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No.4285の一覧
[0] 逃亡奮闘記 (戦国ランス)[さくら](2010/02/09 17:04)
[1] 第一話[さくら](2008/10/14 08:51)
[2] 第二話[さくら](2009/12/08 15:47)
[3] 第三話[さくら](2008/10/22 13:09)
[4] 第四話[さくら](2008/10/22 13:12)
[5] 第五話[さくら](2008/10/30 10:08)
[6] 第六話[さくら](2008/11/04 21:19)
[7] 第七話[さくら](2008/11/17 17:09)
[8] 第八話[さくら](2009/03/30 09:35)
[9] 番外編[さくら](2009/04/06 09:11)
[10] 第九話[さくら](2009/09/23 18:11)
[11] 第十話[さくら](2009/09/26 17:07)
[12] 第十一話[さくら](2009/09/26 17:09)
[13] 第十二話[さくら](2009/09/28 17:26)
[14] 第十三話[さくら](2009/10/02 16:43)
[15] 第十四話[さくら](2009/10/05 23:23)
[16] 第十五話[さくら](2009/10/12 16:30)
[17] 第十六話[さくら](2009/10/13 17:55)
[18] 第十七話[さくら](2009/10/18 16:37)
[19] 第十八話[さくら](2009/10/21 21:01)
[20] 第十九話[さくら](2009/10/25 17:12)
[21] 第二十話[さくら](2009/11/01 00:57)
[22] 第二十一話[さくら](2009/11/08 07:52)
[23] 番外編2[さくら](2009/11/08 07:52)
[24] 第二十二話[さくら](2010/12/27 00:37)
[25] 第二十三話[さくら](2009/11/24 18:28)
[26] 第二十四話[さくら](2009/12/05 18:28)
[28] 第二十五話【改訂版】[さくら](2009/12/08 22:42)
[29] 第二十六話[さくら](2009/12/15 16:04)
[30] 第二十七話[さくら](2009/12/23 16:14)
[31] 最終話[さくら](2009/12/29 13:34)
[32] 第二部 プロローグ[さくら](2010/02/03 16:51)
[33] 第一話[さくら](2010/01/31 22:08)
[34] 第二話[さくら](2010/02/09 17:11)
[35] 第三話[さくら](2010/02/09 17:02)
[36] 第四話[さくら](2010/02/19 16:18)
[37] 第五話[さくら](2010/03/09 17:22)
[38] 第六話[さくら](2010/03/14 21:28)
[39] 第七話[さくら](2010/03/15 22:01)
[40] 第八話[さくら](2010/04/20 17:35)
[41] 第九話[さくら](2010/05/02 18:42)
[42] 第十話[さくら](2010/05/02 20:11)
[43] 第十一話【改】[さくら](2010/06/07 17:32)
[44] 第十二話[さくら](2010/06/18 16:08)
[45] 幕間1[さくら](2010/06/20 18:49)
[46] 番外編3[さくら](2010/07/25 15:35)
[47] 第三部 プロローグ[さくら](2010/08/11 16:23)
[49] 第一話【追加補足版】[さくら](2010/08/11 23:13)
[50] 第二話[さくら](2010/08/28 17:45)
[51] 第三話[さくら](2010/08/28 17:44)
[52] 第四話[さくら](2010/10/05 16:56)
[53] 第五話[さくら](2010/11/08 16:03)
[54] 第六話[さくら](2010/11/08 15:53)
[55] 第七話[さくら](2010/11/12 17:16)
[56] 番外編4[さくら](2010/12/04 18:51)
[57] 第八話[さくら](2010/12/18 18:26)
[58] 第九話[さくら](2010/12/27 00:35)
[59] ぼくのかんがえた、すごい厨ニ病なゆうすけ[さくら](2010/12/27 00:18)
[60] ぼくのかんがえた、すごい厨ニ病なゆうすけ(ふぁいなる)[さくら](2011/01/05 16:39)
[61] 第十話[さくら](2011/01/05 16:35)
[62] 第十一話[さくら](2011/05/12 18:09)
[63] 第十二話[さくら](2011/04/28 17:23)
[64] 第十三話[さくら](2011/04/28 17:24)
[65] 第十四話[さくら](2011/05/13 09:17)
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[4285] 第三話
Name: さくら◆491058f1 ID:d686609c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/28 17:44
JAPANの兵士は農民からの徴兵ではなく、国の常駐兵である。
そのため維持するのにもお金がかかるし、兵士の給料も払わなければならない。
しかし兵士の強さという点では農民からの徴兵とは隔絶した力を誇っている。

