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No.6296の一覧
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[25] クソゲーオンライン26[あ](2009/09/05 20:39)
[26] クソゲーオフライン27[あ](2009/09/12 18:46)
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[6296] クソゲーオンライン26
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:80292f2b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/05 20:39

絶望的な事実は人々に何を齎すのか、その答えを予測する事は簡単だが
それを正確に行う事は非常に難しい。その時の状況、個人差などを考慮すれば
予測によって導き出される結果は不確定に成らざるを得ない


そのため、重大な事実を不幸にも手にしてしまった人々の多くはそれを持て余す
そして、ある者はそれを隠した。また、ある者はそれを都合のいいように捻じ曲げた


最悪な真実を白日の下に晒すのは非常に勇気がいることなのだ
手に余る真実を知ってしまうことは不幸以外の何物でもないのだから




■栄光無き凱旋■


閉ざされた城門の前で待ち続けた双璧達の部隊は
最悪の表情をしたヘイン一行から最低な結末を聞かせられることになった


『レンネンカンプ』から出る方法など最初から無かったと


それを聞いた双璧の反応は好対照と言えた。激しく怒気を発した種無しに対して
垂らしは取り乱しも、怒りもせずにただ冷静に事実を確認すると
『で、ヘイン、お前はこれからどうするんだ?』と大魔王討伐最大の功労者に対して
この最低で最悪な事実をどうするのか?と、彼を試すような表情を隠すことなく尋ねる




■■



「しらねーよ・・・って言いたい所だけど、そうも言えない状況なんだよな
 投げちまうのは簡単だけど。帰って来る事が出来なかった奴等のこと考えると
 いい加減な事する訳にはいかねーって、柄にも無く思っちまったりもするしな」



問いかけられたヘインは直ぐに質問に答えるのではなく
困ったような表情をしながら、自分の正直な気持ちを吐露する

それは、知ってしまった『最低で最悪な事実』をどうするのか?という重すぎる質問に
彼なりの解答をだすために必要な儀式であったのかもしれない


そんなヘインの言葉を待つ双璧も彼のパーティの仲間も答えを急かそうとはしなかった
これから『知ってしまった自分達』が『どうするのか?』という答えを決めることが
どれほどの勇気を必要とするか、彼等は分かっていた



「先ずはお願いだ。皆には今日知った事を自分の胸の内だけに閉まっておいて欲しい
 誰だって知りたくも無いことがあるし、知って耐えられなくなっちまう奴もいるだろ
 そんな不幸な奴をわざわざ増やすような真似はしたくない。俺も知りたく無かったし」

『同感だ。知りたくも無いことを人に報せるような真似を私もする気にはなれんな』

『ふむ、卿の考えは了解したし、理解も出来る。卿達四人が今回の討伐の殊勲者だ
 留守居組みの我々がそれに従うのも吝かではない・・が、どうやってこの真実を秘す?』



真っ先にぶんぶん首を縦に振りながら同意を示す食詰めは
ヘインに迎合する気があからさま過ぎたが、一応納得できる意見ではあったので垂らしは
それには触れず、大魔王を倒したヘイン達が決めたことに素直に従う姿勢を見せつつ
もう一歩踏込み、真実の隠蔽工作をどうするのか?と色の異なる左右の瞳に
いくつもの想いを秘しながらヘインに再度言葉を投げ掛けた。



「そうだな、俺達が黙ってるのが大前提だけど、この城を放置するのはちょいマズイ
 動かなくなったレンネンカンプの野郎の姿を見られたら、それこそバレてお終いだ
 だから、戸締りをしっかりしておかないとイケナイよな?この鍵を使ってしっかりと」

『何というか・・・、えらく簡単な方法だな。もっともそれ以外に良い方法も思いつかんが』

『下手な言い訳などの嘘で塗り固めるぐらいなら、何も見せない方がいいという訳さ
まぁ、愛妻家の疾風ウォルフ氏には縁遠く、必要の無い知識なのかもしれんがな?』


大魔法の私室に置いてあった鍵で城門を閉ざす、ヘインの単純明快な隠蔽工作について
拍子抜けした種無しは何ともいえぬ歯切れの悪い賛同を示すが
その有効性について、垂らしに何とも言えぬ例え交じりの言葉で語られると
憮然とした表情で賛同していない訳では無いと答えを返す




「そんじゃ、結論は出た事だし帰りますかね?さすがに今日は疲れたから
 とっとと家に帰って風呂に入って、何もかも忘れてゆっくり眠りたいんでね」








ヘインの意見に全員が頷き、後味の悪い大魔王討伐作戦は終了した
真実を知ってしまった彼等が、この悠久の時の中でどのように生きていくのか
それは彼等一人一人の問題であり、ここで長々と相談して決めることでもなかったからだ


