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No.6301の一覧
[0] 東方~触手録・紅~ (現実→東方project)[ねこだま](2010/02/12 00:34)
[1] 東方~触手録・紅~ [1][ねこだま](2009/02/10 00:21)
[2] 東方~触手録・紅~ [2] [ねこだま](2009/02/19 04:05)
[3] 東方~触手録・紅~ [3] [ねこだま](2009/02/25 04:38)
[4] 東方~触手録・紅~ [4] [ねこだま](2009/03/05 01:57)
[5] 東方~触手録・紅~ [5] [ねこだま](2009/03/16 03:45)
[6] 東方~触手録・紅~ [6] [ねこだま](2009/04/02 14:04)
[7] 東方~触手録・紅~ [7] [ねこだま](2009/04/14 03:04)
[8] 東方~触手録・紅~ [8]  [ねこだま](2009/05/03 00:16)
[9] 東方~触手録・紅~ [⑨]  上[ねこだま](2009/05/25 01:10)
[10] 東方~触手録・紅~ [⑨] 下 [ねこだま](2009/06/24 02:39)
[11] 東方~触手録・紅~ [10] [ねこだま](2009/06/01 02:09)
[12] 東方~触手録・紅~ [11] [ねこだま](2009/06/24 02:38)
[13] 東方~触手録・紅~ [12] [ねこだま](2009/07/11 22:19)
[14] 東方~触手録・紅~ [13]  [ねこだま](2009/07/11 22:19)
[15] 東方~触手録・紅~ [14]  [ねこだま](2009/08/07 12:47)
[16] 東方~触手録・紅~ [15]  [ねこだま](2009/09/04 12:40)
[17] 東方~触手録・紅~ [16] [ねこだまorz](2009/10/06 17:10)
[18] 東方~触手録・紅~ [17] [ねこだま](2010/01/18 22:41)
[19] 東方~触手録・紅~ [18][ねこだま](2010/01/18 22:41)
[20] 東方~触手録・紅~ [19][ねこだま](2010/02/11 01:11)
[21] 東方~触手録・紅~ [20] [ねこだま](2011/08/05 23:43)
[22] 東方~触手録・紅~ [21][ねこだま](2011/12/25 02:06)
[23] 東方~触手録・紅~ [22][ねこだま](2012/04/11 15:19)
[24] 東方~触手録・紅~ [23][ねこだま](2012/05/02 02:20)
[25] 東方~触手録・紅~ [24] [ねこだま](2012/08/31 22:42)
[26] 東方~触手録・紅~[25] にゅー[ねこだま](2012/08/31 22:42)
[27] 東方~触手録・設定~ [ねこだま](2009/06/15 00:01)
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[6301] 東方~触手録・紅~ [14]  
Name: ねこだま◆160a3209 ID:bedc5429 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/07 12:47

















静かだな。

竹林の入り口で竹を見上げてふとそう思った。

竹は無い風にそよぐことはなく、すっと天高くまっすぐに伸びている。

風がないせいであの竹林独特のざわざわという小うるさい音も全然聞こえず

更に10m先も見えないほどに、濃い霧視界を染め上げていた。

隣の妹紅の息遣いさえ聞こえるほどの静寂に満ちる竹林は、

その奥に何かが息を殺しているのではないかと心の奥を燻らせる。



本当に昨晩の場所へ辿りつけるのだろうか。

妹紅は昨日の場所を覚えているというが、ここまで霧が深くても大丈夫か?

隣で「湿気…o rz」をしている妹紅を慰めた後そう聞くと、

彼女はあぁとつぶやいてたち直り、突然人差し指と親指を口にくわえた。

直後、彼女の口元からピィーと甲高い指笛の音が響き、竹林の白亜の向こうへと消えていった。

指笛の音が遠のくと再び竹林には静寂が舞い戻る。

俺は思わず首をかしげた。

今の行為の意味を知りたかった。

黒板を出そうかすこし戸惑った俺はそっと彼女を見上げる。

見上げた先、妹紅の表情はしきりに視線を上に彷徨わせていた。

その姿はまるで何かを待っているようだった。

むぅ、ここは少し黙っていよう。

しつこい男は嫌われると誰かが言ってたしな。



体毛についた水滴をフルフルと振り落とした後、俺は妹紅の足元で腰をおろした。

しかしそれにしてもひどい湿気だ。

風もないし、これはマジでひと雨来るんじゃないか?

