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No.4768の一覧
[0] ロードス島電鉄 (現実→ロードス島伝説)[ひのまる](2009/07/11 17:28)
[1] 序章 進め!未来の超英雄[ひのまる](2009/07/11 17:26)
[2] 01 ロードス島へようこそ[ひのまる](2009/01/10 22:15)
[3] 02 食卓にエールを[ひのまる](2009/01/10 22:15)
[4] 03 どらドラ[ひのまる](2009/01/10 22:17)
[5] 04 僕たちには勇気が足りない[ひのまる](2009/01/10 22:17)
[6] 05 戦場のヴァルキュリア[ひのまる](2009/03/01 16:09)
[7] 06 これが私の生きる道[ひのまる](2009/01/10 22:18)
[8] 07 Bの悲劇[ひのまる](2009/01/10 22:18)
[9] 08 バカの壁[ひのまる](2009/01/10 22:19)
[10] 09 僕の小規模な失敗[ひのまる](2009/01/10 22:19)
[11] 10 隠し砦の4悪人[ひのまる](2009/01/10 22:20)
[12] 11 死に至る病[ひのまる](2009/01/10 22:20)
[13] 12 夜空ノムコウ[ひのまる](2009/01/10 22:20)
[14] 13 ベイビー・ステップ[ひのまる](2009/02/19 20:04)
[15] 14 はじめの一歩[ひのまる](2009/01/10 22:21)
[16] 15 僕たちの失敗[ひのまる](2009/01/10 22:21)
[17] 16 傷だらけの栄光?[ひのまる](2009/01/10 22:22)
[18] EXTRA ミッション・インポッシブル[ひのまる](2009/01/10 22:22)
[19] RE-BIRTH ハクション魔神王[ひのまる](2009/01/10 22:23)
[20] 17 命短し、恋せよ乙女[ひのまる](2009/03/18 15:29)
[21] 18 気分はもう戦争[ひのまる](2009/01/19 17:26)
[22] 19 どなどな[ひのまる](2009/01/19 17:27)
[23] 20 屍鬼[ひのまる](2009/01/25 20:11)
[24] 21 残酷な神が支配する[ひのまる](2009/01/25 20:12)
[25] 22 ベルセルク[ひのまる](2009/02/19 20:05)
[26] 23 ライオンキング[ひのまる](2009/02/06 17:10)
[27] 24 激突─DUEL─[ひのまる](2009/02/06 17:11)
[28] 25 ブレイブストーリー[ひのまる](2009/02/13 17:12)
[29] 26 ビューティフルネーム[ひのまる](2009/02/19 20:06)
[30] 27 うたわれるもの[ひのまる](2009/03/07 16:27)
[31] REACT 我が青春のアルカディア[ひのまる](2009/03/14 15:31)
[32] RF 新牧場物語[ひのまる](2009/04/18 18:53)
[33] 28 少年期の終わり[ひのまる](2009/03/18 15:29)
[34] 29 ああ、勇者さま[ひのまる](2009/03/28 13:11)
[35] 30 陽あたり良好[ひのまる](2009/04/12 21:01)
[36] 31 呪縛の島の魔法戦士[ひのまる](2009/04/12 21:02)
[37] 32 ドキドキ魔女審判[ひのまる](2009/04/12 21:02)
[38] 33 Q.E.D.─証明終了─[ひのまる](2009/05/13 16:16)
[39] 34 GO WEST![ひのまる](2009/05/17 10:11)
[40] SUPPLEMENT オリジナル登場人物データ、他[ひのまる](2009/06/06 17:06)
[41] 35 山賊たちの狂詩曲[ひのまる](2009/05/23 19:44)
[42] 36 尋問遊戯[ひのまる](2009/06/06 17:07)
[43] 37 ドリーム・クラブ[ひのまる](2009/06/06 17:07)