何より、ヘイン達四人も双璧のパーティのメンバー達も
クソッタレの『大魔王レンネンカンプ』の居城の前に長居などする心算は無かった


例え虚構の世界の家や宿であっても、ここよりは何倍もマシな場所で
真実によって疲弊した精神を一刻も早く癒したくなっていた。


これから、長く不安な灰色の生活をデスペナか肉体的な死を迎えるまで
続けなければ為らないのだから・・・





■女の決意と男の諦め■


本拠地のオーディンへと舞戻ったヘイン達四人は『大魔王討伐』の結果について
いまは動かなくなった義眼に報告し終えると解散した。

フェルナーは不在時に溜った申告書類の記入や修正に取り掛かり
アルフィーナは今は収監されているかつての上司グルックに面会するため
拘置所へと向かう。


残されたヘインと食詰めの二人は特にすることも、行かなければならないよう
場所も無かったし、心底疲れていたので大人しく帰宅する方向で落ち着く



■■



やれやれ、これからホントどうするかな?
一生死ぬまでこの世界で暮らしていかなきゃいけないなんて・・・
考えただけで鬱になってくる

現実世界じゃ12、3日しか過ぎてないのに、こっちじゃ三年以上も経過していて
なんども手を血で染めてようやく生に死に物狂いでしがみ付いて来た


その結果が、『帰る方法なんか最初からありませんでした』って、いくらなんでも
笑えねーよ。畜生、俺はちょっと前までお気楽な大学生で、
もうそろそろ将来の事とか考えたりしなくちゃいけねーのか?って
普通だけどちょっぴりだけ深刻な悩みに頭を悩ませてた筈だって言うのに

そういや、予定通りなら前期試験もとっくに全講義分終わってるから
俺って今偶然にもログアウトできたりしても、追試とか認められなきゃ留年確実かよ!!


はぁ、あほらし。どのみち此処で死ぬんだから留年とか試験とか考えても無意味だよなぁ・・
ほんと、なんで一ヶ月前の俺は真面目に勉強しなかったんだ。
地道にコツコツしてれば、こんなクソみたいなゲームなんかにゃ
手を出さなかったって言うのによぉ


フェルナーだってそうだ。奥さんとまだ小さい娘さんのために
バリバリ働いて稼ごうと思ってここで事務処理仕事やろうとしたら
二度と起きない夫でお父さんに何かになっちまった。

食詰めもアルフィーナも、動けずに苦しんでいる義眼だって帰る場所や
帰らなきゃ為らない理由がきっとある筈だって言うのに


ほんと、ここまで酷いクソゲーはきっと世界中のどこを探しても見つからないだろうな







一人部屋で椅子に座りながら物思いに耽るヘインは
次から次へと湧き出る後悔の念で溜息ばかり吐き続けていた。

だが、これも無理からぬことであろう
必死になって生きる為に、友人のためにとヘインが今まで生きてきた中で一番苦労して
やっと勝ち得た物が絶望的な真実だったという報われなさである。
真っ白に燃え尽きたとしても、彼を無神経に責めるなど誰もできない


また、他の『知ってしまった人々も』多少の個人差はあったものの、
概ねへインと同じような心境に陥っていた
夢や希望が無くてもヒトは生けて行ける。だが、夢や希望が無ければ人は幸せになれない
だから、人々は希望や夢と言ったあやふやな物を追い求め続けるのだろう



灰色の未来にぐったりしたヘイン部屋の扉を力強く軽快な感じすらする
リズムでノックする少女は既に新しい道を見つけていた


億劫そうに立ち上がり扉を開けたヘインの視線の先には
入浴を済ましたばかりなのか、ほかほか状態の火照った少女が笑顔で立っていた



■■



こっちは疲れて動く気も無いって言うのに、ほんとタフな奴だな
こんな状態でよくニコニコしてられるな、ここまで来ると呆れる以上に感心するね!


「いま風呂あがったところか?そんで、なんか用か?
 それとも。風呂空いたぞって教えに来てくれたのか?」


『あぁ、それも用件の内の一つと言えば一つだが、少し話もしたくてな
 それほど時間は取らせない心算だ。その、部屋に入っても構わないか?』


「おう、別に構わないぜ。あんま綺麗な部屋じゃなくて悪いけどな」

『すまない、少し邪魔させて貰おう』



そういやコイツを自分の部屋に入れるのは初めてだな
まぁ、寛ぐ時は居間で二人揃ってグダグダしてるし、夜はちょっと問題ありな気がするが
コイツの部屋の方で寝てたりで自分の部屋に居る時間が殆ど無かったからな


「おう、そこにでも座ってくれ。冷蔵庫しか置いてないから冷たいやつでいいか?」

『あぁ、それで構わない。気を使わせてすまないな』


「なに、この部屋初めての客人だ。御持て成しをしない訳にはいかないだろう?」

『そうか・・・、この部屋の客は私が初めて・・か、そう聞くと
 少し嬉しいような恥ずかしいような不思議な感じがしてくるな』



たしかに、男の部屋に自分から入るってのは年頃の女の子だと
ちょっと恥ずかしかったりするもんだよな。まぁ、コイツとは家族みたいな関係だから
あんまそういうの意識してないのかと思ったけど、そうでもないみたいだな
まぁ、不思議にも俺のことをスキだって公言する位だし、そうなんだろうな


「ほい、オレンジでいいよな?それで、話ってなんだ?」

『あぁ、ありがとう。早速本題に入るのは少々緊張もするのだが、躊躇していても
 仕方が無いか。ヘインには何度か私の気持ちを打ち明けたが、その度に卿は
 異常な世界で異常な事態で起きた錯覚だなどと言って真剣に聞いてくれなかった』


いやいや、そんなに頬膨らまして睨まれても怖く無いし、逆にかわいいと思っちゃうぞ?
って、馬鹿な考えを置いといて、こいつ急にどうしたんだ?
いや、こいつも絶望的な真実を知っちまって混乱してるんだな。うん、そうに違いない!


