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No.4285の一覧
[0] 逃亡奮闘記 (戦国ランス)[さくら](2010/02/09 17:04)
[1] 第一話[さくら](2008/10/14 08:51)
[2] 第二話[さくら](2009/12/08 15:47)
[3] 第三話[さくら](2008/10/22 13:09)
[4] 第四話[さくら](2008/10/22 13:12)
[5] 第五話[さくら](2008/10/30 10:08)
[6] 第六話[さくら](2008/11/04 21:19)
[7] 第七話[さくら](2008/11/17 17:09)
[8] 第八話[さくら](2009/03/30 09:35)
[9] 番外編[さくら](2009/04/06 09:11)
[10] 第九話[さくら](2009/09/23 18:11)
[11] 第十話[さくら](2009/09/26 17:07)
[12] 第十一話[さくら](2009/09/26 17:09)
[13] 第十二話[さくら](2009/09/28 17:26)
[14] 第十三話[さくら](2009/10/02 16:43)
[15] 第十四話[さくら](2009/10/05 23:23)
[16] 第十五話[さくら](2009/10/12 16:30)
[17] 第十六話[さくら](2009/10/13 17:55)
[18] 第十七話[さくら](2009/10/18 16:37)
[19] 第十八話[さくら](2009/10/21 21:01)
[20] 第十九話[さくら](2009/10/25 17:12)
[21] 第二十話[さくら](2009/11/01 00:57)
[22] 第二十一話[さくら](2009/11/08 07:52)
[23] 番外編2[さくら](2009/11/08 07:52)
[24] 第二十二話[さくら](2010/12/27 00:37)
[25] 第二十三話[さくら](2009/11/24 18:28)
[26] 第二十四話[さくら](2009/12/05 18:28)
[28] 第二十五話【改訂版】[さくら](2009/12/08 22:42)
[29] 第二十六話[さくら](2009/12/15 16:04)
[30] 第二十七話[さくら](2009/12/23 16:14)
[31] 最終話[さくら](2009/12/29 13:34)
[32] 第二部 プロローグ[さくら](2010/02/03 16:51)
[33] 第一話[さくら](2010/01/31 22:08)
[34] 第二話[さくら](2010/02/09 17:11)
[35] 第三話[さくら](2010/02/09 17:02)
[36] 第四話[さくら](2010/02/19 16:18)
[37] 第五話[さくら](2010/03/09 17:22)
[38] 第六話[さくら](2010/03/14 21:28)
[39] 第七話[さくら](2010/03/15 22:01)
[40] 第八話[さくら](2010/04/20 17:35)
[41] 第九話[さくら](2010/05/02 18:42)
[42] 第十話[さくら](2010/05/02 20:11)
[43] 第十一話【改】[さくら](2010/06/07 17:32)
[44] 第十二話[さくら](2010/06/18 16:08)
[45] 幕間1[さくら](2010/06/20 18:49)
[46] 番外編3[さくら](2010/07/25 15:35)
[47] 第三部 プロローグ[さくら](2010/08/11 16:23)
[49] 第一話【追加補足版】[さくら](2010/08/11 23:13)
[50] 第二話[さくら](2010/08/28 17:45)
[51] 第三話[さくら](2010/08/28 17:44)
[52] 第四話[さくら](2010/10/05 16:56)
[53] 第五話[さくら](2010/11/08 16:03)
[54] 第六話[さくら](2010/11/08 15:53)
[55] 第七話[さくら](2010/11/12 17:16)
[56] 番外編4[さくら](2010/12/04 18:51)
[57] 第八話[さくら](2010/12/18 18:26)
[58] 第九話[さくら](2010/12/27 00:35)
[59] ぼくのかんがえた、すごい厨ニ病なゆうすけ[さくら](2010/12/27 00:18)
[60] ぼくのかんがえた、すごい厨ニ病なゆうすけ(ふぁいなる)[さくら](2011/01/05 16:39)
[61] 第十話[さくら](2011/01/05 16:35)
[62] 第十一話[さくら](2011/05/12 18:09)
[63] 第十二話[さくら](2011/04/28 17:23)
[64] 第十三話[さくら](2011/04/28 17:24)
[65] 第十四話[さくら](2011/05/13 09:17)
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[4285] 第十一話【改】
Name: さくら◆16c0be82 ID:a000fec5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/07 17:32
怒声が飛び交う。血が乱れ散る。
己という存在をかけて人が互いを殺しあう。
戦場というものはいとも容易く人の命を奪っていく。

