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No.4919の一覧
[0] ハッピーエンドを君達に(現実→シークレットゲーム)【完結】[None](2009/01/01 00:10)
[1] 挿入話Ex 「日常」[None](2009/01/01 00:05)
[2] 第A話 開始[None](2009/01/01 00:04)
[3] 第2話 出会[None](2009/01/01 00:05)
[4] 第3話 相違[None](2009/01/01 00:05)
[5] 挿入話1 「拠点」[None](2009/01/01 00:06)
[6] 第4話 強襲[None](2009/01/01 00:06)
[7] 第5話 追撃[None](2009/01/01 00:06)
[8] 挿入話2 「追跡」[None](2009/01/01 00:07)
[9] 第6話 解除[None](2009/01/01 00:07)
[10] 挿入話3 「彷徨」[None](2008/12/20 20:05)
[11] 挿入話4 「約束」[None](2008/12/10 20:01)
[12] 第7話 再会[None](2009/01/01 00:07)
[13] 第8話 襲撃[None](2009/01/01 00:08)
[14] 挿入話5 「防衛」[None](2009/01/01 00:08)
[15] 第9話 合流[None](2009/01/01 00:09)
[16] 挿入話6 「共闘」[None](2009/01/01 00:09)
[17] 第10話 決断[None](2009/01/01 00:09)
[18] 挿入話7 「不和」[None](2009/01/01 00:10)
[19] 第J話 裏切[None](2008/12/19 04:13)
[20] 挿入話8 「真相」[None](2008/12/20 20:40)
[21] 挿入話9 「迎撃」[None](2008/12/20 20:07)
[22] 第Q話 死亡[None](2009/01/01 00:10)
[23] 第K話 失意[None](2008/12/25 20:01)
[24] JOKER 終幕[None](2008/12/25 20:01)
[25] 設定資料[None](2008/12/24 20:00)
[26] あとがき[None](2008/12/25 20:02)
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[4919] 第A話 開始
Name: None◆c84e4394 ID:a86306dc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/01/01 00:04

いつもよりも重い目覚めの中、ゆっくりと意識が覚醒していく。
まず気になったのが、酷く重い頭と床の固さだった。
寝ている間に転がってベッドから落ちたのだろうか?
ここ4年は落ちた事は無かったのに、と寝起きの呆けた頭を捻らせながら上半身だけ起き上がる。
重い頭を振って周りへ視線を送ると、いつもの見慣れた自分の部屋とは全く違う廃墟の様な汚れた室内が目に入った。
壁は壁紙などで覆われておらず、床に敷かれた絨毯も埃塗れである。
絨毯の上に寝ていたのに床を固く感じたのは、その絨毯がボロボロで毛も潰れ切ってしまっている所為であった。
室内には机が一つに半壊した本棚だったもの、そしてスプリングが飛び出した酷い状態のベッドがそれぞれ部屋の隅に置かれていた。
最後の隅には扉があるため家具は置けない。
そして机があるのに何故か椅子は見当たらなかった。

「何だ、此処は?」

つい口から出た疑問は、誰も答える者の居ない室内に虚しく消えていく。
確か昨日は…何をしていただろうか?
記憶を掘り出そうとするがどうも混乱している様で、記憶がはっきりとしない。
今の俺の格好は肌着のシャツの上に長袖のポロシャツを着て更に上着としてジャケットを羽織っている。
ズボンは何処も破れていない綺麗な黒色のジーパン。
全体的に黒い色で統一されている、何時もの外出用の普段着である。
外に何かをしに出ていたのだろうか?

    ピー ピー ピー

現状に困惑していると、耳障りな電子音が耳を打つ。
音の発信源は室内に1つだけある、汚れきった机の上からだと思われた。
一度体の調子と各部に損傷は無い事を確認しておく。
少し頭は重いが身体に怪我とかは無い様だ。
しかし最も問題にしなければならない事は、首に何かが嵌っている事であった。

「何だこりゃ?首輪?」

手で触ってみると何か、金属のような冷たくて固い感触が指に当たる。
それは首の周りをぐるりと一周しており、指が入る隙間も無く首にぴったりと張り付いていた。
引っ張ろうとしても、引っ掛かりのない首輪の表面を指が滑ってしまう。
周りを見渡すが、鏡の類も見当たらない。
これでは首を確認する事が出来ないではないか。
仕方が無いので首輪について、今は諦めておこう。

それから、音の発生元を確かめてみようと立ち上がった。
一瞬脱力感に襲われたが、何とか踏ん張って耐える。
眩暈は軽いもので、脱力感も気張っていれば問題は無さそうだ。
寝起きにしてもこの脱力感というか倦怠感は異常である。
この状況は拉致でもされたのだろうし、何か薬でも盛られたのだろうか?
ふらつく心身を、もう一度頭を振ってしっかりさせようとするが、重い頭は治ってくれない。
身体の調子はその内回復するだろうと諦めて、次の疑問に進む。
先ほどから一定感覚で鳴り続けている音の発生元が気になっていた。
机の方へと近づくと、そこにはこの汚れた室内には不似合いな真新しい薄型の機械が1つだけ置かれている。
機械は縦10センチ、横6センチほどで、厚さは1センチもないくらいに薄いものだ。
現在上を向いている広い面には、その機械のほぼ全体を占めるほど大きな液晶画面が備えられているものだった。