「まぁ、今日はいろいr『ヘイン、最後まで・・、最後まで聞いてくれないか?』・・分った」


『ありがとう。では、話を戻させて貰うが、卿は現実に帰った時のことを想定して
 私の告白を断っていた。違わなければ頷いてくれ・・。うん、違ってはいないんだな
 つまり、その承服しかねる理由で私の想いは、卿の中で考慮する段階にも行かなかった
 これも返事はしなくていい。私の発言が合っているなら頷いてくれ、合っているんだな?』



なんか魔法が掛かったようにひたすら食詰めの問い掛けに頷いていますが
これはどう考えても、やばい流れだよな?ただ、ちょっと目が据わってるコイツに
『今日は疲れてるし明日にしよっか?』なんて再度提案するのは怖くてちょっと無理だな




『その『帰ったら違う』という半ば不条理でもあり、ある意味理性的な卿の発言で
 私は情けないことに、卿に強く拒絶されるのが怖くて、もう一歩をどうしても
 踏み出せなかった。ほんとうに自分ながら恥ずかしいほどの臆病さ加減だと思う
 だが、今は状況が変わった。私達はもう帰れないんだ!そう、現実世界には二度と』



あぁ・・、こいつは、もう絶望的な現実を受け止めて前に進むんだな
そんで、その前にある目的が不思議な事に俺だったて言う訳か・・・?


それにしても、俺のどこに惚れる要素があるっていうんだ?
結局、大魔王を倒した英雄にもなれなかったし、その後の道を示せるような
ご立派な人物でもなく、いまもウジウジと落ち込んでいるってのによ・・・

ほんと驚かされてばかりだよコイツには・・
最初に会ったときから毎日がビックリの連続だよ
今だって自分なりの答えを出して、前に向かってもう走り始めてやがる

そんな姿を見せられると、保護者としてだけじゃなく
男としても情けないって気分になってくる




『そう、いまのこの狂った世界が私にとっても、お前にとっても全てだ
 だから、真剣に考えてくれないか?私の気持ちに答えを返して欲しい
 私はヘインの事が好きだ!大好きだっ!!誰よりも貴方を愛してます』


「あぁ、お前の気持ちは分かったよ。もう、こんな時だって逃げたりしないさ
 ちゃんと考えてお前の気持ちに返事する。一晩だけで良いんで時間貰っていいか?」



『あぁ、勿論だ。その、こんな夜に自分のことばかりで長々と済まなかったな
 それと、きょっ・・今日のヘインは最高にカッコ良かったぞ!大魔王の攻撃から
 私のこと庇ってくれたこと凄く嬉しかった。本当に嬉しかった。おやすみっ!』



■■




         「ったく、ドアくらい閉めてけよなぁ・・・」




先ずは風呂にでも入って落ち着いて、急に走っていった女の子のこと
真剣に考えて答えを出してみますかね

これからこの世界でどう生きていくかとか、そんな小難しい事を考えるのは
それが終わってからでも遅く無さそうだからな・・・

それにしても、この年代の女の子の成長は考えるよりもずっと早いって言うけど
いつのまに大人の顔するようになったんだな。嬉しいのやら寂しいのやらで
複雑な父親の気分ってやつかこれは?


まぁ、俺の保護者気取りも今日でお終いってことは確実だな
食詰めはこの三年以上の月日で大人になったんだと素直に認めよう
というか、俺なんかもう普通に追い越されてたりしてそうだけど・・・


まぁ、いい。とにかくアイツに笑われないような答えを出せるように頑張りますか






いつもの楽観的で妙に前向きな思考を失い俯きかけたヘインに
前を再び見る力を与えたのは『家族』として一番傍に居続けた食詰めであった

最初の出会いはとても運命的なものとは言えないようなモノだったが
二人は同じ時間を過ごす内に信頼し合う仲間から、『家族』になっていた

そして、少女は胸の内に芽生えた淡い恋心を少しずつ大切に、大切に育てあげ
勇気を出して、その真っ直ぐな想いを男にぶつけた

男はまだまだ自分が面倒を見ている気になっていた少女は
この狂った世界で様々な経験をして、時を過ごす内にヘインの横に並ぶ
一人の女性へといつのまにか成長していたのだ。


