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No.43457の一覧
[0] 闇の力[かけら](2020/01/22 01:35)
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[43457] 闇の力
Name: かけら◆e9bd7a34 ID:84954ba9
Date: 2020/01/22 01:35
闇の力


この世に産まれ出てから二十数年。

社会は俺に厳しかった。

立てば殴られ目立てば蹴られ、嘘を付けば恨まれる。

荒波に揉まれるうち、俺の中に、ある"チカラ"が目覚めた。

その"チカラ"の名はーーー。



「("俺"の名を呼ぶのは‥‥‥オマエか?)」

「うるせぇええええええ!!!」

「(ぎゃああああああああ!!!)」

「俺は今、中華拳法の練習で忙しいんだよっっ!!!」

「(‥‥‥くくく、俺に一発入れるとは、気に入った!! 俺の名は「闇の力」!! この俺の力を使い‥‥‥この世を闇の底に沈めるがよい!!)」

「(はぁ? 闇の力? ちゃんちゃらおかしいわああああああああああああ)」

「(ああああああああああああああ)」

「‥‥‥ふぅ、何かいたような気がするが、気のせいだったようだな」





「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

俺の名前は明智秀明。

気が付くと、俺、明智秀明はーーー机に倒れ臥していた。

俺、明智秀明には好きな人がいる。
大学生になって、生まれて初めて心から「結婚したい」と、そんなことを願ってしまうような人だった。
遺伝子がそう言ってた。

そんな人に‥‥‥俺はフラれてしまった。

いや、正確には、その人に彼氏ができたのだ。

彼氏‥‥‥俺も、その人の隣で、そんな風に呼ばれてみたかった‥‥‥。

失意の中、俺が取った行動は、「その彼氏より強くなること」だった。

その日から、俺、明智秀明はーーー中華拳法を始めたのだ。


「(あの‥‥‥ちょっといいかな?)」

「くどい!」

「(くどくない! ‥‥‥お前が呼んだんだから、話聞いて? この"俺"の)」

「なに」

「(あの‥‥‥「闇の力」、いらないの?)」

「いらない!」

「(ええ、ひどくないか?)」

「いらんもんはいらん!! 俺は中華拳法で強くなるって決めたの!」

「(拳法? やめとけやめとけそんなもん。そんなんやるよりほら、髪染めたりさ、お洒落したりしよう?)」

「いやだ!! 俺は彼氏より強くなるんだ!!」

「(ふはははは!! 「強くなる」?‥‥‥"俺"の力を使え!!)」

「やだ!!」

「(じゃあ何で呼んだんだ‥‥‥)」

「しらんよ‥‥‥てかさ、いつまでいるの?」

「(‥‥‥え?)」

「いや、「闇の力」とかいうくらいだから、シューッてなんか消えるんじゃないの?」

「(‥‥‥)」

「‥‥‥」

「(どうしよやばい‥‥‥帰れない)」




「ほら、いつまでも泣いてんじゃねぇ」

