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No.6301の一覧
[0] 東方~触手録・紅~ (現実→東方project)[ねこだま](2010/02/12 00:34)
[1] 東方~触手録・紅~ [1][ねこだま](2009/02/10 00:21)
[2] 東方~触手録・紅~ [2] [ねこだま](2009/02/19 04:05)
[3] 東方~触手録・紅~ [3] [ねこだま](2009/02/25 04:38)
[4] 東方~触手録・紅~ [4] [ねこだま](2009/03/05 01:57)
[5] 東方~触手録・紅~ [5] [ねこだま](2009/03/16 03:45)
[6] 東方~触手録・紅~ [6] [ねこだま](2009/04/02 14:04)
[7] 東方~触手録・紅~ [7] [ねこだま](2009/04/14 03:04)
[8] 東方~触手録・紅~ [8]  [ねこだま](2009/05/03 00:16)
[9] 東方~触手録・紅~ [⑨]  上[ねこだま](2009/05/25 01:10)
[10] 東方~触手録・紅~ [⑨] 下 [ねこだま](2009/06/24 02:39)
[11] 東方~触手録・紅~ [10] [ねこだま](2009/06/01 02:09)
[12] 東方~触手録・紅~ [11] [ねこだま](2009/06/24 02:38)
[13] 東方~触手録・紅~ [12] [ねこだま](2009/07/11 22:19)
[14] 東方~触手録・紅~ [13]  [ねこだま](2009/07/11 22:19)
[15] 東方~触手録・紅~ [14]  [ねこだま](2009/08/07 12:47)
[16] 東方~触手録・紅~ [15]  [ねこだま](2009/09/04 12:40)
[17] 東方~触手録・紅~ [16] [ねこだまorz](2009/10/06 17:10)
[18] 東方~触手録・紅~ [17] [ねこだま](2010/01/18 22:41)
[19] 東方~触手録・紅~ [18][ねこだま](2010/01/18 22:41)
[20] 東方~触手録・紅~ [19][ねこだま](2010/02/11 01:11)
[21] 東方~触手録・紅~ [20] [ねこだま](2011/08/05 23:43)
[22] 東方~触手録・紅~ [21][ねこだま](2011/12/25 02:06)
[23] 東方~触手録・紅~ [22][ねこだま](2012/04/11 15:19)
[24] 東方~触手録・紅~ [23][ねこだま](2012/05/02 02:20)
[25] 東方~触手録・紅~ [24] [ねこだま](2012/08/31 22:42)
[26] 東方~触手録・紅~[25] にゅー[ねこだま](2012/08/31 22:42)
[27] 東方~触手録・設定~ [ねこだま](2009/06/15 00:01)
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[6301] 東方~触手録・紅~ [22]
Name: ねこだま◆160a3209 ID:947fcd6f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/11 15:19
散歩気取りで博麗神社を出て3日目、短いようでとてつもなく長くなってしまったオレの放浪旅。
紆余曲折を経て漸く居候先にたどりつくことができました。

いやね、・・・本当に・・・めっちゃくっちゃいろいろあったものだ。

というかこの2日間で何回死にかけたよオレ?
妹紅たちの弾幕戦争に巻き込まれかけたり、永琳の矢で射抜かれたり、
人食い虎に食われかけたり、背中から慧音にド突かれて気を失ったり、
下手すればリアル神様に滅殺されたかもしれなかったり、
よくもまぁ生きていたものだと我ながら関心してしまう。
これはもう奇跡的であると考えても良いのではないだろうか?

