<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

その他SS投稿掲示板


[広告]


No.6296の一覧
[0] クソゲーオンライン(銀英設定パロ)[あ](2020/02/21 23:53)
[1] クソゲーオンライン2[あ](2009/02/06 20:54)
[2] クソゲーオンライン3[あ](2009/02/15 16:18)
[3] クソゲーオンライン4[あ](2009/02/24 21:54)
[4] クソゲーオンライン5[あ](2009/03/01 15:46)
[5] クソゲーオンライン6[あ](2009/03/06 22:32)
[6] クソゲーオンライン7[あ](2009/03/08 20:06)
[7] クソゲーオンライン8[あ](2009/03/14 18:30)
[8] クソゲーオンライン9[あ](2009/03/15 16:48)
[9] クソゲーオンライン10[あ](2009/03/29 16:34)
[10] クソゲーオンライン11[あ](2009/04/13 21:12)
[11] クソゲーオンライン12[あ](2009/04/26 23:20)
[12] クソゲーオンライン13[あ](2009/05/24 17:54)
[13] クソゲーオンライン14[あ](2009/05/31 15:30)
[14] クソゲーオンライン15[あ](2009/06/20 18:00)
[15] クソゲーオンライン16[あ](2009/06/29 23:02)
[16] クソゲーオンライン17[あ](2009/07/04 21:08)
[17] クソゲーオンライン18[あ](2009/07/06 22:26)
[18] クソゲーオンライン19[あ](2009/07/11 16:54)
[19] クソゲーオンライン20[あ](2009/07/19 22:44)
[20] クソゲーオンライン21[あ](2009/07/27 22:30)
[21] クソゲーオンライン22[あ](2009/08/10 21:04)
[22] クソゲーオンライン23[あ](2009/08/12 19:50)
[23] クソゲーオンライン24[あ](2009/08/16 18:43)
[24] クソゲーオンライン25[あ](2009/08/16 19:21)
[25] クソゲーオンライン26[あ](2009/09/05 20:39)
[26] クソゲーオフライン27[あ](2009/09/12 18:46)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[6296] クソゲーオンライン25
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:80292f2b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/16 19:21
終わりがあるものには、必ず始まりがある
この当たり前のことですら人々は忘れがちである

原因があるから結果があるのに、その結果を予測し
自分にとって好ましい結果を生み出す原因だけを生み出せる人は
残念ながら、多くはいない

だからこそ、人々は予想外の幸福と不幸に翻弄される




■大魔王レンネンカンプ■



無言でサビーネ達と中ボスの死闘が行われた広間を後にした四人が
しばらく進むと長い螺旋階段が目の前に現われた
彼等はそれを一段一段、ただ黙々と目的地を目指して登り続ける


胸の内から湧き上がる哀しみと怒りを必死で抑えながら




彼等が収まらぬ感情を胸に階段を登り終えた先にあったのは一際大きなフロアだった
そして、その奥には今までこの城で見た中で、一番ご立派そうな扉があった

みな、あの先にクソッタレの大魔王がいる事を直感した
そして、勝敗に関わらず、これがこのクソみたいなゲームで最後になる戦いが
この先で待っていることを悟った。最悪な冒険の終点に辿り着いたのだと


誰彼ともなく目配せをし、頷きあい互いの決心を再確認した四人は
最後の扉の前に立つと、それをゆっくりと、だが、力強く開け放ち
その先の玉座に座る大魔王レンネンカンプと遂に対面することになる



正真正銘、四人とって最後の戦いが始まろうとしていた!




■■



『ようこそ、勇者諸君!幾多の困難、仲間との悲しき別れを乗越え
 よくこの大魔王の座す、玉座へと辿り着いた!その諸君等の姿に
 予も少なからぬ感動を覚えた。諸君等が望むのなら最後の戦いの前に・・』


「ふざけん!!クソ野郎!!!てめぇのクソみたいな講釈なんか聞く気なんかねーよ!
 毎回毎回、クソみたいゲーム作った上に、こんどは史上最悪大公害ゲームだと?
 いい加減にしろ!!さっさと、ログアウト出来るようにしろ!!デスペナを解除しろ
 現実戻って、その狂った脳味噌交換して貰って来い!!分ったかクソ髭デブ野郎!!!」



