容姿端麗。
才色兼備。
自分でいうのもあれだけどーーー。
私の名は切江霧子。
キャリアウーマン。
お金、仕事、オトコ。
私はそこらの女が欲しいものは全部持ってるつもり。
特にオトコ。
この世界に、私に靡かないオトコなんているのかしら?
「邪魔」
「‥‥‥は?」
カウンターに座っていると、知らない小坊主に荷物をどかされた。
私の黒のブランドバッグが、テカテカの床に無造作に落とされる。
この子、この私の姿を見た上で、それが許されると判断したわけ?
「ちょっと!」
「何です?」
「そのカバン、高いんだけど!」
「‥‥‥あ、そうなんすね」
「‥‥‥‥もうっ!!」
見ると、この小坊主、店の中でキャップなんて被ってやがる。
あと、うっすら見える髭がホント醜い。
そんな髭でジョリジョリされたら私‥‥‥どうにかなっちゃいそう!
「なんなの、あなた、この姿が目に入らないわけ?」
「え、なんか有名な人なんですか?」
「‥‥‥‥いや、そういうわけじゃないけど‥‥‥」
こいつ、私がいくらブロンドをかきあげたりしてアピールしても全然ピンと来ていない。
「‥‥‥何してるんですか?」
「あのね、普通わかるでしょ、それが私みたいな格好してる人の隣に座れる風貌なわけ?」
「‥‥‥その毛むくじゃらみたいな服ですか?」
「‥‥‥ファーよ、ファー!!!」
カシミア100パーセントよ!?
「‥‥‥ていうか、俺の格好は関係ないでしょうよ」
「いいや、関係あるわ。とにかく汚くて不愉快なのよ、散りなさい!」
「え、でもあんた、俺にそんなこと言える顔なの?」
は? 今何言った? コイツ。
「‥‥‥私の顔が何ですって?」
「いや、どうみても整形顔じゃん」
「‥‥‥何ですって!?」
「はい、牛丼並ィ一丁!!」
立ち上がった私の側に、牛丼が置かれた。
私は座り、割り箸を割った。
「‥‥‥とにかく、あなた、今度私の隣に座ったら容赦しないからね」
「‥‥‥‥そっすか」
「やぁ、営業成績一位の切江くん! 今夜一緒にどうだい!?」
「結構です」
「あっ、5か国語話せる切江さん!! 今夜一杯どうですか?」
「詰まってます」
「切江さん、今夜一発どう」
「間に合ってます!!」
昨晩のことがあったせいか、今日の私は調子が悪い。
こんな、下らないことでカリカリしてしまうなんてーーー。
「あらあら、切江さん、どうしたんでしょう」
「No1キャリアウーマンには辛いこともあるんでしょ」
「うふふふあはははは」
糞っこんな、屈辱だわっ。
この私が羽虫以下のバカOLどもに寄ってたかって嘲笑されているだなんて。
「‥‥‥なぁ、切江さん、元気出しなよ」
下を向いていた私に、呼びかける1人の男の声があった。
「‥‥‥‥‥あなたはっ!?」
「やぁ、昨日ぶり」
彼の声には聞き覚えがあった。
「‥‥‥昨日の、髭面のキャップ男!!」
「ひどいな、髭面だなんて」
「‥‥いや、待って、あなた‥‥もしかして、西園寺くん?」
「そうですよ、ほら、いつもは髭剃ってるし、わかんないっすよね」
「そ、そうだったのね‥‥‥」
彼の名は西園寺蒼真。
うちの部署の超イケメン窓際族である。
「いやぁ、しかし、切江さんが牛丼屋にいるなんて思いもよらなかったよ」
「そ、そう‥‥‥」
「よく行ったりするんですか?」
「ま、まぁ、好きだから‥‥‥」
「へぇー、じゃあ、今日、飲み会フケるんで、一緒に牛丼屋行きません?」
「‥‥‥え?」
「ほら、昨日、切江さんに酷いこと言っちゃったし」
「‥‥‥そ、そうだ!! あなたねっ!!」
「ははは、続きは牛丼屋でやりましょう」
「‥‥‥もうっ」
そんなこんなで、私たちは定時過ぎに牛丼屋に向かうこととなった。
「‥‥‥あの、どこへ向かってるの?」
「‥‥‥」
「ちょっと、ここって‥‥‥」
「‥‥‥いいから」
「きゃっ!」
彼に言われるがまま連れて来られたのは、牛丼屋ではなく、ラブホテルだった。
彼は、とんだ超イケメンスケベ野郎だったのだ。
「そんな‥‥‥こんなのって!!」
「‥‥‥いいから!!」
「きゃっ!」
彼にグイグイと引っ張られるがまま、気づけば私たちはベッドの上に居た。
「‥‥‥こんなところまで連れてきて、何する気?」
私は蠱惑的な上目遣いをした。
これをすれば、どんなオトコもイチコロ‥‥‥
「ごめんそういうのいらない」
「‥‥‥は?」
「違うじゃん、今日はそういうことをしに来たんじゃなくて、牛丼屋のことを謝ってもらうために来たんだよ」
話が理解できない。
この男は頭がおかしいのでございましょうか?
