一人も欠ける事無く、難攻不落の要塞を
7度目にして遂に手に入れた同盟は
その偉業を成し遂げた二人の司令官を歓呼の声で迎えた
■それぞれの辞表■
奇跡とも言える武勲を打ち立てたヤンとヘインは中将への昇進と
正式な一個艦隊として増員・増強された艦隊の司令官への就任が決定していた
特にヤンの昇進については統合作戦本部長、ヘインの昇進については
国防委員長トリューニヒトの強い推薦があった
もっとも、推薦された本人達にとっては、甚だありがた迷惑であったが
■■
『なんだ二人揃って遅刻もせずに来たと思ったら、辞表の提出とは・・・
君たち二人合わせても医学上の平均寿命の半分にも満たないというのに
やめたいというのか、人生を降りるのには早すぎるとは思わないのかね?』
「本部長閣下、私は貴方とは違うんです。客観的に自分を見て
自分が軍人に向いていないことを、痛いほど分かっています」
『本部長閣下、私もブジン少将と同じ気持ちです』
ヘインは帝国領侵攻作戦で死にたくないから退役を望み
ヤンは本部長の掌で踊ってイゼルローンを落としてやったんだから
あとはお偉方で講和成り停戦なりを上手くやってくれという気持ちで
辞表を提出しており、実の所、やめたいという意志以外は結構ずれていた
『第11艦隊と第13艦隊をどうする?再建と創設されたばかりの
君たちの艦隊だ。君たちがここで辞めたら、彼等はどうなる?』
「別に何とかなるんじゃないんですか?正直、俺いなくても大丈夫です」
『ブジン中将!!君はそこで黙って立っていろ!!』
珍しく声を荒げて一括した統合作戦本部長であったが
一応、ヤンには退役を思いとどまらせる事には成功していた
一方、ヘインはというと不平たらたらという顔で
そっぽを向きながら本部長の前に立っていたが
ヤンが退出して、56分後にもうちょっとだけ続けるんで勘弁してくださいと
シトレに泣きを入れ、退室を許可された。
■■
『閣下も辞表の提出ですか?ヤン提督と違って
随分長い間部屋に入られていたようですが?』
まぁ、怒られて立たされた上に、無理やり却下させられるわで
最悪だったよ。ほんとシトレのおっさん最近、頑固に磨きがかかってきたんじゃないか?
『本部長閣下も大事な息子を国防委員長殿に取られたくないと見えますな
まぁ、閣下の辞表が受理されないようで安心しました。貴方は少なくとも
私を退屈させる事は無さそうですからな。これからも愉しませて貰いますよ』
けっ、俺はお前のおもちゃじゃないっつーの!
ほんと、お前等の薔薇の連隊とは金輪際関わりたくないね
一緒にいたら命がいくつあっても足りないぜ
『おやおや、お褒めに預かり光栄ですな、さて余り引き止めると
坊やとヤン提督を待ちくたびれさせてしまいますな、では、失礼』
おう、またな・・・あとイゼルローン時の護衛サンキューな!
■
シェーンコップはヘインの謝礼に振り返る事無く
ただ、片手を挙げて応え、そのまま歩き去った
その覇気に溢れ、自信に満ちた足取りは周囲の目を引かずにいられない物であった
以後、彼とヘインは幾度と無く死線を共にすることになる
■だらしない師父と師兄■
トラバース法・・・、戦災孤児で親族の居ない者達を軍人の家庭が引き取って養育する制度
そこで育てられた子供達の大半は軍人として任に就く、環境と補助金に縛られて・・・
失った兵士を再生産するための制度によってユリアン・ミンツが
ヤンに引き取られて、既に2年を超える月日が過ぎていたが
その間に幾度と無くただ酒を飲みに訪れるヘインとアッテンボローのコンビと
ユリアンは親交を深める事になり、ヘインとユリアンは少し年の離れた
兄弟のように仲良くなっていた。
■■
『またシトレ元帥に絞られていたんですか?』
そうなんだよユリアン、最近シトレのおっさんの野郎
なん~か、俺を目の仇にしてる気がするんだよな
『また、なにか悪戯でもしたのがバレたんじゃないですか?
なんせ、ヘインさんは同盟軍一の悪戯小僧って聞きましたよ』
また、アッテンボローやキャゼルヌ先輩が出鱈目をユリアンに教えやがったな
まてよ、もしかしてヤン先輩はそんなこと言ってないですよね!!
『おいおい、私はそんなことを喋ったりしてないさ。この件に関しては無罪だ
ただ、そういう風に言われる方にも何かしらの問題があると、私は思うけどね』
ユリアン、ちょっと小遣いやるからどいつがそんなこと言ったか教えてくれ
こんど地位と権力を笠にいびり倒してやる!!