大魔王の言葉を無礼にも遮ったのはヘインだった
今までに溜まりに溜った思いが、したり顔で大魔王を演じ続ける姿を見て
大爆発してしまったのだ!その爆発振りに他の三人も多少の怒りの溜飲が下がったのか
続けて、クソッタレのレンネンカンプを罵倒することはなかったが
その敵意と侮蔑の篭った彼に対する視線が、ヘインと同じ思いであると雄弁に語っていた


そして、それは自尊心とプライドの肥大化した最悪の大魔王を激発させ
大魔王などと大層なモノではなく、彼をただの、レンネンカンプへと堕とす




『黙れ!黙れ小童共が!!碌に働いた事もない学生か、社会人になって10年も経ておらぬ
 ヒヨッ子に予の何が分るというのだ!!納期納期と五月蝿く追いたて無理して応えれば
 クソゲーでワゴン一直線だと!?どれだけ開発に時間が掛かるか、どれだけの労力が
 いるのかお前らは何も分っておらん!!望めば良ゲーが手に入るなど幻想に過ぎん!!
 いつもお前らはそうだ。ただ文句を偉そうに言うだけで、何も成すことはできない
 ただ、人を作品を企業をしたり顔で批判して優越感に浸るだけの卑小な存在に過ぎん!
 だから、この私が少しばかりその無駄を処理してやったのだ!!そうだ、これは善行
 日本にとって必要のない害虫を駆除する。ある意味必要悪とも言える行為の一環なのだ』


『ほぅ、八つ当たりのような自分勝手な主張から、国のための善行や必要悪とは
 話している間にご立派な行為に一気に変わったな。不良品の公害製品をばら撒いて
 随分と図々しい物言いだと心底呆れるよ。子供の戯言以下の主張を久しぶりに聞いたな』


支離滅裂で自分勝手なクソ髭男の主張に三人が呆れて言葉失う中
食詰めはまるで、パウラが乗り移ったかのような毒舌で
大魔王を自称する男の自分勝手で稚拙な主張を容赦なく、ばっさりと叩き切った



『むむむ・・・、まぁ、いいだろう!!貴様等がそう断じるなら、予は自分勝手で
 独りよがりな悪逆非道の大魔王という訳だ!!そう、予は貴様等が思うまま!
 貴様等が考えるまま!!邪悪な存在だ!!そうだ!予こそ、この混沌の世界を
 暗黒の絶望で統べる闇の王なのだ!!現実世界に返りたければ予を殺してみよ!』



年端もいかぬ少女に完膚無きまでに論破された情けない大魔王は
問答は無用ばかりに、最後の手段!暴力でヘイン達に己の主張の正しさを訴える!

最悪のクソゲーに相応しい愚劣な大魔王は頭に失った精神平衡を取り戻すことなく
狂戦士と化したような激しさでヘイン達四人に苛烈な攻撃を惜しげもなく繰り出す!!



「畜生!!ガキの癇癪みたいなこと言ってるくせに
 レベルだけは高いなんてインチキにもほどがあるだろ!!」

『はっはは、悔しければ運営側になるんだな!!現実ではルールに則った者ではなく
 自分の都合の良いようにルールを書き変えることができる者が勝者となるのだよ!』

『貴方みたいな人にだけは、そういう権限を渡してはイケナイと心底思いましたよ』



レンネンカンプが振り回す巨大なバールのようなモノの攻撃をギリギリよけたヘインは
毒づきながら、続いて攻撃を仕掛けたフェルーナに的が変わった瞬間後ろに下がる
既に立て琴の弦で攻撃を仕掛けたアルフィーナはその弦を大魔王の持つ棒で絡め取られ
そのまま振り回された後に床に強かに打ち据えられた気絶していた


伊達にレベルが530,000を超えているわけではないようである
棒という簡単極まりない獲物だからこそ攻略が難しく
そのまま、レベル差が力の差となってヘイン達一行を徐々に追い詰めていた