「‥‥‥え? ちょ、ちょ、ちょっと待って?」
「なに?」
「いや、ここホテルよね?」
「そうだけど」
「じゃあ、やることはひとつじゃないわけ?」
「そうだよ? 俺に謝ってもらう」
「そうじゃないでしょ!?」
「いや、あなたこそ何いってんの?」
「え?」
「そんな、会ってすぐ寝れると思ったわけ? めっちゃやる気満々じゃん」
私はコイツを殴りたくなってきた。
「‥‥‥なによ! 昨日みたいに喧嘩しに来たってわけ!?」
「そうだよ!!」
「くそっ‥‥‥じゃあ、言わせてもらうわ、よくも私の服を馬鹿にしやがったわね!」
「服?」
「そうよ、そこに脱いであるファーのことよ!」
「毛?」
「ああ、もう毛でいいわ!!」
「‥‥‥いや、今日日あんなハデな服好きで着ねぇだろ」
「私はキャリアウーマンだからいいの!」
「へぇ」
「っ‥‥‥あと、あれよ、よくも私のカバンを油でテカテカの牛丼屋の床に置いてくれやがったわね!」
「え? でもあんたのバッグ、元からテカテカしてるじゃないか」
「そういう加工なの!!」
「そう」
「糞が‥‥‥‥あと、あれだわ、あれ」
「なに」
「私の顔のこと‥‥‥整形顔とかぬかしてくれたでしょ!!」
「うん」
「私、鼻しかいじってないから!!」
「え? ‥‥‥じゃあ、その目は自前なの?」
「‥‥‥え? ‥‥‥そ、そうだけど」
「本当に? めっちゃ綺麗じゃん」
「そ、そう‥‥‥‥」
「え、じゃあその胸は?」
「え?‥‥‥こ、これは‥‥‥自前‥‥‥だけど」
「マジ? めっちゃ綺麗じゃん」
「そ‥‥‥そう‥‥‥」
「え、じゃあこのくびれは?」
「くびれ!?‥‥‥これも、自前ですけど」
「えー、ほんとに!? めっちゃスタイルいいじゃん!」
「‥‥‥‥そう」
「えーと、じゃあこれ」
「ちょっと!!」
男の手が、あらぬところに伸びそうだった。
「なに?」
「なに? じゃないわよ!! なにどさくさに紛れて下まで脱がせようとしてんのよ!!」
「いや、違うよ、太もも太いなぁって」
「喰らえ」
「痛っっ!!」
私の膝蹴りが蒼真の鼻っ面に直撃した。
「なにすんだよ!!」
「今日はそういうことをしないんじゃなかったの?」
「あのな、そうじゃないんだ、今日ここに来たのは、誤解を解くためなんだ」
「‥‥‥誤解を解くため?」
「‥‥‥そう、実は、昨日もあなたのことを馬鹿にしてたわけじゃないんだ‥‥‥‥ただ、切江さんにはもっと自信を持ってもらいたくて‥‥‥」
‥‥‥私に、自信?