[44] 38 笑っていいとも[ひのまる](2009/06/20 18:26)
[45] 39 電鉄の勇者の伝説[ひのまる](2009/06/27 17:57)
[46] DICTIONARY 幻想用語の基礎知識 第一版[ひのまる](2009/07/11 17:27)
[47] RE-BIRTH02 今日からマの付く自由業[ひのまる](2009/07/18 17:58)
[48] RE-BIRTH03 なまえのないかいぶつ[ひのまる](2009/07/18 17:59)
[49] 40 絶望[ひのまる](2009/08/18 19:06)
[50] 41 神々の山嶺[ひのまる](2009/09/01 17:06)
[51] 42 マイ・フェア・レディ[ひのまる](2009/09/01 17:07)
[52] FINAL THE SPIRITS M@STER SASSICAIA[ひのまる](2010/09/18 21:08)
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[4768] RE-BIRTH02 今日からマの付く自由業
Name: ひのまる◆8c32c418 ID:ab74ed03 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/18 17:58
「6英雄とか怖いから、アレクラスト大陸に渡るのもありだと思うんだ」
 これからどう行動するべきか。
 その問いにへたれた答えを返したのは、やっぱりギネスだった。


 番外編、気が付いたら、魔神王とその配下の魔神将になってました。詳しい事情は省く。ぶっちゃけ、何でこうなったのかわかっていないし、事情の説明をしようがないというのが本当。
 兎に角、いつまでも黄昏れていたってどうしようもないと、4人は角突き合わせて相談タイム。
 ちなみに、4人はちょうど遊ぼうとしていたTRPGのキャラネームで呼び合うことにしていた。何時までもこんな穴蔵の底、最も深き迷宮で暮らすつもりはない。外へ、人前へ出るならば、魔神王とかゲルダムとか呼び合うのも問題だろうと言う判断。かと言って本名、山田太郎(仮)とかの日本人の名前も、おファンタジックな世界では据わりが悪いような気がしたのだ。「光虫」で「ぴかちゅう」とか「金星」と書いて「まーず」とか、そう言った名前ならこの世界でも違和感も少なそうで良かった(?)のだが、残念なことに4人ともごくごく普通の日本人的な名前だったのだ。最近の子供の名前を見ていると、何が普通か議論の余地がありそうではあるが。ちなみに、金星をマーズと呼ばないことは、わかって書いてます。
 なお、魔神王=サシカイア、ゲルダム=シュリヒテ、イブリバウゼン=ブラドノック、デラマギドス=ギネスとなっている。
 この4人組、一番レベルの低いイブリバウゼン=ブラドノックでも13ある。魔神王サシカイアに至ってはレベルは20、しかもHPダメージの一切無効というでたらめさ。唯一精神点への攻撃のみ有効で、それも100というSWにあるまじき数字を誇る。さらには、原作のように各個撃破される愚を犯すつもりはないから、4人は揃って行動する予定。そうであれば、たとえ6英雄相手だって優位に戦える……はず。
 しかし、ギネスのへたれた提案に。
「ナイスアイデアだ、ギネス」
「そっか、別にロードスにこだわること無いんだよな」
「もし人と戦うことになっても、超英雄なんて人外の変態もいないうえ、生息してるのがレッサーロードス人の大陸の方が断然マシだよな」
 サシカイアを始め、大絶賛。
 ちなみにサシカイアは近くに転がっていた、この身体のオリジナル、スカード太守の血の繋がらない娘、リィーナ王女の着ていたらしい衣服に身を包んでいる。しかし、女物のパンツ、しかも使用済みのモノに足を通すのは心理的抵抗が大きく、今は履いてない状態だったりする。何だか尻が気になって仕方がない。裾の長いスカートとは言え、下に開けている格好というのも慣れおらず、非常に心許ない。おまけに、何を想像しているのか、ブラドノックがこちらに頻繁に視線を送りつつ、やたらと鼻息荒くするのも非常に鬱陶しい。──しかし、ブラドノックがゲルダムでなくて幸いだった。下手にハァハァ致死性の毒息を吐かれていては、思わぬ大惨事になりかねないし。
「と言うか、わざわざ人間に敵対する必要なくないか?」
 シュリヒテが腕組みをして提案。