そう考えて不安げに俺は笹に覆われた空を見上げたが、

その時、音が絶えたと思われた竹林の中でシャンと小さな音がなった。

風がふいた?

いや、風ならもっと他の場所からも音がなるはずだ。

妹紅がニッと笑みを浮かべた。

何かを見つけたようで彼女の視線は宙一点に固定されている。



「や、おはよ」



親しげに彼女が軽く手を上げてあいさつした先、そこには誰もいない。

いるはずがない、だって彼女が見つめる先にあるのは地上から十数メートルはある高さの竹のてっぺんを見つめていたからだ。

しかし、彼女が声をかけて数秒。

その竹の先端からあのシャンと小さな音が流れた。

それはさっきと同じく小さく笹が揺れた音。



何か…いる?



妹紅がなぜか優しげな視線を送る先を俺もジッと見つめた。

再びシャンと笹がなる。

だが今度のその音は一つではなかった。



シャンシャンシャン。


俺たちが立つ周囲の竹という竹から何かが蠢く音が鳴る。

姿の見えないその音源に俺は思わず腰を上げて気配を探った。


囲まれている…。



音のなる位置。

同時になる音の数。

揺れる笹の本数。



シャンシャン、シャンシャンシャン



…3…いや4つか?



見えない何かが俺たちの周りの竹から竹へと移っている。

シャンシャンシャン、シャン…カシャン!



…っ!



その時、他の音よりもわずかにお翁音が鳴り。直後笹を鳴らすものが4つから3つに減った

同時に空気を切る音がひとつ。



なんかキタ!?



瞬時にその音のなった方向へ視界を向けると何か半透明な何かが宙を舞い、

俺に向かって四肢を投げ出して飛び込んできた。







一瞬迎撃しようかと身構えた俺は慌てて触手の爪を引っ込める。

そして、



ほぶ!?



顔でそれをキャッチすることになった。

顔面セーフ?いいえアウトです。



「黒丸!?」




後ろから妹紅の驚く声が耳に入る。

で、コレはなんだ何がひっ憑いている?

生き物に変身すると感覚の半数が頭部に集中するためいつまでも顔にひっ憑くのはやめていただきたい。

俺は背中から生み出した触手で俺の顔面にへばりつくものを引っぺがした。

ようやくふさいでいたものをどけて光を取り入れられた視界。

その眼の前にあったのは…。



「…。」



 …。

体長30センチ強あるかないかという小さな子供…多分女の子のジト目だった。

勿論このガキが人じゃないことぐらい背中の羽根とにじみ出る自然の匂いから明らかに分かる。



…妖精?



「だ、大丈夫か黒丸?」



触手でその妖精の襟首をつまむように持った俺に妹紅が苦笑した。

ふと気づくと彼女の周りで3匹の緑色の妖精がふわふわと自由気ままに飛び回っていた



“コレ なに”



「あぁ、見ての通りこの竹林に住む妖精さ。

 まぁ正確にいえばこの竹に宿る妖精なんだけどね。

 このあたりは永遠亭のウサギとコイツらのせいで迷いやすくなってるんだ。」





……“もしかして迷いの竹林って”



「ま、全部コイツのせいってわけじゃないよ。

 ただ面白半分で迷わせたりするけどね。」



それって普通の人間にとって生死にかかわることだと俺は思う。



いいのか妹紅はそれで、お前人里の自警団じゃなかったのか?

ヒトを助けるのがしごとじゃないのか?



さっきから俺にダイブしてきた妖精が俺の頭の上でぐてーとしているため、

彼女にそうつっこもうにもつっこめなかった。

おい、ひっぱるな耳を。



「ん?なんだもう気に入られたのか?」



俺の耳の中を覗き込んだ竹林妖精を見て妹紅が少し噴き出すのをこらえながらそう言った。

はたしてこれをどう見ればなついているように見えるのだろうか。

どうみてもただの悪戯真っ最中だろ。

このまま耳をふさいで取り込んでやろうかと本気で考え始めたその時、

妹紅が周りで飛ぶ妖精の一匹を掌にとってそれを覗きこんだ。



「ねぇ、昨日私たちがいた場所。わかる?」



すると彼女の掌の妖精は素直にコクコクと頷いて再び宙へと舞い上がった。

頭上でクルクルと回り始めたそれはぴたりと空中で静止。

そしてピッピッと短い腕を一生懸命伸ばして霧の向こう側を指差した。



「向こうか、行くよ黒丸」



妹紅はそう言って自らの元に戻ってきた妖精を一撫でした後、

その妖精が指さした方向に向かって歩き出した。

って本当にそっちの方向であっているのか?

