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No.3855の一覧
[0] 銀凡伝2[あ](2009/09/20 20:08)
[1] 銀凡伝2(気絶篇)[あ](2010/02/17 20:56)
[2] 銀凡伝2(追跡篇)[あ](2010/02/17 22:02)
[3] 銀凡伝2(引退篇)[あ](2010/02/17 22:53)
[4] 銀凡伝2(邪気篇)[あ](2010/02/20 17:43)
[5] 銀凡伝2(友情篇)[あ](2010/02/20 18:27)
[6] 銀凡伝2(招待篇)[あ](2008/09/13 23:03)
[7] 銀凡伝2(先輩篇)[あ](2008/09/28 01:31)
[8] 銀凡伝2(孤独篇)[あ](2008/09/30 23:03)
[9] 銀凡伝2(両雄篇)[あ](2008/10/04 17:19)
[10] 銀凡伝2(天空篇)[あ](2011/01/01 18:18)
[11] 銀凡伝2(選挙篇)[あ](2008/10/19 17:32)
[12] 銀凡伝2(逆転篇)[あ](2010/05/03 20:41)
[13] 銀凡伝2(乖離篇)[あ](2008/11/22 18:42)
[14] 銀凡伝2(地獄篇)[あ](2008/12/28 20:29)
[15] 銀凡伝2(逆襲篇)[あ](2008/12/30 23:53)
[16] 銀凡伝2(逃走篇)[あ](2009/01/02 22:08)
[17] 銀凡伝2(抱擁篇)[あ](2009/01/03 17:24)
[18] 銀凡伝2(手紙篇)[あ](2009/01/03 17:25)
[19] 銀凡伝2(日記篇)[あ](2009/01/03 22:28)
[20] 銀凡伝2(新年篇)[あ](2009/01/11 16:43)
[21] 銀凡伝2(辞職篇)[あ](2009/01/12 21:16)
[22] 銀凡伝2(交換篇)[あ](2009/01/17 23:54)
[23] 銀凡伝2(推理篇)[あ](2009/01/18 21:27)
[24] 銀凡伝2(暗殺篇)[あ](2009/01/25 19:14)
[25] 銀凡伝2(開幕篇)[あ](2009/01/29 23:07)
[26] 銀凡伝2(起動篇)[あ](2009/09/21 17:51)
[27] 銀凡伝2(無頼篇)[あ](2009/11/15 11:52)
[28] 銀凡伝2(辺境篇)[あ](2010/02/28 18:03)
[29] 銀凡伝2(出撃篇)[あ](2010/04/03 20:59)
[30] 銀凡伝2(悔恨篇)[あ](2010/04/18 19:30)
[31] 銀凡伝2(帝王篇)[あ](2010/05/01 20:16)
[32] 銀凡伝2(原始篇)[あ](2010/05/30 19:38)
[33] 銀凡伝2(凋落篇)[あ](2011/02/21 20:49)
[34] 銀凡伝2(烈将篇)[あ](2011/05/04 17:45)
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[3855] 銀凡伝2(辞職篇)
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:95e0420a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/01/12 21:16
797年初頭、前線のイゼルローン要塞が慌しい祭りを終えた頃
首都ハイネセンでは新たな軍首脳陣による深刻で余り愉快でない話し合いは続いていた
帝国領侵攻作戦で負った傷は一朝一夕に回復するものではなかった


■キャゼルヌ襲来■


喧騒に包まれた新年の祭りの後、要塞内は目まぐるしい速度で
その施設や設備を新たにしていく、高等学校までの教育施設が一斉に開校し
子供たちは少しだけうんざりした気分と、ほのかな期待と共に新しい学校に通い始め

商業地区では次から次へと新たなビジネスチャンスを掴もうとする
野心に満ち溢れた個性的な商店が立ち並び始める。

要塞は500万人を超す人々が住む大都市としての顔を完成させつつあった。


■■


『さて、ようやく艦隊司令官殿と要塞司令官殿が待ち侘びた事務総長殿の赴任ですか』


ほんと、もう少し遅かったら俺は絶対過労死してたね
まったく、コクランの野郎は少し事を性急に運びすぎなんだよ
あそこまで強引だと最初のうちはいいけど、その内反発が起きて痛い目見る事になるんだよ