では彼等は戦がなく平和な時は何をしているか。
新たな建物の建設に力を貸したり、治安維持のために駆り出されたりもする。
しかしそのほとんどは戦のための訓練の時間に割かれるのだ。

「で、なんで俺がこんなとこに?」

そして祐輔は何故か。
そう何故か自分の意思とは関係なく練兵場に連れてこられていた。
もちろん連れてこられたからには連れてきた人間がいる。

「いや、お前がどんだけやるのか気になってさぁ。
それにお前だって毛利の客人扱いとはいえ戦場に出るンだから、訓練は必要だろ?」

その祐輔を練兵場まで連れてきた人間。
吉川 きくはそう不敵に笑いながら祐輔を縛る手綱を緩めた。
手綱とはいつも彼女が持っている鎖がついている中華鍋の鎖である。

「ああ、そういう事。朝起きて問答無用で連れてこられたからびっくりしてたんだけど」

事情がわかれば祐輔も不要に怯える必要もない。
ジャラジャラとなる鎖から解放され、ふぅと息を吐いて肩を回した。
おそらく自分の力、どこまでやれるかを測ろうという魂胆なのだと安易に発想がつく。

「けどなぁ…」

「ん? どうした?」

「ああ、いや、いい。どうせ訓練始まったらすぐわかる事だし」

う~んと苦い顔の祐輔を不信がる きく。
祐輔にとって自分が訓練するという事が無駄だという事は自覚しているが、それは説明して正確に伝えるのは難しいだろう。
ならいっそ訓練で見てもらったほうが早いという事も。

「よし、じゃあ始めっか!!
へへっ。あんだけ速く動けるお前だから、どんだけやれるか実は楽しみだったんだよな」

「いや~…ハハハ……」

やる気満々な きくと曖昧に笑う祐輔。
自分たちだけならともかく、他の兵士の前で自分の弱さを晒すのは得策ではないからだ。
面倒な事にならなければいいがと祐輔は目の前で整列するモヒカン達を眺めながらそう思った。

ちなみに祐輔と きくがため口なのは、きくがそうしろと強要したからである。
どうも彼女は畏まった言い方をされるとムズ痒くなってしまい苦手らしい。
祐輔にしても使い慣れない敬語よりこちらのほうが助かるので、拒む理由がなかった。



「ぜぁ、へぁ、これ以上はぁ、無理」

「ありえねぇ…」

素振り100回。
祐輔の腕がパンパンになるまでにこなした回数である。
他の兵士が涼しい顔で素振りを続ける中、一番早くギブアップしたのは祐輔だった。

「はぁ? 冗談だろ…って、その腕の張り方は嘘じゃねぇし」

ふざけているのかと きくは祐輔の腕を見るが、祐輔の腕はパンパン。
祐輔がマジで限界であるという事を きくは信じられないモノを見る目で見る。

「いや、だってあの身のこなし。
あんだけ出来て、これだけしか刀が振れないってありえないだろ。武器の問題じゃないんだろ?」

「おう! これが俺の全力全開だ!!」

「いばんじゃねぇよ!! このボケ!!」

「すんませんっした」

開き直る祐輔に怒号を浴びせる きく。
過去に祐輔の動きを見切れなかった事がある きくにとって、これは到底認められない事実だ。
しかしその時祐輔は神速の逃げ足を発動させていたので当然といえば当然なのだが、それを きくが知る術は現時点でない。

「おい、あれマジか?」
「なんであんな奴が客将してんだよ。意味がわからね」
「あれなら俺のほうがよっぽど強いぜ」

他の兵士の間にも祐輔のひ弱さに対する批判が蔓延る。
それも当然。毛利という国において力第一主義なのである。
そのため兵士たちにとって祐輔が弱いにも関わらず元就に近い位置にいるという事は到底納得できるものではなかった。