「‥‥‥‥はっはははは!! 笑わせないで!! 私に自信が無いように見えるの?」
「うん」
「‥‥‥どこが!? 私のどこに自信がないっていうの?」
「全部かな」
「‥‥‥は? 全部? ちょっと、適当なこと言わないでよ」
「いや、自信があったら自分のことスーパーキャリアウーマンだなんて吹聴して回らない」
「うるさい!」
私は、ベッドを降りた。
「‥‥‥帰らせてもらうわ」
「‥‥‥そのあなたの持ってる毛だってそうだ!!」
「‥‥‥ファーよ」
「‥‥‥そんなもの羽織ったって、あなたの魅力が見えなくなるだけだ!!」
「‥‥‥じゃあ、どうすればいいのかな?」
「‥‥‥」
切江は、黙る西園寺に近付いた。
「‥‥‥明日から、この毛もバッグも、キャリアも捨てるとして、社会は私にどんな価値を見出だすのかしら?」
「‥‥‥‥」
「ねぇ、この鼻を削ったとして‥‥‥どれだけのオトコが私についていくかしら? ‥‥‥ねぇ、答えられる?」
「‥‥‥‥」
西園寺は、黙ったままだ。
「‥‥‥私たちの世界も知らない‥‥‥窓際のクソガキ風情が、笑わせるんじゃないわよ!!」
切江は、西園寺に平手を振るった。
しかし、西園寺の頬に、その平手が届くことはなかった。
「‥‥‥‥なによ、離しなさいよ!!」
西園寺は、切江の腕を握りしめていた。
「‥‥‥‥ねぇ、切江さん」
「‥‥‥‥なによ」
「あなたには何の価値もないよ?」
「‥‥‥‥え?」
「それじゃ」
西園寺は、置いてあった荷物をまとめた。
「‥‥‥ちょ、ちょっと、本気で言ってるわけ?」
「そりゃあね、入るなり、自分で脱ぎ出すような女に価値なんてあると思う?」
「‥‥‥え」
西園寺は、部屋を出た。
「‥‥‥‥なによ、何なのよ!! アイツ!!‥‥‥そりゃ、私だって、いつも脱いだりなんてしないわよ!!あの糞野郎!!‥‥‥殺してやる!! 殺してやるわ!!」
「殺してやる?」
「うわあああああああああああ!!!!!」
「‥‥‥‥服、着たらどうです?」
「なに、なにしに帰ってきたのよ!?」
「忘れ物」
「ええ!? ああ、そう‥‥‥」
「‥‥‥ねぇ、切江さん」
「なに、なによ!?」
「切江さんって、そんなに経験多いの?」
「‥‥‥‥ええ、当然よ、あんた位の男なんて、何人も食ってきたわよ」
「へぇ、妖怪じゃん」
「はぁ!?」
「じゃあね、服、忘れずに」
西園寺はカバンを取り、再び部屋を出ようとする。
「‥‥‥‥待ちなさい!!」
「‥‥‥なに?」
「‥‥‥あなたが出てったら、私が一人で出ていかなきゃいけないじゃない」
「‥‥‥‥そうだけど?」
「‥‥‥恥ずかしいじゃない!!」
「いや、でも‥‥‥脱がなきゃよかったんじゃ」
「うるさい!! ちょっとこっちこい!! 」
切江は、西園寺の首を掴んだ。
「いでででで!!」
「おらっ!!」
切江は、西園寺をベッドに投げつけた。
「なにするんすか!!」
「西園寺、脱ぎなさい」
「‥‥‥はぁ!?」
「脱ぎなさいって言ってるの! どうしたの? 私が頼めば、あなたなんてすぐクビにできるのよ?」
「‥‥‥」
「どうしたの? 何とか言いなさいよ!!」
「いや、やめといた方がいいっすよ」
「‥‥‥は? この状況で、どの口がそんな事を」
「‥‥‥‥ほら、これ見てください」
「‥‥‥‥え?」
西園寺は、自分のカバンの中を見せた。
切江は、西園寺のカバンに近付に、中を漁った。
バッグには、携帯、サイフ‥‥‥その中に、一際目立つものがあった。
「‥‥‥‥ちょっと、これ‥‥‥!!」
切江が取り出したのは、ICレコーダーだった。
「ええ、撮らせて頂きました、あなたが社内でセクハラを働いてるってんで」
「‥‥‥‥くそっ!!」
「それを壊しても無駄ですよ? すでに録音データ、部屋出たときに、上司に送っときましたから」
「‥‥‥う、うそ‥‥‥‥うちの会社の、あなたの上司が、私を追い出すなんてこと‥‥‥」
「だから言ったでしょ? あなたには何の価値もないって」
「‥‥‥そ、そんな‥‥‥」
「‥‥‥‥‥切江さん」
「‥‥‥なによ」
「上司に送ったデータは、まだ完全じゃありません」
「‥‥‥‥何が言いたいの」
「切江さん、今から言う俺の指示に従ってくれたら、今日のことは、全部無かったことにしますよ」
「‥‥‥‥どう、すればいいの」
「‥‥‥‥俺と付き合ってくれません?」
「‥‥‥‥え?」
「‥‥‥‥‥俺と付き合ってくれたら、今日の録音は、全部消去しますよ」
西園寺は、ベッドの上から、切江を見上げる。
「‥‥‥‥‥ふ、ふふ」
「‥‥‥‥ん?」
「‥‥‥‥は、ははははは!!!」
「‥‥‥‥何がおかしいんです」
「‥‥‥‥‥あなた、嘘ついてるわね」
「‥‥‥‥‥何が?」
「‥‥‥‥‥‥‥さっきのデータ、どうやって、上司に送ったのかしら?」
「どうやってって‥‥‥‥そりゃ、携帯で」
「嘘よ、だってあなたの携帯は‥‥‥忘れ物のカバンの中にあったじゃない」