特に一番に槍を合わせる部隊の損傷は著しい。
最初の衝突が以降の雌雄を決すると言っても過言ではないが、まず間違いなく死ぬ。
そんな一番槍の部隊に配属された時点で織田の兵士は死を覚悟していた。

「あ、あ、あああぁぁぁあぁああああ!!!」
「ぎゃあああああああああ!!」
「ぎひっやぁ!?」

それでも、と織田の兵士は思う。
これはあまりに理不尽ではないかと。

それは【死】という結果を周囲に撒き散らす嵐だった。
それに触れれば否応なく、抵抗することも許されずに死んでいく。
腕を切り落とされ、脚を切断され、首を刎ねられ、胴体を二分する。

「―――――――ぁ――――」

「フフ、フフ、フフフ」

それが兵士の目の前に現れた時、男は自分でも理解できない感情に声を漏らした。
それは余りにも美しく、それは余りにも禍々しい。そして余りにも恐ろしい。
コヒュ、という呆気ない空気の漏れる音と共に男の首は宙を舞い、支えを失った男の体は地面に崩れた。

「アハ、ハハハ…!」

それはぺロリと刀についた血糊を舌で転がし、味わう。
血独特の生々しいツンとした鉄の味が味覚を刺激し、脳髄が蕩けるような感覚に満たされる。
ゾクゾクと興奮に身を捩じらせて女は次の得物へと向かい猛然と飛び掛っていった。

女の名前は式部。
魔人側の前線部隊に配置された主力であり、切り札であった。



「前衛正面、陣形を保てません!!」

いや、俺も鳥から教えられて分かっているんですけどね?

切羽詰った感じで本陣にて光秀が部下からの報告を受けているのを横耳で聞きつつ、絶えず全体の鳥達を動かし続ける。
俺は直接雀から情報を受け取らないといけないため、巧みに各所に散っている鳥達を本陣へと帰らせなければいけないのだ。
視覚の共有化さえ出来れば戦術幅が広がるのだろうけど、流石にそれはできそうにないしな…。

とはいえ、戦況はちょっとヤバイが作戦自体としてはそう悪くない。
今鳥達から受け取った情報からすると、正面の部隊を切り崩しているのはほぼ半裸の女らしい。
その特徴と鬼人じみた強さからして、まず間違いなく使徒の一人である式部と見ていいだろう。

「太郎君、光秀様に追加連絡。
敵正面でこちらを切り崩しているのは十中八九魔人の使徒だ」

「その根拠は?」

「普通の人間は片手で人の頭をトマトみたいに握りつぶせないでしょ。
しかもそれにもう何十人と刀をあわせているのに疲労した様子もないみたいだし。
作戦は順調に進んでいる。そう光秀様に伝えてくれ」

「了解です!!」

あの後、順調に待ち伏せや奇襲をしてくる三笠衆を潰して進軍していた俺達。
あと一歩で本能寺に辿り着くといった時点で結集した敵軍とかち合い、そのまま戦闘に移行。
こうして俺が広域全体の情報を伝えているわけなのだが…。

太郎君を伝達にやった後からも入ってくる情報を纏めるとこうだ。
軍同士のぶつかり合いを見るのならば織田軍が圧倒的に優勢。押している。
その数の多さを利用して既に敵軍を半包囲し、殲滅へと陣形を取ろうという点まできていた。