「…P、DA?」

嫌な予感が脳裏を過ぎり一度周囲を見渡すが、変化は無く静かな室内があるだけだ。
置かれている機械を拾い上げて見てみると、その画面に描かれていたのはトランプの<ハートの3>であった。





第A話 開始「QのPDAの所有者を殺害。手段は問わない」

    経過時間 0:14



普通の大学院生である筈の俺、外原早鞍(そとはら さくら)は本日の目覚めより面倒な事に巻き込まれた様だ。
それも現実的ではない、『ゲーム』の世界に入り込んでしまったかの様な状況である。
先ほど起きた部屋の中で拾った小さな機械を手にしているが、その画面に映し出されたものを見て俺は愕然としていた。

「3だと?!」

手に持ったPDAの液晶画面には、間違いなくハートマークが縦に3つ並んだトランプの<ハートの3>の絵柄が映し出されている。
呆然と画面を見詰めていたが、不意に我に返った。
こうしていても仕方が無いので、PDAの内容を確認しておこう。
どう見ても良く知る『ゲーム』に出て来たあのPDAにしか見えない代物である。
操作については『ゲーム』内でも説明があったので、その通りに使ってみよう。
画面下部にある唯一のボタンを押し込んでみると、最初の画面表示から別の表示へと変化した。
画面の上の方には、経過時間及び残り時間とバッテリー残量を示しているメーターがそれぞれ横に並んでいる。
現在の経過時間は0:15、そして残り時間は72時間45分と表示されている。
『ゲーム』と同じく73時間が全ゲーム時間の様だ。
バッテリーメーターは一杯に表示されており、つまりは満充電状態なのだろう。
更にその下には「ルール」・「機能」・「解除条件」の3つの四角に囲まれた項目が横に並んで表示されている。
解除条件を触るとまた別の画面に切り替わり、件の解除条件とやらが表示された。


    「3名以上の殺害。首輪の作動によるものは含まない」


予想された文字が並んでいたので、軽い眩暈に襲われた。
本当に3名を殺害しないと成らないのか?
殺害の部分でズキリと頭が痛くなる。
危険な感じがしたので頭を押さえて軽く振り、その事を思考から追い出した。
今は現状の確認が最優先だ。
続いてルールの項を触り画面を切り替えてみると、幾つかの画面に渡り以下のような文面が表示された。


    1.参加者には特別製の首輪が付けられている。
      それぞれのPDAに書かれた条件を満たした状態で首輪のコネクタにPDAを読み込ませれば外す事が出来る。
      条件を満たさない状況でPDAを読み込ませると、首輪が作動し15秒間の警告を発した後、建物の警備システムと連携して着用者を殺す。
      一度作動した首輪を止める方法は存在しない。
    2.参加者には1~9のルールが4つずつ教えられる。
      与えられる情報はルール1と2と、残りの3~9から2つずつ。
      およそ5,6人でルールを持ち寄れば全てのルールが判明する。
    3.PDAは全部で13台存在する。
      13台にはそれぞれ異なる解除条件が書き込まれており、ゲームの開始時に参加者に1台ずつ配られている。
      この時のPDAに書かれているものがルール1で言う条件にあたる。
      他人のカードを奪っても良いが、そのカードに書かれた条件で首輪を外す事は不可能で、読み込ませると首輪が作動し着用者は死ぬ。
      あくまでも初期に配布されたもので実行されなければならない。
    7.指定された戦闘禁止エリアの中で攻撃した場合、首輪が作動する。


こちらも見た事のある文章が羅列されていた。
確実にあの『ゲーム』と非常に似た状況に巻き込まれている様だ。
現実にこのような事が可能なのか?
それともゲームに入り込んだのか?
いや、それは余りにも非現実的だろう。
どちらにしても厄介な事に成っては来ている。

多分こんな状況なら、その裏側も似た様なものではないだろうか?
つまりは、今何らかの形で自分の行動を見て楽しんでいる者が居るかも知れない。
ここで下手な発言や行動を起こすと、その見ている者達、特にゲームの主催者側に不振を抱かせる事がまず危惧された。
また、この「ゲーム」が自分の知る『ゲーム』と全く同じものなのかも気になる。
現実にこのような舞台を設置し、実行する事が可能なものだろうか?
他のルールや参加者などの情報も重要だ。
どのような人物がどんな解除条件を割り当てられたかで、今後の行動に大きな差異が出るだろう。
そうなると最初にPDAの画面の3番を見て驚いた事も、今更ながらに失敗しているかも知れない。
まあ、俺が『ゲーム』を知っている事は事前調査で判っているだろうから、問題は無いと思うのだが。