『ヘイン!このままだとジリ貧だ。私が突っ込むから魔法で援護を頼む』

「馬鹿野郎!無理するんじゃない。相手はまだ魔法も使ってきてないんだ
 下手に猪突なんかしたりしたら、あっさりデスペナ喰らうことになるぞ!」


『ふむ、確かに予はまだ魔法を使っていなかったな。では、ユーザーの要望に応えて
 この魔降の杖で増幅された極大呪文を盛大にお見舞いしてやろう!震撼するが良い!』




           『『 大魔王フェニックス!! 』』



思わずお前もかよ!!と突っ込みかけたヘインであったが、カーセと較べて
五倍以上の灼熱の不死鳥が、自分と食詰めを呑み込もうとしていたため
クソ野郎に突っ込みを入れるより先に食詰めを安全圏に突き飛ばした


 『ヘイン!?なんでっ・・』
「いや、なんでって家のカワイイ子を火傷させる訳にはいかんでしょ」



突き飛ばされながらも、ヘインを視線で追い続けた食詰めは
ヘインが灼熱の不死鳥に呑み込まれるのをただ見つめることしか出来なかった・・・



そして、この瞬間に全ての行動が一気に加速する


『青二才がカッコつけて死んだか』と大魔王が吐き捨てたのが、4秒後
切れた食詰めが受身から立ち上がってレンネンカンプに飛び掛り
爆裂呪文で吹き飛ばされたのが、その6秒後
それと同時にフェルナーはヘインに氷系魔法をぶつけ無理矢理火を消す


そのフェルナーの動きを見て『無駄な事を』とあざ笑った大魔王じゃ
魔降の杖から走らせた光弾でフェルナーを吹き飛ばし、壁に盛大なハグを強いる


十秒と少しばかりの時間で、ヘイン達一行はほぼ全滅状態にされる
レベル530,000・・・、桁外れの力を持つ大魔王は圧倒的な力を見せる




■終わりの果てに・・・■


気絶判定でしばらく動けないアルフィーナ
壁際で倒れて立ち上がることのできないフェルナー
爆発のショックでピクピクと指を動かすだけの食詰め


焼け焦げたヘインに至ってはもう動く気配すらもなく
既に、デスペナを受けているかもしれなかった



この時点で大魔王攻略作戦がほぼ終わり
後は圧倒的な力を見せた『暴君』大魔王レンネンカンプが、虫の息で横たわる者達に
止めを刺せば全てが終わる、そんな局面へと移行しようとしていた




■■



『ククック、実に愉快だ愉快すぎるぞ!偉そうな戯言を抜かした
 若造共が仲良く地べたに這い蹲る姿を見ると胸がすくような思いがする
 所詮、貴様等はただの1プレイヤーこの世界の想像主たる予に叶うわけがない
 どうした小娘?さっきまでの威勢の良さは?なんなら命乞いでもしてみるか?
 そうだな、奥の女と二人揃って予の慰みものにしてもいいかも知れんなぁ
 ようやくシステムの変更も終わって、予も少し暇になってきたからな名案だな』



ご機嫌で一人喋るレンネンカンプに下卑た目付きで見られ
怖気がするような言葉を投げ掛けられた食詰めは血を吐き出しながら意識を取り戻し
『くたばれ変態髭親父』と的確で痛烈な発言を無謀にも投げ返す
その言葉にはレンネンカンプの怒りを盛大に買い
彼に蹴り飛ばされて壁際までに吹き飛び、その傷ついたからを更に強かに打ちつけられる


また、不幸なことに食詰めはその痛みで逆に意識が冴え、気を失うことが出来ず
胃液と血の混ざった唾液を吐き散らしながら
苦痛と今しばらく闘わなければ為らなくなっていた

もっとも、怒り狂ったレンネンカンプが『お望み通り息の根を止めてやる』と
興奮しながら近づいていてきたので、長時間の苦痛にはなら無さそうであったのだが・・・




地獄の淵からギリギリの所でUターンに成功した男が
ふざけた種族とふざけた特技を生かして、ふざけた事をしたクソ野郎に報いを与えた!!