なのに。

それなのに。

今の状況はどういうことなの・・・。

隣では腹を抱えてゲラゲラと魔法使いが腹を抱えて笑いだし
目の前の紅白巫女はオレの体を幣で抉りさしている。

過呼吸寸前の魔理沙は彼女のトレードマークでもある大きなリボン付きの帽子を取り落としフワフワの癖毛を大きく遊ばせていた。
・・・ちくしょー、あとで覚えておけよ。

そして霊夢は、うん、めっさジト目でこっちを睨んどります。

軽く腰を折り、早苗の腕に抱かれる俺に向けてジト目の直接照射。
彼女の整った可愛い顔が間近にあるのだが今のオレにその整った顔を眺める余裕がない。

うががががっがgっががが

ぶつぶつとなにやら恨み節のような物を呟きながらオレの体の中をかき回す霊夢に
オレは抵抗できずにただ彼女の陰湿な攻撃に身をさらすしかなかった。
抗いたくても体の中で太くて硬い棒がねじりこまれるたびに体から力が抜けて動けない。
うぅ、気持ち悪くなってきた・・・。

救いはないと諦めかけたその時、女神はいた。

突然オレの体が強く後ろに引っ張られた。
キュポンと大きな音を立てて幣の柄が引き抜かれる。


「ちょっと霊夢!なにいきなり黒さんを虐めてるんです!?
 黒さんがかわいそうじゃないですか!」


そういって早苗は霊夢から離すようにオレを強く抱きしめるとぷんぷんと口を尖らせた。
あぁ、今では早苗が巫女ではなく女神のように見えてくる。
オレは背中に感じる圧倒的なやわらかさを感じながら早苗の体に身を寄せた。

対する霊夢はまるで餌を盗られた猫のように眉をひそめ、口をヘの字に曲げて早苗をにらみつける。


「かわいそう?こっちは魔理沙に引っ張られて一昨日から幻想郷中ずっと駆けまわされたのよ?どっかの誰かが何も言わずに飛び出したおかげで!」


ギロリと霊夢の鋭い視線がオレを射抜く。
あまりの迫力に思わずオレは視線を泳がせてその熱視線から逃れようとした。
みため可愛い子がキレるとマジ怖い。


「黒さんにだって事情があったんですから仕方なかったんですよ!
 いろいろ大変だったんですから、ね?黒さん?」


そういうと早苗は微笑みながら右手で俺の頭をゆっくりとなでた。
あぁ、早苗マジ女神。
視界にちらりと映る紅白鬼子母神は極力気にしない。
だって怖いから。
・・・怖いから。
あー、うぅ、なんか、圧力が、圧倒的な圧力ががが

俺が早苗の腕の中でおびえていると隣で笑い転げていた魔理沙が漸く立ち直った。
まだヒーヒーいってるのは・・・目を瞑ってやろう俺は寛大だから.



後でいつものくすぐりの刑し処してやる。ふふふ触手が疼く。



「はー、はー、ぃ、ぷふっ、ぃやあ悪かった黒、助けなくて悪かった!
 ふふ、あー、にしてもくろー、おまえ本当に犬猫じゃないんだからふらふら出あるいて
 まよってるんじゃねーよな、
 どんだけ霊夢が心配したか想像できるかぁ?」


そういうと魔理沙はニタニタと口の端を上げ、鬼子母神化している霊夢をちらりと視線を延ばした。
しかしその視線は火に油を注ぐ行為に等しとしか思えない。
案の定、鬼子母神が吼える


「魔理沙、これ以上誤解を生むような言い方したら封魔針ぶっさすわよ?
 その口を縫い合わせてあげましょうか?」


ゴゴゴゴゴゴと彼女の背中から赤黒いオーラが幻視(み) える
だがそんなものどうということではないとでも言うかのように
魔理沙はけらけらと笑いを崩さなかった。


「あぁ、確かに五回も心配はしてなかった.
 四回だったか三回だったか覚えてないけど霊夢、私と顔を合わせるたびに
 あいつまだ帰ってきてないの?っていってたじゃねーか」

「だからそれは、この馬鹿餅が変なことしてまた博麗神社(ウチ)に
 みょーなうわさをまた立てられるかが心配だったの!
 そんなことになったらたまったもんじゃないわ」