「(うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ)」

「よしよし」

「(どうしよう、"俺"‥‥‥元の世界帰れない!)」

「なぁ、「闇の力」」

「(なに)」

「お前暇だろ、俺の練習相手になってくれよ」

「(練習相手?)」

「うん、俺ずっと一人で拳法やってたからさ」

「(もっと外出て遊んだら?)」

「うるせぇな、あんまり外出るの好きじゃねぇんだよ」



ドゴォッッッッ。

「(うげぇぇぇええっ‥‥‥)」

「ごめん、深く入った‥‥‥」

「(認めよう、お前の力を‥‥‥さぁ、とどめをさすがいい!!)」

「死ぬんじゃない、「 闇の力」!! 」

「(‥‥‥しかし、人間の割になかなかやるじゃないか)」

「だろ? 二年くらい拳法やってるからな」

「(すごいね、背中の筋肉とかパンパンだし)」

「だろ?」

「(その時間他のことに費やせなかったの?)」

ドグリィッッッッ。

「(がはっ‥‥‥)」

「いいサンドバッグが出来たぜ!!」




「(というわけでだな、俺は、お前が「闇の力」が欲しい、というまで、ここにいないとだめなんだわ)」

「ふーん」

「(たのむよ、「闇の力ほじいいいいいい」って言ってくれない?)」

「やだよそんな亡者みたいな」

「(たのむって‥‥‥なっ! なっ!)」

「‥‥‥じゃあさ、俺の意中の女の子をお前の力で振り向かせられるなら、考えてやってもいいぜ」

「(え、むり)」

「はぁ!? なんで!? 「闇の力」でしょ!?」

「(うち「破壊」とか専門だし‥‥‥)」

「ええ? 「闇の力」なのに?」

「(「闇の力」にそんな幻想抱いてんじゃねぇよ!! そんな万能じゃないからこれ)」

「うーん、じゃあ何ができるの?」

「(うーん‥‥‥例えば「人を操ったり」とかかな)」

「欲しい!!」

「(えっ)」

「闇゛の゛チ゛カ゛ラ゛ほ゛し゛い゛い゛い゛゛」

「(‥‥‥)」

「‥‥‥どうしたの、こいよ!」

「(いや、お前、何に使うつもり?)」

「何にって、そりゃ‥‥‥意中の子にだよ」

「(お前、それ、女の子操る気だろ!!)」

「当たり前だろ!!」

「(いやお前、彼氏より強くなるんじゃねぇのかよ!!)」

「はぁ知るかそんなん。あー彼女操りてぇ~」

「(俺はそんな不純な動機には力貸せないな)」

「はぁ!? お前っ‥‥‥「闇の力」だよね!?」

「(いやー貸せない。だって、その女の子操るの俺だし、心苦しいもん)」

「‥‥‥糞がっ。何が「闇の力」だっっ‥‥‥こんなものっっ‥‥‥」

「(お前‥‥‥「闇」ってのを履き違えてるよ)」

「‥‥‥どういう意味だ?」

「(いや、だから‥‥‥「闇」っていうのは、お前が言ってるようなことに使われるべきじゃないの。お前が女の子操りたいとか言ってるのは、ただの「気持ち悪い」願望なの)」

「‥‥‥」

「(「闇」ってのは、つまり‥‥‥まぁ「陰」とか「陽」とか呼ばれてるやつの「陰」の方で、結局はバランスが大事なの。そう、お前ら人間が陰陽五行説といって、陰と陽2つの要素のバランスを重要視したように、物事はバランス感覚が大事なの)」

