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No.6101の一覧
[0] 真・恋姫†無双  短編集 「青空の向こう」 (10/26 更新 [nanato](2009/10/26 13:56)
[1] この空のどこかに[nanato](2009/06/05 23:04)
[2] その空は遠すぎて[nanato](2009/05/16 21:01)
[3] 空なんて見たくもない[nanato](2009/05/16 21:03)
[4] せめて空に戻るまで[nanato](2009/05/16 21:02)
[5] 空に帰ったとしても[nanato](2009/04/09 18:29)
[6] 青空はその色を変えて[nanato](2009/06/10 14:23)
[7] 空に見つけられず[nanato](2009/06/06 21:12)
[8] 違う空の下[nanato](2009/06/20 22:18)
[9] 番外編 空に消えたという人[nanato](2009/07/04 23:41)
[10] この空には何もなく[nanato](2009/07/17 18:49)
[11] ただ空を待つ[nanato](2009/10/26 13:54)
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[6101] ただ空を待つ
Name: nanato◆6d214315 ID:c07f94a2 前を表示する
Date: 2009/10/26 13:54


「兄ちゃん!早く」

「少しは落ち着けって」

今日は兄ちゃんに誘われて街に来ている。
二人で街に行ってご飯を食べようって誘ってくれた。
最近なんだか難しそうな顔をしている兄ちゃんと久しぶりに二人で出掛けられるのが嬉しくて思わずはしゃいじゃった。
追いついてきた兄ちゃんは少しだけ息を切らしていて、なんだか申し訳なくなった。

「兄ちゃん、ごめんね」

「いや、平気だけど。それにしても季衣はあれだけ食べた後でよく走れるな」

「僕、まだまだ食べれるよ」


そう僕が言うと兄ちゃんはおかしそうに笑って頭を撫でてくれた。


「じゃあ次は何が食べたいんだ?」

「あそこの串が食べたい!」

「じゃあ買うか。俺も食べようかな」


僕は十本、兄ちゃんは一本だけ買うとその場で二人で食べ始めた。
一本だけでいいの?と聞くと兄ちゃんは「十分だよ」と言って苦笑いをしてる。
こうやって二人で食べるのはなんだかいつもよりおいしく感じて、すぐに食べ終わっちゃった。

「季衣。ほら」

「ん」

兄ちゃんが服についてる、ぽけっとってところから布巾を出して口を拭いてくれた。
昔にもこうしてもらったことを思い出してなんだか懐かしくなった。






「ねぇ、兄ちゃん」

「ん?」

いつもよりもたくさんご馳走してくれるのはなんでかな?
ちょっとだけ不思議に思った。

「なんで今日はこんなにごちそうしてくれるの?いつもはお金無くなる~、って困った顔するのに」

いつもおなかが減った時に兄ちゃんにねだると困ったような顔をしてた。
それでもいつも一個だけだぞ、って言いながら買ってくれていたのがいつもの兄ちゃんだった。
そうやって聞くと兄ちゃんはほんの少しだけ考えるようにうなった。

「もうお金を残しておいても意味ないからな」


「どういうこと?」


そう言った兄ちゃんは少しだけ、寂しそうに見えた。
なんでだろう?
不思議に思ってじっと見つめると兄ちゃんはごまかすように笑った後、いつも勉強を教えてくれる時みたいに、言い聞かせるように丁寧に説明してくれる。


「戦が終われば華琳からご褒美たくさんもらえるだろ。それなら今はケチらないで季衣にうまいもの食べてもらって頑張ってもらった方がいいだろ」

「ほんと?」

「ああ。それ以外に何かあるか?」

兄ちゃんは笑いながら聞いてきた。
そういわれればそうかもしれない。
兄ちゃんはたくさん頑張ってたから華琳さまもご褒美をくれるのは当たり前だよね。
寂しそうに見えたのはきっと勘違いなんだ。


「そっか。そうだよね」


そう納得したらさっきまであったもやもやするものが無くなったように思えた。
なんだか安心したらおなかが減ってきた。


「じゃああっちの肉まんも食べる!」

「よし任せておけ。ほら」


そう言って手をこっちに差し出してきた。

手をつなぐのはなんとなく照れくさかったけど、でも嬉しくてすぐに兄ちゃんの手を握った。
兄ちゃんの手はすごくあったかくて、こうやって兄ちゃんと手をつなぐのが大好きだった。
いつもみんなに弱い弱いって言われる兄ちゃんだけど、兄ちゃんの手はすごく大きくて、なんだか安心した。


「うん」


ぼくが返事をすると兄ちゃんはゆっくりと歩き出して、僕もそれに合わせて歩いた。
いつもなら走っちゃいたくなるけどこうしているとそんな風には思わなかった。
兄ちゃんと手をつないで歩いているといつもとおんなじ街でもすごく楽しいところのように思える。

たくさんの人たちが兄ちゃんを見ると声をかけてくる。
お店の人とか、警邏中の人とか、子供とか色んな人たち。
街の人に声をかけられる兄ちゃんを見て、みんなも兄ちゃんのことが大好きなんだって思った。
ぼくと同じなんだって思った。
そう思うとなんだか嬉しくなって思わず手を強く握っちゃって兄ちゃんの顔を見上げると、兄ちゃんは笑いながら握り返してくれた。
そうしているととても幸せで、怖いことも、いやなことも何もなかった。


ずっとこうしていたいな、って思った。



兄ちゃんと手をつないでいたいな、って思ってた。




ずっと、ずっと。







北郷一刀は天に帰った。
そう告げられたのは皆がようやく平穏を手に入れたと喜んだ翌日だった。






兄ちゃん、早く。早く帰ってきてよ。
兄ちゃんは帰ってくるよね?
だって華琳様からご褒美もらってないから。
ぼくもたくさんご褒美もらったから今度は兄ちゃんにご馳走してあげるから。
兄ちゃんは優しいから、ぼくたちが待ってたらきっと帰ってきてくれるよね。
兄ちゃんは優しいから、このままいなくなったりなんかしないよね。
やだよ。もう会えないなんてやだよ。
たくさん泣いて、子供だって笑われてもいいから

ずっと、待ってるから。









あとがき

もうすでに待ってくれている方々もいないかもしれませんが書きあがったので投稿。
この短編集書いてて「あれ?三人称ってどう書くんだっけ?」ってなって三人称を書きまくってたら「あれ?この短編集ってどう書くんだっけ?」となってしまい筆が遠ざかりほぼリハビリ作。
そのせいで今までのとは感じが変わってるかも知れません(汗

季衣は子供。実は大人なところもあるとかの捻りもなく、ただ子供な子供をイメージしてかきました。実際書いてて季衣の一人称で使える語彙が春蘭以上に少なくて書きにくくてしかたがない。リハビリ作なので文章量少なめですけど個人的には秋蘭とかのssより凪とかこれのような装飾少なめのシンプルな文章を書く方が好きかもしれません。

PS.絶賛放置中にPV10万いっちゃって感想も100いきそうで嬉しいやら申し訳ないやらですけど、見てくださってる方、感想を書いてくださってるかたありがとうございます。


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