「はいはい、そういうことにしといてやるぜ?
 あー折角くろが帰ってきたんだからお祝いしよーぜ!
 とびっきりうまい酒もってくるからさ!」

「・・・こんのッ」


話を振っておいて相手の意見に結局取り合わない魔理沙の常套手口。
遂に霊夢はビキリと大きな#マークを額から覘かせて袖の中から数本の針を取り出した。


「ま、まぁまぁ、霊夢。魔理沙さんの言うとおりここ数日忙しかったのでしょ?
 なら今日は黒さんも帰ってきたんですしパーッと飲んで楽しみましょう!」


あわや逃げようとする魔理沙のお尻を狙って霊夢が封魔針を投げつけようとした瞬間、
早苗がその間に割ってはいり鬼子母神を通り越して阿修羅化しかけた霊夢をなだめた。

 なだめるのは一向に構わん、だけど俺をもったまま間に入らないでくれ・・・。

再び霊夢の目前に身をさらした俺に彼女はさも不満そうな視線を向けた後、


「ハァ、」


とおおきなため息をついて針を袖に戻した。
そして、


「黒!」


ハイっ!!?

袖に突っ込んだ腕が神速の速さで抜かれ、ガシリと俺の頭頂部をつかんだ。
思わず身を硬くしてビビる俺を早苗の胸から自分の視線の高さまで持ち上げると


「今後、外出するときは誰かと一緒に行って離れないこと・・・」


ギリギリと彼女の指が俺の頭に食い込む.


「いいわね?」


ハイ!イエス、マム!あいむあんだすたんど!


心の中でそう叫びつつガクブル状態で顔をぶんぶんと縦に振る。
すると霊夢は「そう、」軽く呟き、


「今言霊とったからね、次破ったら餅から毬栗にしてやるわよ。」


といってひざを折り、俺の体を神社の石畳の上にポンと置いた。
俺から手を離し体を起こした霊夢はフンスと鼻から息をついている。
まだ俺の放浪に納得できないがとりあえずこれで許そう、といったところか。

その様子を見た魔理沙が話の区切りとばかりにパンパンと手を叩く。


「ハイハイ!このお話終了!んじゃ霊夢!ちょっと私はうちからイロイロもってくるわ、
 酒とかおつまみの材料とか!」

「わかったわよ、さっさと行ってきなさい、
 ってつまみの材料ってまさか昨日見つけたあのグロいきのこじゃないでしょうね?
 アミアミしたやつとか脳みそみたいなやつとか食べたくないわよ!」

「えーあのアミアミは食えるよ、バターで煮込むとシコシコしてうまいのに。
 あ、でも脳みそみたいなヤツはNGな、煮た時にでる湯気吸ったら中毒起こすぜ?
 まぁあれはあれで立派に魔法薬の材料になるし、食えるっちゃくえr」

