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No.6301の一覧
[0] 東方~触手録・紅~ (現実→東方project)[ねこだま](2010/02/12 00:34)
[1] 東方~触手録・紅~ [1][ねこだま](2009/02/10 00:21)
[2] 東方~触手録・紅~ [2] [ねこだま](2009/02/19 04:05)
[3] 東方~触手録・紅~ [3] [ねこだま](2009/02/25 04:38)
[4] 東方~触手録・紅~ [4] [ねこだま](2009/03/05 01:57)
[5] 東方~触手録・紅~ [5] [ねこだま](2009/03/16 03:45)
[6] 東方~触手録・紅~ [6] [ねこだま](2009/04/02 14:04)
[7] 東方~触手録・紅~ [7] [ねこだま](2009/04/14 03:04)
[8] 東方~触手録・紅~ [8]  [ねこだま](2009/05/03 00:16)
[9] 東方~触手録・紅~ [⑨]  上[ねこだま](2009/05/25 01:10)
[10] 東方~触手録・紅~ [⑨] 下 [ねこだま](2009/06/24 02:39)
[11] 東方~触手録・紅~ [10] [ねこだま](2009/06/01 02:09)
[12] 東方~触手録・紅~ [11] [ねこだま](2009/06/24 02:38)
[13] 東方~触手録・紅~ [12] [ねこだま](2009/07/11 22:19)
[14] 東方~触手録・紅~ [13]  [ねこだま](2009/07/11 22:19)
[15] 東方~触手録・紅~ [14]  [ねこだま](2009/08/07 12:47)
[16] 東方~触手録・紅~ [15]  [ねこだま](2009/09/04 12:40)
[17] 東方~触手録・紅~ [16] [ねこだまorz](2009/10/06 17:10)
[18] 東方~触手録・紅~ [17] [ねこだま](2010/01/18 22:41)
[19] 東方~触手録・紅~ [18][ねこだま](2010/01/18 22:41)
[20] 東方~触手録・紅~ [19][ねこだま](2010/02/11 01:11)
[21] 東方~触手録・紅~ [20] [ねこだま](2011/08/05 23:43)
[22] 東方~触手録・紅~ [21][ねこだま](2011/12/25 02:06)
[23] 東方~触手録・紅~ [22][ねこだま](2012/04/11 15:19)
[24] 東方~触手録・紅~ [23][ねこだま](2012/05/02 02:20)
[25] 東方~触手録・紅~ [24] [ねこだま](2012/08/31 22:42)
[26] 東方~触手録・紅~[25] にゅー[ねこだま](2012/08/31 22:42)
[27] 東方~触手録・設定~ [ねこだま](2009/06/15 00:01)
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[6301] 東方~触手録・紅~ [17] 
Name: ねこだま◆160a3209 ID:bedc5429 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/18 22:41
17







「・・・ぇ?」



とちいさな疑問符がサーっと響く環境音の中で妙によく聞こえた。


こういうときはどうしたらいいんだろうね?

