目覚めた場所は見知らぬ土地だった。
ここは、どこだろうか?
日常に嫌気が差し、幕を降ろそうかと思っていたのだが…いやはや何とまぁ…神とやらが最後の最後に数奇な非日常をプレゼントってか?
笑えねーぞこの野郎。
状況説明。
本来の俺の身体は平凡な成人男性のものだ。
それがどうして、赤ん坊にまでランクダウンしているのだろうか?
一つ、結論を出すとすれば……至極荒唐無稽なものになる。
俺の生きていた現実世界から切り離され、別世界へと飛ばされてしまったのではないか?
…という結論。
訂正しよう。
これが、わりと一番現実的かもしれない。
「可哀想に…捨て子かねぇ…」
「不憫だのう…」
おっと、人がいたようだ。
老夫婦らしき二人組だ。
心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる。
同情するならいっそのこと殺してくれ。
そう願ったがその歪な願いは届かず、老夫婦らしき二人組に俺は住んでいる村へと連れて行かれた。
勘弁してくれ。
このシナリオを用意した神様とやらは今すぐに死んでくれ。
誰も望んでねーよこんなこと。
誰もが皆非日常を望んでいると思うな。
平和に生きたい。
平和に生きられないならば死にたい。
それが俺のモットーだ。
新しい生活が始まるのだろうか?
それはもう、拷問といっても差し支えないだろう。赤ん坊の身に何ができるというのだろう。
いるかも分からぬ神とやらを呪い、月日が経つのをただひたすらに待った。
━━五年が経った。
住んでいた村は滅びた。
俺以外の村人は死んだ。
死んでいた。
俺だけが生き残った。
この世界がどういう場所かを把握するために度々遠出をしていたおかげで。
涙は出なかった。
あぁ、そうか…とそんな感じだった。
薄情な人間と言われたらそうかもしれない。
ただ、何の感情も沸かないのだから仕方がないことだと割りきるほかはない。
俺が考えていたことは…明日からの寝床はどうしようか、ということだった。