「俺はアレだけど、お前らは古代語魔法使えるよな? シェイプチェンジやポリモルフで人に化けて、そのままばれないように大人しくしとけば良くないか?」
 自身の発言のように、シュリヒテ=ゲルダムは使えないが、他の魔神将の2人は9レベルまで、魔神王は15レベルまでの古代語魔法が使える。そうであれば、シュリヒテの提案のように、変身の魔法で人に化けることだって可能だ。そもそも、それを見越してキャラネームで呼び合うことにしたわけだし。
 しかし、古代語魔法15レベルってどんな魔法があるんだろうか。やっぱりエターナルフォースブリザードとか、フォン・ド・ボーとかなんだろうか。○○で相手は死ぬ、みたいな。
「そうだな、俺も魔法で男に──」
「それはダメ」
 サシカイアの発言に、他3人が揃って即座にダメ出し。
「何でだよ」
 桜色の唇をひん曲げて、サシカイアは不機嫌に尋ねる。中身男で外見女。意味のないTSは叩かれるし、そんなへんてこな状態は早いところ解消したい。カムバック、マイサン。出来れば、シェイプチェンジで男に戻るときに、気持ちサイズアップするのも有りかも知れない、なんてせこい事を考えながら。
「美少女がこの世から減るのは、もの凄い損失だよ?」
「人生に潤いが欲しいんだよ」
「中身男の美少女……ごくり」
 3人が口々に、サシカイアが男になることに反対意見を出してくる。特に不穏なのはもちろんブラドノックだ。
「巫山戯んな」
 しかし、サシカイアは言い捨てて、相手にするのも馬鹿らしいと実力行使に移る。
「万物の根元にして万能なるマナよ……」
 お定まりの台詞から始まり、もにゃもにゃもにゃっと、上位古代語の呪文詠唱。ちなみに、魔法の発動体は持っていないが、問題ないという確信があった。何しろその身は魔神王。文字通り人外の存在だ。
「ああ~~~」
「なんて事だ」
「神は死んだ」
 大げさに嘆く3人の前で呪文は完成し、魔法発動。
 しかし。
「……アレ?」
 そこには変わらぬ黒髪の美少女がいた。
「ちょっと待て、何でだ?」
 自分の胸のふくらみの確認なんぞしながら、サシカイアはうめく。
「確認、俺も手伝おう」
「いらん」
 と、嫌な感じに手をわきわきさせて近付くブラドノックをけっ飛ばし、再び呪文詠唱。
 やっぱり結果は一緒だった。
「……魔神王ってドッペル系の上位機種みたいだし、そちらの変身能力の方が、古代語魔法のそれよりも力を持っているとか?」
 首をかしげつつ、ギネス。あるいは達成値の比べ合いで負けたとか、なんて気楽に言ってくる。
「僕らはどうなんだろう」
 そのままギネスは呪文詠唱。
「──俺らは大丈夫みたいだな」
 そこに現れたマッパのドワーフを見て、シュリヒテが顔を顰める。そう言えば、魔物は裸、人に変身してもやっぱり裸のままだった。早いところ装備をどうにかする必要があると、今更ながらに気が付く。
 それにしても。
「しかし、何でわざわざドワーフ?」
「え? だってギネスはドワーフって設定だから」
「まあ、俺らのオリジナルになっても、へたれた能力値でどうしようもないよな。6英雄相手じゃなくてもきっと死ねる」
 それくらいならばこの名前の本来の持ち主、その設定通りのキャラになる方が良いかと言いながら、ブラドノックも人間のマッパ25才魔法使いに。当然の顔をして、そこに転がっていた女物のパンツに足を通そうとする馬鹿はサシカイアがけっ飛ばす。
 シュリヒテは自力で変身できないので、ギネスが手伝ってやった。
 何で俺だけダメなんだとぶすっくれたサシカイアの前で、3人は互いを見合ってわいわいわい。どうせならここのサイズをアップしてくれないか?、なんてシュリヒテがこっそりお願いしたり。
「これなら、人里にでても大丈夫だよな」
 もちろん、服を用意する必要はあるが、とシュリヒテ。
「そうだな。元の世界に帰る方法なんかを探しながら、平和的に暮らしていこう」
 うんうんと頷く4人。
 そこへ。
「やりましたよ~、やりましたよ~」
 甲高い声を上げながら、カラスの化け物が走り込んできた。
「うわ、化け物」
「何言ってるんですか~、私は魔神王様の忠実な部下~、黒羽のガラドですよ~。と言うか~、魔神将様方~、一体その格好は何ですか~?」
 何だか理由はわからないが、シュリヒテらの正体はわかるらしい。
「ちょっとした気分転換だ」
 シュリヒテが適当に応じ、それから、ガラドに何をやったのか続きを促す。
「そうでした~」
