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No.6296の一覧
[0] クソゲーオンライン(銀英設定パロ)[あ](2020/02/21 23:53)
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[20] クソゲーオンライン21[あ](2009/07/27 22:30)
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[23] クソゲーオンライン24[あ](2009/08/16 18:43)
[24] クソゲーオンライン25[あ](2009/08/16 19:21)
[25] クソゲーオンライン26[あ](2009/09/05 20:39)
[26] クソゲーオフライン27[あ](2009/09/12 18:46)
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[6296] クソゲーオフライン27
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:80292f2b 前を表示する
Date: 2009/09/12 18:46
全てが終わり、人々はやがて日常に戻る。
いつのまにか失ってしまった大切な物をとりもどしていく。
彼等は狂った世界を乗越え、現実世界へと戻ってきた。



■貴方の同居人になりたいのです■


たった一度聞いたヘインの住所を忘れる事無く正確に記憶した少女は
無事ログアウトした後、強い意志を持って育ての親でもある施設の長を説得した結果、
ひとまず夏休みの間だけという条件付であったが、愛した男の下へと旅立つ事が許される。

少女はボロボロのリュックを不快な音を発生させる限界が近い愛車に乗せて
意気揚々とヘインの住まうマンションを目指し、70kmの道のりを全速で駆け抜ける!!




■■



「はぁ、なるほどそう言う訳ね。確かに前期試験期間から2週間も過ぎてたら
 どこも夏休みに入ってるわな。うん、それで遊びに来たってのならよく分る
 なのになんでマイ歯ブラシをセットしたり、自分の茶碗を食器棚に入れた上に
 マイ箸を箸立てに入れるのか理解できないんだけど?勿論、今日帰るんだよな?」

『そう邪険に扱うなヘイン、30日と少しばかり世話になるだけだ
 向こうの世界では四年近く一緒に暮らして愛を誓い合った仲だろう?』



ヘインは頭を抱えたくなったというか、実際に頭を抱えていた。
確かに目の前でウキウキと荷物を広げて彼方此方にセットしながら、
自分のマンション内での居住環境を整えている少女とは愛し合った仲だ。

だが、その場所は仮想世界でのことである。あの時、彼女を受け入れたのはもう二度と
現実世界に戻れないと思い込んだからである。

こうして無事に現実世界に帰ってきてしまった以上、現実を見据えて二人の関係を見直す
べきだというのがヘインの考えであったが、少女の方はそんな気はさらさらない。

ようやく落とした男を逃してなるものかと、
現実世界でも仮想世界と同じように既成事実を作り、一気に押し切る心算であった。



「まぁ、待て。別にお前の事を嫌っているとか全く無い。むしろ大事に思っている位だが・・」
『嬉しいな。私も卿のことを誰よりも愛しているぞ』


「いや、そうじゃなくてって・・、ちょっと抱きつくな!落ち付け、落ち着こうな!」



みなまで言わすまいとヘインに抱きつく食詰めは仮想世界で更に磨かれた体術を用いる。
彼女は素早く片足をヘインの足に絡めるとそのまま払ってソファーへと押し倒したのだ。

食詰めほどでは無いにしろ仮想世界で体術の経験を身に付けているヘインならば
細身で軽すぎる彼女に易々と倒される訳は無いのだが、胸板に押し付けられる少しだけ
柔らかな物に気を抜いたのが運の尽きで、年端も行かぬ少女に情けないことにマウントを
取られるという男性諸氏が羨みそうな失態を曝す事になる。



『落ち着ける筈が無いだろう?いま私は本物のヘインを見て触れて最高に興奮している
 私は全てをお前に捧げる覚悟はもう出来ているぞ。後はお前が私を受け入れるだけだ』

「いやいやいや、ほんと落ち着こう!これ以上されたらさすがの俺でも如何こうするぞ!」



『それで構わないさ。それこそ本懐と言う物だ』







ヘインの目と鼻の先の距離にまで顔を近づけた食詰めは勝利を確信した笑みを見せる。
こうして、清々しいまでに真っ直ぐな好意を向けてくる少女に押し倒された男は
今更な抵抗を諦め、現実世界でもその想いを受け容れることになった。


こうして、その後に色とあれやこれや・・・、があった結果、
教授陣に泣きつくと言う目的をヘインは達する事はできず、
その実行は翌日へと延期されることになる。


ヘインの横で幸せそうな顔で眠る押しの強い少女の完全勝利であった。




■大学へ行きたいのです■


予想外の来訪者によって中断された教授陣への陳情を行う為に食詰めの訪れた翌日の朝、
ヘインは色々と疲れが残ってはいるものの、単位のために何とか目覚めることに成功する。

