恋は盲目とは良く言ったもので
端から見れば愚かな行為もラブラブフィルターにかかれば
犯罪行為もスリル満点の危険な関係へ誤変換されるのである
■狩る者と狩られる者■
ドールトン事件をフラッシュバックの如く思い出した
ヘインの行動を通常の三倍ぐらいの速さにする。
■■
うん、これは拙いぞ!下手したら恒星に突っ込んでみんな『どっか~ん♪』じゃないか
断固たる決意を持ってドールトン事件の阻止!若しくは早期解決を図らなければならない
ヴァイト!元航法仕官としての君の意見を聞きたい!!
現在の艦の航行に問題があるか分かるか!?
『いや、急にそんなこと言われてもさすがに分かりませんよ
まぁ、艦の航法PCを確認すれば大半のことは分かりますが』
よし、分かった!では艦橋に確認と修正しに行くぞ!!
それと、見て分かったことは緊急で無ければ修正しなくても
俺だけに教えてくれればいいからな
『それは構いませんが、あの堅物のサックス少将が我々の要求を
認めるとは到底思えないんですが?なんか考えはあるんですよね?』
ヴァイト、俺を誰だと思っているんだ?
同盟軍最高の智将と歌われる、この道化師ヘインに不可能は多分無い!!!
『多分なんですね・・・まぁ、良いでしょう。バイト代の方ははずんで貰いますよ』
■■
『これはこれは、ブジン大将閣下にわざわざご足労頂くとは光栄ですな
ですが、艦の運行運営については我々の管轄であります。例え閣下であっても
例外を認める訳には参りませんので、まだ何か・・・こっこれは!?どうぞお入り下さい
必要であれば何を見て貰っても構いません。可能な限り便宜は図らせて頂きますので』
「ああ、悪いね少将、少しばかり邪魔するが許してくれ」
じゃ、ヴァイト早速で悪いけど頼むわ
もちろん他の奴等に何を確認しているかバレ無い様に頼むぞ
あとヤバイ部分はこっそり修正できたらしといてくれ
「ヘイヘイ、相変わらずさらっと無茶なこと要求しますね
それにしても、一体どんな魔法を使ったんですか?
あの堅物がコロッと態度変えるなんて・・何したんです?』
なに、彼もまたハンターだったというだけさ
『はぁ・・?まぁ、俺は対価分仕事するだけだから良いですけど・・・』
■
イマイチ腑に落ちないヘインの解答に首を傾げながらも
ヴァイトは黙々と艦の機材を完璧な操作でチェックしていく
勿論、意図が悟られぬように関係ないものと関係あるもの
どちらも区別することも無く、病的なメカマニアを演じながら
端から端からまで舐めるように確認していく。
『なにあのメカヲタ?きもいんだけど』等々
冷たい視線や言葉によってなんどか心が折れそうにはなっていたが
ドールトン大尉が交代に来るまでに全ての確認を終える事に成功する
一方、二人が必死に最悪の事件を阻止しようと動く中
ある部屋で小さな事件が起きていた
『あれ~?私のうさちゃんの靴下がないよ~』
■迷探偵ブジン■
ヴァイトの協力によって一先ず窮地を脱したヘインは
次の一手をどうするか悩んでいた。危険の除去を優先しすぎて
事の発覚の前に航法PCを処理してしまったので
ドールトン大尉を追い詰める決定的な証拠を失ってしまったのだ
できるだけ事件を穏便に処理して、航海の遅れを防ごうとしたことが裏目に出てしまった
また、このまま指を咥えて何もしなければ
再び航法PCに小細工がされる危険があり、依然として危険な状況が続いていた
■■
ミスったな、とりあえず先ず自分の命を守りたい一身で
航法PCをこっそり修正したけど、良く考えたらだめじゃん
ほんと探偵自ら証拠隠滅してど~すんだよ!!