「要領を得ないよ!!」

「(え?)」

「いや、要領を得ない!!」

「(そっか、じゃあ、この話はやめようか‥‥‥)」

「うん‥‥‥話を戻すと、このままではお前の居場所がなくてまずいってことだよな?」

「(うん‥‥‥)」

「じゃあ、こういうのはどうだ?」

ひそひそ。

「(えっ‥‥‥)」




ーーー次の日。

男女のカップルが、大学内を歩いている。

「ねぇ、この間のバラエティ番組見た?」

「見てない」

「えぇー、面白かったよ。出川が「ワキ毛」って叫ぶの」

「それ面白い???????」


その男女の前を、もう一組のカップルが横切ろうとしていた。

「(えぇー、中華拳法?)」

「うん、とっても面白いよ」

「(へぇ、いっぱい聞かせて!!)」




「しかもさ、出川がだよ、出川が‥‥‥」

「‥‥‥あれ、明智じゃん、一人で何喋ってるんだろう」




「中華拳法というのはね、色んな種類があるんだ! まず、みんながよく知るであろう太極拳!! これは、内家拳のくくりのうちに入るね!! そして‥‥‥」

「(おい、おい!)」

「‥‥‥えっ、どうした?」

「(お前の好きな子だ、こっち見てるぞ!!)」

「‥‥‥お、藤岡じゃーん!!」




「‥‥‥よっ、藤岡!! 最近どう、調子は?」

「‥‥‥」

「よっ、おとなりは‥‥‥彼氏さん? かな。いいじゃん、こんにちは!!」

「え、あ、どうも‥‥‥」

「でさぁ、藤岡‥‥‥見て、これ‥‥‥俺ぇ、彼女できちゃって‥‥‥」

「‥‥‥」

藤岡は、「闇の力」のいる場所を手であおいだ。

「(‥‥‥うわぁ!! 手が‥‥‥透ける!!)」

「うわああああああああ!! 闇のちからああああ!!!!!」

「‥‥‥誰と話しているの?」

「‥‥‥え? ‥‥‥もしかして、こいつが見えない?」

「‥‥‥」

「‥‥‥あのー、あなた、さっきから一人で喋ってるように見えるんですが‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

俺は、自分の感覚が、いやに鋭敏になっていくのを感じた。
全てがスローモーションのように見えるが、その事実すら目を背けたかった。
俺の血液を巡る「恥」の感情。
どうやら俺は、一人で話しているように見えているらしい。

「ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」

俺はニワトリの真似をしながらその場を離れた。





「‥‥‥だめだ、彼女に見せつけてやろうと、思ったのに‥‥‥これじゃ、とんだ恥さらしだ!!」

「(‥‥‥とんだ様だな、これから彼女の彼氏になろうって男が、当て付けのような真似をしようとするとはな)」

「‥‥‥」

「(お前になぞ、一生彼女はできん)」

「‥‥‥うるせぇ!! 俺は、あの子が好きだ!! だから、振り向いて、欲しくて‥‥‥」

「(ちがうな)」

「なに!?」

「(いいか、お前が"俺"という「闇の力」を目の前にして、何もできずにいるのは、お前が彼女にびびってるからだ)」

「‥‥‥なんだと!?」

「(ああ、びびってるね。びびってるから、2年も彼氏に彼女を取られたまま、自分は何かしてますよとでもいうようにシコシコ拳法の腕なんて磨いてんだよ)」

「‥‥なん‥‥だと!?」

「(お? やるかね? かかってこいよ。今のお前なんざボコボコにしてくれるわ)」

「おらっ」

「(ぐはあああああああああああああああああああああああああああああああああああ)」

「‥‥‥俺は強い!!」

「(‥‥‥)」

「‥‥‥でも、‥‥‥いつも‥‥‥彼女の前ではっっ‥‥‥なにもできなくなるんだ‥‥‥っっ!!」

「(‥‥‥お前は弱いさ)」

「‥‥‥」

「(お前は、本当の強さを知らない‥‥‥だから、「内なる闇」に頼ろうとしたんだ)」

「内なる、闇‥‥‥?」

「(そう、"俺は、お前自身の「イド」に住まう闇の住人‥‥‥お前の心の闇だ!!)」

「「イド」‥‥‥?」

「(イド‥‥‥それは自我だ。お前の自我が、力を求めた‥‥‥だから俺は現世に召喚されたのだ!!)」

「‥‥‥くっ、はははは!!」

「(なにがおかしい!?)」

「今や時代は物質社会だぜ!? そんな胡散臭え精神論がこの俺に通用するとでも思っているのか!?」

「(なんだと!?)」

「‥‥‥だがな、俺が強さを求めてるってのは間違いじゃない‥‥‥」

「(‥‥‥!)」

「いいだろう、お前が「本当の強さ」を知っているのなら‥‥‥この俺を説得してみるがいい!!」

「(‥‥‥!!)」

「俺に‥‥‥闇の力を魅せてみろっ!!」

「(‥‥‥こいつは長い戦いになりそうだぜ)」

「うおおおおおおおおおおおお」

「(うおおおおおおおおおおおお)」

つづく


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