「‥‥‥‥ちっ」
「それに‥‥‥‥」
切江は、西園寺に覆い被さった。
「ちょ、何を‥‥‥!」
切江は、西園寺の体を服の上からまさぐった。
「‥‥‥ほら、携帯なんて持ってない。‥‥‥となると、さっきあなたが部屋を出たときには、携帯は、部屋の中のカバンの中にあったわけだから‥‥‥」
「‥‥‥クソッ!‥‥ああ、認めるよ」
「‥‥‥そう」
切江は、西園寺のベルトに手をかけた。
「‥‥‥お、おい!!」
「‥‥‥あなたが自分から脱ごうとしないからじゃない‥‥‥それに‥‥‥」
切江は、西園寺のスーツを脱がした。
「‥‥‥‥あなた、私と付き合いたいんでしょう?」
「‥‥‥‥」
切江の細い指が、西園寺の胸をなぞった。
「‥‥‥いいわ、あなたの目的はわからないけど、付き合ってあげる」
「‥‥‥‥本当に?」
「ええ、本当よ‥‥‥」
「‥‥‥‥絶対?」
「ええ、絶対‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
切江は、西園寺のカバンの中身をもう一度見た。
「‥‥‥‥‥なによ、これ‥‥‥‥」
「‥‥‥‥ふふっ」
「‥‥‥‥‥「通話中」、ですって!?」
「‥‥‥ははははは!!!」
切江がカバンから取り出した携帯電話には、上司の名前があった。
「そんな‥‥‥よりにもよって部長に‥‥‥!!」
「‥‥‥‥切江さん」
「‥‥‥きゃっ!」
西園寺は、切江の持つ携帯に手を重ね、切江をベッドに押し倒した。
そのまま、「通話中」の文字を消した。
「‥‥‥な、なにするの‥‥‥‥」
「‥‥‥切江さん」
西園寺は、切江の身体に手を伸ばした。
「いやっ‥‥‥いやっ!!」
西園寺の手は、切江の持つ、ICレコーダーに伸びた。
「‥‥‥え?」
そのまま、西園寺は、ICレコーダーを弄った。
「‥‥‥「‥‥‥そりゃ、私だって、いつも脱いだりなんてしないわよ!!あの糞野郎!!‥‥‥殺してやる!! 殺してやるわ!!」」
「‥‥‥‥ちょっと!!」
切江は、ICレコーダーを取り返そうと、西園寺に飛びかかった。
しかし、西園寺は切江を片手で制し、再びベッドに押さえつけた。
西園寺は、そのままICレコーダーを切江の耳元へやり、録音を再生させた。
「‥‥‥「そりゃ、私だって、いつも脱いだりなんてしないわよ!!」」
「やめ、やめて‥‥‥!」
「‥‥‥「‥‥‥そりゃ、私だって、いつも脱いだりなんてしないわよ!!」」
「‥‥‥やだっ‥‥‥!」
切江は、レコーダーから目を背けた。
「ねぇ、切江さん」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥これって、どういう意味なんですか?」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥「‥‥‥そりゃ、私だって、いつも脱いだりなんてしないわよ!!」」
「‥‥‥ああっ!!」
切江の目は潤み、頬は紅潮している。
「‥‥‥切江さん、普段は自分から脱いだりなんてしないってことですか?」
「‥‥‥‥‥そうよ」
「‥‥‥‥じゃあ、何で今日は自分から脱いだりなんてしたんですか?」
「‥‥‥‥‥」
西園寺は、レコーダーのスイッチに指をかけるふりをした。
「あなたに気があったからよ!!」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥あなたに気が、あったから‥‥‥‥それで、張りきっ、ちゃって‥‥‥」
「‥‥‥‥へぇ」
西園寺は、切江の顔を持ち上げた。
「‥‥‥‥何よ」
「‥‥‥切江さんの顔って、言うほど可愛くないですよね」
「‥‥‥はぁ?」
「‥‥‥鼻を弄ったのは、可愛くないからですか?」
「‥‥‥‥‥いいじゃない、そんなの」
「ええ、どうでもいいです、そんなの」
「‥‥‥‥なにそれ」
「‥‥‥‥あなたが何を着ようが、顔をどう弄ろうが、ずっと好きです」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥はぁ、そこまで言うなら、キスしてみなさ‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥‥西園寺っ!」
「切江さん」
「‥‥‥なに?」
「思ってたんですけど、切江さんって、正直、服の趣味悪いっすね。‥‥‥普通、デートにそんなパジャマみたいな服着てきます?」
「‥‥‥はっ、彼女を牛丼屋に連れてくるような男に言われたくないわね。だいたい、店の中では帽子とりなさいよ、この髭面が」
「ええ? いいと思うんだけどな、この帽子‥‥‥」
「‥‥‥あんたの方がダサイわ」
「そうっすか?」
「そうよ」
「はい、牛丼並ィ二丁!!」
「‥‥‥‥ま、話の続きは牛丼食ってからにしません?」
「‥‥‥‥そうね」
私たちは、割り箸を割った。