「やべ」

腕をプルプルさせている祐輔はともかく、きくが兵士たちの様子に気づかないはずがない。

「こっちこい」

がっと祐輔の首を掴んで兵士たちに背を向け、どうすんだと祐輔に訊ねる。
そんな事を言われてもさっぱりわからない祐輔は事情を詳しく説明してくれと求めた。

「つまりだ。一番手っ取り早いやり方が実力を魅せつけるってやり方なんだよ。
だっていうのにお前ときたらヘタれやがって…」

「あの…それ、俺の責任じゃないっすよね?」

「あ”あん!?」

「そうだね、プロテインだね。俺のせいだね」

そんな勝手な事されても…という祐輔の視線を眼光でねじ伏せる きく。
美人な女性ほど睨むと怖いものなので、きくの眼光に対して祐輔はさっと目を逸らした。
しかし きくの目論見は理解できたし、なら今の状況はマズイのではないか。

「うわぁ…」

祐輔はちらっと後ろを振り返るも、すぐに元に向き直る。
案の定背後の兵士たちの祐輔に向ける視線には疑惑たっぷりで、嫌悪や不審を滲ませていた。
これは祐輔が何かをしないと場が収まりそうではない。

(どうっすかなぁ…メンドイ事になったなぁ…)

そう思うも、これは避けては通れない道だったかもしれないと祐輔は思う。
どこの組織だって新参者がいきなり上司になったら納得できないし、不満に思うだろう。
ましてやその男は見た目モヤシで、全く強そうに見えないのだから。

「そうだな…うん、これでいこうか。
きく、気を使ってくれてありがと。後は俺がなんとかしてみるわ」

「お、おう…」

気分を切り替え、首をコキコキと鳴らして兵士たちに向き直る祐輔。
きくはというと祐輔の急な切り替えについていけず、ただ曖昧に返事を返すだけだ。
あるいはこういった切り替え、つまりギャップこそが祐輔の印象を人々に焼き付けるのかもしれない。



「よーし、注目!!」

生意気な新人が兵士たちの目の前で大声を張り上げる。
そう、生意気な新人だ。兵士たちにとって祐輔はただの生意気な新人でしかない。
客人だというが他の国で名前すら聞いた事ない。かといって武芸の達人でもなさそうだ。

日々の不満を察知した きくが祐輔の実力を見せてやる場を作ると言わなければ、もっと早くに暴発していたかもしれない。
しかしその暴発はもう今日起こるかもしれない。というか絶対起こる。
素振りたった100回で限界を迎えた祐輔を見て、兵士たちの不満は最高潮に達していた。

「よし。今日はお前らボンクラに訓練をしてやろうかと思う。
更にあえて言おう。お前らはクソの役にも立たないウジ虫であると!!」

そしてこの言い草だ。
きくの手前堪えてはいるものの、臨界点突破まであと30%である。

「いいか。お前らみたいなウジ虫でもわかりやすいように俺の凄さを教えてやる。
だからそのニワトリみたいな頭でも三歩歩いて忘れないように、よく刻みこんでおけ」

臨界点突破まであと20%である。
もう一部の兵士なんかはコロスコロスを連呼し始めた。
毛利兵の顔色が湯上りの状態から熟れたトマトのように真っ赤に染め上がる。

「これから貴様らウジ虫と俺とで競争だ。
貴様らウジ虫が俺を捕まえられたらお前らの勝ち。半日逃げ切ったら俺の勝ち。
どうだ? 鳥くらいの脳みそしかない貴様らでも覚えられる簡単なルールだろ」

兵士たちの臨界点突破まで秒読みに入った。
きくなんかはもう取り返しがつかないぞ、とアホを見る目で祐輔を見やる。
いい具合に楽しくなってきた祐輔は毛利兵を完全にブチギレさせるため、見下しながら嘲笑した。これは演技であり、祐輔の一面ではない。という事にして頂きたい。

「無論俺は逃げる。俺を捕まえる際に俺が死んだとしても、不幸な事故として処理してもらう。
まぁ絶対に無理だろうがなwww やれるもんならやってみろっていうwwwww
そんなわけで今から開始だ。昼飯までに俺を捕まえてみせろ、このウジ虫どもが!!」

【■■■――――!!! ■■ァアァ■■■■■!!!!!!!!】

〈ドドドドドッドドドドドドドド!!!!!!〉

ここまで言われて冷静でいられる毛利兵はいない。
全員が全員言葉になっていない奇声、怒号、雄叫びをあげて少し離れた場所にいる祐輔目指して猛突進を開始した。
数は一部隊で訓練をしていたために500程で、その全員が土煙をあげて激走する様は猛牛の突進を彷彿とさせる。