しかしある一点に関していえば、織田軍は為す術もなく敗退している。
しかも悪い事にそれは真正面の部隊であり、爆発的な力の存在を止められずにいた。
このままではその一点から敵が抜けてきて、こちらの本陣にまで届くのではないかという恐れを抱くほどに。

「式部、ね。やっぱ復活してやがったか」

鳥から齎らされた情報。そして原作知識。
太郎君には十中八九と言ったけど、ほぼこいつで決定だな。
魔人ザビエルの使徒の一人、式部。話も通じないイカレタ女で、結構厄介な存在だ。

『どうするんだ?』

「どうするって言われてもな。どうしようもないだろ。
引き続き玄さん達は周囲の情報を持ってきた鳥達の仲介、俺に伝達。
俺に出来ることはそれだけで、それをこなすだけさ」

俺は全ての鳥に命令を下す事はできるが、その鳥から情報を得る事は出来ない。
そのため契約をして言葉を交わす事が出来るようになった鳥に仲介を頼まなければいけないのだ。
この辺も呪いが強くなったら解決できるかもしれないが、それを願う気にはなれそうにない。

了解したと言って再び空中に飛び立った玄さんを見送りつつ、現在の状況について考えを巡らせる。
さっきも言ったけど現状、織田にとってこの戦況はいい流れだ。作戦通りと言ってもいい。
敵軍の目は明らかにこちらへと向いており、敵主力であるはずの式部までもが迎撃部隊に組み込まれているのだ。

この作戦の勝利条件は魔人の封印、殲滅。
軍と軍との戦に勝つ事も重要ではあるが、最悪この戦は負けてしまっても問題ないのだ。
もっとも織田家からすれば負けるわけにはいかないだろうけど、極論俺からすれば魔人さえなんとかなればおk! だし。

こちらに戦力が集中すれば集中するほどランス達は楽になっていく。
なんか「ここは俺達に任せてお前達は先に行け!!」みたいな死亡フラグぽくて嫌だけど。
香殿はともかく、光秀なんか明らかに死亡フラグビンビンだよ…。

「裕輔さん!!」

「太郎君、光秀様はなんだって?」

結構ピンチな状況に頭を悩ませていたんだが、その間に本陣へと行っていた太郎君が帰ってきた。
ハァハァと荒い息をつきながらも矢継ぎ早に本陣からの返答を俺に伝える。

「『情報感謝する。今対応を取っているので、その間使徒以外の情報を頼む』だ、そうです」

「対応って?」

「それは僕にも…ですが、時間がかかるのでそれまでに瓦解するわけにはいかないと仰っていました」

対応、ねぇ。
どことなく光秀の言葉だと思うと不安になるけど、ここは信用するしかないだろう。
了解したと返答して、俺は式部発見の報せからずっとしていた事を再開する事にした。

「…見つからない。何処にいやがるんだ」

「まだ見つからないのですか?」

太郎君の不安そうな声。
ああ、多分今俺険しい顔しているんだろうな。自分でも自覚している。
だが自覚していても尚、俺は今の表情を和らげる事が出来ない。

「絶対この戦場にいるはずなんだ、奴が――――煉獄が」

そう、もう一人の使徒がいるはずなのだ。
というか、いてくれないとランス達が不利になる。

煉獄という使徒は式部よりもよっぽど厄介な存在である。
頭もキレるし悪くない。突出した力はないが、使徒の中でのリーダー的存在である印象をプレイ中に受けた。
現時点で復活している使徒の仲で一番危険な奴の居所がつかめないのだ。

「精鋭部隊の存在に気付かれてしまったのでしょうか?」

「だったらこっちで何かしらの行動を起こしてこちらに来させないと駄目って事になる。
はっきり言って全体での勝利より使徒二人をこちらに向けるのが作戦の肝なんだから」

もうランス達のところへ向かったのか?
けどあいつだって神様じゃないし、こちらの戦況を把握していないはずがない。
これほどまでに早く戦線が瓦解してしまったら以降の行動が取り辛くなるくらい理解しているはずだ。

