等価交換、これが人類の歴史において唯一絶対の原理であったのなら
これほど素晴らしいことは無かっただろう
流された血に相応しい対価を得ることが出来るのだから・・・
■最後の晩餐■
なんか二人きりになって良く分かった
いやほんとアンネリーかわいいわ
正直、これで兄貴さえまともだったら・・・
もうどうにかしてるね!!ほんと惜しい惜しすぎる!!!
『中将??どうかしました?』
「いや、アンネリーってかわいいなぁ~って見てただけ」
『えぇっ!?○×△?・・・////』
ほんと、この顔真っ赤にして照れてる姿とか反則だろ
もうこれは一種の拷問だね・・もう呑むしかないだろ?
い
『あの~ぅ、中将ちょっと今日は飲みすぎかな~?って・・・』
「いや、ぜんぜん平気平気!ちょっと意識が飛んだりしてるだけだって」
『中将、もう帰りましょうよ!わたし送りますから・・ね?』
イエ~ス!アンネリーにお持ち帰りされちゃうぜ!!!
もう、どこにだって連れて行ってくれ!!
ぼくちんぱらりらなのらレロレロレロレロレロ・・・
■■
・・・うん、着いた??どこここ?
『おはようございます♪残念ですけどまだ着いてないんです
ちょっと、交通システムの方にトラブルがあったみたいで・・』
あ、そうなんだ・・ここどこらへん?
あんま見たこと無い風景だけど、歩いて帰れそう?
『ちょっと中将の家まで歩いてくには距離がありますね
・・えっと、私の家はすぐそこなんでよかったら・・・あの・・』
よし!アンネリー、家まで送ってやるぜ~!!
かわいい女の子を夜道で一人させるわけにはいかない
さぁ俺について来い!!目指すは桃源郷!!
ん・・・どうした?俺達の前には無限の道が広がっているんだぞ?
俺と共にその道を歩みたくは無いのか?
『そっそんなこと無いです!歩きます!歩きたいです!!』
うむ、行くぞ!俺達の歩みは始まったばかりだ!『ハイ!』
■
意気揚々とエキセントリックに出発した
ヘインとアンネリーの終結点はすぐそこであった
距離にして約300mほどである
『オウェエッ、ウゲッ・・ゲエッカウン・・オェエツグ・・』
完全なる酩酊状態でアンネリーの自宅と逆方向へと向かった
旅立ちはカ時代の流れに逆らうものであったのかもしれない
しかし、アンネリーは飲んだくれの暴走にも失望せず、
逆流に嫌な顔をすることも無く、ヘインに肩を貸しながら
自分の住む官舎まで運び甲斐甲斐しく介抱する。
■何がおこったのか・・・■
横で寝ているアンネリーが起きる前に確認しておくぜ
俺は今彼女のカワイさという物をしっぽりとだが体験した
い・・いや体験したというよりまったく素晴らしいものだったんだが
あ・・・ありのままにおこった事を話すぜ・・・
女の子と一緒に食事に行って酒を飲んだら
朝には全裸でチンコ丸出しだった・・・
なっ・・・何を今更言っているんだと思うかもしれねーが
俺もナニをしたのか分かっている・・・
気の迷いだとか、ノリなんてチャラチャラしたもんじゃ、断じてねぇ!!