ヘインは自分なりの答えを出す為、眠れぬ夜を過ごす事になる。
大切な『家族』に恥ずかしくない答えを返すために・・・




■決断の朝■


普段は眠りの世界に居る筈の早朝、寝不足で幾分重い頭を無理して持ち上げ
ベッドから立ち上がると、ヘインは部屋に備え付けられた冷蔵庫から
よく冷えたペットボトルの水を取り出し
一気に飲み干すことによって強引に眠気を追い払う
二人にとって大切な朝が始まるのだ。寝ぼけている暇など無い


寝間着から外着に装備を変えたヘインは部屋を出て洗面所に向かい
顔を洗い、歯を磨く。いつもと変わらぬ行動を淡々とこなし、それを終えると
そのまま、一階に降りて玄関まで行き家をでて、一人だけの朝の散歩へと出掛ける


答えを出す前にどうしても会いたい、会わなければならない人がいた・・・




■■



      「おはようさん、また、下らない相談に来たよ」



そう言ってヘインは椅子に腰掛ける。向かいに座る少女からの返事は無い
そんな無口な少女の反応を特に気に留めた様子も見せず、ヘインは黙々と彼女に
ここ最近に起こった様々な事件や出来事を楽しそうに語り聞かせる。

デスティニーランドの悲劇、オフレッサーとの死闘に其処で出会った規格外な二人の少女
彼女たちに誘われて、多くの『求道者』達と共に大魔王討伐に向かい、
少なくない犠牲を出しながら、何とかそれを成し遂げたこと。
そして、結局帰る方法など無く、レンネンカンプからは逃げられないことを
語ることも、動く事も出来ないパウラに伝えていく



「悪りぃな。もしかしたら聞きたくないような事実だったかもしれない
 でも、大切な仲間のお前には俺達三人が体験して知った事を隠したくなかった
 勿論、お前を動けるようにしてやる方法ぐらいは見つけてやるから心配するなよ」



ピクリとも動かない義眼を少しだけ悲しそうに見つめながら
ヘインは彼女を必ずもとの動ける体に戻してやると誓う
自分のために全てを犠牲にしてくれた少女を放っておくような真似をするなど
出来るわけが無かった。



「そうそう、肝心なことを忘れる所だった。昨日、食詰めに本気の告白されたよ
 アイツの気持ちに気付いていながら、中東半端な理由で答えを出さずに来たけど
 こんな状態でも前に進もうとするアイツに、今はちゃんと返事しようと思ってる
 生憎とヘタレなんで、上手く答えられるか不安でお前に相談しにきてるけどな
 ちゃんと答えをこれからレンに伝えてくるよ。パウラ、聞いてくれてありがとな」




席を立ち、背を向けかけたヘインは振り返りながら、黙って自分を見つめる少女に
今日、一番彼女に伝えたかった事を告げる。もう、その顔には迷いは無い

ヘインは再び背を向け後ろ手で手を振りながらパウラに別れを告げ
散歩道の復路を往路より少しだけ軽快な足取りで歩んでいく
少し離れた所でニヤニヤとする早起きナフェルナーを無視しながら・・・


一晩とちょっとの時間と少しだけ『仲間』の力を借りたことによって
ようやく、ヘインは決心を固めることが出来たようである







玄関を開けると男の帰りを心待ちにしている少女が立っていた
少女は真剣な表情を崩さず、緊張で少し震える声で『おかえり』と言い
男は『ただいま』とだけ返して、目を瞑り両方の拳をぎゅっとして続く言葉を待つ
彼女をやさしく抱きしめた。


目を大きく見開いて驚きと喜びの混じった視線を向ける少女に
男は視線を逸らして続く言葉を中々発しようとしない


その煮えきらぬ男の態度に少女は口をへの字に曲げて不満を示すが
嬉しそうな表情は一向に崩れておらず、男にプレッシャーを与えることには失敗する

たが、その中途半端な表情は長く続かなかった。なぜなら、男が次に取った行動で
そのかわいらしい表情を歓喜の涙でクシャクシャに変えられてしまったのだから




  ~ プレイヤーのヘインより、結婚の申し込みがされました ~
       回答を行ってください。YES or NO ?



       「イエスだ・・、イエスに決まっているだろ!」
 




ようやく・・・、本当にようやく本懐を遂げた少女は男の胸の中で泣き続けた
過酷な運命によって、最悪な世界に捕らわれ出会った二人は一つのゴールに辿り着く
『レンネンカンプ』の生み出した悪夢に彼等二人が勝利した瞬間だった・・・






■ゲームオーバー■



ヘインと食詰めがフレンド登録から恋人登録を飛ばして結婚登録をしてから
幸せな日々を過ごす内に、『レンネンカンプ』の狂った時間は
半年ほど時計の針を進めていた。もっとも、現実世界では二日も経ていないのだが・・・


