2019/01/14
0:00
投稿
「ごめんなさい。
隊長車にやられたわ」
「気にしないで。怪我は無い?」
風紀委員チームからの返答を聞いた麗子はホッと胸を撫で下ろした。
船舶科チームも風紀委員チームも共に怪我をしていないという連絡だった。
カーボンの加工技術無くして戦車道は無理だろうなと彼女はつくづく思う。
金額の問題で他の乗り物にはあまり流用されていないが、いつかは飛行隊が乗るレシプロ機や車にも使われるようになるのだろうか。
「いけない。今はそんなことを考えている場合じゃない」
頭(かぶり)を振って思考を集中させる。
「敵隊長車が現れたのはラッキーね……」
戦車を並べ榴弾を撃ち尽くした後、白洲がキューポラから顔を出して麗子へと声をかけた。
周囲には硝煙の香りが充満していて呼吸がし難い。
会長がこちらにティーガーⅠを連れて来る。
その連絡を受けて、弾を惜しみなく使用した。
吉と出るよう祈りながら。
そして敵の隊長車までもが現れた。
「あちらは2輌のティーガー……」
風紀委員チームの情報によれば生徒会チームの煙幕から遅れて現れたという。
「デザートは後でってことかしら。
ケーキが食べたくなるわね」
麗子の言葉に反応して、車内から食べたいケーキの名前が挙がる。
しかし徐々にケーキの名称がどれだけ言えるか?というゲームに変化していく。
「私達にⅢ号を片付けられた時、すぐさま残りのティーガーと合流するために移動したのね」
「でしょうね。
だから私達は後回し」
生徒会長からの連絡を基(もと)に戦車を後退させる。
あくまでも相手を誘い込むのが目的だから。
「やあ!レーちゃん!」
無線から元気な声が飛び出す。
生徒会長だ。
「こっちから見て、右側にっ、隊長車達だよっ」
撃たれながらの声から察するに相当撃ち込まれている。
彼女達は十字路を鳥居側にも反対側にも曲がらずに真っ直ぐ北上して、その先に中央分離帯で分けられている道の右側を走っている。
本来ならば車が下るために通る道を逆走している状態だ。
「さあやるわよ!」
スイッチを押し煙幕を発生させる。
同時に戦車を移動させ左右の壁側へと寄せる。
素早く発炎筒を通信手から受け取って、先端を強く擦り発火させると所定の位置に放り投げる。
再び勢い良く後退し煙幕の拡散を促す。
勢い良く炎と光が生み出されるのを確認していると、前方からも煙が発生した。
「やーらーれーたー!」
それは生徒会チームの煙幕かと思ったが撃破された際に発生したものだった。
「くそう!履帯がはずれたところを狙われた……。
ごめんね、後は任せたよ」
ヘッツァーは固定砲塔だから嫌だと言って、38tを選んだのが裏目に出てしまった生徒会長が嘆いた。
「囮にしてすみません。
ですが、準備が整いました。
私達の大洗戦車道の意地を見せてやります!」
隊長が力強く宣言した。
/////////////////////////////////////
ティーガーⅡ(隊長車ではない方)とⅠの車長は、どやんすボディ。
次回更新日
01/15(火)予定