姿はサっと過度を曲がり見えなくなった。
どうやら今までの行動は誰かさんに監視されていたようだ、
あの銀糸の持ち主には後日『オハナシ』をする必要がありそうだな。
誰が泣いていたのか、この鈴に何を吹き込んだのか、イロイロね。


―――あれ?黒助どこいった?―――


ふつふつと妹紅に復讐心半分いたずら心半分の熱い思いをどうやって彼女にぶつけてやろうか?そう考えているさなかに、少し酔っ払ったような口調で俺を探す声が耳に届いた。
そのすぐ後に店員の声か、外でお待ちですよとの声がつづく。
小さな足跡が店の入り口に近づくのを感じたのか鈴は一度最後に、ぎゅっと腕に力を込めた後子供独特の素早い駆け足で手を離した。


「おーい黒すけ!おまたせー・・・っておや?」


酒屋の入り口から身を乗り出した萃香は不思議そうな顔で俺と鈴を見比べた。
かたや大手の酒屋の令嬢とかたやさっきまで人里にくるのにビビッてた妖怪がならんでたらそりゃ不思議がるか。


「んん?黒すけ?なんで酒屋の嬢と一緒に・・・」



「あ、あ、ぁの・・・ありがとうございました。またごひーきにっ!」


「あれま」


首をかしげる萃香の脇を、ぴゅんと駆け抜けて鈴は店の中に飛び込んでいった。


「どったの?」


きょとんとする彼女の表情が先ほどの鈴の表情に似ていて、俺は思わず内心で苦笑いした。










重たい荷物を背負い、軽い足取りで博麗の神社に付くころには既に太陽がその半身を山に隠していた。
そしてこんなの頼んだ覚えはない!とぶーたれる霊夢と言い争いながら買った物を整理していると、あっという間に空は真っ黒に染まってしまっていた。

霊夢、ココは霊夢の神社なんだから台所事情ぐらい把握しといてくれよ。


「私一人のときは把握できてたわよ、萃香とあんたが住み着いてから減りが異様なのよ」

ぐぬぬ


そういわれると5つ程も年下の霊夢にすら俺は言い返せなくなる。
ちくしょう。とてつもなくむなしくて悔しい。
悲しいけど俺ってヒモなのよね。



霊夢とそんなやり取りをしつつ肴をあぶる。ついでにお米を数合炊いておく。
酒を飲もうが彼女たちはまだ成長期の子供である。
宴を過ぎても酔いつぶれなかった場合、
大概彼女らは口を揃えておなかが減ったという。
それに向けてキチンと対処することは必須である。

・・・いつぞや酔った魔理沙にかじられたことがあるのでそれだけは勘弁だ。

あの時はもう少しで喉につまりかけて大変だったなー、
と数日前の宴を思い出していると、ふと縁側が騒がしいことに気付く。

少し触手を縁側のほうへ一本伸ばして覗くと、
そこには既に魔理沙と早苗、萃香が既に酒やらお菓子やらを持ち寄って先に酒を注ぎあっていた。
萃香てめぇもうちょっと手伝ってから呑めよ。
文句を言おうとした矢先、あぶり終えた肴をもった霊夢までもが台所の料理をほっぽって宴に加わってしまった。
あれ?






「くろー!おつまみまだー!?」

「くろ!わたしはしょっぱいのがいいぜ!さっぱりしたのくれ!!」

「あ、萃香さん、もう、、もれいじょうは、らめれすぅ、、」

「いんや!いけるいける!ほら早苗!お猪口こっちよこせぃ!」



はぁ、



結局俺は宴会場となった縁側と台所を行ったり来たりで酒と肴を用意し、自分の酒を飲む暇すらなかった。
霊夢に凄まれ、とぼとぼと、俺は少女たちの喧騒をBGMにもくもくと一人台所で包丁を振るう。

ところで、この宴の名目はなんだった?
俺の帰宅祝いじゃないのか?


「くーろぉー」

分かったから、分かったから少し待ってくれよ。

台所に持ち込まれた俺専用の高足椅子に陣取り、数本の触手を同時に操作する。
包丁で沢庵を切り分け、炊き上がった白飯をお櫃に入れ替え、アンコールのかかった肴をもう一度炙り焼く。

ふふふ、触手によるマルチタスク(物理)を遺憾なく発揮すればこんな作業造作もない。
・・・できればこれをもっと有効に使いたい物だが。


もし、このまま俺が人間に戻れなかったら、
俺って一生彼女たちの給仕をさせられるのではないか?

・・・。
・・・・・・。


・・・怖いからそんな想像はやめておこう。

一生ヒモという男としてのプライドが砕け散りそうな将来予想をかぶりを振って打ち払いつつ、丁寧にまな板の上で切り分けた沢庵を皿に盛り付けていく。
包丁を沢庵の下に滑り込ませて半分皿にのせて、さらにもう半分を


ん?

皿が無い。
先ほど沢庵の半分をのせた皿がそこから姿を消していた。

あれ?落っことした?

しかし椅子の下を見てもなにも落ちていない。
俺の目は鳥目でもないし暗いから見落とすなんてことも無いだろう。
あれ、あれ、と台所周りを見渡しても沢庵を載せた皿なんてどこにも無い。

俺は狐につままれたような気分に首をかしげた。

・・・とりあえず包丁の腹に乗せた残りをまな板に戻そう。

このまま地面に落っことしたらそれこそ霊夢に叱られる。
残りの半分は皿ごと消失してました、とか言っても叱られそうだが。

結局叱られるルートしかないのかな、と考えて思わず泣きたくなる。
何が悲しいってもう悟ってくれ、博麗神社のヒエラルキーピラミッドの土台部分に居る自分が悲しいんだよ。
台所で俺は一人肩を落とした。


ポリポリ


ん?


「んー、霊夢ったら腕上げたのかしら?なかなか美味しいわね」


突然、背後から声が聞こえた。
知らない声だ。
そして声が聴覚に触れると同時に今さっきまで感じなかった妖気が一瞬で台所を埋め尽くすのを肌が感じた。

今まで感じたことが無いねっとりとした妖気に思わず息を飲みつつふりかえる。
彼女の姿を視界に入れたとたん、ゾクリと背筋に悪寒が走った。
初めて見た顔だった、でもなぜか、彼女が誰だかわかった、いや悟った。

宙に謎の帯のような物が浮かび、その上に緩やかに腰掛けるようにこちらを見下ろす女性の『妖怪』


「こんばんわ、元人間さん?」


右手の人差し指と親指にペロリと赤い下を這わせた後、八雲紫はすっと幽かな笑みを口元に浮かべた。












あとがき(落書き)


短いね、そちんだね。仕方ないね♂

ゆっかりんりん

エロかきたい

東方茨歌仙2巻でたね、狐耳と狐のしっぽついた魔理沙かわゆすハスハス、エロかきたい


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