そんな幸せな日々が永遠に続くような錯覚を二人が持ち始めた頃
意地悪な運命の女神は二人の仲の良さに嫉妬したのか
唐突に全ての終わりを与えようとしていた。


『レンネンカンプ最後の日』は余りにも唐突に、あっけなく訪れることになる
平凡な一人の大学生が、終わりの引き金を引くことになったのだ。





■■



『うん・・・?ヘイン・・・??いないのか?』

「おっと、起こしちゃったか。ちょっと目が覚めてね。まだ眠たいだろ?寝てていいぞ」



悪い悪いと謝るヘインにこくりと頷く食詰めはヘインの視線に気付くと慌てて
シーツを引っ張りあげてニヤケ顔の男をちょっと怒った顔で睨むのだが
そんなことをしても、ヘインが動じる訳もないかと思いクッタリと頭を垂れて
『ヘインのスケベ・・・』と今更な文句を投げ掛けることで留めた



「そう怒るなって、そういや、お前もコレまだ着けてるんだな?」

『ふん、確かに台座と鎖だけになってペンダント部分の宝石は砕けてしまったが
 その、お前に貰ったという事実は失われてないからな。それに、私の想像だが
 これがお前を大魔王の攻撃から守ってくれた大切なアイテムではないかと思っている』


「確かに、あの時の攻撃はデスペナ確実の威力だったのに、俺は生きていて
 二人のペンダントが同時に砕けていた。確かに偶然にしては出来すぎだな」

『そうだろう?私達の愛の力がそのペンダントで増幅され
 大魔王の悪意を退けた。そう考えるのも一興ではないか?』




既に壊れたペアアイテムを自分と同じように
胸に鎖を垂らして見に付けている食詰めにちょっと驚きつつ、それに言及すると
ちょっと、恥ずかしすぎるんですがと言いたくなるような答えと
それを上回る恥ずかしさのアイテムに対する考察で返された。

エッチな夫に対する妻の微笑ましい逆襲は
ヘインをぞわぞわと身悶えさせる事に成功する


だが、その冗談交じりの考察がヘインの灰色の脳細胞に
真実に繋がる最後のワンピースを期せずして与える事になる




         「謎はなんとなく解けた!!」






酷く曖昧な答えを弾き出したヘインはそう一声をあげると、どうしたんだ問う食詰めに
晩飯までには帰ると適当にいって、素早く服を装備しながら寝室を飛び出ると
そのまま階段を転がり落ちるように降りて玄関を突破し、街中を駆け回る


擦れ違う知り合いには走りながら挨拶を返し、吹っ飛ばしたNPCのおねいさんには
マジ切れされて久しぶりに誠意の500帝国マルクを献上したりしたが
お構い無しに思いつく限りの場所を訪れていく

最初は帝国公共職業安定所、正直二度と行きたくないランキング堂々の一位で
『レンネンカンプ城』や『ガイエスブルグの塔』以上の鬼門だったが
ヘインは色々と嫌な思い出を振り払って、階段を駆け上がりながら
ほとんどプレイヤーが訪れる事が無くなったハロワ中のフロアを余す事無く駆け
目的の人物を探し出す為に後ろを向いている相談員を
強引に自分の方に顔を向けさせるなど、かなりの無茶もしたが

そこで彼女を見つける事は出来ず、迷惑行為お断りとハロワから叩き出されると
更に別の心当たりに向かって再び駆け出す。偶然見つけた希望のワンピース
落ち着いて止まっていられるほどヘインは達観していない


彼女が以前勤めていた馬車ショップ、ちょっと行ってみたいと漏らしていた
デスティニーランドの跡地、かわいい服が買えるといっていた男には入りづらい店
とにかく、思いつく場所には片っ端から当たっていく


それでも彼女が見付からない。息も切れはじめて足も休息を盛大に要求し始める
ヘインは一時の休息をとるため、最後の心当たりとしてふと頭に浮かんだ
腹ペコ少女に鯛焼きをプレゼントした公園へと足を向ける




     「遅いです。ヘインさん、鯛焼き冷めちゃいました」




並んで一緒に鯛焼きを食べた公園のベンチの前には
白のふかふかしたベレー帽を被った食詰めと同じ年頃の髪の長い少女が
鯛焼きの一杯入った袋を重たそうに両腕に抱えながら立っていた




■■


『積もる話もありますし、先ずは座りませんか?ちょっと手も痺れて来ちゃいましたし』

「そうだな、先ずは座って鯛焼きでも食いながら話そうか・・・」


重苦しい、この重い空気が一体どこから発せられているのか?
真実を守護する分厚い壁による威圧感なのか
笑顔の少女が放つプレッシャーによるものか、判断を付けられそうに無かった



「そんじゃ、さっそく本題に入るけどマコちゃん。お前何者だ?」

『単刀直入ですね♪ストレートなのは男らしいけど、焦りすぎると嫌われちゃいますよ?』


「ここまで来てはぐらかすなよ。腹を空かして食い物は食べるし、暫くすると成長してる
 他の普通のNPCとは確かに違う。お前が前に言った通りだ。お前は特別性のNPCだ」