いままで捕らわれていた仮想世界と違って、現実世界の時の流れは格段に速い。
明日へと引き延ばしている内に全てが終わってしまう可能性もあり、
無為に時を過ごすことは許されない。
大学に5年通いたくなければ行動は迅速にする必要があったのだ。



■■


少女が占有権を主張していつまで経っても離れないため腕が限界に足したヘインは
じんじん痺れ感覚を失ったそれを強引に引き抜く。


『あっぅ・・、うぅ・・酷いな最初の朝くらいは余韻に
 もう少しだけ浸らせてくれても良いんじゃないのか?』


ベッドに頭を落とす事で最悪な目覚めになった食詰めはその仕打ちに不平を漏らすのだが、
それを無視してヘインはさっさと服を身に着けて朝食の準備に取り掛かる。
ここで甘い顔をすればもっとベタベタしてこようとする食詰めの術中に嵌ることを
仮想世界での経験からヘインはしっかりと学んでいた。



『ヘインのいじわる』

「はぁ、今日は昨日行けなかった大学にどうしても行っときたいんだよ
 ちゃんと大人しくお留守番してくれたら、大学の用事が終わったら
 こっちでの生活に必要な物買いに連れて行ってやるから我慢してくれよ」



・・・学んでいた筈なのだが、年相応の拗ねた反応などかわいい仕草を見せられる度に
甘い顔をしてついつい食詰めに優しくしてしまうのだった。
もちろん、食詰めの『計算通り!』に乗せられているとは薄々気付いてはいるのだが、
それも悪くないと思い始めているあたりヘインは結構な重症であった。


まぁ、現実世界でも変わらず純粋に真っ直ぐな好意を向けてくれる少女に冷たい仕打ちを
出来るほどヘインは鬼ではなかったという訳である。

ちょっぴり計算高い食詰めに何だかんだ言いながら引っかかってやるお人好しなへイン、
二人の相性は現実世界でもバッチリであった。



「そんじゃ、行ってくるけど、ちゃんと戸締りして大人しくしてるんだぞ?
 あと、俺の部屋とかあちこち漁るなよ!いいか勝手に人のモノを処分するのは
 私有財産権の侵害だからな。親しき仲にもプライベートありが家のルールだからな」

『分っているからそう心配するな。私だって子供じゃないんだ
 留守番や掃除位は一人で出来るさ。不要な本やDVDの処理などな』



満面の笑みで今後不要になるだろう品々の死刑宣告を下す食詰めに
色々と諦めざるを得ない事を悟ったヘインは
引きつった笑みを見せながら『いってくるわ』と何処かの年貢を納めた垂らしのように
虚ろな目をしながら、力ない声を漏らすしかなかった。


そんな愛する男の情けなくも聞き分けのいい姿に満足した少女は、
鞭だけでなく飴もちゃんと用意していた。



『そう落ち込むなヘイン。その代わりは、その・・、目の前に・・いるだろう・・?』




自分で言っている途中から恥ずかしくなったのか、しどろもどろの口調で喋るという
らしくない失態を晒した食詰めは頬を赤らめつつ、ちゃーんと女の子していた。






少女らしい少々潔癖に過ぎる独占欲の強さだけでなく、
女としての顔を唐突に見せた食詰めに少しばかりどぎまぎしたヘインは何とも言えぬ
気恥ずかしい空気に尻を叩かれ、靴の踵を踏み潰したまま慌てて玄関を飛び出して行く。


仮想世界で半年ほど新婚生活を送った二人であったが、現実世界の同棲生活は
それはそれで一味違う新鮮な物であるらしい。


どこか死の臭いがする狂った世界での仮初の安息も悪くは無かったが、
リアルでの幸せな生活が持つ価値には到底届かないということなのだろうか?


