場所はSPW財団の来賓室、
人と人が交じって、ガヤガヤとしているオフィスで、そこだけ静かで、場が重かった。
その部屋にいたのは、1人の社員とこの財団に呼ばれた5人の男女だった。
話題は、彼らが向かう高校の話だった。
「私達は、その学校に今まで3回使者を送っていますが、全員ひどいケガをして、帰ってくるんです。その中には屈強なSPもいたのですが、全員精神をおかしくしており、調査書は真っ白、何も書かれていないんです。」
「なるほど、それで我々を呼んだ訳かあ」
社員の言葉をようやく理解した大男・承太郎。
そして彼は、そのことについてあることを推測した。
「つまりその学校の生徒もしくは関係者がその・・・“スタンド使い”だということが・・・」
「あるかもしれません」
いつも冷静沈着な承太郎も今はたまに見せる焦っている表情になりかけていた。
“スタンド使いとスタンド使いはいずれひかれ合う”、昔に聞いた言葉を再び理解した。
と同時に何故ソイツは使者を襲うのか、という疑問が頭に流れた。
その疑問は、その社員の新たな情報によって解決した。
「後、日本の支部の情報によると、その高校では何やら不穏なことをしていると地域住民の噂になっているとのこと、他にも、背後霊や自縛霊、鬼神、ミイラなどが出没するという信じがたい噂も流れているようです。」
「なるほど、後者はどうでもいいが、使者を撃退する理由はわかった」
長々と話していたことを頭に刻み込むように彼らは眼をつぶり、カッと目を開いた。
その眼はそう“覚悟した眼”だ。
「どこの高校だ」
「ッ!、旧小石川区つまり文京区西部に位置しておりますとある高校(仮)の2のへ組です。」
承太郎その目つきで社員に問いた。
社員は少しびっくりしてふくらんだ腹を揺らして、答えた。
場所は東京・文京区、戦いの歯車が再び動き始めた。
「トーキョーか、承太郎さんが生まれ育った場所かぁ」
「そうね。父さんの母国、わくわくしてきたわ」
「俺と徐倫の祝福をあげるにはそこでもいいか。フフッ」
「日本かぁ。どんな国なんだろう」
「フッ。お前ら調査のことわすれるなよ。あとアナスイ、後で私の所まで来い。」
未知の大陸に胸を膨らますエルメェス、徐倫、アナスイ、エンポリオを見て、承太郎は、かつてDIOを倒すためにエジプトを目指して旅をしたことを思い出す。
花京院、イギー、アヴドゥルを失ったが、その旅で彼らと祖父ジョセフ、友のポルナレフといろいろあったことを不意に思った。
彼らとの奇妙な友情を懐かしく思えて、涙が出そうになるが、堪えて徐倫たちを見る。
「滞在場所はどうなさるつもりですか。」
「ああ、文京区ならしばらく母のいえに滞在するつもりだ。実家は中野にあるからホテルよりはそっちの方がいい」
「左様ですか」
突然、社員が質問してきたため、答えた。
承太郎の返答を聞いて理解したとき、徐倫が承太郎の方へ向かってきた。
「ねぇ父さん、ママも連れてきてもいい?」
「あぁ、いいぞ」
「やったぁ~!じゃあ早く電話しないと」
実は、徐倫との和解もあり妻ともう一度再婚させてもらった承太郎。
まぁ、アメリカに置いてきてしまっては、これこそ本末転倒なので、連れて来させないといけないと承太郎は内心思っていた。
そんなことも知らずとても喜んでいる徐倫。
若いころの口癖の“やれやれだぜ”と言わんばかりに退室しようとする。
それにつられて、他の皆も退室しようとする。
「よし。いくぞ!!」
ドォーーーーーーーン!!
彼ら全員が部屋を出ると、一列に並んで皆同じポーズをとった。
それは、四半世紀前の旅の始まりを表したものと一緒だった。
第6.5部 RELEASE OF SOUL
ある春の朝、とある高校(仮)の2のへ組の教室。
まだ生徒諸君は各々話している。担任はまだ来ていない。
午前8時25分、
ガララッと戸が開く音とともに生徒たちは話をやめ、自分の席に座った。
入ってきた者は着物を着て、メガネをかけた男性。片手に出席簿を持っている。どうやら担任のようだ。
その男は生徒たちに一言言った。
「おはようございます。それでは出席をとります」
男、糸色望と2のへ組の生徒の一日が今宵も始まるのであった。
To Be Continued・・・・・⇒