疑問は尽きないし確かめなくてはいけない事も多いが、今判明している情報は限られている。
まずは行動を起こさなければ先には進めない。
PDA以外に使えそうなものは無いかと再度室内を見渡すが、バック類を含めて使えそうなものは何も見当たらなかった。
現状荷物は無いから要らないのだが、今後を考えれば武器や食料品などを入れるためのバッグは欲しい。
しかし無いものは仕方が無いか。
そう言えば此処に椅子が無いのは、過去の参加者が武器として持ち出したからなのだろうか?
『ゲーム』では棚などの家具が壊れているのは武器の調達のためと推測していた場面があったし、同様の事なのだろう。

服の中に使えそうなものが無いかとも思い探してみるが、携帯電話や財布も含めてポケットには何も入っていない。
財布も無いという事は、その中に入れていた家の鍵も持っていない事になる。
起きた直後は外出中に攫われたと思ったが、本当にそうなのだろうか?
外に出るのに携帯は兎も角、財布を持ち出さない筈が無い。
どういう事かは判らないが、混乱している記憶に何かあったのかも知れない。
出来れば早く思い出したいがどうにも靄が掛かってるようで、無理に思い出そうとすると頭痛に苛まれてしまう。
痛いのは御免だったので無理に思い出そうとするのは止めておいた。
他にする事も無いし、そろそろ出発しよう。
薬によるものであろう脱力感を引き摺りつつ、PDAのみを持って部屋から出るのだった。



部屋と同様に埃まみれの汚い廊下へ出てみると、右手方向にのみ通路が続いている。
袋小路な部屋に居た様だ。
早速PDAの「機能」を触ると思った通り「地図」の項目が在ったので、その項目を触って地図を出した。
そこには、1つの画面では収まりきらない広大な地図が表示される。
『ゲーム』でも言われていたが、あまりの広さに眩暈を覚えた。
周囲の地形と見比べるが似たような地形が多く、特定は出来なさそうだ。
どちらにせよ進める道は1つなので、もう少し情報を集めてから再度確認すれば良いと考えを切り替える。
廊下を進む事にするが、此処で問題なのは罠であった。
引っ掛かれば一人では何も出来ず、そのまま1階の進入禁止に突入という事も有り得るのだ。
即死級の罠も無いとは言い切れない。
『ゲーム』では1階に少なくとも3種類の罠があった筈であるし、この建物にも在ると思って動いた方が無難だ。
情報が揃い切っていない状態なので、注意をしてし過ぎる事は無いだろう。
慎重に罠を警戒しながら、周囲に目線を配って歩き出した。

曲がりくねった廊下を進んでいくと、途中の廊下脇に幾つかのドアがあった。
『ゲーム』の様に何か有用な物が置いてあるかも知れないので、その扉毎に部屋の中を確認して行く。
勿論他の参加者が居る可能性も有るので、扉を開く時は中の物音を聞いたり、ゆっくりと開いたりと慎重さを忘れない。
すると3つ目の部屋で新しそうなダンボール箱が置かれていた。
開けてみた所、中から沢山の食料品と救急箱、それに登山家が使うような大きな背負い袋が入っている。
また箱の隅には小さな黒いボックスが2つ転がっていた。
『ゲーム』ではツールボックスだったか、有用なソフトウェアをPDAに追加するものだった筈だ。
ボックスの表面に書かれてあるアルファベットを読むと、「Tool:Self Pointer」と「Tool:Map Enhance」と書かれている。
これはラッキーだ!

迷う事無くその1つをPDAの側面にあるコネクタに装着させると、小さな電子音と共に画面が切り替わった。
ソフトウェアの説明だろう文章の下に「インストールしますか?」が表示され、更に下には「はい」と「いいえ」の選択肢が出ている。
即座に「はい」を触った。
「しばらくお待ち下さい」の文字とその下にメーターが表示されて、メーターがどんどん右端の100%へ向けて伸びていく。
一応その下には、途中で抜いたりすると故障の恐れがある事が書かれている。
100%まで溜まると「インストールが完了しました。ツールボックスをコネクタから外して下さい」と表示されたので、ボックスを抜き取ると画面が地図の画面に切り替わった。
導入したツールの機能確認は行なわずに、同様の操作をもう1回別のボックスで行なう。
これにより、2つのツールが俺のPDAに導入された。
導入されたツールの内容は以下の通りである。


    Tool:Self Pointer
        擬似GPS機能。現在地を地図上に表示する。
    Tool:Map Enhance
        地図拡張機能。地図上に各部屋の名称を記載する。


序盤から終盤まで非常に有用な2つのソフトウェアを手に入れられたのは幸先が良いと言える。
欲を言えば、トラップ表示機能も欲しいのだが。
さっきから罠の警戒に神経を使っていた事を思い出して、肩を落とすのだった。