『なるほど、飴と鞭というやつですな』


そういうこと、締め付けるだけじゃ統治は出来ないってね
かといって甘い顔をし過ぎれば統制が取れなくなる。中々難しいもんだ

『閣下も苦労されているようだ・・、どうやらキャゼルヌ一家のシャトルが着いたようです』


それじゃ出迎えに行くとしますか、
キャゼルヌ先輩は良いとしてご夫人にはちゃんと挨拶をしとかないと
イゼルローン一の実力者になることが確定してる人だからな
シェーンコップ准将も挨拶しといた方がいいぜ






要塞司令官と要塞防御指揮官の二人は
イゼルローン要塞全体の事務および後方任務を全て掌握する
キャゼルヌ少将とその一家を迎えるため宇宙港に来ていた

また、この出迎えが終わり次第、家族を新居へ案内するとともに
駐留艦隊側のヤンやフィッシャー、アッテンボローといった面々と
キャゼルヌの顔合わせが予定されていたが、
事務方の現最高責任者コクラン准将との顔合わせは
業務の関係上、後日行うという形になった



■黄金のカルテット再び■


キャゼルヌ一家の引越しの手伝いがてら新居に招かれた
後輩三人とその被保護者二人は二つのグループに分かれて談笑していた
女の子三人と美しい夫人に囲まれたユリアングループと士官学校カルテットに


『ヤンとヘインの二人がトップでも破産してない所を見ると 
 コクラン准将が相当な切れ物という噂は本当だったようだな』


『確かに准将の優秀さは俺も認めますが、ムライ准将以上に堅物な点が・・・』
「わかる!わかるぞアッテンボロー!!あいつほんとに融通利かないんだよ!」


奔放主義の二人は普段の不満を酒の勢いに任せてぶちまける
アッテンボローもドーソンのような小物ではないと分かってはいる物の
自身の奔放な気質からかコクランの事を苦手としており、

また、ヘインも司令官費や交際費カットでノーバソしゃぶしゃぶ食い放題等など
淡い夢が断ち切られたことと、スパルタ式に仕事を無理やりやらされるので
結構ストレスが溜まっていたのだ


『まぁまぁ、准将なりに考えがあってのことじゃないかな?』


一方、立場上の距離が比較的あるため被害の少ないヤンは
他人事のようにブーブー言う後輩を宥めていた。

もともと経費を私的に使う気もなく、面倒な接待も交際費カットを理由に
必要最低限しかする必要がなくなったので
ヤンにとってコクランの改革は逆に有り難い位であったのだ


『まぁ、何かしらの考えはあるのかもしれんが、ヘインの言うように極度に融通が
利かないのもまずいな。組織自体の硬直化に繋がる可能性がないとも言えん
明後日会うときにでも、それとなく俺から話しておこう。とりあえずそれでいいか?』

「いや、さすがは未来の後方勤務本部長殿!!頼りにしてますよ♪」


ヘインの調子の良い言葉に三者三様の苦笑いをしつつ
ますます、酒量を増やしていく四人であったが、
被保護者コンビに苦言を呈され、しぶしぶ酒瓶をしまうことになった

その悪戯を注意された子供のような四人の顔を見て
全てを知る預言者は『どちらが保護者か分からないわね』と
可愛い小さなお客さんにそっと耳打ちして、その顔を綻ばせていた