「あーもう!キノコ講座なんてどーでもいいからもって来るならっちゃっちゃと持ってきなさい!
 グロイのとキモいのとグチャグチャしたのはダメ!
 あと毒キノコも!」

「・・・ちぇーわかったよ、それじゃくろ!またあとでな!最高のキノコ酒もってくるぜ!」


魔理沙はそういうやいなや箒にまたがり
彗星のごとく箒の穂先からまばゆい光の筋を出しながらヒュンと
青い空の中に消えていった,


「まったく、あいつほんとにわかってんのかしら?」

「キノコ酒ですか、ちょっと興味ありますね。」


妖怪の山( ウ チ の山)にもキノコたくさん生えてますしね、
っと言いながら早苗は頭の中でどうやって作るのか想像していると


「・・・あんたまだいたの?」

「えっ!?そんなひどいですよ霊夢!
 今皆で飲みましょうっていったじゃないですか私!」


霊夢がまるでその存在に今気付いたかのように早苗にジト目をむけた。


「あーそうだったわね」


めんどうくさそうに早苗に向けて手をひらつかせて彼女をなだめようとする霊夢
しかしふと霊夢はその手をぴたりと止めて眉をひそめた。


「ってことはあんたも酒のみに来るの?
 てか来るんでしょうね、」

「当たり前じゃないですか、黒さんを送り届けたのは私なんですから
 私にも黒さんの帰宅祝いぐらい参加させてくださいよ!」

「あー、んー。・・・仕方がないわね。
 いいけどただし、自分が飲む分ぐらいは持ってきなさいよね。
 ウチだってそんなに用意できないわよ?」

「分かってますよそれぐらい、それでは私も一度神社に戻りますね。
 お二人のお夕飯を用意してから来ますので少し遅れますわ」

「あーハイハイ、いってらっしゃい いってらっしゃい」

「もう、少しは私にもやさしくしてくださいよ・・・。
 あ、それでは黒さん、また後で伺いますね?」


霊夢からのぞんざいな扱いに少し口を尖らせる早苗だが、
地面から足を離すと俺に向かって小さく手を振りながら山の方角へと舞っていった

いってらーありがとよー

ココまで送ってくれたことに感謝とねぎらいの意を込めて俺は彼女が見えなくなるまで手を振った。
いやー最近の若い子にしては器量のいい子だ。
・・・たまになんか黒い物を感じる気がするが、

きのせいきのせいと自分の言葉に否定をいれていると突然、ふわっと視線が高くなった。


「さてっと、黒、あんたのせいでこんなこと(宴会)になったんだからしっかり働くのよ?
 いいわね?」


そういって霊夢は俺をビーチボールのように抱えて当たりを見回した。
あー、うん、ですよね。
俺の帰宅祝いでも働かなきゃだめですよね。
本当は漸く帰れたのだからゆっくり休みたいのだがそうは問屋がおろさないようだ。


「萃香 ー!・・・ すいかーぁ!そこらへんにいるんでしょ!?」

「はああああい!どったのれいむ?
 なんかよ・・・おぉぉぉぉ!くろすけえええ!!?」


次の瞬間俺は霊夢の腋からはじかれた、
いや、はじかれたと言うか轢かれた。
突然の声ととも後ろからズドンと小さめの物体が圧倒的な質量を持って俺を貫き、
まるで野球のバッターのように豪快なヘッドスライディングをかました

俺を抱えながら

あばばばばばば


「のっほぉぉおう!くろすけ!くろすけじゃないか!
 心配したんだよ!くろすけ!あとさわらせろ!もちらせろ!
 最近ぜんぜんくろすけに触れなかったからくろすけ分が空っぽなんだよ!
 とりあえずもちらせろぉ!!!」


俺を地面ですり身にしかけた萃香は俺の体の心配など露ほどもせず、
俺の体を胡坐をかいて抱えこみ、グニグニと全身で感触を楽しんでいた。

まるで霊夢から禁酒半日を言われて半日後解禁された瞬間のように萃香はハァハァと荒い息を出しながら俺をもみくちゃにしてその感触を味わっていた。
あぁ、やっとさっき霊夢の棒から抜け出せたというのに今度は幼女の腕が体の中をかき回している・・・。おえっぷ。おなかの中をかき回さないでくれぇ。
しかし今度の救いの手は以外にも霊夢から差し伸べられた。


「ほーら、萃香、黒を触るのはあとでいくらでもできるでしょ、
 ちょっと人里まで行ってきてくれない?」

「ほぇ?」

「魔理沙たちが宴会開きたいんだって、こいつの帰宅祝いだって」

「おぉーーー!宴会!宴会!おしゃけのめるのか!」

 おまえはいつでも飲んでるだろ
「あんたらはいつでも飲んでるじゃない」

・・・あ、俺も?

「まぁ、それはともかく、台所のお酒、あんた昨日飲んだでしょ?」


指摘されると萃香はびくりと猫のように背筋を硬直させる。
またかやったのか?


「うぇっばれてた?」

「あたりまえじゃない、今日の分のお酒なくなちゃったんだから黒と一緒に買ってきて。」

「くろすけと?」

「そ、ちょうど野菜もなくなってきたから適当に食材も買ってきて」


・・・あ、俺も?
え?俺も!?

いや、え?さっきようやく、漸く帰ってきたばっかりなんだが。
てか外出していいのか俺?さっき俺出禁くらった気がするんだが?


「そ、頼みたい物が結構あるからひとりじゃもてないでしょ、
 さすがに人里でおっきくなれないし」


あの、霊夢さん?


「黒!」


ハイィっ!!?


「萃香と離れないで人里まで買い物に行ってきて、
 ・・・いい? 離 れ な い で 行くのよ?」


ハイ!イエス、マム!あいむあんだすたんど!
・・・あれ?なんか俺調教されてね?