さてPDA内の地図が有効活用出来る様になったので、これからどうしようか?
行きたい所に行ける様になった事は、こちらの行動範囲を大幅に広げる事になっている。
『ゲーム』において主人公達は優先的にエントランスホールを目指していた。
俺もそうした方が良いのだろうか?
問題はまだ見ぬルールの5。
時間と共に上に上がらなければ成らない事である。
さっさと上に上がって強力な武器を手に入れた方が良いだろうか?
だが、ルール8が適用されている間に他の参加者と会っておきたい気もする。
それよりもそのルール5や8は『ゲーム』通りなのだろうか?
ああ、考えが纏まらん。
また悩み始めた頭を冷やすために首を何度か横に振った。
よし、此処はまずエントランスホールを目指そう。
エントランスホールの状態を見てから、再度状況を整理して見れば良い。
そこに誰かが居れば儲けものでもあるし。
PDAの地図よりエントランスホールと思われる最も大きい広間までの最短ルートを調べた上で、行動を開始するのだった。

エントランスホールまでの途中の部屋で錆びていない鉄パイプを見付けた。
だが持っていくと他者に警戒心を持たせてしまいかねないと思い、持ち歩く事は止めて置く。
実際にEp1の御剣達は、鉄パイプを持った高山を警戒して接触をしないで居たではないか。
今は出来るだけ他の参加者と接触してルールを集めるべきなのに、相手が寄って来てくれないのでは困ってしまう。
大体、鉄パイプを持って何をするのだ?
他者を攻撃してルール通りに3名殺すのか?
また頭の中をギリギリとした痛みが襲う。

「ぐ、ぅ」

今までに無い、呻き声が漏れてしまう程の痛みに頭を抱えて蹲った。
目の裏まで痛みが襲い、吐き気がして来る。
確かに他者を殺す事は悪い事だ。
だが何故此処まで身体が拒否反応を起こすのか?
俺は何かを忘れているのか?
そう言えば俺は何者だ?
外原早鞍は何処から来た?
自分のルーツがあやふやに成っている事に、今になって気付く。
霞掛かっている記憶に何かあるのだろう。
何故かそれだけが謀ったかの様に抜け落ちていた。
催眠術か何かにでも掛けられたのだろうか?
死については考えない様にして数分ほど休むと頭痛は治まってくれた。
立ち上がった後、ゆっくりと伸びをして身体を解す。
異常が無い事を確認してから俺は部屋を出たのだった。



他は特に目ぼしいものは無いまま1時間くらい歩いた所で、エントランスホールに到着した。
ホールはかなり広い空間を有しており、そこから幾つかの通路が延びている様だ。
地図通りの様相に安堵の息が漏れる。
一辺は出入り口らしいのだが、そこには遠目から見ても判るようにシャッターが下りておりホール内を薄暗くさせている。
そうしてホール内の様子を見ていたら、入り口のシャッター付近で幾つかの人影が何か調べものをしている事に気付いた。
警戒して柱に隠れながら近付いて行くと、微かに話し声が聞こえて来る。
エントランスホールに3人、つまりはこれが『ゲーム』だったならEp1か4といった所であろう。
だがまだ開始から2時間も経っていない。
Ep1なら6時間経過の直前だった筈なので、有り得るとするならEp4だけだ。
まあこれは『ゲーム』での話であり、有り得無い事なのだが。

色々と考えながら、人物が特定出来るまで近寄ろうと柱の影を利用して近付いて行く。
人影は男1名に女2名の3名だった。
男含む2名が高校生くらいであり制服を着ている事からも学生と思える。
残り1名の少女の体は小さいし、小学生ではないだろうか。
兄弟姉妹だろうか?
こいつ等が誘拐犯って事は無さそうではあるが、油断も出来ない。
観察対象の3名は入り口側を調べるのに夢中で、柱の影から出て更に近付く自分には全く気付いていない様だ。
多分此処で攻撃した場合、まだ見ぬルール8に抵触して自分はセキュリティに殺されるかも知れない。
そう言えば、『ゲーム』で3番だった長沢勇治は似たような状況で死亡したのだった。
取り敢えず人と出会えた事は喜ばしい。
お互いに情報を交換して現状を把握出来れば助かるというものだ。
3人の様子に害は無さそうに見えたので、気を少し楽にしていた。
ある程度近付いた所で声を掛ける。

「もしもし、そこの御三方。ちょっと良いかな?」

声に反応して、3人はこちらへと振り返る。
明らかに警戒の眼差しを向けられたので、それ以上は近付かない様にした。
距離はまだ5メートル以上はあるので、あちらも警戒し易いだろう。