あたりまえの幸福がそこにあった



■帝国の変遷■


少し時を遡った帝国暦487年10月
皇帝の代替わりに伴って一人の軍重鎮が表舞台から姿を消す

その名はグレゴール・フォン・ミュッケンペルガー元帥

ラインハルトが侯爵へと階位を進めると同時に
宇宙艦隊司令長官へと昇任を果たしたため、その地位を追われる形で退役する

ブラウンシュバイク公やリッテンハイム候からの誘いもあったが
彼は表舞台に留まる気はなく、隠棲の道を選択した。


彼もまた新しい時代の潮流を感じることが出来た英雄の一人であった



一方、帝国宰相リヒテンラーデの下で軍権を握ったラインハルトは
政務に軍務とこれまで以上に積極的に動いていた

来るべき門閥貴族との対決に備え、自身の地位の確立に忙しかった
誰が敵で誰が味方か、どの旗に集うのが徳か・・・・

利己主義と打算に基く欲望と野心が帝国中を渦巻いていた


■■


近い将来の内乱においてどちらの陣営につくかか・・・
将の才覚という点では間違いなくリヒテンラーデ・ローエングラム陣営が
圧倒的に有利だろう

門閥貴族の中にローエングラム候とそれに従う提督達を超える者などそう多くはいまい
戦力において貴族連合の方が優っていたとしても、それを率いる将が劣っていれば
それを生かすことは出来ない。その先に待っているのは敗北だ

それに、叛徒との国境付近の辺境で信望を無くしたと言う話もあるが、
いまだ中央を含む大部分の地域では平民出身者が厚く用いられているためか
ローエングラム候の人気は変わらず高いままだ

おそらく勝つのは新帝側勢力、いや違うなあの金髪の若者が勝つのだろう
正しい選択はあの金髪の若者の下に駆けつけることだそれは理解できる




             だが、気に食わん




いくら隠した所で俺には分かる。食うに困った者達の辿る悲劇がな






嵐を前にして帝国の揺れは少しずつ確実に大きくなっていく

リヒテンラーデ、ローエングラム、ブラウンシュバイク、リッテンハイム
誰が最後まで立っているのか、未だ定まらぬ運命に人々は右往左往する

もっとも、そんな状況なぞ露知らずで自分達のぺースを守り続ける者達もいたが


■■


「ねぇ、カーセ?ちょっと聞きたいことあるんだけどいい?」
『私で答えられることでしたら』


う~ん、ちょっとストレートに聞くのは勇気が要るけど
でも、やっぱり聞かないと気になるし・・・

『お嬢様?』

「違ったら違うって言ってくれれば良いんだけど、ダイエットしてる?」
『なっななぁ何を、おっ仰っているのか私よく分かりませんわ
 お嬢様ったら急にどうしたのでしょう?さて、お茶の準備をしないと』


やっぱり図星だったみたい。最近来客が減って暇になったのに
忙しかった時と食事の量そんなに変えてなかったから・・・

まぁ、私もちょっと体重計に乗る勇気が無いけど
カーセと一緒にテニスやジョギングでも始めて私もダイエットしよう!

うん、ぶくぶく太って子豚さんみたいになったら
ただでさえ見つからなさそうな旦那さまが一億光年ぐらい先に遠のいちゃう!


『お嬢様~、今日のお茶請けのクッキーはどれになさいます?』
「いらない!!カーセ!今日から私もダイエットするわよ!!」





蚊帳の外どころかまさに台風の中心にいるような人物達は
周りの物と違ってとことん暢気であった。

また、一方はその幸福な日々が永遠に続くと信じて疑わず
それを見守るもう一方はこの幸せをどんな手を使ってでも守る覚悟していた。

無関係でいられる幸福な者があまり多く無い厳しい時代が近づいていた



■役目の終わりに■


キャゼルヌ到着の翌日、ヘインはコクラン准将の訪問を受けていた
最初はまたいつものように運営論の講釈か、稟議事項についての説明と思い
うんざり顔を見せていたヘインであったが

コクラン准将から提出された書類によって、その表情を一変させられる


■■


「辞めたいと言うのか?」


提出された書類に対するヘインの反応は創造的なものではなかった

コクランから出されたのは辞表であった。
正確には要塞主計長の任を辞するといった内容のである


「けど、改革は始まったばかりだろ?たった一ヵ月半で投げ出すのか?」


ヘインの問い掛けは至極真っ当な物であったが
コクランから返された答えは違った

『閣下、それは違います。もう一ヵ月半なのです』


彼は静かに年少の上官に今までにないほど丁寧に理由を話した
まるで最後の授業を行う教師のように

『閣下も仰っていたではないですか、性急な変化は反発を生むことになると
 少数のチームで強引に事を進める段階は終わりを迎えたのです。このまま
 我々が要塞運営の中心に居座り続ければ、例えどんなに良い方策であっても
 兵たちは感情的な反発を抑えることが出来ず。その導入は上手く行かんでしょう』