「はぁ・・、これだけは・・使いたく・・、なかったんだけどなぁ・・・、108万ボルトだ!!」


『馬鹿なぁああああガガアガアッ!!レディ、ガガガ1?ッナナンラララ!!』



「へっ・・・、電気ポケモソ舐めんな・・・・よ」





全ての生命力を賭けたヘインの隠し球が、食詰めの命を乱暴に刈り取ろうとした
愚かで哀れな男の命を削って生み出した電撃によって血液を全てフットーさせる
大魔王とて人間のプレイヤー、血が沸騰すれば生きて入られない
リアルに準じた自分自身が作った仮想世界のルールが皮肉にも圧倒的な大魔王を殺す


魔法耐性の関係のないふざけた種族の属性攻撃だったからこそ成しえた奇跡だった
大魔王は己の立てたクソみたいなルールと自らの悪ふざけが原因で

全ての生命力を燃やす電撃を放ち、仲間のために犠牲になった凡人に
圧倒的な優位を崩され、非道の報いとして敗北という名の苦杯を舐めさせられた




■■



ヘイン、お前は本当にすごい男だよ
私を庇って、そのうえ私のピンチを命がけで救って・・・
それで、絶対倒せないような大魔王まで倒しちゃうんだから


なのになんで、なんで目を覚まさないんだ!!まだ、ログアウト出来てないぞ
その前にお前の連絡先聞かないともう会えないじゃない馬鹿!!

だから、だから目を・・、目を開けてくれ
嘘でもお前の死に顔なんかに耐えられるほど強くないんだ



『閣下もお疲れなんです。今はゆっくりと休ませてあげませんか?』

『そうですよ。きっと現実世界に返っても探せばどこかで会えますよ』


嫌だ!!休んじゃダメだ!きっとなんかじゃダメなんだ!!
ヘインが、ヘインが傍にいないなんて、耐えられる訳ないじゃない

いままで、ずっとずっとヘインと一番長い時間わたしがいっしょにいたんだ




「うるせーよ・・・、食詰め・・泣き過ぎ、鼻水・・涎と垂らし・・すぎ、べちょってるぞ」








余りの五月蝿さではなく、あるアイテムの御蔭で目を覚ましたヘインに
『ヘインのお馬鹿野郎!!』と怒鳴りながら食詰めは力一杯抱きつき
再び、ヘインをデスペナの淵に落しかけたりもしたが


とにかく、四人生存という満足できる内容で大魔王を打倒することに成功した
あとは、何らかの方法でログアウトし、現実世界でデスペナを受けた
パウラを始めとする人々の安否を確認するだけである



最高とはいえないが、最悪ではないゲームクリアを彼等は成し遂げた筈であった・・・





■レンネンカンプは終わらない■


若干パニ喰った食詰めが泣きやんで落ち着き、残り少ない回復アイテムを使い
なんとか普通に動ける程度に回復した四人は何度かログアウトを試みるが
一向に、ログアウトがすることはできなかった


最初の内は、四人とも直ぐにはゲームクリアに反応しないだけかと
思い込むことで平静さを装っていたが、一時間、二時間と経っても
全くログアウトができないことにやがて焦り始め、落ち着きを失っていく
最悪の予想が彼等の頭の中に浮かび上がり始めていた



レンネンカンプのクソ野郎がフカシこきやがったのでは無いかと・・・



■■



どういうことだよ。この部屋のどこにもそれらしい者ないじゃないか!!
一体どうなってるんだよ?レンネンカンプを倒せば
ここで横たわってるクソピザ野郎を倒せば、現実世界に返れるんじゃなかったのか?
クソクソッ、イラつくぜぇえ!!畜生、俺を舐めてんのかぁ??



『落ち着けヘイン、先ずは落ち着いて私と結婚しよう!』
「って、お前が一番落ち着けよ!!」



『もう!二人とも下手な漫才なんてしてないで、こちらを調べるの手伝ってください!』

「悪い悪い。ちょっと、取り乱してた。直ぐいくわ!」
『すまない。ちょっと、どさくさに紛れ込ませようとしていた』

「お前のはちょっとどころじゃねーよって、さっきの狙ってやってたのかよ!!」
『私はいつだってお前のことを狙っているのさ』



『いいから、とっとこっちへ来い!!』



「すみません、直ぐ行きます」『すまん、悪ふざけが過ぎた』



『やれやれ、今から似たもの夫婦というか、それにしても困りましたねぇ』







諦めたのか、それ所じゃないのか、いつも以上にべた付く食詰めを容認しながら
ヘインはアルフィーナに叱られながら必死に、ログアウトの方法を探して
大魔王の部屋を調べ回る。もっとも、先程までの差し迫ったデスペナの危機が無いため
しばらくの間は結構深刻そうな顔で盛大に焦ったりしていたのだが