『へぇ~、ヘインさんって抜けてるようで結構鋭いんですね♪尊敬しちゃいます!』


「偶然だよ。たまたま、この鎖だけのペアアイテムの不自然さに気付いたんだ
 疑って掛かれば、普通じゃ考えられないことのオンパレードだったしなお前は」



既に公園にはプレイヤーどころか、NPCの一人すら居なくなっていた
恐らくではるが、ナカノ・マコが持つ力を利用して他者を排したのではないだろうか?
大魔王のいない今、『レンネンカンプ』の世界で一番力を持つのは
多分、ここで鯛焼きを美味しそうにパクつく彼女なのだろう

こうして、いつものようにマイペースでチクリと嫌なことを言う少女に
ヘインもどうやら禅問答する気を無くしたようで、更に突っ込んだ質問を続ける



「そんじゃ、お前がこの狂った世界の支配者で、脱出の鍵を握っている
 俺のこの希望的に観測に満ちた予想は当たってるのか?それとも外れてる?」


『う~ん、お前じゃなくて名前で呼んで欲しいんかな?』
「オシエテクダサイマコチャン」


『なんでそこでベタなカトコトになるのかなぁ。もう、それ古いですよ
 まぁ、あんまり焦らしても仕方が無いから、パパッと言っちゃいますね
 私は突発性自立進化型ヒューマノイドNPC、パーソナルネームは
 マコ・ナカノ、ナント花も恥らう15歳設定まで成長しましたぁ~♪』



ぱんぱかぱ~んと陽気な効果音と共に知らされた事実に目を点にするヘイン
いきなり突発性なんたらかんたら言われて理解しろって言う方が無理である
それに、この世界から脱出できるのかできないのかという点では全く答えになっていない
ちょっと、腹が立ってくるし、そうなっても仕方が無い
ヘインがムスっとした態度を見せるのを大人気ないなどと言うことはできない



「マコちゃん、そういうのはいいから!冗談でも笑えないし、そもそも意味が分らん!」

『えぇ~、なんかちょっとSFチックでシリアスな男女っぽくしようとしたのに
 ヘインさんノリ悪いチョベリバですよ!もう、サノバビッチです!つまんないです』

「うん、もうそろそろオニイサンの堪忍袋も限界だから、分り易く教えてくれるよね?」


『はーい。ちょっとからかっただけなのに・・・、じゃ、気を取り直して説明しますね
 私はバグです!PC以上に人間らしいNPCって言えば分って貰えるのかな?
 だから、ヘインさんと同じようにお腹も経るし、ヘインさんが出来ない成長だって
 しちゃう訳です♪驚きました?あ、安心してくださいね!年齢は戻せますから
 シワシワのお婆ちゃんにはならないですよ!いつでもピチピチマゴギャル仕様です!』


「なんか、盛大に年齢のサバ読んでる気がしてきたけど、まぁ、いいや!
 細かい事を気にしたら負けだ!それで、ただのバグが何で周りから人を消せるんだ?
 そこまでゲームをコントロールする力は大魔王でも持っていなかったと思うんだが?」



とにかく話を進めたいと心底真っ当な理由でマコに続きを促すヘイン
ただのバグが何故ここまでの力を持っているのか?それは大きな疑問であり
もしかしたらと思う事が出来る希望でもあった。
一方、問われた少女はサバ読みか只のバグ呼ばわりのどちらかか、両方に立腹したのか
口を尖らしてぶーぶーブーイングを鳴らしていたのだが
いい加減にキレてきたヘインに『豚は死ね!!』と言われ、大人しく説明を再開する


なんとも緊張感に欠ける最後のネタ晴らしである。
だが、これこそクソゲーに相応しいと言えるのかもしれないが



■■



『・・・えっと、続けますね!そんな素敵なバグに目を付けた人達が居たのです
 その人達は『外』に居ました。多分、この世界を開放する為に試行錯誤している
 人達だと思います。つまり、イレギュラーのバグの私はセキュリティホールだった
 彼等は私にこの世界の致命的欠陥『ログアウト』出来ないバグを解決するPGを
 送り込んできた訳です!ほんと乙女の体に無理矢理侵入してくるなんて鬼畜です!』



ぷんすかぷんのすかぷんぷんとご立腹で状況を説明する少女に対して
ヘインは『続けろ』と冷たい目をしながら続きを促す
どうやら、彼ももうそろそろ限界のようである



『えっと、それで私にはこの世界を開放し、デスペナを受けているかどうか限らず
 元の世界に皆を返す力をその送り込まれたPGで与えられた『筈』だったんです』


「なんか、問題があったってことか?もしかして『大魔王』の存在のせいか?」


『ぴんぽーん♪さすがに理解が珍しく早くて助かっちゃいます!
 一応、私のお父さんな大魔王レンネンカンプにも中途半端にこの世界を
 管理する力が残ってたみたいで、脱出PGの作動が不可能だったって訳です』



彼女の説明はなんとなくではあるが、納得できる物だった
ただ、最後に一点だけ腑に落ちない大きな疑問が湧きあがってくる
多分、その疑問はヘインでなくとも多少の知能があれば気付く事が出来るものだった