「それじゃあ今買い物リスト書いてくるからちょっと黒で遊んでて、」

「はーい♪」


え?ちょtあばばばばば

そういい残して霊夢はとっととひとり博麗神社に入っていった。

あー、ちょ、ま、まって!








サラサラとペン先のインクが紙に滑らかな文字が描かれていく、
香霖堂から『借りた』ぼーるぺんは一つのインク掠れも起こさずに途切れなく紙の上を滑っていく。


「・・・えーっと、あとは岩魚の燻しと、ほうれん草・・・大根に・・・鬼殺しっと」


一つ一つの必要な食材の種類と数、お酒の種類を書き、
合計金額を計算してひとつの野菜をガリガリと線でかき消してまた考える


「まったくただでさえ最近食い口が増えて家計が火の車って言うのに、
 なんでこうもまいど宴会会場がウチになるのかしら・・・?」


神社の外で聞こえる萃香が黒で遊ぶ声を聞き流しながらそうぼやく。
ふと棚に入れた財布を取り出そうとからだをひねると


「・・・。」


霊夢の視界に小さな人形が写る


「はぁ」


彼女は一つ息をつきながらその視線の先にある人形を手に取った。
カタカタと首の辺りが不安定なそれ、一見ただの日本人形に見えるがその手には小さなの盆が載せられている。


「・・・まだ、使えるわよねぇ。」











「はぁあああああ、」


縁側で一つ大きなため息をつくのは博麗の巫女、
手にもつお茶でずずりと喉を潤してため息を飲み下す。

あぁ、はたしてココ数ヶ月で何度このため息をついたことか。
まったく誰のせいか、いや、
ため息の頻度が急上昇した時期と誰かがウチに住み込み始めた頃を考えると
誰のせいかは一目瞭然であろう。

そのうえここ数日はただでさえ疲れているのだ、
もちろん誰のせいかは一目瞭然だろう。


「・・・。」


魔理沙にひきづられて今日も幻想郷中をつれまわされて昨日も今日もはた迷惑な餅探し。
昨日はまだ散歩感覚でフラフラといけたのだが、
さすがに二日連続ともなると疲れるし飽きる。
正直あの黒餅がどうなろうと関係ない、
ただアレがどこかで変なことして博麗神社(ウチ)に妙な疑惑がかかるのは面白くない。

あーでももうほっとこうかしら、
アレにかかわって碌なことあったかしら?
いいえないわね。


「・・・今日は、もう寝ましょ」


ため息を付いた分だけ幸せが逃げると言うが、
はたしてアレのせいで私からいくらの幸せが逃げたことかと

考えるだけで胸にしこりができるというかはらわたが煮えるというか、
とりあえずそれもお茶と一緒に飲み込んでもう寝てしまおう。
霊夢はそう決めて湯飲みに口付けし細い顎をうえにむけてお茶を飲み込もうとするが、


「・・・?」


お茶が唇にふれない。いや、むしろ手に湯飲みが存在しない。
通常ではありえないその状況に、
しかし霊夢はむしろ落ち着き払って再びため息をついた。
ただ今回だけはアレが原因ではないだけまだましか、


「なんかようかしら・・・紫、」

「あら?ぜんぜん驚いてくれないのね?」


虚空に向けた問いはすぐに帰ってきた。

ずるりと宙に一本の線が通り、線がヌッと一枚の幕のように広げられると、
中から一人の女性がしっとりとした艶のある金糸のような髪を揺らめかせながらその身を乗り出した。

その手には先ほどまで霊夢が飲んでいたと思われる湯飲みが乗せられている。
彼女自身の能力で生み出された空間の境目から姿を現した彼女はクスクス微笑を浮かべた。
上品に口元を扇子で隠す彼女のしぐさに思わず霊夢は眉をひそめて彼女をにらみつける。