 ガラドは頷き、サシカイアに向かって祝福の言葉を継げる。
「おめでとうございます~、魔神王様~、初戦は我々の完勝です~」
「初戦は完勝?」
 何だか非常に不穏当な言葉で、サシカイアは眉を顰める。
「あ、いえ~、大勝と言うところですかね~、すみません~、完勝は言い過ぎでした~」
 それをどう取ったのか、ガラドが慌てて言い直す。
「──兎に角~、ここの近所のドワーフの王国~、ご命令通り滅ぼすことに成功しました~」
「石の王国か?」
「攻め込んだのか?」
「なんで?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ~」
 4人がかりで詰め寄られて、ガラドは涙目。
「だって魔神王様が攻めろっておっしゃったじゃないですか~」
 私に文句を言われても困りますよ、と実際困った顔になる。
「そ、そうだったか?」
「はい~」
 ガラドが頷く。
「ああ~」
 サシカイアは天井を仰いで顔を顰め、それでもガラドを労う。
「そうか、ご苦労だったな。とりあえず、休め」
「はい~」
 何か違和感を感じているのか、ガラドが首をかしげつつ退場。
 それを見送り、ゆっくり100を数えてから、サシカイア達は大慌てで顔を見合わせた。
「どういう事だよ、もう戦争ふっかけてんのか?」
「俺に言うな。俺だって初耳なんだから」
 俺を責められても困る、とサシカイア。
 拙い、非常に拙い。すでに、ロードスの住人VS魔神の図式が出来ているとなれば、これから先、どうすればいいのか。どうなっていくのか。
 4人は互いの顔に答えを探すが、模範解答は何処にも書かれていなかった。


 ロードス島電鉄RE-BIRTH
  02 今日からマの付く自由業


 魔神王とは言うモノの、他の魔神に対する支配力が期待していた程でないことは、すぐに知れた。


 原作における魔神達は、無駄に戦線を広げすぎた。ただでさえ数が限られ、人よりも少ないというのにロードス全土で大暴れ。どうやったって陣容が薄くなり、各個撃破されるわ、各国でヘイトを買って百の勇者誕生を助けるわで、人並み、あるいはそれ以上の知能を持つモノとしてどうよ、と言う行動をしていた。
 人と戦わなければならないのであれば、敵を絞るべきだ。具体的には、当面モス一国に。一番近いし、既に竜の盟約は発動、モス各国はそれぞれに軍勢を整え、魔神との戦い、最前線になると目したスカード王城グレイン・ホールドにて合流しようとしていた。まずはこいつらを叩き潰すことに全力をつぎ込むべきだ。他国は後回しにして問題ない。わざわざ余所の国を助けるために兵を出そうと考えるような酔狂な国は、正義を標榜するヴァリスの一国くらい。それも、当面は助けようとする当のモス公国の拒否にあって手出しは出来ないだろうし。アラニアやカノンは己の国が狙われるまでは、所詮人ごとと無視するだろう。だから順繰りに一国ずつ片付けていけばいいのだ。やっぱり、各個撃破は戦いの基本だろう。
 それにしても。
「ナシェルの動き、早いな」
「さすがはチート王子」
 残念ながら、感心ばかりはしていられない身の上が悲しい。
 スカードの王子ナシェルは、魔神によって石の王国が滅亡させられたを知ると、即座にスカード王国をヴェノン王国へ降伏、併合させた。
 スカード王国は、ヴェノンの従属国と見なされている。であるから、竜の盟約に加盟できない。加盟していない以上、当然、竜の盟約の発動に何の権限もない。結果、他国の助けは期待できず、単独で魔神に当たらねばならない。
 その場合の勝敗の帰趨は明らか。
 石の王国を滅ぼす程の戦力を持つ魔神に単独で当たり、何とか出来るような力があれば、スカードは小国のままであったはずがない。間違いなく、戦えばスカードは為す術無く滅亡する。
 だが、ヴェノン属国となったことで、事情は大きく変わった。ヴェノンは歴とした竜の名を冠するモスの一国。自国の領土となったスカードを狙ってくると推測される魔神の軍勢に対抗するため、ヴェノンは即座に竜の盟約発動を宣言した。スカードにはその権利がなく、ヴェノンにはその権利がある。そして使えるのであれば、躊躇うはずもない。屈強なドワーフたちの王国を滅ぼす程に強力な魔神の軍勢、自国一国で立ち向かって被害を出すのはばかげている。旨味は独り占め、被害はみんなで分け合いましょう。極々あたりまえの思考だ。