コイツらは面白半分で竹林に迷わせる妖精なんだろ?

妖精たちを信頼しているのか彼女は何の疑いもなく霧の向こうへ突き進んでいく。



ジーーーーー



…ん?



何やら頭上から視線を感じた俺が視線を上に向けると、

そこにはさっきまで頭の上にいた妖精が俺をジッっと見つめていた。



 …。



「…」



…、“昨日の俺と妹紅がいた場所はどこ ?”



ビシッ



自信満々に妖精はある方向に向かって指差した。

その方向に妹紅の姿はなく、妖精は自らの背中を妹紅に見せつけていた。



 …。



「…。」



おーけー、そっちの方向であってるようだ。


俺はそう確信して妹紅の後を追った






そうしてたびたび妹紅が竹林の妖精に道を尋ねながら竹林の中を進んでいった。

正直言ってもはやどこを通ってきたのか、自分がどこにいるのかも全然わからない。

隣の妹紅は全然そんなことを感じさせない様子でズンズン俺の隣を歩いている。

その姿はとても勇ま…頼もしい。



そして歩き続けて十分は経っただろうか?



「…?」



ふと妹紅が歩みを止めた。

どうした、と彼女を見上げて首をかしげると妹紅は表情を曇らせたまま俺の頭を掻いた。

答えない妹紅に俺は視線を外して周囲を見回した。

ん?もしかしてここは…。



群生している竹の中でそこだけ竹が生えておらず、地面は湿り気を帯びた黒が広がっていた。

そして地面には様々な模様が描かれていた。

それは何か重いものが何度も地面を押し付けた跡。

間違いない、俺たちが昨晩虎と戦った場所だ。



!?



しかし、黒い地面をざっと見渡しても見なれたはずの銀色が視界に入らない。

俺は妹紅の元を飛び出して、地面を弄った。

いや、そんなはずはない。

絶対ここに落としたはずだ。

まさかうまってしまったのか?

いや、一晩で地面に埋まるはずがない。

何かが壊したか?

壊したなら残骸があるはずだと自分に言い聞かせる。



「黒丸、ない…のか?」



俺は一瞬だけ妹紅に振り返って首を振った後再び地面を探った。

なんでだ、確かに地面に落ちたのを見たはずだ!

勝手にどこかに行くわけが…。



体の奥が何かに締め付けられるような感覚を覚えて俺は更に焦った。

故に目の前にあった竹藪にガシャンと鼻先を突っ込んでしまった。

その時、



「うおぉ!?わんこ!?」



突然竹藪の向こうから驚きの声と共にピョンと何かが飛び出した。



!?



咄嗟にザッと地面を蹴って飛び出したものと距離をとり身構えた。

それは何といえばいいだろう。そう“旦”こんな感じのものにてっぺんに2つの目玉がついていた。

多分…いきものだろう。鬼○郎の目玉ファーザーのように瞳孔で瞬きしてるし。

俺は警戒してさっと姿勢を低くした。こんな小さな妖怪でも意外と強い場合もあるらしい。




「び、びっくりしたぁ。」



喋った!?

なんと筒の妖怪からあどけなさの残る声が聞こえたのだ。



「あれ?諏訪子?」



ふと後ろから妹紅の問いかけの声が聞こえた。

どうやらこの“旦”は妹紅の知り合いのようだ。

妖怪か!?



「ケロ?あー、もこたん!どうしてこんなとこにいるのさ?」



「それはこっちのセリフよ。なんで妖怪の山のアンタがここにいるの?あともこたんいうな」



妖怪の山の、というとやはり妖怪か…思った通りだ


「うん、ちょっとね。永遠亭におつかいに…。

 ってそろそろ怒るよそこのワンコ!こっち見ろぉ!」



ぬお!?



突然なにかに首をつかまれたとように感じた次の瞬間。

ゴキリと俺の首が横に90度折れ曲がった。

正直俺に首の骨があったら死んでたかもしれない。



強制的に反転させられた視線の先にいたのはこれまた大きな瞳だった。

ただ今回の違う点はその瞳には瞼があり、顔があり、金糸のようなショートカットの頭髪があったことだ。



「むー、私を驚かせておいて無視するとは無礼な奴だな!」



プクーと不満げに頬を膨らませたのは年が10も行かない少女だった。

あれ?じゃあこっちのは…?

視界を再び“旦”に戻すと少女がその瞬きする“旦”を頭の上に乗せた。

…まさか…いや…帽子か?それ?