何故あいつらが人間を使うかというと、魔人の魂が封印された瓢箪を探すためだと俺は踏んでいる。
原作では魔人が乗り込んで瓢箪を潰すとゲームにならないからそういった行動は取らなかったが、
現在で完全復活していない事を考えると、こう考えるのが自然だ。

つまり魔人側は瓢箪のある場所を把握できていないのである。
そのため人間を使って人海戦術で片っ端から探索し、割らせている。
そうでもないと無敵結界を持つ魔人が自分で瓢箪奪還に乗り出さない理由が考えられないからだ。

そもそもだって、人間を使う事自体――――

『裕輔!!』

「どうした、玄さん」

思考を遮る玄さんの声。
一時戦から逸れた思考を中断させて、報告を聞くと。

『見つけたぞ、お前の伝えた特徴どおりの男を!!』

煉獄を発見したという報せ。
だが次の瞬間、俺の背筋は凍りつくことになる。

『後衛、本陣の真ん前に飛び降りてきやがったらしい!!』

こちらの本陣の目の前に現れたという、信じられない報せに。
Oh…絶体絶命ってやつですね、わかります。

「太郎君はここで待機! 動くなよ! 絶対動くなよ! ダチョ○倶楽部的な意味じゃないからな!」

「ちょ、いきなりどうしたんですか! っていうか、ダ○ョウ倶楽部って何ですか?」



誰も煉獄に反応できなかった。

「カっ!!」

どさりと飛翔に近い跳躍によって織田の本陣へと飛び込んだ煉獄。
周囲の兵士が反応し、彼の使徒の姿を視界に捕らえた時には全てが終わろうとしていた。
香や光秀の護衛の兵士達は煉獄の持つ火縄銃によって悉く頭を破裂させられ、絶命。

「どうも、お姫さん。ご機嫌麗しく」

呆気に取られていた光秀らが香を守るように立ちはだかる頃には一般兵は全て始末させられていた。
それは数秒にも満たない早業。一瞬にして香や光秀を守る防御は剥ぎ取られたのである。
銃口から紫煙を沸き立たせながら煉獄は悠々と香達の前へと姿を表した。

「こうして直接会うのは初めてかね? こっちは何度も見てはいるんだが」

「私にも貴方に見覚えがあります…兄上の部屋に出入りしていた者ですね」

「物覚えがいいようで助かる。話が早くすみそうだな」

自分を庇うようにして立つ光秀の肩の奥から、香は毅然とした態度で煉獄と対峙した。
ここまで無傷、更に言うなら本陣の外にいる兵士に騒がれずに直接ここまで煉獄は辿りついたのだ。
香は十中八九目の前の男が使徒であるという確信を持つ。

「話とは?」

しかしこの状況は使徒を惹きつけるという作戦の上では成功しているが、非常にまずい。
作戦の根幹部分である香が危険に晒されているのだ。今回の作戦が成功したとしても、今後の織田のため香に万が一があってはならない。
いざとなれば香を守るため光秀は肉の壁となる覚悟でキッと使徒を見据える。

本陣の中での騒ぎを聞きつけ、本陣付近で待機していた兵士達も駆けつけてはいる。
数はおよそ50。皆手練ではあるものの、使徒相手に対抗できるかと問われれば否。
更に使徒と香や光秀達と兵士の間には微妙に距離があるため、もしもの場合は光秀が数秒を稼がなければならないのだ。
そう思えばこそ光秀は鎧の中に滲み出る脂汗を感じざるを得なかった。