「じゃ、なんでレンネンカンプのクソ野郎がくたばったのに
 俺達はまだこのクソみたいな世界に囚われたままなんだ?」


『ヘインさん。怖いよ。そんな目しながら、剣を突付けられてたら
 震えて喋れなくなっちゃうよ♪ところで、鯛焼きもう一匹食べません?』




二人の間にある空気は一瞬にして一触即発なモノへと変転する
ヘインは静かな動作で愛用の剣を抜き放ち、その白刃を少女の喉元に突付ける
にもかかわらず、少女は微笑を浮かべながら三匹めのタイヤキくんに齧りつく
見る者がもしその場にいたら、一歩も動けずにただ冷や汗を流したに違いない

だが、そんな状況はほんの一瞬であった。少女の続けて紡ぐ言葉と流した涙が
張り詰めた空気を再び穏やかなものへと戻すことになる



『女の子相手にそんな顔しちゃダメですよ!減点です♪・・・冗談は通じないみたいですね
 なんで皆が帰れないのかでしたよね?答えは簡単です。そんな事したら私殺されちゃう
 皆が帰れたら脱出PGの鍵なんか必要ですか?こんな危険なゲーム解析が終わったら
 二度と起動する事無く凍結されちゃいます!それ位私だって分る!私にだって
心はあります。死にたく無いって足掻くのダメですか?私は死ななきゃダメですか?』


「あ、いや・・えっと、ほんとゴメン。剣なんか突き付けたりして・・
 マコちゃんのこと考えてなかった。うん、悪かったハンカチ貸すから
 とりあえず泣くのはやめよう。もう、怖いことしないからさ。ほんと!」



仮想世界でも現実世界と変わらず、『女の子の涙』は最強スキルの一つのようである
ここで泣けば済むなんて思うなよと本音を漏らそうものなら鬼認定が確実だろう
ヘインも多分に漏れず、一飯的なヘタレ男子であったため
オロオロと少女を慰め、宥めながら説得する事になる
それは、彼女が泣き止むまで続けなければならない苦行であった
だが、どんな苦行にも終わりは来る。そして、いつかはゲームも終わる・・・




「えっと、もうそろそろ落ち着いてくれたかな?」

『はい。もう、ヘインさんいじめません?』 「あぁ、いじめないって!約束するする!」



『やっぱり、ヘインさんって超馬鹿が付くほどのお人よしですね♪
 それに免じて皆と一緒に帰してあげます♪私、貴方のこと大好きでした♪』

「ちょっ・・いきなり・・うんっむぅっ・・!?」



一番の笑顔でヘインに別れを告げた少女は、片手を合わせた唇に当て
もう一方の手を軽く振ってヘインに別れを告げた



レンネンカンプ事件発生から15日、ゲーム内時間で1526日が過ぎた頃
2500万以上の人々を巻き込み500万以上の人々の命を奪った前代未聞の事件は
まだまだ、物語を繋いでいく余地を残しながら唐突に幕を降ろした





■○○○からは逃げられない■


彼方此方で歓喜の声が聞こえた。もう絶望的だと思っていた人々の多くが
無事に現実世界へと帰還したのだ。


TVのニュースでは首相の麻垣康三がジオバンニ機関の功績を讃えながら
今後の日本共和国の再生を誓い、熱く語りつづける!
彼の話す言葉は野党のように甘い夢物語ではなく
厳しい現実を国民に見せる物ではあったが、それでも歯を食いしばって前に進もうとする

その覚悟に満ちた姿勢は強いリーダーの誕生を予感させるには充分であった
そんな首相を横で支える夫人は地球人でお日様を食べたりはしない
国民は安心してこの難局の舵取りを首相に任す事が出来そうであった


そんな喧騒が静まらぬ中、ヘインは覚醒間もないボーとした頭で目覚める前のことを
少しだけ思い出していた



■■



たぶん、マコちゃん半年かけて覚悟を決めたんだろうな
皆のために自分が犠牲になろうって、それで最後に喋りたかったのが俺だった訳だ

ったく、そんなことにも気付かずに、あんな小さな子を怯えさせるなんて
ちょっと自己嫌悪に陥りそうだけど、落ちて情けないまんまじゃ
あの子に申し訳ないよな!


デスペナ受けた人達もみんなまともに戻ってきたらしいし。義眼達も大丈夫そうだ
マコちゃんがきっと頑張ってくれた御蔭なんだよな?