いつもの姿でいた方が驚かせないだろうなと思ったのは扉が開いて女の子の肩が見えた時だったかな。

そう考えるのが少し遅かったと後悔しながら今現在目の前で珍しい髪色の女の子が硬直しているんだが。

いい加減驚かれることにもそろそろ慣れてしまいそうだ。



俺は少し現実逃避気味に数分前を思い出していた。




雨が幻想郷の土を濡らして土の香りがふわりと妖怪の山を行く山道を包む中

俺は目の前に現れた長い長い石階段を大きな足で踏み外さないように器用に登りきった。

すると今までうっそうとしていた視界がぱっと開け、そこに大きな神鳥居が影を落とした。

次第に雨粒が大きくなっていることに気付きつつも俺はふと歩みを止めてしまった。



『守矢神社』



白が濡れて沈んだ灰色へと変化した石造りの鳥居にはそう彫りこまれていた。

俺が沈んだ色調の空を背景に鮮やかに映える朱色の文字を見上げていると、

ふと耳元で堪え切れないなにかを含んだ声が誇らしげに囁いた。



「ねぇ?なかなかすごいでしょ!?」



それは黒い幕を頭からかぶったこの神社に住まう神様のお声だった。

視界を目玉から頭の後ろに回す。

そこには黒い膜を頭からかぶった洩矢諏訪子が胸を張っていた。



 あぁ、居候の俺が言うのもなんだが・・・正直博霊神社よりもすごいな…。



決して博霊神社がみみっちいというわけではない。

博霊神社は博霊神社で、迎える者をホッとさせるなにかがある神社だ。

それに対してこの神社は・・・何と言えばいいだろう、圧倒される。

まるで神社の重さが違うみたいだ。

いや、重量の意味じゃない。

左右両翼に腕を広げる神社からはどっしりとした威厳とともに全てを受け止めるという雰囲気がでているのだ。

さらに今は降り注ぐ雨のおかげで濡れた空気がその雰囲気を静かに強調している。



 やっぱり神様が実際にいる場所となると雰囲気がでるのだろうか。



「ふふん、そりゃそうだよ。博霊神社には神様自体いないんだから『比べるだけ』間違いさ!」



 ・・・今の言葉を霊夢が聞いたら神様だろうとボコリに来そうだな。



てかウチに神様居なかったのか。

まぁ当の巫女自身に信仰心があるのかないのか微妙なところである。





「あの・・・ほんとに大丈夫なんですか?」



その時諏訪子の小さな腰に手をまわした椛がおずおずと声を出した。

彼女の上にも黒く薄い膜のようなものがかぶせられその隙間から覗くように諏訪子の顔を見ている。

すこし心配そうな椛に諏訪子はニッと笑みをみせた。



「ん、クロちゃん曰く痛くないから平気だって。心配しなくていいよ。

 それにしてもマジやわっこいねこれ!」



そう言って諏訪子は俺の・・・いやだからって無理に引っ張るな。

3人を一気に運べるように犬の姿で巨大化し、もはやどこかの山犬のお母さん並みに大きくなった俺の背中には

黒い膜ようなもの・・・、俺の身体を無理やり引っ張って膜状になったそれをかぶった諏訪子、椛、にとりの3人の姿があった。

伸ばした皮のようなそれは雨をはじきそれ自体が一定の体温を保っているのであったかい・・・。

・・・とにとり博士はおっしゃった。材質研究は先約があるのでパスおねがいします。

とりあえず俺の背中の上で数人モゾモゾと一匹遠慮がち少し俺の身体を引っ張りこむという現状に至っている。


だがいくら伸びるからといって思いっきり引っ張らないでほしい、強く握られたりすると跡がつくんだから。

そう忠告してみるが神はにょほほと俺の身体をパン生地みたいにこねながら聞こえないふりをし続けた。

・・・俺はすこし背中の上に乗せたのを後悔した。



「え!?い、いや、クロさんのことじゃないです!!

 その・・・いきなりずぶぬれの3人が押し掛けて良いのでしょうか?」


諏訪子の言葉からすこし遅れて椛がそう聞き直した。

あぁ、そのことか。たしかにいきなり3人も押し掛けて大丈夫なのだろうか?



「あ、ダイジョブダイジョウブ!可愛い子が雨に降られてるのを見て見ぬふりするほどウチは心が狭くないよ!」



そう言って諏訪子はドンと自らの胸を叩いて見せた



 ・・・可愛い子限定なのか?


「優先順位は無論高いね。服がぬれて透けていればなおよし」


 何の優先順位だ。



・・・神様の口からそんな煩悩まみれの言葉が出てくるとは思わなかった。

おれのツッコミが不服なのか諏訪子はぷくぅとほほを膨らませ、口をとがらせる。



「むぅ、かわいいは正義って格言をしらないの?」



 誰がそう言ったかより誰がそれを格言に認定したのか知りたいな。



「え?・・・さぁ?」



格言にしたやつより諏訪子にその言葉を教えた人を知りたくなった。



「あー、ケロちゃん何話してるかわかんないけどさ。

 何時までここにいるの?」



鳥居の下で雨音を聞くのにも飽きたのか、

手にした小さなタオルで前方の白い髪を拭きながらにとりが諏訪子にそう提案する。

どうでもいいが諏訪子の声から少し内容を理解したのか椛は髪の毛を拭かれながらも慌てて自らの体に視線を落としていた。



「ま!とりあえずこんなとこでずっと立ってるのもアレだし、さっさと中に入ろう!