はたしてこの幻想郷を創造した妖怪の賢者の一人にそのような行為をできる人間は他に何人いるだろうか?妖怪なら数人(数匹?)いるかもしれないが、


「どうしたの?霊夢?女の子がため息のうえにそんな顔してちゃダメよ?
 久しぶりにあえたのに貴女のそんな顔見たくないわ。」


鈴を転がしたように低く、それでいて夜の空気の中妙に響く声が霊夢に耳に届くが
それに対して霊夢は鼻息ひとつ吐き出しながら不満げに口を開いた。


「どうしたもこうしたもないわよ、あんたが送り込んできた変なアレのせいでこっちは散々なめにあってるんだから。」


口をヘの字に曲げて憤慨した声でそう抗議する霊夢に紫ははてさてと首をかしげて見せた。


「何のことかしら?私は彼を送り込んだつもりなんてこれっぽっちもないわよ?」

「とぼけるんじゃないわよ、ったく。
 あんたがなに考えてるかなんて今も昔も分かったもんじゃないけど」

「そんなに褒め」

「てないわよ。というか私のお茶飲まないでよ!ひとでなし、」


間髪もいれず紫の声をさえぎって傾けられた湯飲みをにらみつける霊夢。
お茶の残りは少なかったが飲みきったら寝ようと区切りをつけていたのにそれを持っていかれるとどうも踏ん切りが悪い。


「あらあら?人にあらざる者にに人でなしといっても意味がなくてよ?
 あぁ、お茶がほしいなら今持ってきてくれるわよ、」


そうと言って再びくすくすと笑いながら紫は白い指先をそっと縁側の向こうに向けた、

するとカラカラカラとまるで笑い声のような小さい断続的な音とともに、
何か小さなシルエットが夜の闇から床を滑るように現れる。


「・・・茶運び人形?」

「えぇ、霖之助さんがちょうど修理していた物をいただいたの」

「勝手に持ってきた、でしょ?霖之助さんにとって『も』はた迷惑ね」

「貴女がそれをいうの?失礼ね、
 私は誰かさんと違ってきちんと『対価』を差し上げてるわよ」

「私は払ってるわよ・・・ツケで」


払う気なんてあったのかしら?と言う紫の呟きは聞き流し、
傍らで動きを止めたカラクリ人形から小さな湯飲みを受け取る。
丁稚姿のカラクリ人形は顔にうっすらとした笑みを貼り付けたままじっと何もない空間を見つめていた。
なんとも、夜中に勝手に動くカラクリ人形なんて気味が悪い。

まぁ紫が気味がいいことなんてしたことないか、

せっかく新しいお茶も持ってきたことだし、その言葉はお茶とともに腹の中にしまっておいてやろうと霊夢はそのお茶をズズズとすすり飲んだ。
小さな器に注がれたお茶はほんの一息で半分に減ってしまった。
すこし熱が冷めていたそれはすんなりと霊夢の喉を潤しながら流れていく。
そしてふぅと息をついた後、紫のほうへちらりと視線を覗かせると霊夢は思わず再び眉をひそめた。


「・・・・・・。」


先ほどまでひょうひょうとしていて、
いつもどおりつかみどころのない雰囲気をまとっていたはずの紫が、
じっとおとなしくあるものに視線を合わせていた。
その瞳の先には先ほどのからくり人形が写っている。


「・・・・・・、どうしたの紫。」


妙に黙りこくった紫に数泊の間をおいて霊夢は問いかけるが、
しかし彼女は何も言わず、
唐突にふわりとスキマから降りると霊夢の隣に腰を下ろした。
だが縁側に腰掛けた後もしばらく彼女は口を開かず、
霊夢もまたそんな紫の様子を見て静かに残りのお茶をすすっていた。
二人が口を閉ざすと耳に届くのは周りの森の中で鳴く虫と、
木々の葉をなでる風の音だけとなり、
そのせいかお茶をすする音が無駄に大きく聞こえた


「ねぇ、霊夢?」

「・・・なに」

数分か、数十分か経過しただろうか、
ふと紫が小さな声で隣の巫女の名を呼んだ。

いつもとは違う口調に思わず霊夢も硬い声で返してしまう。
しかし紫はそれを気にすることなく静かにすっと手をのばすと、
直立不動のまま湯飲みが返されることを待つカラクリ人形の頭を撫でた。