「すまないが、此処が何処だか知っているかね?
 知らない内にこんな所で目覚めたのだが、状況がさっぱりなんだ」

「そうでしたか。ですが俺達も多分似た様な状況なんです」

俺の無難な問いに、あちらの唯一の男である少年が答えてくれる。
言葉に偽りが無ければ彼も強制参加者なのだろう。
少年は前髪が少々長めではあるが、それなりに短く切った髪に学生服を着ている事から高校生なのだろう。
年齢が上の方の女性は、服装はセーラー服で長い黒髪にヘアバンドをした、同じく高校生くらいの少女。
下の子はワンピースの私服で、大きなリボンを用いて髪を後ろに纏めている小柄な少女だ。
彼等のその外見に少し違和感を覚えたが、まずは現状確認が優先として違和感を振り払った。
3人共無害そうな感じだし、彼等とルール確認をするのが良いだろう。
もし可能なら彼らのPDA番号と解除条件も知りたいが、贅沢過ぎかも知れない。

「出来れば、互いにルールの確認がしたいんだが、構わないか?」

「ルール、ですか?」

疑問符で返された質問に、少々頭が痛くなった。
一番重要とも言える、自分で確認可能な情報を整理していないのだろうか?
そんな時俺の後ろ側より声を掛けられた。

「こ~んに~ちは~」

間延びした女性の声だった。
振り返るとチンピラ風の格好をした細身の男性とひらひらの服を着た腰くらいまで伸びた長い髪の女性がこちらへ向かって歩いて来ている。
綺堂、渚、なのか?
何処からどう見ても、この特徴的な服装に間延びした口調は綺堂としか思えない。
しかしあれは当然『ゲーム』内の人物であるし現実では居ない者だ。
それでも此処まで似通った人物達が揃ってしまうと、嫌な想像が頭から離れてくれない。
そう、よく考えてみれば、だ。
シャッター前で出会った3人は、御剣総一、姫萩咲実、色条優希にそっくりであり、後から来た2名は綺堂渚と手塚義光にそっくりだった。
しかしEp4ならこの場面は手塚と郷田が御剣達に出会う場面である。
いやそれを言ったら、此処で死んでいない「3番」の自分が居る事が既に異なっていると言えるのだが。
だがそうだとしても、自分の行動で変わるのは「此処」での状況だけであって、別の場所で動いている2人の動きにまで干渉しないだろう。
内心酷く動揺していたので、これが『ゲーム』である事を前提に考え出している事に気付き、頭を振って否定しようとする。
しかしこの状況では中々頭から離れてはくれない。
思考に没頭していた為か、チンピラ風の男と最初に居た少年との会話をかなり聞き逃していた。

「―――で此処から出るのは不可能だと思います」

「確かにな。こりゃ、念入りにやっている様だな」

入り口のシャッターが下りている中で、そのシャッターが一部だけ破れている場所を男性2人が覗き込んでいる。
女性3人の方は、こんな状況なのに服の話に華が咲いている様だ。
現状が理解出来ているのか疑わしい女性陣と真剣な男性陣の差が如実に出ている。
そんな男女差はこの際措いておき、ルールの確認がしたいと切実に思った。
もしこれが『ゲーム』に入り込んでいるものだとしても状況は『ゲーム』と多少異なるし、他にも差異があるなら早目に知っておきたい。

「皆すまないが、ちょっと良いか?」

それなりの声量で周りに問い掛けると、全員がこちらを注目して来る。
人に注目され慣れていないので、気恥ずかしさに一度咳払いをしてから言葉を続けた。

「各人のPDAに記載されているルールの確認をしておきたいのだが。とても重要な事なんだ」

「そいつは俺も賛成だな。何も知らずに、いきなりルール違反でした、で殺されるってのは笑えねぇ」

チンピラ風の男が真っ先に賛同を表す。

「そう言えば、先ほどもそんな事を言われてましたね。
 俺もルール確認については賛成です」

続いて少年が同意してくれた。
女性陣には異論は無いのか、特に反対意見は出て来ない。
そのまま此処に居る6人が車座に集まった。

「まず自己紹介から、が妥当かな。俺は外原早鞍。大学院生だ。
 気付いたらこの建物の一室で寝かされていたので、全く現状が判っていない」

「次は俺かね。手塚義光(てづか よしみつ)だ。
 俺も知らない内に此処に連れて来られた様だな。
 館内をうろついている時に、こっちのお嬢ちゃんと出会ったんだ」

続いて右隣に座るチンピラ風の男が自己紹介をする。
細身ではあるが体はしっかりと鍛えられている様で、力も強そうだ。
運動神経も良さそうであり、更にはそのギラつくような生命力に溢れた眼が印象的である。
連れて来られたの部分では、心底悔しそうに顔を歪めていた。

彼の名前を聞いて、心臓が止まりそうになった。
その外見はおろか名前まで同じ人物が、『ゲーム』と良く似た状況にある。
盛大なドッキリに嵌りました、の方が余程マシと言えるのだが…。