『レンネンカンプ』から戻ってきた人々は『リアル』を少しずつ実感していく。
もっとも、その結果が彼等二人のように幸せな物になるとは限らなかったが・・・




■レンネンカンプ症候群■


2500万以上の人々を巻き込んだ『レンネンカンプ事件』は
僅か15日と言う短期間で一応の解決を見ることになったのだが、
それは新しい悲劇の始まりでもあった。


偶然生まれ落ちた『ナカノ・マコ』と名乗る少し擦れた『電子の妖精』の驚異的な力で
ゲーム上で生き残っていたプレイヤー達だけでなく、
デスペナを受けて半ば精神崩壊していたプレイヤー達の心もちゃんと修復されて
現実世界へと帰還することを可能にした。


この『ミラクルマコ』の素晴らしい功績は多くの人々に救いを与えたことは
疑いようの無い事実で、義眼やリアといったデスペナで志半ばで散ったプレイヤー達に
再び現実世界での人間らしい生活を取り戻したのだから。


だが、中には心が壊れたままの方が幸せな人々も好くなからず居た。
戦争イベントでの『社会的な死』が解除された以降、死んだ方がマシな辱めを受けた後に
デスペナ状態になり心を壊したプレイヤーや奴隷として散々に嬲られた後に
飼主に飽きられて殺されデスペナを受けて壊れたプレイヤーの多くは帰還後に
自らの命を絶つか、苦しい心的障害に一生悩まされることになったのだ。


『レンネンカンプ』の目指した『リアル』は余りにも生々し過ぎたのだ。



また、デスペナを受けずに生きたまま奴隷として過ごしたプレイヤーや
私有地で虐殺された人々も同じような傷を持って帰還し、立ち直れない場合も多々あった。



そう、『レンネンカンプ』の悲劇は終わらない。
そして、その被害は拡大する兆しすら見せ始めていた。



■■



『こっ殺さないで、お願いします!おねがっ・・い・・』

『ゼルテ・・、早く殺しすぎだろう勿体ねぇ。かわいい顔してたのによぉ
 もっと楽しんでから殺そうぜ?ポリが来るまでまだ時間の余裕あるだろう?』

『へへっ、ついつい首絞める手に力がな?だってよぉ、キュッとした時の
 女の苦しそうな顔がたまんねーんだよ。やっぱリアルは一味違うよなぁ!?』



オフレッサーの下で殺戮に酔ったキルドルフとゼルテは被害を拡大させる
『反社会的レンネンカンプ症候群』の哀れで憎むべき患者であった。


彼等のように『リアル』過ぎる殺戮や犯罪行為によって、
手を汚すことに馴れてしまった一部の人々は、現実社会でも
『レンネンカンプ』で行ったのと変わらぬ悪事を働き続け、悲劇を拡大生産していた。




「私はレンネンカンプ事件が終結したとは未だ思ってはおりません!!
 多くの失われた貴重な人命、日本共和国は大きな悲しみと傷を受けました
 そして、今なお被害者の方々が苦しんでおられる事には慙愧の念が耐えません
 ですが、それでも人は立ち直れる!日本は立ち直れると固く確信しております
 私は国家の代表として、元首として国民の皆さんとその第一歩を踏み出したい!」



倒れて動かなくなった女性店員しか居なくなった店のテレビは
日本の再生を力強く誓う麻垣首相の演説を垂流し続ける。

強力なリーダーシップを発揮し始めた元首の下で日本は驚異的な速度で
人的、経済的損失を取り戻していくことになり、僅か10年足らずで事件以前の国力を
取り戻すことに成功することになる。日本の未来は明るい・・・




ただ、テレビの前に倒れた女性が動くことだけは二度と無かった。




■キャンパスライフはもうゼロよ!■


食詰めを残して大学を訪れたヘインは受けられなかった前期試験の追試や代替レポを
教授に頼み込む必要が無いことを学生掲示板に張り出された通達によって知り、
狂喜していた。


ヘインと同じように事件に巻き込まれた学生も少なくなく、
また、研究熱心な教授や助教授達の何人かも仮想世界に捕らわれていた影響で
前期試験は中止され、夏季レポートの提出によって単位を付与すると言う
なんとも学生にありがたい措置が下されていたのだ。


日本を揺るがす未曾有の危機の前では政権交代や前期試験など
やっている場合ではなかったのだ。


■■



「助かった~、正直どうしようかと思ってたけど逆に楽に単位取れそうだ」

『平音先輩~♪お久です!先輩も被害者って聞いて心配してたんですよ!』


学生掲示板の前で胸を撫で下ろしていた平音武二に元気よく声をかけたのは
今年入ってきたサークルの後輩『アンネリー』こと安根梨衣だった。



「わりぃね、アンネリーにも心配かけちゃったみたいで、
 お恥ずかしながら、この平音武二生還して参りました!」

『うふふ、お帰りなさい先輩♪ホント元気そうで安心しました!』


単位が何とかなって安堵している所に現われたかわいい後輩に気をよくした
ヘインは彼女との会話を弾ませる。かわいい子に心配されて嬉しくならない訳が無かった。
だが、そんな楽しい気分は梨衣から発せられた一言で雲散させられる。