そうもっと激しい・・・頭がフットーしそうな感じを味わったぜ
『うぅ・・・ん、中将・・・?え!?あぁえっと、おはようございます
その、えっと昨日は多分お互い酔っていたと言うか、その
別にわたしは全然OKでって・・むしろ凄く嬉しいですけど
中将をわたしが勝手に連れ込んだだけと言うか・・あの・・・・・』
アンネリー、俺と付き合ってくれ
『えぇええっ!?つ・・つっきあって!?あっ朝からですか???』
おいおいそっちの意味じゃないって、少し落ち着け
まぁ、そのちょっと先に親密になっちゃったけど
できたら恋人になって欲しいというか・・・
『なります!!すぐなります!今なります!!!』
■
晴れて新しい関係を築くこととなった二人は
仲良く出勤しようとしたのだが、一方がちょっと上手く歩けないこともあり
二人仲良く有給をとって朝から第2R・・・
それ以後、二人は自然とどちらかの官舎に入り浸るようになり
『死ねばいいのに』と言われても仕方がない幸福をヘインはしばらくの間
満喫するのだが、その幸せボケは大きな報いとなって
ヘインだけでなく自由惑星同盟全体に降り掛かることとなる
アンドリュー・フォークが帝国領侵攻作戦を上申したのだ
■兄として、軍人として■
どこかの馬鹿がセクロスパコパコ♪パコパコセクロス♪と
危機感ゼロで我が世の春を謳歌する中
彼女いない暦=年齢の魔法使い予備役准将は
ヤンにヘインという強力な出世レースのライバルを追い抜くため
日夜、起死回生の作戦案を練り続けるという過酷な生活を送っていた。
夜は近くのコンビニで弁当を買い・・・それすらする気力もないときは
レトルトカレーをパックからダイレクトに啜っていた。
そんな、一人寂しくつらい日々を過ごす中
最近、めっきり顔を出さなくなった妹は『元気にやっているのだろうか?』と
心配したりもしていた。
戦死した父や早く病死した母に代わって
妹の面倒を見てきた彼はアンネリーに相応しい男が現れるまで
休むことなど許されないと思い、ただひたすら軍務に精励し続けていた
また、アンネリーが自分と同じ道を歩みはじめると、その傾向は更に大きくなった
兄として、妹に胸を脹れる軍人でありたいと強く思うようになったのだ
帝国にラインハルトあるならば、同盟にフォークありといった感じである
そして、彼は軍人として最高峰の地位に就く才覚を持っていると信じて疑うことはなかった。
唾棄すべきヘインやヤンなどという劣等生とは違い、あらゆる教科において主席であった自分が
彼等以上に栄達することは彼の価値観の中では当然のことであったのだから・・・
もし、その価値観が唯一絶対の真理であったのなら、
多くの悲劇と災厄は起こることなく、平穏な時代が訪れていただろう
■親友と悪友■
『ねぇ、ねぇ!アンネリーったら!!!』
士官食堂で親友のフレデリカに何度も声を掛けられるアンネリーの表情は
どこぞのアホ上司のように緩みきり涎まで垂らす始末であった
「へっ!?アハハハ・・・ごめんね。ちょっとぼ~っとしちゃって」
『ちょっと・・じゃないでしょ?涎まで垂らして・・ほらこっち向いて』
小言を言いながら親友の口をハンカチで拭ってやるフレデリカも
アンネリーが掴んだ幸せを自分のことのように喜んでいた
ちょっと相手の男が頼りなさげに見える所が不安ではあるが
一応、同盟軍でもヤンと匹敵する英雄であることは紛れもない事実と
自分を納得させていた。
なにより横で親友が見せる本当に幸せそうな微笑の前では
小さな不安など些細なことなのだから・・・
『フレデリカ!今度はヤン中将とフレデリカの番だよね♪』
■■
いや~、人生とはかくも素晴らしいものとは
『相変わらずのマヌケ面が更に酷い事になってるぞ?』
うるせー!!・・はは~ん、さてはアッテンボロー君は
モテナイ男の僻み恨み妬み嫉みちゃん状態って訳かな?ん~?
『ほぅ・・・中々面白い意見じゃないか?俺は長いこと独身主義って奴と
共に歩いていたと思っていたんだが、どうやらお前の見立てでは違うらしいな』
あの、えっと・・・アッテンボローさ~ん?ちょっと指がこめかみにめり込んで
ちょっと痛い!!痛い!すんません!すんませんちょっと調子乗ってました。
『ったく、あんまりいい気になってるとヴァイトやコクドーに殺されるぞ』
あいつ等、最近俺を見る目が上官を見る目じゃないとは思ったが
俺の事を狙ってる目だったのか!!ふっ・・・持てる男はつらいぜ
『そろそろ茶番は終わりでいいか?我々も暇という訳ではない』
■勇将と凡将■
これは失礼、ウランフ中将にボロディン中将にお越し頂けるとは
このヘイン・フォン・ブジン感激の極み!!!
『戯言はいい!いいからさっさと用件を言え小僧』
まったく、ウランフのおっさんは相変わらず短気だねぇ
そんなことじゃいつか禿げるぜ?
そんじゃ、本題と行きましょうかね・・・
アッテンボロー悪いけど資料を二人に渡してくれるか?