 あ、クロちゃん、裏に回ってね。裏口の土間なら濡れてもだいじょぶだし」



との御言葉で俺は境内の中再び諏訪子の指さす方向へと歩き出した。



やはり幻想郷の神社は外の神社と作りが若干違うようだ。

博霊神社もそうだったが幻想郷の神社には社務所がない。

おそらく此方の神社は「神を祀る社」ではなく「神が住まう社」。

簡単にいえば神様が住んでる「家」として存在しているからなのだろう。

家に対して事務所が必要とは思えないしな。

博霊神社も一応祭殿はあるが神社自体はどちらかというと霊夢たちの居住スペースが大半を占めている。

まぁ結論を言えば幻想郷の神社は神様を祀るスペースと居住スペースが一緒になっているため総じて大きく、

そしてすこし裏に回れば生活感を垣間見ることができた。

縁側の奥に見えるタンスやちゃぶ台は明らかに人の生活臭がする。



…ん?



神社の中をのぞいた時、ふと俺はなにか変なものを見た気がして思わず足を止めかけた。



「あ、クロちゃんあそこあそこ」



だが完全に足を止める前に諏訪子が帽子を幕に引っ掛けながら頭を出してチョンチョンと俺に一つの扉の存在を教えた、

違和感の正体が少し気になったがそとで考えるより中で考えた方がいいだろうと思い諏訪子の示す方向に顔を向けた。





 ・・・ちいさ。



そこにあったのは普通の戸口だ。

普通の大きさの戸口なのだが、今の俺の大きさにはちょっと小さすぎた。

人間サイズなのだから当たり前といえば当たり前だが。

頭は入るかもしれないが肩でアウトになるぞ絶対。

だが小さくなったら上の三人が落っこちてしまう。

とりあえず…。



 ほら、諏訪子。ついたんだから降りてあけてくれ。



俺は再び毛布をかぶるように身体を引っ張る神様にそう頼んだ。

しかし…。



「え?クロちゃん開けてよ」



なにいってんのさ。と当然のことをいうかのように諏訪子は言った。

いや、よそものに自分ちのドアを開けさせるのってどうよ?



 この身体じゃ引き戸は開けられないんだが・・・。



ここまで大きく変化したのは初めてなのだ。力のかけ具合がわからない。

はじめましてお邪魔しますと扉を破壊して侵入してくる巨大ワンコを無害だと言い切れるか?

触手であけるという手もあったが・・・。


瓢箪がスッカラカンの現在、予備の霊力がないためできれば力を温存しておきたい。


そんな感じの説明文を頭に思い浮かべると諏訪子はじゃあと突然息を大きく吸い込んだ。



「さ~なーえー!」



と大きな声で扉の向こうに呼びかけた。



 同居人?



「そ、うちの巫女みこ」



巫女か。

あれ?なんか忘れてる気がする。

巫女・・・?

そういえば俺って博霊神社でてからどれぐらい・・・。



ふと扉の向こうでザザッザという摩擦音が鳴った。

諏訪子が土間と言っていたしこの音はサンダルかなにかの音だろう。

その音に気付いた諏訪子がふとなにか思いついたようで、ニヤっと笑みを浮かべた。



「早苗~!早く開けて~!今ちょっと手が離せないの!」



・・・手が離せない?

じゃあ今両手でうにうにもんでいるものはなんだ。

諏訪子は扉の向こうから返事が返ってくるといきなり幕を頭からかぶって俺の中に隠れこんだ。



 まて、なんで隠れて・・・。


いやなものが視界の片隅でチラリと見えた次の瞬間がらりと扉が開いた。


「諏訪子様!どうぞタオル・・・を・・・」



予想通り、突然開かれた扉の奥で一人の女の子が両手に持ったパスタオルをひろげて硬直していた。

まぁ扉を開いたらデカイ犬がいたらだれでも驚く。

それが馬ぐらいの犬がいたらなおさらだろう。

固まった少女に俺は声をかけることもできないため、この際と少女の背格好をのぞき見た。

守矢神社の巫女はウチの巫女より少し年上のようだ。

大体16か17ぐらいだろう。

身長も霊夢より高いし、身体も女性的な丸みを帯びている。

少女と女性の中間。すこし女性寄りといったところか。

長く滑らかな頭髪は名前と同じ早苗の色。

(若々しい緑色なのだが俺はすこし長引いた幻想郷生活で髪の毛に違和感を覚えることはすでになくなっていた。)

左のこめかみ辺りにデフォルメされたカエルの、そして左肩の前に下ろしたひと房の髪に蛇を模った髪飾りをしている。

このままもう数年もすれば美少女から立派な大和撫子に化けるだろう。

ところで彼女が来ている服も巫女服なのか?