良く考えたらヴァイトが見つけた時点でわざとらしく
『あれ?おかしいな?』とか言って間違いを発覚させりゃ良かったんじゃないか
なに得意げにこっそり修正させてんだよ!
ああぁああ!!『誰にも知られることなく、俺は200万の命を救うか・・』
なんて、さっきまで得意げにワイングラスを掲げていた俺を殴りてぇえ!!
くそ!!だめだ俺!!早くなんとかしないと
『あっ、こいつが実は真犯人なんだぜ!』
『なに言うだぁああああ!!許さん!!!!』
「なんだぁ?ポプランとリンツの二人してエキサイトしてるけど
おやつのプリンの取り合いかなんかか?マコちゃん知ってる?」
『違いますよヘインさん。ポプラン少佐がリンツ中佐にサスペンスドラマ
『ハイネセン秘湯殺人事件、浮かぶ美人女性水死体に怪しく笑う謎の僧』の
真犯人が画面に映った瞬間にわざと教えちゃって、中佐がブチ切れてるんです♪』
くっだらね~、こっちが真剣に深刻な事件に考えてるっていうのに・・・
『う~ん、でもあの手の作品は真犯人がどうこうより、ドロドロとした愛憎劇や
探偵役のハッタリに追い詰められる犯人役のテンパリ具合が醍醐味なのになぁ』
ハッタリ!!!そうだその手があったか、とりあえず犯人は分かってるんだから
そうと分かれば即行動だぜ!!手遅れになったらシャレになんないからな
「マコちゃんありがとな!おかげで悩みが解決できたぜ」
『えっ?えっと取り合えずどういたしましてです。あっ、ヘインさん!
そこの二人は止めなくていいんですか?なんか喧嘩になってますよ~』
「いいっていいって!そのうちコーネフかユリアンが止めるから~」
『少佐!!君が泣くまで殴るのを・・』『この汚らしい中佐がぁ!!』
■犯人はこの中にいヤス!■
くだらない事で諍いを起こす二人と被保護者との会話で
事件解決ためのNEXTへインズヒントを得た探偵は
真犯人を罠にかけるため、ブラッフメールをドールトンに送信!
『 男運の悪いイブりんへ
お前の行動は○ッとお見通しだ!
どうせ男に騙されたかなんかで逆上したんだろw
イブりん超涙目でウケルるんですけどwww
とりあえず、バラされたくなかったら、
D-1倉庫にAM9:00までに来いwww 』
■■
『でてきなさい!!いるんでしょ?私にこんなふざけたメールを送りつけて!』
うひょ~、どうみても火サスですぅwwwww
もう、怒りと不安で良い感じに冷静さを失ってるね♪
やっぱ、セオリーは犯人の冷静さを奪うだね
そんで、自信満々にハッタリ交じりに真犯人への追求して
泣き崩れる女真犯人よる自白のコンボ発動で見事事件は解決♪
めでたしめでたしってね
■■
そんな風に考えていた時期が俺にもありました。
『あら、かわいそうにお漏らしまでしちゃって・・フフフ』
どっどうやら挑発しすぎたみたいです。
なんか、自信満々にハッタリかまそうとしたら
いきなり額にブラスター突きつけられました
現在、荷物縛られて身動きも取れず風前の灯火です
とりあえず、ここは大幅な方針転換が必要そうだ
まずは犯人を冷静にさせて交渉によって活路を見出そう
「あの~、大尉まずはブラスターを降ろして冷静に話し合いましょうかね~?」
『冷静!冷静ですってぇええ!!!このビチグソが私を散々コケにしやがって
偉そうに冷静になれですって!私はナメてんのかぁ?てめぇ~のカラッポの
脳みそを今すぐブチ撒けてやったって私は良いんだよぉ!!分かってンの!!』
「はい!すんません!ほんと調子乗ってすんません!!」
やばい、いつ殺されるか分からないぐらいのキレっぷりだ
いなくなった俺を探す人がいたとしても
このままじゃ、その人が見つけるのは俺の死体になりそうだ・・・
なんで、俺は人気の無いところで大量殺人未遂犯に単独で会うなんて
軽率なマネをしてしまったのだろうか・・・
ううう、アンネリーごめん、マコちゃんごめん・・・みんな、ごめん・・・
『なに泣いてんのよ!!泣きたいのはこっちよ!!あの男を殺そうとしたのに
アンタみたいな馬鹿を捕まえる破目になって計画が丸くずれよ!どうしてくれるの
そうよ、だいたいあの男がいけないのよ!な~にが一緒に手伝って欲しい仕事があるよ
君にだけしか頼めないんだとか!自分勝手なことばっかりいって散々使っときながら
私には指一本触れないってどういうこと!!私のこと馬鹿にしてんの!!