「おや? やけに素直でいらっしゃる」

「貴方が殺す気になれば、私の命はいとも簡単に奪われるのでしょう。
それをしないという事は何か聞きたい事があるのではないですか?」

この場で主導権を握っているのは香と煉獄である。
香は恐ろしくて震える声を強靭な意思でもって押さえ込み、使徒に応対する。
作戦成功のため時間を稼がなければならない―――ここで時間を稼げば稼ぐほど、使徒が魔人の援護に行くのを遅らせる事が出来るのだから。

「…くくっ、いいね。話が早いのは俺にとってもいいことだ。
姫さんに聞きたい事は二つあって、正直に答えてくれると助かるねぇ」

そう言って煉獄はぬっと無骨な掌を香達に見せつけるようにして、二本指を立てる。
そして言葉を続けながら一本目の指を折った。

「一つは織田の将軍達とランスはどこに配置している?」

煉獄はランス達や勝家などの武将の位置を把握していない。
この広い広い戦場の中、個人を特定するのは砂漠の中に埋れている金を掬い出すようなものである。
そのため誰がどこにいるのかを把握しており、且つ特定しやすい本陣へと真っ先に跳んできたのだ。

「それはお教えすることはできません。
部隊の将軍達は既に私の手を離れ、独自に動いていますから」

「ああ、そうかい」

「…やけに簡単に引き下がりますね?」

はっきり言ってこの場で生殺与奪権を握っているのは煉獄だ。
だというのにあっさり引き下がった煉獄の不自然さが香には気になった。
そんな香の疑問の声に煉獄はにたりと口を歪め、

「ああ、別に答えなければ答えないでいいんだよ。
それなら片っ端から織田の兵士をぶち殺せばすむ話だからな」

光秀や香を見下ろすようにして嘲笑を浮かべるのであった。
事実それが可能であるからたちが悪い。光秀は自分の体から更に湧き上がる脂汗でべっとりと額を湿らす。
果たしてこの化物相手に自分は数秒もたせる事が出来るのだろうか、と。

「あぁ、あと一つ。こっちのほうが重要といえば重要だな」

この質問にはハッキリ答えないと、まず香を殺す。
そう念を置いてから煉獄は二本目の指をゆっくりと折った。

「――――森本祐輔。こいつは何処にいる?」



あ、あれ? や、やだなぁ…。
なんか自分の名前が物騒な人から呼ばれたヨ?
俺は駆け込んできた本陣の裾から中を覗き込み、中を伺っていたんだが、そこでは想像を遥かに超えた出来事が起こっていた。

いや、うん。煉獄が中にいるのは想定内。
原作通りの白い肌の大男が片手に銃を担いでニヤニヤ笑っている。
本陣にいた兵士の大半が頭を打ち抜かれて沈んでいて、香殿や光秀が大ピンチってのも想定の範囲内だ。

けど煉獄の口から俺のフルネームが出たってのは完全に想定の範囲外すぎる。

ちょwwwwおまwww死亡フラグすぐるwww
ばっちり目を付けられてるじゃねーか! あれか? 信長魔人説を予期したからか? 香殿が俺の名前言ったからか?
まさか全部ってわけじゃねーだろな、おぃぃいいいい!!

そんな感じでゴクリと生唾を飲み込みながら事態の推移を見守る。
前後の話の内容はわからないけど、俺がここに来た時に丁度俺の話をし始めていたし。
作戦的には成功だけど、織田的には大ピンチだからな…

「彼は今、ここにはいません。
彼は私を魔人の手から救った後、何処かへと消えるようにして去ってしまわれました」

よし、香殿ナイス。
一応俺の事はナイショにしてくれるぽい。
なんでここで俺の名前が出てきたかについては知らないが、絶対イイことにはならないだろうし。
ていうか普通に考えて殺されるでしょうね、はい。

「へぇ…ま、いいがな。そこのあんたはどうだい? 森本祐輔、知らないか?
ザビエル様から森本祐輔って男を真っ先に殺してくるように言われているんでねぇ。
そいつを殺しに行っている間はこのお姫さんは逃がしてやるよ。隠すなり逃がすなり好きにしな」