『そうそう、さっきから先輩の後ろにいる子は妹さんですか?』

「へっ!?ちょっおまr留守番は・・・」

『ちゃんと鍵を見つけて戸締りはしてあるから心配するな。それにしても
 帰りが遅いと思ったら、中々楽しいキャンパスライフを送っている様だな?』


『あっ、ごめんなさい。先輩、この後は妹さんとお約束でした?』

『そんな所だが、一つ貴女の勘違いを正して置こう
 妹ではなく恋人の灰戸レンだ。以後、お見知り置きを』

『あっ、ご丁寧にどうもです。私は先輩のサークル後輩の安根梨衣です
 レンちゃんよろしくね♪今日の『おにいちゃん』とのデート楽しみね!』

『あぁ、愛する『恋人』とのデートだからな、心も躍るさ』



うろたえるヘインを余所に、レンと梨衣は噛み合っている様で噛みあっていない会話で
徐々に緊張した空気を生み出し、間に挟まれたヘインを怯えさせる。

レンは思わぬ強敵の出現で完全な臨戦モードに移行しヘインのTシャツの
裾をぎゅっと強く握りこみながら傍に寄り添って所有権を主張し、
梨衣はずいと一歩前に踏み出し、平音との距離をぐっと近づけ圧力をかける。

こうして、一触即発の状態へとなっていったのだが、激発する事無く終わりを迎える。


『そっか、レンちゃんは先輩にベタ惚れで大好きなんだねぇ~♪
 先輩、こんなかわいい女の子が待ってるのに私なんかと長話してたらダメですよ!』



唐突に圧力を減じさせた安根梨衣は散々レンをからかった事に満足したのか、
ニコニコと笑いながら二人と別れて待ち惚けているだろう親友の待つ
構内の図書館へと走り去る。
この急すぎる展開にレンはどこか釈然としなかったが、
強力なライバルになりうる存在が消え去り、一先ずの危機が去ったことに安堵する。



「何もして無いけど、一応来た目的は果たしたから、買物して帰るか?」

『あぁ、そうだな。こんなに待たせたんだ、もちろん奢ってくれるんだろう?』



「っけ、なにが待たせたから奢れだよ。最初から俺に払わせる気満々だろ!」

『否定はしないさ。『平音先輩』にはいつも感謝しているよ』






ニヤけた顔で寄生宣言する食詰めに『コイツは・・・』と思いながらも
ついつい容認してしまうヘインであった。

ただ、嬉しそうに枕やコップに食器などなど、これからの生活に必要な物を揃えて行く
食詰めの姿を眺めながら幸せな気分を味わえるのだ。
そのプライスレスな価値に比べれば、多少の出費など安い物であろう。

なにより、『リアル』が反映される『レンネンカンプ』の世界でも裕福だったヘインは
現実の世界でも金持ちであったのだ。

もっとも、親なしの資産家でまだ20歳にはまだ一月足りていない為、
厳しい二代目後見人アンズババァこと馬場杏(23)さんにお小遣い制を強いられており
めちゃくちゃ余裕がある生活では無かったが、バイトも単発でちょこちょこしていたので
食詰めとはエンゲル係数の桁が違う生活を送ることができていた。




二人の同棲生活に経済的不安は一切ない!





■オフ会は危険?■


オフ会・・・
ネトゲー、掲示板コミュニティ等々、形態は様々な物があるのだが、
簡単に言えばオンライン上で知り合った人間同士が現実、『オフ』でも接触しようと言う
大変リスクの高い会合のことである。勿論、それに反論する意見も多くはあるが・・・
世間では、どちらかというとメリットよりデメリットの方が大きと考えられていた。


その中でも特に酷いのがVネトゲのオフ会と言われている。
初心者にも拘らず参加してみたら自分以外の殆どがネットゲー廃人の
人格破綻者だったということも多々あったし、

女性参加者の場合だと十人並み以上の顔をしているだけで、
ヤルことしか考えていない低脳なウッキー共に『ウゼェーよ』と
怒声をあげたくなるほど声をかけられるなどは日常茶飯事。
酷い場合だと対面に座っても一言も話しかけてこないような奴に散会後、
永遠と後をつけられて危うく家バレしそうになって、半泣きでミュールを脱ぎ捨てながら
裸足で全力ダッシュするはめになるなど散々な目に遭い二度と参加するものかと
固く誓ってしまったりするようなリスクも少なく無いのである。
現実世界でまともな人間関係を築けている女性は特に参加しない方が良いものである。