 その盟約発動に最初に応えたのは、ハイランド王国。そちらへ身を寄せていたナシェルのロビー活動故か、あるいは原作のように鏡の森を魔神が攻めていないために余裕があったのか、迅速に反応したハイランド王国は即座に竜騎士を派遣してきた。
 ヴェノン、ハイランドの二国が動けば、様子見をしていた他の国の動きも定まる。
 かくして、旧スカード王国王城グレイン・ホールドは、昨日までの敵国同士が仲良く剣を並べる、多国籍軍──モス公国軍の本拠地となっていた。
「がんばってるねえ。それに比べて、我が軍はどうよ」
 瀟洒な黒いドレス姿のサシカイアは魔神王の玉座に収まり、はあ、とため息を零した。サシカイア=魔神王は、月の姫と呼ばれ、その美貌が喧伝されていたスカード王女リィーナの姿をとっている。そのアンニュイな様は、非常に容姿に似合っており、目にしたブラドノックが心持ち頬を赤らめたりしている。
 それはともかく。
 サシカイアがアンニュイになるのにも、もちろん理由がある。
 前述のように、己の配下に対する支配力の弱さ、それを痛感しているのだ。
 無駄に戦線を広げるのは馬鹿のすること。
 その考えを元に、サシカイアはロードス中に散っていこうとしている魔神達に待ったをかけた。
 だが、その命令に従ったのは全体の6割程度。残りの4割は命令、何それ?、状態で、ロードス各地で暴れまくっているとの報告が入ってきている。
 しかも、命令に従ってくれた魔神達の集結にも、予想以上の時間を費やしてしまった。スカード降伏からヴェノン王国による竜の盟約発動、モス各国よりの軍勢集結まで、いかに迅速に動いたとは言え、一日二日で済むことではない。本来であれば貴重な先制攻撃のチャンス、あっさり棒に振ってしまうことになった。
 どうにも魔神は皆、我が強すぎる。とても統制だった魔神軍としての行動を期待できない現状。ため息も零れる。
「……まあ、みんなファラリスの信者だもんねえ」
 と、ギネスが諦め気味に言う。
 そう、魔神は大抵ファラリスの信者である。たまにマーファの信者になったのか、農業にいそしむ馬鹿も出てくるようだが、それは極々少ない例外中の例外。〈〈汝のなしたいようになすがいい〉〉なんて抜かす神様、それがファラリス。その信者が、自分以外の者の指示に容易に従うか否か? もちろん否である。
 そうでなくとも、魔神達は500年ばかり、古代魔法王国の召喚魔術師アズナディールの作り上げた異次元の牢獄に閉じこめられていた。刺激の少ない空間で500年。精神活動が人とは異なるため、それで狂うと言うことはないが、退屈は退屈だった模様。彼らは刺激に飢えていた。そこへようやくの解放。はっちゃけるのもわからないではない。
 また、魔神達は実の所、勝利を求めてはいない。
 彼らのこの世における姿は所詮仮初め。本体は異界にあり、魂が投影されているような状態。倒されても滅びることはなく、本体に帰ることが出来る。──その際、下手をすると魂の変質を招くが、それでも異世界でうだうだやっているよりもマシだと考える向きもある。
 結果、わざわざ討たれてやるつもりはないが、討たれても別に構わない。勝つために我慢をするよりは、負けても構わないからそれまでは好き放題やってやろう、なんて思考に支配されがちになっている。
 ひょっとして、自分たちも討たれることで元の世界に戻れるんだろうか?
 なんて思いもあるが、確証がないし、痛いのもいやだ。それに、魔神王の敗北は精神的ダメージによるものしか考えられない。これはニアリーイコールで魂の破滅となりそうで危険きわまりない。もうちょっと他の安全そうな方法を考えた方が無難だろう。
「4割も逆らったと言うよりは、6割も従ってくれたと考えるべきだろうなあ」
 何事もポジチブに、とシュリヒテ。
「いや、逆に誰も従ってくれなかった方が楽だったかも」
 サシカイアは首を振る。
 サシカイアはほとんど反射的に、配下の魔神達に命令を下してしまった。これで、誰も従わなければ、それこそ魔神を見捨てて自分たちだけが生き延びる道を模索することも出来た。しかし、6割とは言え、命令に従う者が出てしまったせいで、それも難しくなった。これで、トップとしての責任が生じてしまったのだ。自分の命令に従ってくれた、ならば、彼らのために何かをなさねばならない、そんな具合で。
 従ってくれた配下の魔神にどう応えるか。やはりここは、この戦争、魔神側の勝利を目指すしかないだろう。ロードスに魔神の楽土を築いてやろう、と言うことで4人の意見はまとまっている。
 人と戦うことに抵抗感はないのか?