『ヤバイ、ヤバイすぎるよ。フェルナーさん』とか訳の分からない事を言ったりしながら
レンエンカンプの私物もついでに漁りつつ、ログアウトの方法を探すなど
いつもの四人らしさを徐々に取り戻し、若干、緊張感が欠きはじめていた


だが、意地悪な事に最悪の事態だけは何度でも起こる『レンネンカンプ』の世界は
そんなほのぼのとした光景を許してくれるほど、甘い世界ではやはりなかった




          大魔王レンネンカンプが再び立ち上がった




■■



『随分と必死になっているようだが、目的の物はありましたかな?』




わいわいがやがやと大魔王の私室を漁りまくっていた四人は
一瞬にして凍りついた。だが、それも無理からぬことだろう

死力を尽くして闘って、打ち倒した大魔王レンネンカンプが
再び無傷で立ち上がって、自分達に気安く声をかけてきたのだから



「てめぇ、勝手に復活してんじゃねーよ!!って、それより、どうなってんだよ
 くたばったんだろ!!無傷で勝手に蘇るとか意味ワカンネーよ。そのうえ
 お前を倒したのに全然ログアウトできねーじゃん!一体どういうことなんだよ!」




その余りの態度と予想外の事態にぶち切れたヘインは怒りをぶちまけるのと併せて
さっさとログアウトの方法を教えろと、無礼にも大魔王を脅すような口調で詰問するが
寛容な大魔王レンネンカンプは微笑を浮かべながら
あっさりと残酷な答えを告げて、彼等を絶望の淵に落としこむ




『ログアウトの方法?そんなモノ予は知らんよ。それが簡単に分かるのなら
 そもそも、ここまで深刻なバグにはなってないだろう。考えて分らんのかね?』


『つまり、貴方はなにも出来ないにも拘らず、我々を含めて多くの人々を騙したと?』



信じられない大魔王の返答に言葉にならない罵声を
浴びせかけようとするヘイン達に変わって
彼に質問を投げ掛けたのは、最大限の努力を払って平静さを保ったフェルナーだった

レンネンカンプは彼の質問に満足そうな笑みを浮かべながら頷いて
彼の指摘が全て正しい事を肯定する





       誰もこのクソゲーから逃げ出す事は出来ないのだと
 



この余りとも言える仕打ちと現実に嗚咽を漏らしながら
なぜ、こんな酷い事が出来るのかと感情をぶつけるアルフィーナに
大魔王レンネンカンプは心底楽しそうな顔で、更なる絶望を生む答えを彼女に与える



『どうしてこんな事をするの?・・・か、さっきも言ったではないか?
 予は大魔王なのだ。貴様等が思う通り邪悪な存在だ。不幸生み、それを楽しむ
 それが魔王に相応しい仕事だとは思わないか?事実、予を倒す為に必死になって
 ここまできた貴様等の絶望する顔を見て、予は今日ほど人の不幸が面白いと
 実感した日は無かった。この禁断の密の味さえあれば、予は悠久の時の中にあって
 退屈することなく、楽しんですごす事が出来る。貴様等にはとても感謝しておるよ』


「史上最低の下衆野郎だよ。てめぇは逆恨みで更なる不幸を好き放題に振りまいて
 それで苦しむ人達を見ながら喜ぶなんて趣味悪すぎだ。反吐が出る変態野郎だよ!」



その汚れ切った大魔王の言葉にヘインは罵声をあげずには居られなかったが
精神的に圧倒的優位に立ったレンネンカンプは、大魔王としての威厳を失うことなく
逆に、ヘインの行動に対する感謝の言葉を続けて述べて、絶句させる



『中々、手厳しい意見だが、さすがはこの大魔王を倒した男ということかな?
 そうそう、貴様には感謝もしておるぞ。まさか、一度とは言え倒されるとは
 思っておらなかったから、予を倒したと狂喜した後にそれが糠喜びであったと
 気付いた時の絶望の表情が、巨大な敵を前にした時の絶望の表情より、余程深い
 絶望に染まっているという貴重な情報を、予に身をもって教えてくれたのだからな』
 