その時、ぽんと俺の頭の上に何かが置かれた。



…妹紅?



「黒丸、とりあえず落ち着け。落し物が見つかんなくて焦るのは分かるからさ」



何を言っている?俺は…。



…。



いや。



そうだな少しテンパってた。

俺はいったん犬の姿を解き元の姿に戻って地面に転がった。

やはりこの姿が一番余計な力を使用しなくて済む。

ころんと後ろに転がるように倒れこみ、一度体の中にたまった力を抜く。

度重なる変身で膨張していた体からまるで浮き輪から空気が抜けるかのようにフシューと俺の体が縮んでいった。

その時だった。



「…そぉい!」



突然可愛らしい掛け声が俺の聴覚に届き、小さな影が覆った。



ドムン



ご!?



次の瞬間体のど真ん中に何かが…いや、諏訪子がパワーダイブしてきた。。

重さはさほどでもなかったがあまりにもいきなりだったため硬度なんか全く考えてなかった。

…あやうく俺の体が饅頭からドーナッツへと変貌するところだったぜ。



「うほっ!もこたん!ナニコレ!やっこい!すさまじくやっこい!」



俺の体にグリグリと頬をすりつけながら諏訪子が叫んだ。

興奮したその声にはたから見ていた妹紅は少し呆れつつも羨ましそうにしながら口を開いた。



「あぁ、ほら。博麗神社の妖怪だよ。」



「ん~?…あ!あれか!これがあの黒餅なのか!」



「そうそう、黒も…あ~一応慧音の話では中は元人間らしいから一応自己紹介しといたほうがいよ?」



うん、とうとう俺は妖怪としてではなく食物っぽいのとして広まっているようだ。

あとなぜだろう何度も一応といわれると少し凹む。肉体的にも精神的にも。



妹紅の言葉に諏訪子はハーイと元気よく答えるとのしかかりながら俺を覗いた。



「はじめまして。…だよね?私は洩矢諏訪子っていうの。あ、ケロちゃんってよんでいいよ~」



無邪気にまるで新しくできた友達にでも挨拶するかのようにワクワクと彼女は目を輝かせた。

もりや すわこ…少し変わった名前だな。いや、幻想郷は外とは文化が違うのだから変わっていてもおかしくはないが、

すわこ、と聞くとどうしても頭の中で諏訪湖と変換…。



……洩矢?



まさか、という予感が脳裏にちらつく。

まて、だけどなぜこんな…いや、しかし。



「…へぇ?なかなか賢い子だね?」



ふと諏訪子の口元が弓を引いた。



!?



「たぶん君の考えているとおりさね?」



頭を押しつけながら、彼女の笑みはいつしか無邪気なものから何か含まれた笑みへと変化していた。

考えているとおり…?言ってる意味もそうだが、そう言いきったのは…。



「え?諏訪子?」



「ん~、いやね。この子感心したよ。私の名前を知ってるなんて、ねぇ?」



彼女はニヤニヤとまるでイタヅラっこのような笑みを浮かべながら再び俺の体を覗きこんだ。



「あ、ねぇねぇ。答え合わせしよ?君は何で気づいたのかな?頭の中で考えるだけでいいからさ」



頭の中で…やっぱり思考を読まれているのだろう。

…まぁ彼女が本当にそうならそれぐらい出来て当たり前かもしれない。



まさか『洩矢神』が幻想郷にいるとは思いませんでした。



「ふーん。なんで私が『洩矢神』だとおもったのかな?」



お名前が諏訪、だからもしやと…、



「それだけじゃないでしょ?」



俺はまさに蛇に睨まれたカエル、いやカエルににらまれた虫の如く彼女を上に乗せたまま身動きができなかった。

…はたしてどこまで読まれているのやら。



背格好が…。確か昔ある土地の洩矢の巫女は8歳の子供が引き継ぐものと聞きました。



それに本当に神様ならヒトの願いを聞くためにヒトの思考を読むのはたやすいことだろう。


神社で祈る時、その祈りを口に出してはならない。もし周囲に魔物がいたらその祈りを悪用されるからだ。




「おぉ、結構詳しいんだね?」



祖父の家が諏訪湖の西にありましたので…。諏訪の大社にもなんどか…。




すると幼い洩矢神はにっこりと満面の笑みを浮かべた。



「ほぉ!そうかそっか!地元だったんだ!