巫女服といえば魔を払う紅に純潔を表す白を基調とするものだが、

彼女の巫女服は上が白で真中に青のラインが入ったシャツのようなもの、下が深い藍色のスカートでできていた。

それにしても春も過ぎたとはいえタンクトップ型で肩丸出しでは寒くないのだろうか?

・・・幻想郷の巫女ってこういう肩出し腋出しの衣装が主流なのか。



っとさてどうしよう。ここはひとつワンとでも鳴けばノット有害だと気づいてくれ・・・るわけないよな。

いや鳴く以前に俺には喉笛ないんだった。



・・・だめだ少し冷静にパニクってるかもしれない俺。

てかなんで諏訪子は背中に隠れたままなんだ?

俺はてっきりすぐに顔を出して中に入れてくれるものだと思っていたが

背中の上からはクククと押し堪えられた笑い声がかすかに聞こえるのみだ。

なに笑ってんだ。早く顔出せ。



「え…っとなんの御用でしょう・・・か?」



さて見つめあう互いに微動だにしないまま、俺はできないまま数秒たったころ、

早苗はおずおずと下から不安そうに覗くように俺を見上げた。

ここで驚いて叫ばない辺りはさすが巫女とも言えるかもしれない。

・・・なんか巫女の定義がおかしくなってきたな。

とりあえずせっかく向こうから動いてくれたのだ。

俺は延びた、いや無理やり延ばされた背中の幕を引っぺがした。

途端俺の背中からキャーギャーと悲鳴が上がる。



「!?ちょっ!クロちゃん、水が!水が中入ってきた!」



「諏訪子様帽子傾けないでください!あ、雨が滝でわひゅ!?」



「うわ、椛。だめだよ!アレやっちゃ!だ・・・わぶぶ」



雨が諏訪子の帽子の広いつばから後ろの椛の頭へ、

そして椛が犬の本能かブルブルと頭を振って数多の飛沫を飛ばし、

椛を後ろから支えて座るニトリがその飛沫の犠牲になるという連鎖反応を起こしていた。



「あっ諏訪子様!?」



「ちぇー、ばれちゃった。さなえ~ただいま~」



「こんにちは、早苗さん」



「や、早苗!」


先頭の諏訪子が見つかったのをかわきりに後続の椛とにとりも顔を出して短い挨拶をした。



 ばれちゃったって・・・ばれなかったらどうするつもりだったんだよ。



「そんときはそんときに考えればいいさっ!」



 俺の『そんとき』の身の安全が全く保障されてないのは気のせいか?



「えっと諏訪子様、そのわんちゃ・・・・・・お方はどちらさまでしょうか?」



 椛じゃないんだからわんちゃんいうな。



「あ、これ私の新しい友達!すごいでしょ!」



そう言って諏訪子は大きく胸を張って見せる。

だが広い帽子のつばからざぁざぁと垂れる雨雫の前にはどうもしまらない。

それに何がすごいと言いたいのだろうか?巫女さんも困ってるぞ。



「えぇっと・・・お、おっきいお友達ですね。」



まてその言い方はちょっと・・・。

おれにはそんな紳士的な趣味はないぞ!