全員の表情が失望と絶望の色に染まったことを確認した大魔王レンネンカンプは
最後にヘイン達の健闘を讃えると、再びバールのような魔降の杖を天高くかざす

議論の時間は終わり、全回復した最悪の魔王と、満身創痍の『求道者』達の
第2ラウンドのゴングが鳴らされようとしていた


だが、この勝算0、よしんば勝てても再び蘇った大魔王と何度でも戦わなければならない
史上最低な状況にも四人は剣を置く事はなく、瞳に諦めの色を宿すものはなかった


シルヴァーベルヒやグルックの見せてくれた『情熱』と言うものを知っている
パウラやサビーネ達が命がけで繋いでくれた『可能性』を彼等は背負っている




 『さて、楽しい会話にもそろそろ飽きてきた。もう、そろそろ死んで貰おうか
  無論、足掻いて貰っても構わんよ?先程のような奇跡が起きないとは言えぬからな
  もっとも、そうなったらそうなったで三度立ち上がった予と戦うことになるだけだが』



この日、もっとも醜い笑みを見せた最低な男
大魔王レンネンカンプは報われる事のない『求道者』達に、再び牙を剥く・・・!!





■始まりは終わり■


その日は、ほんとうにいつもと同じような日だった
何の変哲もない少しだけ退屈なやさしい日常に包まれた日になる筈だった


やさしい夫に、少しだけ生意気なかわいい悪戯小僧
彼女はそんな大切な人々と、当たり前で何よりも大切な日常を
これから先もずっと、ずーっと過ごしていくはずだった


残酷な悪魔が仕掛けた罠に嵌る事さえなければ・・・







       「ふ~んふふ~ん♪ふ~ん、ふふ~ん~♪」



まるで料理をするときに歌うような鼻歌を歌いながら
夜の街を歩く女性の年の頃は20歳台後半といった所だろうか?

少しだけ虚ろで瞳が曇っているような点を差し引いても
整った鼻筋に小さくて形のいい口に厚過ぎず薄すぎない唇
色白の肌に少しだけ施された化粧は、彼女を人々に佳人であると認識させる

逆にその虚ろな瞳も彼女をより魅惑的な女性に魅せるのに一役買っていそうであった



そんな美しすぎる女性(以後、里美と呼称)は覚束ない足取りで夜の街を歩く
彼女はある簡単な動作をするため、一人目的地を目指して
死の淵を彷徨っている亡者のような足取りで、ふらふらと前へ進んでいく



だれもが羨むような幸せが滲み出ているような美しさを持つ彼女が
こうまで歪んだ美しさを身に付ける事になったのか

答えは簡単である。幸せを永遠に失って、彼女は不幸になったのだ。



彼女の幸せは、彼の愛する子供が手にした悪魔のゲームが原因で失われた





        そのゲームの名は『レンネンカンプ』










用意した夕食を食べに来ない息子にちょっとだけ怒った里美は
少年が『レンネンカンプ』をプレイする『リアルファイト』が置かれた子供部屋まで行き
いつも通りの行為を行う。そう『強制終了ボタン』を押したのだ


部屋に残されたのは動かなくなった子供と愛する子供を手に掛けた母親だった
彼女自身は何も悪くない。だが、子供の命を直接奪った原因は彼女の行為にあった


そして、その動かし難い事実で彼女の心を容赦なく切り刻んだ



そんな傷ついた妻を彼女が愛する夫は放っておくなど出来なかった
彼は必死で彼女は何も悪くないと慰め、励まし続けた

だが、彼女は息子を殺したという罪の意識
息子を失った悲しさ、寂しさから一向に立ち直る兆しはなかった


前向きでやさしい夫は、愛する妻に一日でも早く笑顔を取り戻して欲しかった
だからこそ、焦って最悪の選択をしてしまったのかもしれない


彼は子供を失った寂しさだけでも癒してやろうと
新しい子を授かる為に彼女を抱いた



自分の腹を痛めていない事による浅慮だったのか
もともとの浅はかさだったのか、彼の妻を想う余りにでた
最後の賭けとも言える行動は、妻にとって最悪の行為だった



彼女は愛する息子の代わりを作ろうとする、愛するケダモノに穢された
彼女は愛するが故に、その悍ましい行為を拒否できない





            彼女の心は壊れた





自宅から姿を消した里美は、壊れた心に残る最後の人間らしい感情
殺意を満足させるため、かつて、レンネンカンプ本社だった場所に向かった

そこは、代表者レンネンカンプが仮想世界に逃避して以後
ジオバンニ機関の管理下に置かれ、事件解決に必要な物は既に徴発されており

十数名の警備員と研究員に眠れる虚構の王がいる
廃墟になる一歩手前の状態になっていた


そんな場所に、人間の心を失い化物へと姿を変えた彼女を
止める事が出来るような力を持った者は、誰もいなかった

ノックの音で彼女の訪問に気付いた警備員は
モニターで相手が線の細い女性だと分ると何の警戒も無しに通用門を開けてしまう
そして、化物の透き通るように美しい微笑みに気を取られた瞬間