 あ、あとそんな恭しくしなくていいよ。オフの日まで祀られたらこっちまで疲れちゃうもん。」



オフの日って…。

…それでいいのですか神様、ずいぶんフランクすぎないでしょうか?



「いいのいいの!私はフレンドリーで友好的な神様なんだから!」



…大事なことなので?



「2度言いました。」



そうですか。



「ふふ~ん♪」



「あーとりあえず仲良くはなったのか?」




妹紅が頬を掻きながら顔を覗く。

はたから見れば諏訪子が一人で上機嫌になってるようにしか見えないのだろう。



「うん、私賢い子は大好きだよ。『ネタも振ってくれるし』!」



「そ、そっか」



「?ねぇねぇ、さっきも聞いたけどさ、二人ともここでなにしてるの?

 この子がいるってことはいつもの散策じゃないんでしょ?」



「…あ!」

 …あ!



俺と妹紅は思わず顔を見合わせた。



「まさか目的忘れてたとか?」

「いや!そんなことはないって!ほら、そこの黒丸の落し物を探しにきたのよ!」



うん、ぜんぜん忘れてないぞ!

ちょっとマジものの神様にあってびっくりしただけだ。

…すこし現実逃避でもしていたのかもしれない。

しかし、次の瞬間動揺していたのは俺と妹紅だけではなくなった。


「え?オトシモノ?」



突然諏訪子がビクリと肩をすくませて妹紅に振り返った。



「えっと…それってもしかして銀色でパカパカ開く感じで電子辞書的な感じだったりする?」



電子じsy!?



「えっと黒丸。確かそんな感じだったよな?」



そうだ!ていうかそのまんまじゃねーか!?

どこにあるんだ!?



「あーその様子だと黒丸の落し物はまさにそれみたいね」



俺が諏訪子のしたで蠢くのを見た妹紅がつぶやく。



「ねぇ、諏訪子。その…デンシシジョだっけ?

 それがないと黒丸が日常生活で困るらしいの。だからもし知ってたら教えてくれない?」



そして俺の元に歩み寄ると膝を折りながら諏訪子にそう尋ねた。



「あーうー…知ってると言えば…知ってる…かな~」



幼い神様の煮え切らない態度に俺と妹紅はじっとその顔を凝視した。

彼女の帽子の目玉もなぜかバツが悪そうに視線を横に流している。



「えっと…あのさ、怒らないでね?」



…まさか…壊した…なんて言わないだろうな?



「ひっ!?ちょ、黒丸!なんか!なんか出てるって!」



気づくと俺の体から意識せずゆらり、ゆらりと数本の触手が揺らめいていた。

まぁそんなこと今はどうでもいいだろう?

そんなことより辞書はどうしたんだい洩矢の神様?

俺の上で揺らめく触手に囲まれた諏訪子は顔を真っ青にしてガクガクふるえながら口を開いた。



「あ、あう。こわ、壊してないってば!ちょっとさ…その…もち…えっちゃ…て」



なんだって?よくきこえませんでしたけど?



「あの…うちに持ってかえってしまいまし…た…」



・・・・・・・。



「てへ。」



「えぇ!!?」

 はぁ!!?



「わわ、ごごめんよクロちゃん!

 いや、だってこんな竹林の中で外のものなんか落ちてたら、

 あの…もう持ち主なんかとっくに小町のお世話にでもなってるかと…。」



 ……あなたのお家はどこですか?



「…妖怪の山の中腹でほんとにごめんなさい」



 よ、よりにもよって…また妖怪の山か。



「あーうー、だったら私が後で博麗神社に届けるけど…ダメかな?」



博麗神社に届ける。

確かにその方法は確実かもしれない。


確実かもしれないが…。

とっても嫌な予感がする。

ちょっと今の状況を確認してみよう。

霊夢達、博麗神社からすれば俺は2日もいなくなっていたわけだな。

そして…実を言うと博麗神社に居候する上で勝手に神社の外に行くなといいつけられていたのだ。

…後は察してくれ。



 今手ぶらで帰ったら言いわけができない!



「…うん、クロちゃんも大変なんだね。」



 …勝手に心を読まないでくれ。



「あーう―…あ!だったらさ!クロちゃんウチに来ない!?」



え?



「うちに来たら電子辞書もあるし、私と一緒に博麗神社に帰れば何かといい訳も楽でしょ!」



まぁ確かにそうだが…。



「よーし!なら決定!ほら立って、私の神社に案内したげる!」



俺は諏訪子にせかされてしっくりこない気分のまま山犬の姿に変身した。

なんか流されているような気がするんだが気のせいだろうか?