 それが、不思議な程になかった。
 あるいは、身体に思考が引きずられているのか。その辺りをうかがわせると言うべきか、サシカイアがスカートの裾も気にせず胡座をかいているのは魔神王の玉座。本物の髑髏なんかで飾られた悪趣味きわまりないモノであるが、特に気にもしていない。趣味が悪いとは思うがそれだけ、特に不気味とも感じていないし、恐怖もない。
「いや、少しは気にしようよ」
 サシカイアは中身男であるだけに、当然スカート姿には慣れていない。どうしても防御がおろそかになってしまって、ブラドノックをたびたび喜ばせている。……最近は本物の女の子も防御がおろそかだったりするか? それはともかく、今回もスカートが大きくまくれ上がって中身が見えてしまっており、目のやり場に困るし、隣のブラドノックの息が荒くて気持ちが悪いと、ギネスが警告してくる。
 サシカイアはブラドノックをけっ飛ばして、流石に足を揃えて座り直す。ちなみに、3人組の防具なんかと一緒に、サシカイアの服やパンツもガラドに命じて用意させた。何で女物でしかもスカート、と思ったが、とりあえずそれしか用意できなかったと、何かと気の利くガラドが言うのだから、そうなのだろう。まさか普通に服屋に買いに行くわけにはいかないのだから、そう言うこともあり得るのだろう。だから当面はこれでしょうがないと諦めた。その報告の際、背後で3人が親指を立てていたことには、残念ながらサシカイアは気が付いていなかった。
「で、どうするよ? 即座に決戦?」
「そうだな」
 サシカイアは頷いた。
「原作通り、ブルーク王を前面に出して接近すれば、奴ら勝手に自滅するだろうしな」
 ちなみにブルーク王は配下のドッペルゲンガーに化けさせたモノ。オリジナルは既に死亡している。──が、ばれなければいいのである。
 竜の盟約は、あくまでも対外戦争のための大同盟。ロードス規模で考えれば、おのおの小国でしかないモス各国が、外来の侵略者に対抗するために一時的に手を組む。それが竜の盟約。
 これは、モス国内の内乱には適応されない。あくまで外敵向けの同盟だ。
 スカードのブルーク王が前面に立って戦いを挑めば、外敵の襲来ではなくモス公国内の勢力の襲来。いつもの内乱となり、竜の盟約は失効、大同盟はあっさり瓦解するだろう。原作でそうだったという力強い保証にプラスして、竜の盟約と言ったところで所詮は同床異夢の呉越同舟。彼らは心の底からの仲良し小良しではないのだ。昨日まで互いに牽制しあい、何度も殺し合いをしてきた連中である。特に今回、ハイランド王国はスカードのナシェル王子を受け入れている。そこへ魔神を率いる(ように見せかけた)ブルーク王の登場となれば、全てはこちらの戦力をすりつぶすためのハイランド、スカード共演の陰謀ではないのか?、なんて疑いを、サシカイアらが何する必要なく育てて自滅してくること確実。
 また、食糧の問題もある。所詮は小国の王城グレイン・ホールド。堅牢とはいえ、モス中から集った兵隊を喰わせるだけの備蓄があるかと言えば、もちろん無い。ヴェノン本国から大慌てで運び込んでいるようだが、大兵力であるが故に、長引けば非常に厳しくなることは目に見えている。このまま放置していても、遠からず瓦解するだろう。腹が減っては戦は出来ぬ。これは真理なのだから。
 勝ちが見えているだけにサシカイアらは気楽なモノ──だったのだが。
「魔神王様~、大変です~」
 玉座の間に駆け込んできたのは、前回同様カラスの化け物、ガラド。
「配下の一部が~、グレイン・ホールドへ勝手に攻め込んで全滅しました~」
「……まじかよ」
 全くもって、前途は多難なようである。







以前なんとなく書いた番外、魔神王編の続き。
これって書き進めると、俺TUEE内政モノになりそう。
アレって書いている人の知識量がものを言うジャンルだから、かなり厳しそうです。
続きはあんまり期待しないでおいてください。


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