果物ナイフで腹を抉られて倒れ伏し、ビルに化物の侵入を許す
警備装置も警報も鳴らす事も出来ず、仲間の警備員に報せる事も出来なった




そして、苦も無く目的地への侵入を果たした化物は
途中で何人かの警備員を傷つけ振り切りながら、目当ての場所まで辿り着き
タックンとの約束を目の前で眠る男にも適用する





        「ゲームは一日一時間、ポチッとな♪」





あどけない少女のような笑顔でかわいらしい言葉を発した化物は
2500万を超えるプレイヤーの誰もが為し得なかった偉業を指一本で成し遂げる


  

       大魔王レンネンカンプの頭はフットーしちゃった





■落城レンネンカンプ城■



再び襲いくる大魔王レンネンカンプの攻撃に身構える4人は
杖を振り上げたまま静止した彼の姿を油断無く睨みつけていたのだが


だが、一分経っても、三分経っても攻撃を仕掛けるどころか
一言も発せず、微動だにしないその姿に不審を感じ始めていた




■■



「おい!どうした?さっきの威勢はなんだったんだ?かかって来るんじゃないのか?」
『・・・・・・・・』




ヘインの問い掛けは沈黙を持って返される
先程のまで雄弁にべらべらと不快な発言を繰り返していた
レンネンカンプとは思えない反応に、ますますヘイン達四人は混乱する


『どうやら様子がおかしそうだ。ヘイン近づいてちょっと見て来てくれないか?』

「嫌だよ。なんで俺なんだよ?お前が見てこれば良いだろ」 『私は嫌だ』


「って、お前・・、自分が嫌なこと人にさせようとすんじゃねー!!」
『駄目か?』



人を食ったような笑みで、食詰めに再度お願いされたヘインは
女の子に危険なマネさせる訳にもいかないかと自分をごまかし

そぉーと動かないレンネンカンプに近づき、持っている剣を思い切り振り上げ・・



           「  そぉいっ!! 」



気合を込めた一撃をぶちかますと、既に動く力を失った豚は倒れた
その後、他の三人達も持っている武器で斬ったり、刺したりと
やりたい放題して見るものの、まったく反応が無いため


彼等は現実世界の人為的な電プチによって
大魔王レンネンカンプの脳味噌はフットーしたのだろうという結論にようやく達する
さすがに代表者のプレイする付属品のバッテリーが粗悪品だとは考えられなかったからだ




『考えてみれば、いつ殺されても不思議では無い男ですからね』


「遅かれ早かれって事だったのか、そう考えると必死になって挑んだ
 今回の攻略作戦も無駄だったってことか?みんな無駄死にかよ・・・」

『確かに作戦自体は無駄だったかもしれない。だが、彼等の犠牲があるから
 私達はこうして立っていられるのではないか?彼等の犠牲は無駄なんかじゃない』



『そうですわ!天は自らを助くる者を助く、私達みんなの思いが
 きっと現実世界にも届いたんです。そう考えると素敵だと思いません?』

「そっか、そうだよな。腐ってもゲームだ。ゲームの世界ぐらい努力が実らないとな」








根本的な問題は何一つ解決せず、逆に唯一の手掛かりも嘘で塗り固められた紛い物
そして、齎されたのはなんとも言えない不完全燃焼で消化不良気味な結末

なんとも言えない空気と思いに捕らわれた四人だったが
無理矢理に自分自身を納得させて、今回の大魔王討伐に対する気持ちに整理を付けた


そう、彼等は思考を意図的に大魔王討伐の結末についてだけ向けていた
今だけは、厳然として残りつづける最悪な問題から目を逸らしたかったのだろう




   『レンネンカンプからは誰も逃げられない』という事実から



  ・・・ヘイン・フォン・ブジン公爵・・・電子の小物はレベル5825・・・・・


                ~END~


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.034636974334717