そんな厄介な会合の開催をかつて自分が所属したギルドのギルマスである
金髪に依頼されたヘインはひたすら断ろうとしたのだが、
彼の美しい姉に『またお会いしたいですね』と言われると嬉々として準備に勤しんでいく。

ヘインも基本はウッキーな男の子であった。


■■



「なぁ、せっかく着飾ってる所悪いけど、お前の所属したギルドって
 リップシュタットだろ?今回のオフ会はローエングラム元帥府だぞ」

『細かいことを気にするな。どうせただの宴会なのだろう?
 人数が多少多くなったとしても、それほど不都合はないさ』


自分の居ない場所でパウラとヘインを会わせる気など全く無い食詰めは
ヘインに買って貰った一張羅を着込んでオフ会に参加する気満々であった。

もっとも、ヘインが幹事をするオフ会の話はどこから話が漏れたのか分らないが、
黒色槍騎兵や沈黙に鉄壁といった友好ギルドメンバーに知れ渡ってしまい
当初の予想より遥かに多くの人々が参加する大宴会になりそうであった。



「これだから幹事は嫌なんだよ!大きい会場を手配し直したり、
 新しい二次会候補地探しでどんだけ苦労したか分ってんのか!」

『無論、感謝しているさ。処でヘイン、今日のエスコートをお願いしてもよろしいかな?』




微笑みながら差し出された食詰めの手をヘインは不承不承取り、
二人仲良く様々な困難を共に乗越えた仲間が待っているだろうオフ会会場へと向かう。



■■




          『閣下!こっちですよ。こっち!』




開始時刻より少し遅れて会場入りしたヘイン達を呼んだのはフェルナーだった。
彼はリップシュッタット所属で本来ならばこの場に居る必要は無かったのだが、
幹事を一人でやるのが嫌だったヘインに強引に巻き込まれ、
オフ会の会計を務めることになってしまったのだ。



「おう!悪いねフェルナー、ちょっと出掛けるのに手間取ちゃってね」

『悪いねじゃ無いですよ。幹事が遅れてくるなんて勘弁して頂きたいですね』


『まぁ、それも閣下らしいですが・・・、お久しぶりです閣下、ファーベルさん』



フェルナーに呼ばれて彼と義眼の座るテーブルに向かったヘイン達が席に着くと
帰還後初めていつものパーティが会したことを祝した。

ヘインと食詰めは同棲しているから除くが、フェルナーとヘインがオフ会幹事として
打合せで1度会っただけで、直接四人が揃って会ったのはこれが初めてであった。
もっとも、ネット通信で食詰めと義眼はちょこちょこと連絡を取り合っていたようだが



『しかし、会場を変えて正解でしたね。ここまでの人が集まるとは正直思いませんでした』

『これも閣下の人望の高さに拠る物でしょう。奴隷を解放し、大魔王を討伐した功績と
 名声は小さくないという事でしょうか?その・・、私も閣下はご立派だと思っております』
『ヘイン!!勿論、私もヘインは最高だと思っているからな!!』


「あっ、あぁ・・、二人ともありがとな」



仮想世界での功績を二人の少女に今更ながらに褒められたヘインは
食詰めの勢いに若干引きつつ、感謝の言葉を返していた。

帰還後、大魔王討伐隊の待機組メンバーやヘイン達の尽力で解放された奴隷達によって、
ヘインを中心とする高レベル『求道者』達の偉業はプレイヤー達の間では
そこそこ広まっていたのだ。

もっとも、当の本人は『ゲームの中でやったことを褒められてもな』と
それほど大した事を成し遂げたとは思って居なかった。



「そういや、グルック達三人娘は潰れた遊園地の再建計画に関わるらしいぞ
 帰ってきて一週間しか経ってないのに、ビックリするくらいの行動力だよな」

『そうらしいですね。アルフィーナさんとリアさんはまた戦隊ショーのバイトを
 するんだと意気込んでいるそうです。開園したら娘と妻を連れて行く心算です』

『ヘイン!私達も勿論行くからな!』 「へぇへぇ~分っていますって」



『・・・』
『その、女同士でだが、パウラも一緒に行かないか?』

『えぇ、ファーさんとなら是非ご一緒したいと思います』






この場に居ない三人娘の話題で盛り上がった四人であったが、
無邪気にヘインへのデートの申し込みを義眼の前でしてしまった食詰めは
自分の無神経さと迂闊さを恥じ入りながら、義眼とのお出掛けも望んだ。