「うん、よしよし。上手く釣れた。
いやー、こんな大きな釣り針に顔真っ赤にして釣られるとは本当に単純だな。
殺気満々だし、充分に発動できるぞ」

「何がよしよしだよ…あーあ、こうなったらどうなっても知らねぇからな。
あいつらそれなりの腕だし、もう死ぬぞ。お前」

「いやー、ハハハ。もうそんな心配入りませんけどね。
なんなら きくも追いかけっこに参加する? その場合、俺を殺す気で追っかけてもらわないと困るけど」

「あぁ? そりゃどういう…」

意味だ、と きくが隣にいて会話をしていたはずの祐輔に声をかけようとした時である。
しかしそこに祐輔の姿はどこにもなく、地面に抉れたような跡が残るのみ。
そしてその抉れた跡の先を無意識に視線で追った きくはなかば唖然とした声を漏らした。

「なん…だ…ありゃ…?」

抉れた跡の延長線上に小さくなった祐輔の姿。
距離にしておよそ100mほど離れている。
きくは自分が目を離した一瞬の隙にそこまで移動したのかと背筋をゾクリと震わせた。

(一呼吸の間に、あれだけ移動しただって――――?)

当然、きくより離れた場所にあった兵士たちもその様は見ている。
だが彼等は完全に頭に血がのぼっており、その摩訶不思議な現象よりも祐輔捕縛(殺害に重き)を優先としたようだ。
唖然とする きくをスルーして祐輔を追いかけ、そのまま走り抜けていった。

「やればできるんじゃねぇか…けど、さっきのアイツも手を抜いてるわけじゃねぇし。
うーん……あぁ、もうわけわかんねぇ!! 昼飯の時に締め上げてやる!!」

祐輔の動きにおける余りの差異に混乱する きくだが、ひとまず置いておく事にしたらしい。
これでは訓練を再開できるはずもないだろうし、自分一人が練兵場にいても意味がない。
昼飯時は覚えておけよ、と祐輔に恨み言を吐きながら昼食を作るため、彼女は台所へと向かった。
兵士と一緒に追いかけないぐらいには彼女も混乱しているらしい。



「ほぅ、なるほど。あの騒ぎはそういう理由であったか」

「いや、ご迷惑かけてすいません」

「なに構わん。私の部隊の連中も追走劇に参加したおかげで、こうしてゆっくりと話ができる時間が取れたのだからな」

午後、とある一間で。
食後のお茶とお菓子を食べながら、祐輔と てるはのほほんとおやつ休憩に入っていた。
午前の騒がしさがまるで嘘のように静まり返った城の中で祐輔は午前の追いかけっこの報告をしていたわけである。

完全にブッチKILL状態の兵士のおかげで祐輔は遺憾なく神速の逃げ足を発動。
発動さえしてしまえば使徒と互角以上の速さを誇る祐輔を追い詰める事が可能な者は毛利にはいなかった。
結果は祐輔の逃げきり勝ち。城の中には全力疾走の疲労で死屍累々の兵士の山ができたというわけだ。

ここで問題となったのが、いつの間に祐輔を追いかける兵士が きくが訓練する部隊だけでなくなっていたのである。
野次馬根性や祐輔の言い分を聞いてブチギレたモヒカン達が俺も俺もと追いかけっこに参加。
つまり何故祐輔が てるの部屋に来ているかというと、てるが午後から教導する予定の兵士まで潰れてしまったせいなのであった。

ちなみに昼食後 きくがもの凄い目で祐輔を見ていたが、祐輔は軽く受け流していた。
軽く受け流しているのは見た目だけだが、きくに詰問される前に てるに話を持ちかけたので難を逃れる事に成功している。

「しかし聖刀日光を健太郎殿が所持していたとはわたりに船。なんという行幸か」

「本当にそうですよね。これで毛利単独でも魔人に対抗する事が可能になりましたし」

ついでにというわけではないが、健太郎達の事も てるに報告をする。
魔人と直接戦って勝ち得るという事を聞いた てるの犬歯を覗かせる獰猛な笑みは祐輔の脳裏に焼きつかせられた。
戦闘狂というのは彼女の事をいうのだろう。戦狂いともいう。