ほんと、下手な人間よりよっぽど凄い子だったよ



俺も負けてらんねぇえよな!まずは教授陣に必殺の土下座泣き落とし作戦を実行だ
大学生活二年目にして卒延最大の危機だが、何とか乗越えて見せるかな
前期試験他にも受けられなかった奴はゴロゴロいそうだし、がんばりゃ何とかなるだろ
ふざけた大魔王に挑むより、教授陣の説得のほうが全然楽そうだ

今頃、俺と同じように現実世界に戻った食詰めや義眼も
期末テストなんとかしようと頑張ってるだろうし、俺も頑張らないとな


まぁ、もう帰れないと思ったから、あいつ等の住所とか連絡先しっかり聞かなかったから
頑張ってるかどうかなんて実際には確かめられないけど、あんなクソみたいな世界で
みんな一流の『求道者』として最前線で頑張ってきたんだ。なんとかしてる筈さ


ちょっと、寂しいけど結局は異常な世界での非現実的な日常だからな
思いでだけにして、このままそれぞれの道を歩いていった方がきっと良いさ






前に進む決意を固めたヘインはもう二度と会うことは無いだろう仮想世界の仲間に
少しだけ思いを馳せ、それを終えると頭を振って前に進み始める

先ずはマンションを出て、受けられなかった試験の追試やレポートでの代替を
頭の固い教授陣達にお願いしないといけない
それが上手くいけば、死に物狂いの試験勉強が始まるのだ


部屋でじっとしている余裕などない。新たな思いを胸に大学へと向かうヘインであったが
いきなり、その思いを盛大に圧し折られることになる



マンションの玄関を出ると目の前にくたびれた制服に身を包み、両手で支える
どこの粗大ゴミだよと問いかけたくなるような自転車にボロボロのリュックを乗せ
通い妻ってレベルじゃねーぞ!!って感じの少女が不敵な笑みを浮かべながら立っていた


どう見ても転がり込む気まんまんにしか見えない少女にヘインは頭を抱える


大魔王から逃げる事は出来ないかもしれないが倒すことはできる
だが、ちょっと貧乏なお姫様からは逃げることも出来ず、倒す事も出来無さそうであった


オンラインからオフラインに変わっても、二人の関係はゲームオーバーにはならない






            ~ G A M E O V E R ~









【被害者ファイル】



【パウラ・フォン・オーベルシュタイン】

現実世界帰還後、最初にやった事は愛犬のラーナベルに餌をやり、撫で回す事であった
その後、デスペナを受ける前に連絡先を聞いていた食詰めやフェルナーと共に
ヘインの住むマンションを訪れるなど、その交友関係は途切れる事は無かった
ヘインに対する想いも多少引き摺っているのか、幸せそうな二人を寂しそうに
見ることもあったが、やがて時がその傷を癒してくれるとその思いを
二度と表に出す事は無かった。

食詰めとは帰還後にちょくちょく二人でお出かけするようになるなど
今では出合った当初では考えられない位に仲の良い友人になっているらしい



【アントン・フェルナー】

心配する妻のビンタと熱い接吻に幼い愛娘の泣き声で一気に覚醒させられた彼は
『レンネンカンプ』にログインする前以上に溜った仕事を家族の生活を守るために
ヒーヒー良いながらテキパキと片付けていく、相変わらずな優秀さを現実世界でも
見せてはいるが、仮想世界のようにどこか傍観者的な態度を取る余裕は無く
二度とオンラインゲームに手を出さないと誓うのであった

義眼と共に休日にヘインの元を訪れるだけでなく、ヘインと二人で酒を飲みに行くなど
少しだけ年は離れてはいたが、どうやら彼等の友情を妨げる枷にはなっていないようだ



【アルフィーナ・ランズベルク】

現実世界に戻るとその有り過ぎる行動力を存分に発揮し、直ぐにグルックとリアに
コンタクトを取り、『デスティニーランド』を超えるテーマパークを作ろうと誓い合い
数ヵ月後には企業再建部門に移ったグルックが再生を図るレジャーランドで
リアとコンビを組んで美少女戦隊としてバイトに励んでいるらしい

彼女達三人が『情熱を受継ぐ者』として、日本の経済界に大きな足跡を
残す事になるのだが、それはもう少し先のことになる



【ジョージ・ゾロリ&ウォーレン・パペット】

レンネンカンプ事件解決後、投資産業新聞の大きな見出しが躍る
『二人の大投資家、破産を苦に自殺か?』と、彼等は事件に巻き込まれる前まで
買いに重きを置いたポジションを取っていた。そして、それが何を意味するのか
分らない彼等ではなかった。ゲーム内で執拗に人々の運命を弄ぼうとしたのは
この事件で大きく運命を狂わされたからだろうか?

死者は何も語らず、今となって真相は闇の中であるが
意味の無い仮定だが、彼等に緊急時に自分の資産を任せる事ができる仲間や部下が居れば
彼等の帰還後の人生は大きく違っていたのでは無いだろうか?



【ヨブ・トリューニヒト】

最後まで現実世界を見据え続けた怪物は、『レンネンカンプ』事件で得た声望と
経験を大いに生かして見事議員に当選する。

その後は、事件の当事者として日本共和国の再生に力を注ぎ大きな成果を出し続けるが
彼の前には常に『麻垣康三』偉大なリーダーとして立ちふさがり続け
仮想世界と違って最後まで元首の地位に付く事は叶わなかった

彼は元首ではなく、一閣僚として辣腕を振るった方が良いと考えて
彼を後継者に指名しなかった麻垣の判断は怪物じみた彼の資質に気付いていたからなのか
政治的ライバルの台頭を恐れたが故なのか、その答えを首相本人以外が知る事は無かった




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