義眼はそんな微笑ましい年下の少女の欲張りに振りに苦笑いを零しつつ、
隣に座る彼女を抱き寄せてその望みを了承する。




仮想世界で共に冒険していた頃とお互いの立場も関係も変化していたが、
お互いのことを思いやる仲間である事だけは変わることはない。


彼等の素晴らしい関係は、この現実世界でも続いていくのだろう。





■ゲームガール■


悪酔いして咆哮をあげる黒猪にエリザとイチャツキまくって顰蹙を買う鉄壁、
アンネローゼを巡って『お前は私の何なんだ!』とマジ切れする金髪に
『義兄です。ラインハルト様!』と答える赤髪など、様々な人々が集ったオフ会は
大いに盛り上がったと言うか、盛り上がりすぎて会場を追い出された。


こうして一次会が終わったのだが、その後の参加者の行動は様々であった。
垂らしと種無しの双璧コンビは仲良く二件目に飲み直しに向かい、
黒猪は一人で電柱と戦っていた。


サビーネやカーセなどの女性陣達の大半は、酔った勢いで口説いてくる
命知らずなアホ共を血祭りにして適当にあしらい、仲のよくなった女性プレイヤー同士で
メルアド等の連絡先を交換し、後日の再会を約しながら帰宅の途についていた。



■■



「まぁ、あんまり夜遅くなるとマズイしな、今日はここらで解散にしますか」


『そうですね。残念ですが、もうそろそろ門限ですから仕方ありません』

『それでは私が責任持ってお嬢をお送りします。閣下、今度は男同士で一献傾けましょう』



「おう、それも良いな。パウラのことは任せたぜ!それにしても、
お互い最後まで本名よりも向こうのキャラ名で殆ど呼び合っていたな」

『仕方ないさ。我々はそれで四年近く過ごしてきたんだ。周りも似たようなものだしな』



『まぁ、オフ会なら良いのですが、その他の場でだと少々痛いですからね
追々お互いの本名に馴れていくことにしましょう。それでは失礼します』

『ファーさん、閣下・・・、また、また会いましょう』





   「おう、またな!」 『あぁ、また連絡する』






パウラの門限が近いこともあって四人は一次会の清算を済ませると
近い将来の再会を約して早々に別れることとなった。

ヘインと食詰めも義眼とフェルナーを駅まで見送ると
元来た道を再び辿って、二人仲良く並んでマンションへと戻る。
勿論、行きと同じでしっかりと手を握りながら・・・



そんな彼等が戻る場所にはあるモノが届いていた。
そのモノの中身は世界でも大人気の携帯ゲーム機の『GAME GIRL』と
そのゲーム機専用のたったの一本しかない超レアソフト『携帯マコちゃん』であった。






新たにカワイイ家族を加えて始まるヘイン達の生活が
平穏なモノになるにはもう少しだけ、時間がかかりそうであった。






                                    おしまい。







【被害者ファイル】


【ラインハルト・フォン・ローエングラム】

大魔王討伐の際にデスペナを受けるが、現実世界に無事に帰還する。
帰還後は誰よりも愛する姉を巡って親友のキルヒアイスと一触即発の状態になるが、
大学の後輩で美貌の少年のようにも見える律動的で魅力的な女性を
若気の至りで孕ましてしまい、慌しく彼女との学生結婚の準備に追われる内に
赤髪との対立はうやむやとなる。
また、結婚を機に姉離れが急速に進んでいくことになる。


【ジークフリード・キルヒアイス】

上手いことやってアンネローゼと結婚、以上。



【フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト】

元黒色槍騎兵ギルドのギルマス、大魔王討伐時に金髪と同じくデスペナを受けるが
無事に現実世界へと帰還する。
帰還後は警察官として直ぐに復帰し、『レンネンカンプ事件』の影響で乱れ始める治安を
守る為、犯罪者と終わらぬ戦いを定年まで続けていくことになる。


【ナイトハルト・ミュラー】

鉄壁ギルドの元ギルマス、レンネンカンプ内でブラウンシュバイク公の娘でもある
エリザベートと恋に落ちる。大魔王討伐時に二人ともデスペナを受けるが、
二人揃って無事に現実世界に帰還する。
帰還後は実家を飛び出したエリザと直ぐに同棲生活を始め、1年後に結婚する。
二人の内にはサビーネやカーセにエルなどがよく遊びに訪れているらしい。



              < 27P >


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