「私は~、綺堂渚(きどう なぎさ)って言います~。宜しくお願いしますね~」

続いて、手塚と一緒に現れた女性が、妙に間延びした声で自己紹介を行なった。
真面目に聞くと脱力感に襲われそうだ。
実際に真面目に思考していた脳が蕩けそうに成り始めていた。
緊迫した場面では決して聞きたくない、と思わせる演技力と言える。
声と同様に雰囲気もどこか頼り無げな、ふわふわした印象を抱かせた。
可愛らしいその顔からはとても年齢2じゅう…っと考えた所で綺堂がこちらにニコリと笑いかけて来る。
目が笑ってないのですが、女の勘なのだろうか?
取り合えず彼女の年齢については考えない様にしよう。
そうそう、18歳だと『ゲーム』でも言っていたな、うん。

「姫萩咲実(ひめはぎ さくみ)です。制服で判ると思いますが、高校生です」

綺堂と同じく腰まで伸びている、綺麗な黒髪にカチューシャだろう髪留めをつけている。
服装は言うようにセーラー服だ。
今までの対応を見ていると、どちらかといえば引っ込み思案な方なのだろう。
運動神経もあまり良く無さそうだ。

「色条優希(しきじょう ゆうき)です。えっと、学生って言えばいいのかな?」

一番年少の、髪をポニーテール風に大きなリボンで結んだ少女である。
線の細い可愛らしい子ではあるが、先ほど女性のみで話していた様子では性格は活発な方の様だ。
しかし今は手塚や俺を警戒して萎縮しているのか、大人くしている。

「御剣総一(みつるぎ そういち)です。俺も学生です」

最後に制服を着た少年が自己紹介を行なった。
短めに切った髪とそれなりの長身で、スポーツでもしているのか、体もしっかりと作られている様だ。

俺を開始点として反時計回りに簡単な自己紹介が終わった。
各人の名前だけを聞くと『ゲーム』と丸っきり一致する。
郷田と綺堂の変更はあるがゲームマスターとしての都合だろうか?
Ep4の序盤での場面としては申し分無い状況と言えた。
本当に『ゲーム』内に入り込んでしまうなどという事が起きているのだろうか?
取り敢えず現状では『ゲーム』と同等と見て、各人に対応して行く事にした。

「さて、ルールの確認に移ろうと思うが、ルールの1と2は全員に載ってるらしいから3からだな。これは俺のに載っている」

3番のルールは前に自分のPDAで見ていたので、それを再度確認しながら皆に伝える。
4番以降、4番は姫萩に、5番は手塚と御剣に、6番は綺堂に、7番は姫萩と色条と自分に、8番は綺堂と御剣と色条に、それぞれ記載されていた。
以下が判明したルール一覧である。


    1.参加者には特別製の首輪が付けられている。
      それぞれのPDAに書かれた条件を満たした状態で首輪のコネクタにPDAを読み込ませれば外す事が出来る。
      条件を満たさない状況でPDAを読み込ませると、首輪が作動し15秒間の警告を発した後、建物の警備システムと連携して着用者を殺す。
      一度作動した首輪を止める方法は存在しない。
    2.参加者には1~9のルールが4つずつ教えられる。
      与えられる情報はルール1と2と、残りの3~9から2つずつ。
      およそ5,6人でルールを持ち寄れば全てのルールが判明する。
    3.PDAは全部で13台存在する。
      13台にはそれぞれ異なる解除条件が書き込まれており、ゲームの開始時に参加者に1台ずつ配られている。
      この時のPDAに書かれているものがルール1で言う条件にあたる。
      他人のカードを奪っても良いが、そのカードに書かれた条件で首輪を外す事は不可能で、読み込ませると首輪が作動し着用者は死ぬ。
      あくまでも初期に配布されたもので実行されなければならない。
    4.最初に配られている通常の13台のPDAに加えて1台ジョーカーが存在している。
      これは通常のPDAとは別に、参加者のうち1名にランダムに配布される。
      ジョーカーはいわゆるワイルドカードで、トランプの機能を他の13種のカード全てとそっくりに偽装する機能を持っている。
      制限時間などは無く、何度でも別のカードに変える事が可能だが、一度使うと1時間絵柄を変える事が出来ない。
      さらにこのPDAでコネクトして判定をすり抜けることは出来ず、また、解除条件にPDAの収集や破壊があった場合にもこのPDAでは条件を満たす事が出来ない。
    5.進入禁止エリアが存在する。初期では屋外のみ。
      進入禁止エリアへ侵入すると、首輪が警告を発し、その警告を無視すると首輪が作動し、警備システムに殺される。
      また、2日目になると進入禁止エリアが1階から上のフロアに向かって広がり始め、最終的には館の全域が進入禁止エリアとなる。
    6.開始から3日間と1時間が過ぎた時点で生存している人間全て勝利者とし、20億円の賞金を山分けする。
    7.指定された戦闘禁止エリアの中で攻撃した場合、首輪が作動する。
    8.開始から6時間以内は全域を戦闘禁止とする。
      違反した場合は首輪が作動する。
      正当防衛は除外する。