「……………」

「光秀! 耳を傾けてはいけません!」

…あっるぇー? なんで俺こんなに警戒されてんの?
煉獄は香殿から光秀へと水を向ける。香殿は頑として口を割らないと悟ったのだろう。
ぐっと考えるようにして黙り込んでしまった光秀を香殿が叱咤している。

それはともかく、香殿より俺の命を優先ってどういう事?
俺そんな目立つような事したか? 前回香殿救出の時は目立ったが、それ以外は関わってないし。
今までの予期が全て魔人側に知られているとなれば話は違ってくるけど。

というか光秀、悩むなよ。
そこは家臣的に俺の名前を出して香から注意を逸らすべきだろ。
ああっ、いや、出されたら俺がヤバイのか!? どっどどどどど、どうすっのよ?

「何も言わないなら仕方ないねぇ。
お姫さんをぶち殺して、虱潰しに織田の兵士を平らげるとするか」

いつまでも返答しない光秀に対し、ついに煉獄が動いた。
スタスタと散歩でもするかのように光秀と香へと近づいていく。
煉獄にとって光秀はまるで脅威に映っていないのだろう。事実、それは間違いではない。

「っく、香姫様! お逃げ下さい! ここは私が」

「どこへ逃げると言うのですか。ここに逃げ場など―――――」

パァン! という破裂音。
香殿を庇うようにして立っていた光秀の右腕が弾け、飛ぶ。
ビシャビシャと鮮血が噴水のように光秀の右腕の付け根から溢れ出す。

「グ、ギ……ッッッ!!」

「光ひ」

『ラァァァアアアアアアアンス!!!!!』

そしてそれを為した煉獄は大声を張り上げて空へとランスの名を叫んだ。
それは大声というよりも咆哮。空気の震えが本陣の袖で見守っている俺にまで伝わってくる。
とんでもない声量でその大声を戦場へと響かせる。

『今から信長の妹を殺す!!! 殺されたくないのなら、今すぐ本陣にまで来い!!』

ぐあ…あまりの大声に耳を塞いでも三半規管が揺れているのか、視界が揺れる。
それはまさしく獣の咆哮に相応しい雄叫びだった。

「…? おかしいな。
主君を殺すって言ってるのに、将軍が誰も出てこないとはねぇ…」

そして煉獄はバカじゃない。使徒の中では頭脳派だ。
主君である香殿を殺すと宣言しているというのに、織田の強力な将軍が出てこない現状に違和感を持ち始めている。
つまりランス達別働隊の存在に気づき始めてるって事――――

これはまずいな。
いくらランスが強いったって、そんなに早く決着がつくはずがない。
それに魔人が倒されたとなれば使徒である煉獄も何かしら勘付くはずなので、魔人は健在と考えるのが自然。

「光秀さん! しっかりしてください、光秀さん!!」

「…嫌な予感がするから、さっさと死んでもらおうか」

煉獄はまず目の前の香殿を殺す事に優先をおいたようだ。
成程、とても合理的だ。何か他の事を優先するにしても、香殿を殺すのに10秒もかからない。
ならここで香殿を殺してしまってから次の行動に移っても問題はないのだから。

香は失血多量のせいで青白い顔をしている光秀にずっと呼びかけている。
あれは…残念だが、素人目に見ても助かりそうにない。こちらの回復魔法がどんなものかわからないので断言は出来ない。
それはともかくとして、織田にとって現在の状況は最悪な物といってもいい。

じゃあここで俺がとるべき行動とは何か。
このまま香殿を殺されるのを黙って見ているのが俺の【すべき】事なのか。
俺の理知的な部分がそれは違うと訴えかけている。

作戦の性質上ここで煉獄を引きつけなければならない。
ならこのまま放置すれば? 煉獄は香殿を殺し、次にする事は違和感の解決。
つまりランスや勝家達がいない理由を推測し、判明した場合は魔人の援護へと向かうだろう。