そうよそうよね、わたしが馬鹿よね!きっと奥さんと別れてキチンとして
私と結婚してくれるまで清い付き合いをしてくれんだぁ~なんて考えてた私が馬鹿だった
そうよ、私なんか全然魅力無いのよ・・・、そのうえ、不倫不正女なんてレッテルがつくし
うぅううう、私なんかもう死んじゃったほうがマシなのよ!・・・ってあんた聞いてるの!!」
「ハイ!寝ていません!!起きてます。目を瞑ってただけで聞いてました」
やっべ、話が長い上に詰まらんからちょっと寝ちゃった
きのう『名探偵へイン!』で妄想して中々寝れなかったからついつい
『ほんと・・馬鹿みたい私・・・勝手にのぼせ上がって恨んで傷ついて
あんたみたいな馬鹿に八つ当たりして何やってんだろう・・ほんと』
「あのぅ、すいません・・・ちょっとよろしいでしょうか?」
『なによ?なんか文句でもあるの?』
うわ、ほお膨らまして口尖らせるってどこの子供ですか・・
まぁ、そんなことより緊急事態の回避が先決だ
「ドールトン大尉、うんちがしたいです・・・」
■
ヘインの緊急事態がなんとかなったかどうかは略すが
命の危機からは逃れることはできた
まだ、事件が表沙汰になってないこともあり
ヘインの余りの情けなさに毒気を抜かれたドールトン大尉が
いくつかの条件をヘインが飲むことで翻意したのだ
もちろん、ヘインの全面的な無条件降伏であった・・・
彼に逆らうなどという選択肢はなかった。
そして、約束を反故にすることも当然できない
何故なら・・・おっと、言えやしない言えやしないよ・・・クッククク・・
■事件を乗越えて■
ドールトン事件を未然に防いだことは
歴史に少なからぬ修正を強いる事になる
そう、ある男の人生を大きく変える
■■
・・・という訳で、このこを嫁に貰ってやってくれ
『あのその・・・、不束者ですが、よろしくお願いします』
「いや何がという訳でなのか、そもそも一体どういう話かが読めないんだが」
コーネフ!漢には決断する時があるんだよ
ただ、その時が今日だったというだけだ
「いや、そんな決断をする気も必要もないと個人的には考えているんですが」
『やっぱり、私みたいな子じゃだめですよね』
「いや、ダメとかそういう問題ではなく、いきなり結婚等の話になることが・・」
確かに、コーネフの言うことにも一理あるな!
よし、あとは若い二人に任せておけば良さそうだな
コーネフ悪く思うなよ仕方がなかったんだ・・・
そう、仕方が・・・
■
こうして、少なくないドラマを生み出した航海は
僅かな犠牲者を出したものの、
ハイネセンへ到着したことで、無事に終わりを迎えることになる
この原作より一週間ほど早い首都への到着が
歴史にどのようなぺージを継ぎ足すことになるのだろうか・・・
・・・ヘイン・フォン・ブジン大将・・・銀河の小物がさらに一粒・・・・・
~END~