そこまで分かっているなら、なぜもっと穏便にことを運ばなかったのか
その真意にも気付いていたが、ヘインは問わずにはいられなかった。


『急激な外科治療の時期が終わったのなら、後は内科の名医に任せればいい
 キャゼルヌ少将なら絞め過ぎた部分を適度に緩めつつ、要塞運営をより上手く
 行うことができるでしょう。下手に五月蝿い先達がいては彼もやりにくいはずです』

「まったく、あなたは本当に勝手で厳しくて厄介で・・・いつも正しい」


もう、止められない。これ以上の引止めは却って迷惑になると悟らざるを得なかった
既にコクラン准将の顔は何かを成し遂げた、いや、託すべき者に託した後の顔をしていた
心底『買い被りすぎだ』とヘインは内心で思ったが、口に出すような野暮はしなかった


『楽しかった・・、閣下と仕事が出来て本当に楽しかった。そのお礼ついでに最後の小言を
 貴方は残念ながらそれほど事務能力は高くありません。しかし、誰よりも素直な心を
持っている。私の出した書類には文句を言いながら、分からないなりに真剣に読み
考えてくれました。部下にとってこれほど嬉しいことは無い。貴方は人の話を聞くという
大きな才能を持っています。これからも短所ではなくその長所を伸ばしていって欲しい
そうすれば、自然と人は貴方のために力を貸してくれるはずです。自信を持って下さい』


椅子を反転させ壁をみながら、コクランの話を聞いていたヘインは
その話が終わると手を振って退室を促した。

僅か一ヵ月半であったが、真剣に改革に取り組み誰よりも濃い時間を過ごした二人に
これ以上の言葉は必要なかった。





後にチーム・コクランと呼ばれる改革チームは再び辺境の補給基地へと戻っていく
彼らはヘインに選ばれたコクランが自ら選抜した優秀な事務官達であった

この彼らによって短期間でばら撒かれた改革の種は
彼等の残した膨大な報告書や資料と併せて要塞事務官に受継がれていく


また、彼らは最初から自分達の任期はそれほど長く無いことを分かっていた
アムリッツァ以後の人材不足は深刻で、それは辺境に行けば行くほど酷く
元の任地を空けつづける訳にはいかなかった

ただ、彼等のような優秀な人材を辺境に縛り続ける実態こそが
同盟軍の荒廃を現しているといえよう。同盟軍の屋台骨は既に歪んでいるのだ



■凱旋・・・■


キャゼルヌへの引継ぎを終えたコクランは挨拶も早々に要塞を離れる準備を済ませ
一人イゼルローンの宇宙港でシャトルの出発時間を待っていた。

既に家族はハイネセンへの帰路についており
出立日も誰にも告げていないため見送りもいない
なんともさびしい旅立ちになりそうであったのだが


■■


『お前らしいと言えば、お前らしい別れ方だなコクラン』


不意に掛けられた声に振り向くと旧知の顔がそこにあった。
お互いの頑固さも災いして何度もぶつかり合った士官学校時代から
友人がいつもと変わらない顰め面をして立っていた。


「久しぶりだなムライ、また少し老けたか」
『口の悪いのも相変わらずか、老けたのはお互いさまだ』


コクランは差出されたコーヒを受取りつつ、ベンチに腰掛け他愛無い会話で時間を潰す
やがて、シャトルへの搭乗時間が近づくと、どちらともなく立ち上がる


「ムライ、自分の役割を果たせよ。人にはそれぞれが持つ役割がある」
『分かっている。だが、忠告として有難く受取って置こう。達者でな』


差出されたムライの手を固く握り締めた後
コクランはシャトルの搭乗口へと歩みを進め
多くの置き土産を残したイゼルローン要塞を後にした。



■■



『閣下、見送りに行かなくてよろしかったのですか?』



副官からそう声を掛けられたヘインは
残された書類から目を逸らすこともなく返答もしなかった。




   必要のないことで業務を滞らせるわけにはいかないのだから・・・




・・・ヘイン・フォン・ブジン大将・・・銀河の小物がさらに一粒・・・・・

               ~END~





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