これはあくまで可能性の一つに過ぎない。
しかし可能性としては五分五分なくらいに高い可能性だ。
仮に織田の兵士を狩りに行ったとしても、ランス達がいない事は早期に気付くだろう。

それはこの計画上まずい。
ぶっちゃけた話、魔人さえ封印もしくは殲滅できれば使徒は活動を静止するのだから。

――――――なら、俺のとるべき行動とは

「おい、そこの白いの。デカイだけのウスノロ。こっち向けよ」

「…あァ? それは俺の事か?」



こうやって、この場に躍り出て煉獄の相手をする事。




「オラ、お前お探しの森本祐輔様だ。
見つかって嬉しいなら咽び泣け、むしろ俺が泣いていいですかコンチクショウ!!」

くっちゃくっちゃと唾を鳴らし、厭味ったらしく演出しながら前へ出る。
煉獄ははっきりと眉間に皺を寄せて俺へと向き直った。…俺はここで死ぬかもしれん。
それでも前の魔人の時と比べればマシと思えているあたり、俺も成長しているのかもしれない。

ここで俺がすべき事。
それはなんでか知らないが、俺はザビエルより第一種抹殺目標になっている。
それを利用して煉獄をこの場に縫止め、ランス達が魔人を倒す時間を稼ぐという事だ。

ならそのタイミングは今しかない。
香殿が殺される前でも後でも効果は変わらない。
なら香殿が殺される前に名乗り出て助けてあげるのが人情ってものだ。

「いけません! 早くお逃げになって―――」

「いやいや、俺も香殿のようなお嬢さんを見捨てて逃げる程人間腐っていないって。
それにどうやら俺をご指名のようだしね。ここで逃げても、それは問題の先送りさ」

「森本、さん…」

俺を巻き込みたくないのか、必死に逃げろという香殿の訴えに問題ないと返す。
こう言うふうな言い回しをしたのは少しでも恩を売るため。この子義理堅そうだし。
香殿の言う事ならなんだかんだでランス言う事聞くし、彼女から信頼を得るのは今後の事を考えると大幅にプラスに働く。
こうやって名乗り出た以上、こうやってアピールしておかないとな。

「でかい口叩くじゃねぇか」

香殿と俺のやりとりを見て俺が【森本祐輔】だと確信したのか、煉獄は俺へと銃口を向ける。

「ただ、まぁ…お前もマトモな人間じゃねぇみたいだな。
ックックック、呪い憑き、だろうねぇ…?それがどうして織田の手助けなんか?」

「うっせ。成り行きだよ、成り行き」

「…!」

ひょっとして今気づいたのだろうか。
煉獄の言葉に香殿の目線が顕になっている俺の左腕に釘付けになる。
そして驚愕の表情で絶句してしまった。

ま、仕方ないよね。誰だってそうなる。俺だってそうなる。
ただこちらを魔人側と誤解でもしたのか槍を向けてくる織田の兵士には腹がたった。
いやね、ホント。今精神的余裕がないから勘弁して欲しい。

しっかしこれで戦後織田にとどまるという選択肢はなくなったな。
妖怪である3Gも受け入れている香殿だから、寝床と最低限の人権くらいは確保してくれそうだけど。
ランスはこれ幸いと理由をつけて斬りかかってくるかもしれないしな。

「ザビエル様はお前の何が気になるのか知らないが―――死ね」

煉獄の宣告の後、首筋に感じる明確な死の気配。
俺はそれを感じた瞬間、開けた空間へと身を滑り込ませる。
自分を殺しうる攻撃を受けた時限定の、全てを置いていくかのような感覚で走りぬいた。

〈ッパァン!!〉

「なに!?」

「こっちだよ、ウスノロ」

周囲とズレている時間間隔と距離感。
きっとこれはプロのスポーツ選手が到達する極みがずっと続いている状態なのだろう。
目にも碌に映らなかったのか、姿の消えた俺を探す煉獄に冷ややかに挑発の言葉を浴びせた。