「ねぇ、もしこのカラクリ人形が突然作ったときとはぜんぜん違う動きをしだして。
 そして勝手に歩き出したり、勝手に別の仕事をし始めたり、勝手に遊びだしたりしたら・・・。
 貴女はどうする?」


突然何を言い出すのだろうかコイツは?
いきなり訳が分からない問いに思わず口をぽかんと開けて声に出して言いたくなったが、
しかし紫の顔を見てついその気もうせてしまう。


「あー、・・・仕事するんなら別にいいんじゃない?
 遊びほうけてるならアレだけど」


なんか調子が狂うなぁと霊夢は少し居心地悪そうに姿勢を変えながらそう答えた。


「じゃあもしこれが悪さをし始めたら貴女はどうするかしら?
 手をつけられないほどに、貴女に害をなし始めたら?」


はたして彼女は何が言いたいのだろうか?
話の真意を見出せずに霊夢は口を閉ざして紫の顔を覗く、
カラクリ人形を手に持ち、まるで慈しむようにその頭を撫でる紫は
口を薄く開いてひとつ息漏らした後、


「私ならこうしてしまうわ、」


一瞬彼女の腕にぐっと力が込められると
次の瞬間ポロリとカラクリ人形の頭がその首からはずれ、
一度縁側のふちで弾んだあと、ころりと境内の地面に転がり落ちた。

あまりに唐突な出来事に一瞬出す言葉を失うが、
霊夢はすぐに気を取り直すとため息とともに立ち上がった。


「ちょっと紫、うちでゴミをつくんないで・・・よ・・・?」


そういいながら雑事用に置かれた草履を履いて地面にその身を投げ出されたカラクリ人形の頭部を拾う。
そして、いつもと様子が違って不気味さが2割り増しの持ち主に返そうと口を尖らせて振り返るが

そこには既に紫の姿も形もなく、あたりを見回しても縁側にあるのは空になった湯のみが二つと首の取れたカラクリ人形の胴体のみだった。


「・・・帰るなら帰るっていいなさいよね」


ポツリとつぶやかれたその言葉は自分の耳以外に誰の耳にも入らなかっただろう。
誰もいなくなった縁側に再び腰掛けると、霊夢は首の取れたカラクリ人形に手を伸ばした


「・・・。」


首のない人形は首があったころとは違い、まるで人間味がなく。
眺めているととても不気味なものだった。
とりあえず、拾った首をもとあった位置に据える。
どうやら首の骨木が折れたようだが、
着せられている服が上等なためか置いただけでもしっかりと服が頭を支えてくれていた。
すこし首が縮んだ感じがするが、まぁないよりましかな。
試しにカラクリ人形を床に下ろし空になった小さな湯飲みを彼の腕に戻すとカタリと腕が下がった。
そしてくるりとその場で優雅に旋回し、元きた廊下をカタカタと少しぎこちない音を出しながらも帰っていく。


「・・・なんだ、まだ使えるじゃない。」


再び暗い廊下へと戻っていくカラクリ人形の背中に霊夢は少し安堵したようにそう呟いた









「くろー!すいかー!」

「はーい!」

「はい、これ買う物メモとお金。おつりは 絶 対 計算して確認するのよ?」

「まかせなって!」

=なぁ おれも いく のか ? 本当に ?=

「あんたのために開くんだからあんたが働かなくてどうするのよ?」

=いや 確かに そうだけど=

「ハイハイ、つべこべ言わずとっとと行ってきなさい。
 買い物のあとは下ごしらえもしなきゃなんないでしょ」

=それも おれ?=

「当たり前じゃない?なにいってんの」

=ですよね - =

「それじゃあよろしく、・・・ってお金の計算ぐらいできるわよね?」

  b

「なら大丈夫ね、油売らないで萃香の後ろにしっかり付いていってまっすぐ帰ってくること、
 萃香はコイツをキチンと見張っててね?」

「おう!それじゃあくろすけいこ!」

=いって きます=

「いってらっしゃい、・・・ぜっったいすぐ帰るのよ?」ゴゴゴゴゴ

=ハイ YES ぜったい= ガクブル










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