「気のせいさ!」



…神様もサムズアップを知っているんだな。




すこし神様のイメージが変わったなぁと頭の隅っこで考えてると、

ひょいと俺の背中に何かがまたがってきた。



 神様って飛べないのか?



「失敬な、飛べるよ!でもどうせだから下から行こう?そうすれば道も覚えるだろうし」


 覚える必要はあるのだろうか。



「そりゃあ、私の住んでる神社だよ?ご利益あるよー?すっごいあるよー

 あ、もこたんも一緒にいくよね?この間山菜取れたからおすそわけするよ?」




俺の上でちょっと胡散臭い言葉を吐いた後、諏訪子は妹紅においでおいでと催促した。

まるで決定事項のようにいわれた妹紅はしかし、んーと唸った後首を横に振った。



「ごめん諏訪子。私今日ちょっと寄りたいとこあるからさ、山菜は明日もらうよ。」



 え?



“一緒に行ってくれないのか?”



「うん。ごめんね。どうしても今日行きたいの」



むぅ、ここで妹紅がいなくなると少し心細く感じてしまう。

これからどこに連れて行かれるかもわからないのに。



「あ、黒丸。瓢箪は慧音の家におきっぱだから用がすんだら来てくれよ?」



あぁ、そうだった。

中は空っぽだとしてもなんだかアレに愛着がわいてきたもんな。

うん、無いとすこし首元がさびしいものだ。



「よ~し!じゃあ黒丸ささーと家によって行こうか。

 とりあえず山の麓まで一直線に案内するからすぐに着くよ!」



本当だろうな?一応妹紅の血のおかげで力はまだあまり余ってるがなくなったら大変なことになるんだぞ。



「だーいじょうぶだいじょうぶ!んじゃ、もこたんまたねー!」



「ん、黒丸も諏訪子も気をつけてな」



わかった妹紅も気をつけて。

俺はこくりと妹紅にうなづいて見せた後、背中の諏訪子に振り返る。



「あっち!」



ん。



ピンと伸ばされた諏訪子の指の指す方向。

そちらに向かって前足をゆっくりと前に出す。そういえばこの姿でヒトを乗せたのは初めてだな。

落とさないようにしなくては。

ゆっくりと歩みを進めた後、体の高さを変えないように徐々に速度をつけていく。



さて、今度こそこれで彷徨うのは最後にしたいものだ。



背中に小さな神様を乗せて、俺は迷いの竹林を抜けた。















「さて、っと…」



妹紅はあっという間に霧の向こうへと消えた黒丸と諏訪子を見届けた後、

誰に呟くでもなく彼女は口を開いた。



「…すずちゃんの家は確かあの通りだったかな」



次の瞬間彼女の背中から炎が噴き上がり、それが巨大な翼を模ると、

彼女は霧を抜けてどんよりと黒い雲が広がる空を駆け抜けていった。



































キュピーン「…ハッ!?」



「ん~?どったのもみもみ。何かいまニュータイプみたいにピキーンで迸ったけど?」




「にゅ、にゅーた…?いえ………なんでもないです。あ、龍王いただきます。」



 カチ



「げげっ!!?」



「ふふん。どうですか。これ玉将をとれば私の…」



「王手」



「わふっ!?え!?まtt」



「待ったなしって い っ た よ ね ~」



「え…あ…」



「~♪」



「…はっ!し、侵入者です!いそがねばなりま…」



ガシ



「さっき気づいた奴だよね?それ絶対」



ギリギリ



「あ…う……………ま…まいりました…」



「よっしゃー!2 連 勝!!」



「…クゥン」





オノレ アノ マンジュウ ユルスマジ













>あとがき

こんばんわねこだまです。

いやはやいつのまにか7月ですね。

もう夏もすぐそこまできてますよ。 

しかしその前にあの強大な敵が…そう期末試験が…。

てなことで次回の更新が8月までストップするかもしれません。

それまでお待ちいただければ嬉しいなと思います。

では、内容解説へまいります。


今回、ようやくケロちゃん登場!

いや~登場させるさせないのアンケートからずいぶん経ちましたがやっと出すことができました。

そして見ての通り、黒の電子辞書は守矢神社にあるようです。

舞台は再び妖怪の山へ!

そしてそこで待ち構えていたのは…。


次回のお料理は、ケロちゃんとかっぱっぱによる椛もみもみ、黒ソース和えです。


それでは次回お会いしましょう。 ノシ





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