最後のルール9番が無いのは非常に痛い。
『ゲーム』通りなら各首輪の解除条件一覧が載っている筈なのだが。
『ゲーム』では手塚のPDAに記載されていた筈だが、今の彼のPDAに入っているルールは、1・2・3・5だけらしい。
此処に綺堂が居る事と合わせて微妙に『ゲーム』とは異なる様だ。
そういえばこの時点ではルールの4も未判明の筈だが、これが姫萩のPDAに記載されている所もおかしい。
これが渚のPDAに載っていたのなら判るのだが。
微妙に異なる『ゲーム』との違いが致命的な事態を招く可能性も有るので、楽観視が出来なく成って来ていた。

再度思うが3番の俺が死んでいないのは、この「異なり」を招いた原因ではない筈だ。
この歪みは、此処で御剣達を俺が攻撃するか否か以前に発生している事項にまで及んでいる。
つまり最初からこれはEp4ではない、似てはいるが独自のルートと言えるかも知れない。
もしEp4の通り進んでいればこのまま御剣達と行動を共にする方が生存確率が高かったのだが、これは候補から除外した方が良いのだろうか?
考えを捏ねながら、色条のノートの一部を貰って御剣が書いたルールの一覧を書き写しておく。
やはりルール一覧は今後も必要に成りそうだと思ったからである。

「これは…冗談ですかね?」

「現実的では無いよなぁ」

姫萩と御剣がまだ暢気な事を言っている。
とは言え此処で長沢が死ななかった分、現実味が湧かないのだろう。
かといって自分が死んで見せる気にも成らない。
ああ、御剣に死んでみろと言えば死にそうか?
被殺害希望者だし。

模写を終えると次の手塚に渡す。
彼も先ほどからルール表を欲しがっていたのだ。
俺は皆を見回してから徐に立ち上がる。

「ルール9は判らず終いか。どちらにせよJOKERの存在も問題だな。
 一人の方が動き易いし、ちょっと周りの様子を見て来るよ」

少し皆と離れてから尻や足についた埃を払いながら軽い調子で言い、背を向けて歩き出した。
ちょっと言い訳臭かったか?
だがこのまま彼等と戦闘禁止中の時間を共にするのは勘弁願いたい。
此処でボーっと時間を潰すのは無駄が多いのだ。

「外原さん、待って下さい。皆で行動した方が良くないですか?」

「周りの様子や部屋を探索するだけだ。ぞろぞろ行っても邪魔だから一人で行くんだよ」

少年の提案に対し、振り返らないまま後ろに手を振って答える。
そのまま通路に入ってからPDAを取り出して、周辺の地理を把握していく。
近くに倉庫などの特別に記載された部屋は無く、物資は期待出来そうに無い。
今後の事も考えて、此処から使える階段及びエレベーターまでの経路を確認しておく。
此処からなら階段の方が近いようだが、それでも最低で2時間は掛かりそうだ。
まあ実際の歩行時間については、かなり目算が入っているので正確では無いが。
地理が把握出来たので周辺の各部屋の探索に移行した。
拡張された地図上に名前が出ていない小さな部屋も、一応確認して回る。
6時間経過までは御剣たちはエントランスホールに釘付けだろうから、その間に出来る事をしておこう。

目ぼしい物は見付からないまま時間が過ぎていた。
しかし相変わらず埃臭いし、薄暗いし、だだっ広い建物である。
気を沈ませていきながら三叉路を通過した時、不意に声を掛けられた。

「よう、外原じゃないか。こんな所をうろついて何やってんだ?」

手塚が別の通路からやって来ていた。
予想しなかった遭遇に内心酷く焦ったが、表面上は冷静な振りを出来た様だ。
気持ちを落ち着けながら彼に言葉を返す。

「さっきも言ったように周辺の探索だが?そっちも単独行動の様だが、御剣達はどうした?」

「あぁ?足手纏いと行動を共にする気はねぇ」

そして、クックック、と嫌な含み笑いをする手塚。

「大方てめぇも同じ考えなんだろう?だから真っ先に席を立った」

違うかい?とでも言いたいのだろうか?
そんな目をしてこちらを見ている。
俺もそんなにお人好しでは無いつもりだ。
最初は誰かは判らなかったが、今現状判明している人物は所詮『ゲーム』内の偶像だ。
場合によっては御剣達を殺して首輪を外そうとも考えている。
だがそれは最終段階の話であり、今は最後に始まるであろうエクストラゲームも候補に挙がっていた。
これなら全員を無条件での解除可能状態に出来るかも知れないが、本当に可能だろうか?
取り敢えず手塚の誤解は解いておかないと、同類と思われても困ってしまう。

「あー、俺は別に足手纏いとは思わんがね。出来れば周りとは協力していきたいと思ってるぜ?」

俺の言葉に手塚は肩を竦めた。
多少呆れが入っている様だ。

「てめぇはちっとはマトモだと思ったんだがな」

「何をもってマトモと為すか、の違いだな。
 少なくとも、この茶番を企画した連中の思い通りは、気に入らん」

手塚の意見に対して軽く返してみる。

「企画?…企画ねぇ」

軽く言った言葉に、頭を捻る手塚。
そういえばこれが「ショー」である事を知っているのは、この時点ではゲームマスターくらいだったか。
相変わらず抜け目が無い手塚に、余計な情報を与えてしまったかと危惧してしまう。