「なははは、これがおっきくもなるしちっちゃくもなるんだよこれが!」



だいたいあっているが・・・なにかツッコミをいれたい説明をする諏訪子。

見あげる早苗はなれているのか苦笑をうかべながら数歩後ろに下がった。



「とりあえずみなさん中にお入りください。

 あ、入れ・・・ますか?」



頭を数度傾げてドア幅を測った結果無理やり入れば勝手口の形が変わることが判明した。

・・・測るまでもなかったけどな。



 この身体じゃ無理だ、てな訳で諏訪子さん降りてくれ。



俺は肘を折り、頭を下げてそう促した。

諏訪子はまるで遊び足りないとでも言うようににちぇーと口をとがらせながらも

今度は素直に俺の頭上を滑り降りてくれた。



ついで椛、にとりと地面に降り立つと、

そろって屋根から滴る水滴から首筋を守りながらヒャーヒャーと中へはいっていった。



「うあー髪も服もぐしゃぐしゃだぁ」



帽子取って短いツインテールを解いたにとりが、

水を吸って膨らんだ髪に手櫛をかけて固まった髪をほどいていく。

そんな彼女の頭にぽふりと白い布が覆いかぶさる。



「いきなり降ってきましたからね。」



ニトリにタオルをかけた早苗は次に諏訪子と椛にバスタオルを手渡した。

諏訪子が渡されたバスタオルで自らのほほを拭きつつ椛の髪もわしわしと拭く姿を微笑ましそうに眺めた後。

早苗はあっと思い出したかのように声をあげた。

そして振り返る先は勝手口。

うん、どうやら俺は少し忘れられていたのかもしれない。

少ししょんぼりしながら俺が見上げる先では早苗があれ?と小さな口元から漏らしている。

おそらく勝手口の向こうにいたはずのデカイワンコの姿が見えない事に首をかしげているのだろう。



「早苗~、したした。」


「え?下って・・・」


諏訪子が笑みを浮かべながら示す先に視線を向かわせた早苗が再び硬直する。

おそらく彼女の眼には黒くてまるくてずぶ濡れのなにかが写っていることだろう。

俺はどうも、と手を挙げて挨拶っぽい行為を行った。

まぁデカイ犬が突然目の前に現れたぐらいで驚かない娘がこれぐらいで驚くこともないだろうと思った。



「え?す、諏訪子様!?」



「んー?」



「も、もののけ姫のタタリガミってホントに居たんですか!?」



「ぶっ!!!」



・・・そうきたか


巫女の問いに祟り神の王が奥で吹き出した。

いや、言っておくがあそこまでうねうねしてないぞ俺は。

だが自分の体から出した触手を見返すと濡れてテカりを帯びたはどうもそれっぽく見える。

とりあえず奥で肩を震わせるアレに一言なにか言いたい気分だ。



「それね、クロっていうんだよ。ほら博霊神社の」



ほほに深めの笑窪を作りながら諏訪子はそう説明した。

ところで俺の名前が身体の色で固定化し始めているようだが気のせいだろうか。


「あぁ、そういえば霊夢がウチに厄いのがどうたらって愚痴ってましたね」


ポンと手を叩いて納得したようにうなづく彼女はどうやら霊夢と知り合いらしい。

それも霊夢が愚痴るほどの仲のようだ。

・・・うんなんて言ってたか気になるが聞きたくない。

てか厄いってなんだろう。いい意味じゃないってのは伝わるけど。



「そそ。でさ、昨日私が拾ってきた辞書あるでしょ?