「それで、話を元に戻しますけど。
今現在宣戦布告をした国というのは明石、島津という事でいいんですね?」

「そうだ。種子島家など商人の国、攻めても何も面白くはないからな」

「ま、正解ですよ。種子島家には瓢箪ないですし」

祐輔が彼女の元を訪れたのは詫びを入れるためもあるが、それは現在の詳しい状況を知るため。
前回は宣戦布告ヒャッハーで放心状態だったため、右から左へと聞き流してしまっていたのだ。

ふむと祐輔は頭の中で てるから与えられた情報を整理する。
これからどうしたくて、どうするべきなのかと方針を決定するためだ。
もっとも方針を決定したとしても祐輔の思うように動くわけではないが。

(まず明石。ここは休戦状態から再び開戦したわけだ。
もう既に本丸を残すのみとなっているし、そんなに労せずとも落とせるだろ。
それに瓢箪がある国でもある。弱小国より毛利で保管したほうが断然安全だ)

明石家とは弱小にも関わらず、瓢箪を所持している家である。
祐輔は原作知識からしてそこは変わってはいないだろうと当たりをつけて、明石家についての思考を纏める。
明石家に関してはそんなに危険度は高くつけなくていいだろう。

問題というか、厄介な存在が明石には存在している。
だがそれはこちらが最後まで追い詰めなければ起動される事はないだろう。
もっとも起動すれば窮鼠どころではなく、深刻なダメージを受ける事になるが。

(問題は島津、だよな。
多分魔人の本拠地になるだろうし、そのためにこちらの軍備や体力は減らしたくない。
そのためには戦をしないのが一番だけど、それも毛利じゃ無理か)

そして如何に毛利といえど島津を攻略するには時間がかかり過ぎる。
既に宣戦布告をしているが島津から攻めて来る事は今のところないらしい。
つまり毛利から攻め入らなければ紛争は起きないが…。

(逆に考えて、毛利が島津を攻略するのを徹底的に支援して魔人に支配されるより先に島津を早期に潰す。
って、そんなに上手く行くはずがない。それに時間かかり過ぎる)

結論として島津は触らないほうがいい。
しかしそれでは毛利家の人々の気質からして難しい物がある。
しかも明石に矛先を向けたとしても、その間に島津から攻められたら一番危険な魔人候補地の領地を広めてしまう。

原作では二方面作戦なんてしていたが、そんな事をしていたら普通はもたない。
実現可能になるには領地を少なくても10以上、更に優秀な将軍が10人以上は必要だろう。

(頭痛い…なんでこの人達、宣戦布告一気にしたんだろ‥)

覆水盆に返らず。
既にやってしまった事を悔いても元には戻らないのだ。
適度に毛利のフラストレーションを減らし、且つ毛利の体力を減らさないやり方。

「う~ん……」

「どうしたのだ。急に唸りだして」

「いえ、ちょっと上手いやり方がないものかと」

原作知識やらなにやらを総動員して考えを巡らせて悩む祐輔。
そんな上手い話、あるはずがないと諦めかけたところで。

――――――祐輔に電撃走る―――――!

「…あ! あるじゃないか、そこそこいける感じの方法が!
すげぇ、俺ってすげぇ! ひょっとしたら天才かもしれない!」

てるの前だというのに、祐輔は自分で閃いた考えを自画自賛する。
それほどまでに祐輔は自分の考えに自信を持っていた。
素晴らしい、ビューティフォー、この世は俺を祝福している。それくらい型に嵌ればいい考えである。

「てる殿! 俺にいい考えがあるのですが、外交任せてくれませんか!?」

「外交…? 毛利にそのような物は必要ないが」

本気で言っている てるに戦慄しつつも、祐輔は食い下がる。

「もし成功すれば島津と全快の状態で闘えますよ。
それに ちぬの事を考えれば出来るだけ本命と戦ったほうがいいでしょう?」

「本命、とは?」

「あー…これは未確認情報なんですけど、魔人は島津に出現する可能性高いんですよ」

「ほう」

原作知識なので詳しくは言えませんけどねと心の中で祐輔。
お前はなんでも知っているんだなと納得する てるも脳筋毛利一家の一員らしい。

「俺に任せてくれれば無傷で明石、それにもしかしたら死国も手に入りますよ。
どうです? 一枚噛んでみませんか?」



北条家。
JAPANに現れる魔物、妖怪を退治する陰陽師を管理する機関である。
それと同時に自国を持つ大名であり、関東で武田・上杉と鎬を削る戦いを繰り広げていた。

しかし他国と戦争をしながらでも本来の仕事を忘れたりはしない。
他国からの妖怪討伐の要請があれば陰陽師を派遣し、討伐する。
今代の当主である北条早雲は生真面目な性格であるのも一押ししているだろう。