「『なんだこれは?帝国領侵攻作戦だと!?』」
そう・・・どこぞの馬鹿が立案して政府筋に持ち込んだ与太話
一応は作戦案が通らないように俺のほうも動いたんですが
事前にこの資料を手に入れるのがやっとでした。
『なにが動いたんですがだ。鼻の下伸ばしてる間に手遅れになっただけだろ』
五月蝿い!!お前は資料を渡したらとっとと出てけ
『ハッハハッハ・・・ウランフ、二人とも中々面白い坊やじゃないか』
『そうだろう。会うだけの価値はあるだろう?あとは話を聞いてから判断するとしよう』
■
アンネリーに完全にうつつを抜かしていたヘインは
フォークの蠢動を防ぐことができなかった。
もっとも、ヘインの政治的コネであるトリュ-ニヒト国防委員長は
無謀な作戦によって現閣僚首班が失策を犯したほうが都合が良いと考えていたため
必死になって行動した所でどのみち結果は変わらなかっただろうが
とにもかくも無謀な出兵案の実行を未然に防ぐ事ができなかったヘインは
次善の策として、出兵作戦会議で艦隊司令官の一斉反対
名付けて『絶対行かないからな大作戦』を発動させる事を適当に思いつき
特に軍内部でも影響力の強い二人の勇将を第11艦隊分室に招いたのだ
欲を言えばビュコックにも来て貰いたかったのだが
『小僧の部屋までわしが何故わざわざ出向かなければならんのだ』と
派閥行動をとことん嫌う老将には素気無く断られてしまった。
もっとも、原作から考えればビュコックが出兵案に
賛成するとは思えないので、ヘインはその点については心配していなかったが・・・
手紙の宛名に『ドッビュコック提督へ』とふざけて書いたのは
ちょっと拙かったかな?と少しだけ後悔していた。
まぁ、なんとか侵攻作戦の本会議前に出兵反対派の構築に成功したのだから
原作より多少はマシな状況であろう。政府の決定のためどのみち出兵はするだろうが
その出兵案に対する反対意見が個々で出るのでなく、
軍部の一派から出たという形になれば、出兵推進派の作戦司令部にも
多少の影響力を持てるようになる見込みが十二分にあるのだから
また、そうでなくとも反対派閥外しとして、反対派の提督が率いる艦隊が
イゼルローン駐留や本国首尾に回される可能性もあり
どっちに転んでもヘインに損のない結果が得られる
この話を聞いた二人の勇将はそう勝手に深読みし
ヘインからの会議での協力要請を快く引き受けた。
少しだけ、そう少しだけ歴史に逆らう風が吹き始めていた
■逆転会議!!■
宇宙暦796年8月12日、自由惑星同盟軍会議史上最も白熱した議論が展開される
統合作戦本部地下の大会議室にシトレ元帥以下集まった47名の将官は
政府によって決定された帝国領侵攻作戦について討議するため集まっていた。
『帝国領侵攻作戦』、この愚かしくも魅惑的な作戦の生みの親はフォーク准将であったが、
その作戦が浮上する土壌を生み出したのは、ヤンと他でもないヘインであった・・・
それほどイゼルローン占領と二人の英雄の誕生という果実は甘く
政府首脳と軍首脳に大いなる楽観と誤解を生み出させてしまったのだ
彼等なら、今ならば帝国自体も易々と倒せるのではないか?・・・と
多くの直接と間接の要因が複雑に絡み合った結果
フォークとヘイン、奇妙な因縁で結ばれた二人の男の戦いが始まることになる
■■
シトレ元帥に続き発言をしたのは、帝国領侵攻作戦軍総司令官のロボス元帥ではなく
そのお気に入りの幕僚、そうアンドリュー・フォ-ク准将だった
『本日お集まりいただいた将官のお歴々に、先ずは今回の作戦立案者たる小官から
ご挨拶させて頂きたいと思います。小官自身もこの同盟開闢以来の壮挙に
幕僚として加われることは武人の誉れ!これに過ぎたるはないと考えております』
『能書きはいい、具体的な作戦内容について説明してもらいたい』
自分に酔いまくったフォークの演説を不機嫌そうに遮ったのは
第10艦隊司令官ウランフ中将だった。その顔は不機嫌そのもので
周りの者は彼がこの作戦案に反対である事を悟った。
一方、自らの演説を中途半端な形で遮られたフォ-クは
一瞬、頬骨の上の筋肉をヒクつかせたが何とか耐え、
自ら成功すると信じて疑わない作戦内容を諳んじる