「お前みたいなウスノロの攻撃は当たらないな。捕まえられるもんなら捕まえてみろよ」

「――――ブチ殺ス!!」

挑発の言葉に煉獄は全力で反応したようだ。
ぞわりと全身を震わせたかと思うと、煉獄の骨格と肉体がゴキリボキリと音を立てて変化していく。
超大型で恐ろしい針鼠のような、原作通りの巨体へと煉獄は瞬く間に変体した。

小便ちびって生き延びる事を放棄したくなるような光景だが、その一方でこれはいい試金石だ。
この状態になったこいつを相手にして生き延びられたなら、俺はこれから先も魔人の手から生き延びられる。
俺の逃げ足は人だけでなく使徒と対峙しても負けないという絶対の自信に繋がる。

「かかって来いよ、このドサンピンがぁぁぁぁあああああ!!!」

「ガァァァァアアAAAAAAAAAAAAAHHHHH!!!!!」

まぁ俺は逃げるがな!
捕まえられるモンなら捕まえてみせろよ!!
俺は人一人ゆうに噛み砕ける顎が迫ってくるのを見て早くも後悔しながら、全力で本陣から逃げ出した。



剣が煌めく。
刀が一閃する。
槍が縦横無尽に空間を貪る。

その道を極めたと言っても過言ではない武士達の猛攻撃。
鋼が織りなす刃の暴風は、しかし――――――

「ハハハハハハハハ!!!」

無敵結界という名の無敵の盾に阻まれ、肉を通さない。
ザビエルは自分に迫る勝家、レイラ、乱丸を圧倒的な熱風と魔力で蹴散らす。
赤黒い炎が全身から立ち上がり精鋭部隊は距離を取る以外、道はなかった。

「っく…!」

「まっ、たく! 魔人というのは本当に出鱈目でござるな!!」

「魔人の中でも強いほうよ、こいつ!!」

赤黒い炎が鎧を掠め、溶解する様を見て悪態をつく勝家と舌打ちする乱丸。
魔人と相対するのが初めての彼等に対し、レイラは再び魔人へと斬りかかりながら攻めの手を緩めない。

「無駄だというのがわからぬか!!」

「ええっ、私の攻撃、はね…ッ!
――――――――でも」

「むッ」

爆発的な踏み込みにより、レイラの突進で僅かに体勢を崩す魔人。
無駄な事をと内心で笑い、炎で焼き尽くそうとする魔人の胸にヒヤリとした物が走る。

「ランスアターーック!!」

「ック!!?」

目で確認するよりも己の直感を優先した魔人。
もし魔人が確認する事を優先していたら、この闘いはここで終わっていたかもしれない。
魔人は辛くも死角から斬りかかったランスの攻撃を避ける事に成功した。

「――こうやって、隙を作ればランスがやってくれるわ!!」

「ガハハ、そうだ! 俺様に任せておけ!!」

(…厄介な)

無敵結界がある魔人は人間の攻撃は通さない。
その唯一の例外はランスが持つ魔剣・カオスによる一撃なのだ。
そのため勝家やレイラ、乱丸、シィルなどはひたすらランスが攻撃する隙を作るために魔人と一進一退の攻防を繰り広げていた。

『しかし、心の友、弱くなったな~。腕が鈍っとる』

「う、ウルサイ! ここ最近、実戦してなかったから仕方ないだろが!」

魔人対人間、ランスの存在がこの絶望的な闘いに均衡を齎しているのである。
両者の戦力差は互角。ランスの腕が鈍ってさえいなければ、あるいは…と言ったところ。
こちらの決着もまだ、時間がかかりそうである。











あとがき

祐輔→香:香殿で固定。
香から祐輔の呼び方はその場の好感度で変更というわけでw
あと二話か一話くらいで本能寺編は終了します。


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