今回陰陽師の要請があったのは京の都。
羅生門に鬼が住まい、通りすがる人を食べているというもの。
それだけなら普通の陰陽師を派遣するが、今回はその鬼が梅川と名乗ったという情報が早雲の判断を変えていた。

梅川。遥かに昔から齢を重ねた強力な鬼である。
その力は並の陰陽師では到底かなう物ではない。
そのため早雲は国の防衛を大道寺に任せ、自ら梅川を退治しに京まで上京したのだ。

「っく!」

「カカカカッ、若い! 若いの!!!」

歴代最強の陰陽師、北条早雲。
しかしその早雲が今、梅川の剛腕に捉えられそうになっていた。
これは彼自身のミスではない。彼は犠牲になりそうだった部下を庇い、自ら身を呈したのだ。

梅川は早雲の隙を逃さず地面を蹴る。
鬼の超人的な身体能力。瞬く間に早雲の前へと駆けて行く。
新たに式神を召喚する時間はない。早雲は覚悟を決め、すれ違い様に直接強力な札を貼りつけ、反撃しようとする。

これを見て平静でいられないのは周りの兵士である。
庇われた兵士はもちろん、彼に親しい者。特に早雲に恋心を持つ南条蘭の動揺は計り知れない。
このままでは…早雲の死を幻視した蘭も走るものの、梅川が致命傷を放つほうが速い。

(やだ! やだ! そんなの!!)

愛しい人が死ぬ。
そんな事―――そんな事、認められない…!

(なんでもいい…なんでもいいから…)

今蘭に出来る事。
それは自分が精一杯走る事ではなく、手に持っている式札で式神を召喚する事。
それも並大抵ではない上位の。今まで蘭が呼んだ事もないような高レベルの式神を。それも早雲の召喚よりも早い速さで。

(早雲を、助けてっ!)

蘭の強い願い。
だが所詮式神は己のレベルに合った物しか出てこないようになっている。
何故ならそれ以上の物を呼んでしまうと暴走してしまい、術者自身が殺されかねない。
蘭の式札にこめた願いは無情にも叶わないのだ。

『……ハハッ…』

普通なら、ば。

『いいぜ。だったら俺の名前を呼びな』

内に叫びかける蘭の声に返す若い男の快活な声。
その声からにじみ出るのは絶対の確信。自分を呼んだのなら、目の前の矮小な鬼程度塵すら残さず消し去るという自信。
聞いたこともない男の声と同時に蘭の中に一つの名前が浮かび上がる。

「っ…来い!!」

早雲を助けられるのならば何でもいい。
蘭は己の心の中に浮かび上がった名前を高らかに言い放つ。

「朱――――雀!!!!!」

瞬間、場の空気が変わった。

「え…っ!?」

【ハハハッ!!!!】

戸惑う蘭の声。恒星と見紛うほどの炎の煌めき。
蘭の頭上に突如として現れた業火の塊は爆発し、炎の余波を撒き散らす。
炎の塊から繭を食い破るようにして現れたソレは蘭に呼びかけた男の声で高らかに笑った。

【ハーッハッハハハハハハハ!!!!】

「な…! ぐわぁぁあ!?」

ソレは大空を火の粉をまき散らしながら飛翔し、一直線に梅川へと飛ぶ。
ソレがまるで何もないかのように梅川と激突して飲み込み、そのまますり抜けていく。
ソレが通り過ぎた後に残ったのは体が炭化し、ブスブスと煙をあげる梅川の姿だった。

蹂躙―――ソレを見ていた人間は、ただただその感想しか思い浮かばない。

「お前、が、朱雀…?」

ソレは鳥のようでいて、鳥ではなかった。
形の成りこそ大きな鳥だが、巨大な炎の塊で体を形成している。
煌々と灼熱に光る不死鳥は呆然とする蘭達を悠然と見下ろす。

【ああ、そうだよ。それでお前の力だ】

「私の、力…」

【これから俺の力が欲しければ名前を呼びな。もっともタダじゃないがな】

不死鳥朱雀。
毛利から遠く離れた地で、産声を上げた。
















あとがき

そろそろリクエストやりますよ!
総感想数1000辺りが非常に怪しいです。


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