 あれがクロちゃんのものらしいんだよ~」



「辞書って・・・あ!昨日諏訪子様が拾っておつかい忘れちゃったやつですか?」



次の瞬間全員の視線が諏訪子に集まった。



「え、いや、その、うんそれ」



諏訪子は視線を泳がせた。

あ、だから彼女は今日も竹林に来てたのか。




「あー・・・あー!ふくがぐしゃぐしゃだーちょっときがえてこなくちゃ」



わざとらしい棒読み文を吐きだした諏訪子はタオルそそくさと靴と靴下を脱いで上がろうとした。



「あ、着替えでしたらお風呂場に用意してありますよ。」



「き、気がきくね?」



「神奈子様も濡れちゃったのでついでに諏訪子様の着替えを用意しておきました。」



「え?もしかしてお風呂沸いてる?」



「はい、今は神奈子様が・・・「ケシュンっ!!」



突然椛の頭が小さく揺れた。



「はい」



「あ、ごめんなさい」



にとりから渡された散紙で慌てて口元をぬぐう椛に早苗とはクスと笑みを返した。



「んー、このままじゃ風邪ひいちゃうしみんなでお風呂入ってもいいかな?」


「えぇ、神奈子様もそろそろ上がるでしょうし、お客様に風邪をひかれたら大変ですからね」


「よし!クロちゃん!・・・」


 遠慮する。


「えぇー可愛い子が3人もいるのに即答?」



そう言われても俺が風呂であったまっても意味がない。

内臓がないんだから風邪も引けないし。

まぁ目の保養にはなるかもしれないけどな



「むぅ、まいっか。じゃ早苗。クロちゃんの電子辞書おねがいしていい?」


「あ、はい。大丈夫です。霊夢から対処法も聞いてますし。

 クロさんこっちです。取ってくるんで部屋で待っててくださいね。」



・・・対処って、霊夢・・・何をしゃべったんだろう。



「じゃOKだね。よし!みんな靴と靴下脱いで風呂場に突撃!」


「ねぇ、ケロちゃん?電子辞書ってなに?」


「えっとね電子辞書はね・・・」


「おぉ!じゃあさ…」



なんか向こうの会話絡も不吉なものを感じながら俺は部屋の中に通された。













さて、現在俺はひとり案内された客間の座布団の上にさらにタオルを敷かれて安置されている。

座布団はいいね。大きさがちょうどいいから非常に落ち着く

ふかふかと柔らかい座布団に身をゆだねながら俺は視線を部屋にめぐらせた。

やはり神が本当に住んでるせいだろうか広いな。

客間一つで俺のもといたアパート部屋より広そうだ。

客間は裏の庭に面しておりその庭もまた広い。

中心に石橋のかかった池ってどこの邸宅だよ。

博霊神社とは大違いだと思いながら俺は再び視線を部屋にめぐらせた。


・・・。


やっぱりだ。

なにかへんだ。

さっきから内を見回す俺は妙なものを覚えていた。

ぱっと見て別に何らおかしなものはない

だがなぜか視界に入るものに首をかしげてしまう。

なんだろうと視線をぐるりと回した時、ふと廊下の天井に目がとまった。



 ん?



なぜそれに眼がついたのかわからない。

それはどこにでもある蛍光灯だ。

なにもおかしなものは・・・



 ・・・あれ?・・・蛍光灯?



「お待たせしました。クロさんこれですよね。」



廊下の天井をのぞきあげた俺の後ろから突然声がかけられた。

慌てて振り返るとそこには右手に四角い銀色の板を持つ早苗がいた。

その銀色の板には大きな傷。

間違いない、俺の電子辞書だ!




俺はさっきまで考えていたことを裏庭に放り投げて大きくうなづいて見せると早苗は俺の前で膝を折って電子辞書を開いた。

パカリと開くと電源が自動でつき、ディスプレイに広辞苑の文字が浮かぶ。



「うん、壊れてないです。どうぞ」


早苗は文字をいくつか打ち込んでうなづくと満足そうにそれを俺に差し出した。

俺はしっかりと彼女から電子辞書を受け取り、



=ありがとう ほんとに さがしていた=


俺は久々にローマ字に触れて早苗に見せた。

早苗は一瞬驚いた顔でキョトンとしていたが次の瞬間へぇと声をあげた。


「クロさんよく電子辞書の使い方しってますね」


いや、それはこっちのセリフだ。

さっき文字を試し打ちした時のタイピングはずいぶん小慣れたものだった。


=さなえ も よく しってるな=


「電子辞書は高校受験のときにさんざんお世話になりましたから」


なるほどそれなら…。

・・・ん?高校受験?

幻想郷には寺子屋はあるが高等学校なんて・・・。



先ほど放り投げたはずの疑問が再び頭の中に舞い戻ってきたその時、



「おや?早苗、ずいぶんおもしろいものがウチにいるね?」



今度は廊下から人の声が聞こえた。



「あ、神奈子様。早いですねもう上がったんですか?」


早苗が見上げるように誰かの名前を口にした。



「あのロリガエル達が集団で侵入してきたんだよ

 せっかく湯にゆっくりつかってたのに騒がしくてね…。

 それはそうと早苗…そこのなんだけど・・・」


後ろから聞こえる女性の声は低く落ち着いた音で響いた。

その声に俺は思わず息をのんだ。

後ろから洩れる空気が違う。

少しも隠されていない神気が俺の後ろから流れ込んでくる。

あの諏訪子と同じくらいの濃厚な気配。

だが諏訪子の神気とは全然違うそれ。

まて、この神社には神は二人もいるのか?



俺は思わずゆっくりと視界を後ろに向けた



「はい、諏訪子様のお友達だそうです。ほら、あの博霊神社の。

 名前はクロさんっていうみたいです。」



「あぁ、あの噂のヤツか。へぇ、」



え?



「お前さん、ずいぶん荒れたモノと共生しているんだな。」



俺は息をのんだ。



なぜ

















なぜ・・・・・・・・パジャマ。


























>あとがき


おひさしぶりです。ねこだまです。

心配をかけてしまいほんとに申し訳ないです。

皆様の声援のおかげでスランプは無事脱出・・・!

と元気に宣言したいところですが、残念ながらいまだにスランプは継続中・・・ですかね?

難点だった描き方的な問題はなんとかすることができたのですが、ただ今ちょっとメンタル面で創作が遅れている状態でございます。

まぁこれもいずれ治ると思いますのでもうしばらくお待ちいただければありがたいです。


さて、そういえば皆様。最近思い出したことがございます。

この触手録先月でもう1周年を越していたようですね。

これからもまだまだ触手録は続きますが今後ともによろしくお願いします。


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