その内容は美辞麗句に塗り固められただけの抽象論に過ぎず
それは突然立ち上がったヘインの激しい追及によって再び遮られる
「本部長!!フォーク参謀は抽象論を述べるだけで
作戦の具体的な内容をなんら示してはいません!!」
『うむ、ブジン中将の意見を認める。准将は速やかに具体的な作戦案を述べよ』
『クッ・・・分かりました。今回、小官が立案した作戦はその動員規模は
過去最大の物であり、その大軍による侵攻によって敵の肝を冷やす事は
容易いこと。それだけを見ても自由惑星同盟の武威を示す事になりましょう』
「異議あり!!武威を示すだけであるならば数個艦隊を動員した
示威行動で十分なはず!作戦参謀の案は明らかに過剰動員です!」
『ふむ、中将の言も最もではあるな・・・、示威行為のためだけに
9個艦隊も動員するなどとは、戦力の運用に問題があるのでは?』
『もちろん、これだけの大兵力!示威行動に終始するのではなく
高度な柔軟性を維持しつつ、帝国軍の撃破、帝国人民の解放などなど
自由惑星同盟軍に求められる偉業を達成する事を目的としております』
出兵反対派のシトレもヘインに賛同してか
フォークの意見に疑問をぶつけたが、彼は動じる事無く
しれっと『まだ作戦の一部を言っただけですぅw』みたいな返答を返し
あっさりとヘイン達の舌鋒を逸らした。
■
『なんでもかんでもやるというのは聞こえは良いが、要は軍事行動の
目的が定まっていないという事ではないのか?明確な回答を頂きたい』
『ボロディン中将の危惧も、確かに一理あることだと小官も思いますが
今回の作戦は、その規模!参加兵力!艦隊動員数!!すべてにおいて
過去に行われた作戦内容を凌駕するもの!!当然、唯一つだけの
軍事行動の目的を設定するのみで足る形にはなりえません』
続いてフォークに疑問を投げ掛けたのはボロディンだった
実戦経験多い古参の将官は、このボロディンの堅実な意見に首を縦に振ったが
後方勤務や戦歴がそれほどでもない将官達は、今回の作戦の規模に惑わされ
フォークの言に一理有るのではないかと思い
議場の空気は未だ出兵賛成派が優勢であった。
なにより彼等には政府の決定という大義名分があるのだから
『では、帝国領への攻勢をこの時機に定めた理由について伺いたい』
『大攻勢です!!戦いには機と言う物が有ります。いまイゼルローン要塞を
手中に収め、その事実に浮き足立つ帝国軍を討つ事は、機に乗った行為
それをむざむざと逃すことは、敵を悪戯に利する愚かな行為と言えましょう』
流石に選挙に勝つ為に政府が侵攻作戦に乗ったとは
言わないだろうと思い質問したヤンであったが
機などというあやふやな物で大規模な軍事作戦を実行するという返答に
頭を真っ白にされ、前途によぎる暗雲に頭を抱えたくなっていた
だが、それでもヤンは部下の命を預かる者の責任として
ラインハルトの危険性を引き合いに出したり、その他の出兵反対組みと同調しながら
彼らしからぬ勤勉さを持って、侵攻作戦の無謀さを説き続けた・・・
■
こうして、原作以上に激しい反対意見が数多く出されたため
会議は紛糾し続け、どちらの論が正しいか結論が中々出ず
会議はこのまま終わらないのではないかと思われたが
会議中、ほとんど発言をしなかったというか、
居眠りしていたロボス元帥によって、唐突に終わりを迎える事になる
『ふむ、議論も尽きぬようだが作戦の実行は政府によって決定済みである』
この発言を聞いた賛成・反対派は皆『それを言っちゃ御終いよ』と思ったが
それに異議を唱えることだけはできないことは理解していたため
長く長く紛糾した会議は嘘のようにあっさりと終わりを迎える事になる。
ただ参加艦隊の半数以上が侵攻に反対であると浮き彫りになった事は
作戦の実行に当たって少なからぬ修正が必要であると
作戦司令部に認識させるのには十分なものであった。
凡人の足掻きによって少しだけ形を変えた帝国領侵攻作戦・・・
その結果、同盟や帝国がどのような影響を受けるのか?
その答えが出されるには、もうしばらくの時間がかかりそうであった
・・・ヘイン・フォン・ブジン中将・・・銀河の小物がさらに一粒・・・・・
~END~