「まぁ良い。お前はあいつ等と運命を共にするってやつか?好きにしな」

俺に背を向けて階段方向の通路へと歩き出そうとする手塚に、つい口から余計な言葉を吐いていた。

「ああ、好きにさせて貰う。少なくともこのまま争い合うって事は、連中の思い通りって事で悔しいんでね。
 俺達を争わせて楽しんでいる犯人どもの思惑を、潰えさせてみたいと思わないか?」

何と言うか売り言葉に買い言葉的な返しに成ってしまった。
本当は此処まで思っても居なかったんだが。
この答えに彼は足を止めて、顔だけこちらを振り向き鋭い目つきで睨んで来る。

「解除条件が温けりゃそれでも良いがな、他人を殺せって条件の奴が居たとして、そいつはどうするんだ?黙って死ねっってか?」

そう来たか。
手塚のその目付きに恐怖を覚えるが、今は戦闘禁止なんだと心を落ち着かせる。
明記されてはいないが、彼の10番の解除条件は他者の死と同意であるとEp1で思っていたみたいだし、彼自身の事でもあるのだろう。
そしてこれも買い言葉で否定の言葉が口から出てしまう。

「死ぬかどうかは、まだ、判らない」

「可能性がある限り、止められないぜ。殺そうって奴をよ」

彼の言う事は至極尤もであった。
俺もそう考えたのだ。
裏設定を全く知らないなら止められる筈も無い。
しかしそれで良いのか?
ズキリと頭が痛み出し、頭に手を当てた。
自分の為に人を害して、それで俺は満足なのか?

『人の為に何かが出来る人間に成りなさい』

穏やかな感じの年老いた声が聞こえた気がした。
いや聞こえる筈が無い。
そんな人物など此処には居ない。
ただの幻聴だ。
だがこの言葉が頭から離れなかった。
朧気ながらに浮かぶ影。
それは胸に温かみと同時に、泣きたくなるくらいの悲しみを湧き出させる。

「おい、どうしたんだ?」

手塚の声にハッと我に返った。
何をしていたんだろう?
そして俺は何を思い出そうとしていたのだ?
だが自分が今すべき事が見えた様な気がした。
数瞬目を瞑り、覚悟を決める。

「俺のPDAは3番」

言葉と共にPDAの画面を手塚に見えるように翳して、宣言する様に言い放つ。
問答とは何の関わりも無さそうな事をいきなり切り出され、だから何だと言わんばかりの態度をする手塚に対して言葉を続けた。

「解除条件は、3名以上の殺害」

「な、んだとぉ」

手塚が目を見開き振り向いてから、1歩後退る。
それは驚くだろう。
殺してやるぞと宣言している様なものである。
だが、ここで話を終わる訳にはいかない。

「そう、多分、一番危険なPDAの1つだろうな。でも今の所、俺は誰かを殺すつもりは無い。
 そしてこの条件以外での解除法を探そうと思ってる」

「…あると思ってんのかよ。てめぇが言ったんだろうが。連中は争いを楽しんでるってよ」

「可能性は低い。けど方法が全く無いわけじゃないとも思ってる」

「根拠は?」

「まず、これがゲームであるという事。連中は俺達が必死になって翻弄されているのを楽しんでる節がある。
 ルールを見ても、色々仕掛けを考えているって所が幾つか見られるだろう?
 そうする事で、必死に生きる、希望にしがみ付く場面を楽しんで居るんじゃないかな?
 だから必ず何らかの方法がある筈なんだ。勿論簡単に手に入れさせてくれる程、甘くは無いだろうがな」

俺の説明を聞いて手塚が考え込む。
2分弱考えた末に顔を上げた手塚は、真剣な顔で問い掛けて来た。

「判らねぇ。何でそこまでして殺人を回避しようとするんだ?
 解除条件にしても、あっさり話すしよ。もしかしてそれ、JOKERじゃないだろうなぁ」

聞いては来るが疑問的な聞き方ではないし、自分でも候補としては妥当ではないと思っているのだろう。
だが、理由が判らないから別の可能性を模索している。
そんな所か。

「何故、か。そうだな。3人殺した方が多分楽なんだろう。
 それでも俺は、別の道を探したいんだ」

偶然の邂逅にしては長々と話したものだ。
それもこのゲームの核心に近い部分も含んでいる。
かなり危険な内容の会話であったが、今後の俺の行動に対し大きな影響を及ぼす一幕でもあった。
後は行動を起こすだけ。
そして俺は真っ直ぐに手塚の目を見て、最後の問い掛けにして、自身の宣言を述べたのだった。

「ハッピーエンドなんてのも面白いんじゃないか?」


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