『それを聞いたら益々言えませんね。情報の出所を明かすのは
ジャーナリストでなくてもやってはならない事だそうですから』
うん、よく分かったぜ!あの伊達馬鹿酔狂太郎の野郎・・・と
ユリアン、シトレのおっさんからせびった金一封だ
今度遊びにった時にうまいもんでも作ってくれよ
余った分は小遣いでいいぜ
『アイアイサー』
『やれやれ、ユリアンにはもっと良い大人と付き合って貰いたいんだが・・・』
いや、同感ですね先輩!保護者失格どころか被保護者に養育されている
どこぞのだれかさんなんかと四六時中付き合っていたらと思うと
ユリアンの将来が心配で心配で、俺は夜も眠れないですよ
『そいつは大変だ。今日はこのまま早く帰って寝た方がいいんじゃないかな?』
せっ・・先輩、もう軽いジョークですよ冗談!やっぱ、ユニークは大事ですよね~♪
『提督!ヘインさん!そんな所で油売ってないで下さい!
レストランが満員になっちゃいますよ。早く行きましょう!』
あ、置いてくな~!!先輩、とりあえずは飯、飯ですよ!
ユリアンの交友に問題については、その後で酒でも呑みながらじっくり話しましょう
『うん、その提案には同意できる点がありそうだ。一先ず停戦するとしよう』
■マンホールウェイター■
ヤンとヘインがユリアンを呆れさせるような遣り取りをしている間に
飲食店の混雑がピークに達する時間になってしまう。
『あの場所に、あの場所にさえ行けば』と何件かのレストランを回ったが
不遜なウェイターに『ここは満員だ・・・入ることは・・できねーぜ』と素気無く追い返される
ほとほと困り果てる3人であったが、意外なところから救いの手が差出される
三月兎亭に入るもやはり『ここは満員だ』と言われ諦めて店を出ようとした彼等に
見知った女性が合席を進める声をかけて来たのである
普段の凛々しい軍服姿とは違ったドレスを纏った美しい女性、フレデリカであった
■■
『提督、ブジン少将』
普段とは違った柔らかさを持ったフレデリカの姿を見たヤンが
一瞬、というか数瞬ほど立ち尽くし呆けている間に
ヘインは素早く彼女に声を掛ける
「おっ、かっちとした軍服姿もいいけど、私服姿もカワイイな!
中尉、今からでもいいから考え直して俺のところに嫁にこない?」
『ご遠慮させていただきます!それに閣下には
もっと、相応しい相手が傍にいると思いますわ』
『ヘインさん振られちゃいましたね』「うっせ、振られた数に戦果は比例すんだよ!」
このなんとも下らない遣り取りはしばらく続くように思えたが
合席を進めに行ってなかなか戻ってこない娘を呼びに来た
グリーンヒル大将によって終わりを告げられる
■■
『ヤン中将、ブジン中将、こちらの席だ』
『少将です。閣下』「そうそう、まだ少将ですよ」
『なに、来週には二人とも中将だ。いまから新しい呼び名になれて置くのもいいだろう』
『凄いな、お二人の話ってその事だったんですね?』
ユリアンは少し上気した声をあげ、二人をまぶしい物を見るかのような目で見つめた
ホントは軍を退役したと告げようとしていたヤンは、
複雑な内心を隠しながら力ない笑いで返し
もう一方のヘインは『えっへんえっへん!』と単純に胸を張り偉ぶって見せ
その余りの滑稽さで、目の前に座った父娘を破顔させることに成功する
そんな光景を見ながら、若干気分を取り戻したヤンは
グリーンヒル親子に自分の被保護者ユリアンを紹介した
『ほぅ。君が優等生のユリアンか、フライングボールのジュニア級で
年間得点王を獲得する活躍だったそうじゃないか。文武両道で結構だ』
『そうなのか?』「さすがは俺の舎弟!褒美にこのセロリを取らすぞ」
落第点すれすれの保護者は驚き、凡人はこれを機とばかりにセロリを少年に押し付けようとした
『閣下、ちゃんと好き嫌いしないで食べてください。あと提督、その事をご存知ないのは
多分提督ぐらいものですわ。ユリアン坊やはこの街ではちょっとした有名人ですのに・・・』
フレデリカは子供じみたヘインの行動をピシャリと注意しながら
ヤンを軽い空調で皮肉り赤面させた。
■■
『ところで、君達二人は結婚する予定はないのかね?』
ヤンとフレデリカはナイフとフォークを同時に取り落とし
皿にがしゃんという大きな悲鳴をあげさせ
陶器愛好家の老ウェイターをケツの穴に氷柱を突っ込まれた気分にさせた
「まぁ、結婚てのはすぐにピンと来ないですね」
『私もヘインと同感です。婚約者を残して逝ってしまった友人もいますしね・・』
動揺しなかったヘインとそれに続くヤンの言葉が続く最中
フレデリカのナイフとフォークは忙しなく動き続け
メインディッシュの見るも無残なブチマケ状態になっていく・・・
一方、その返答に頷いてからグリーンヒル大将は話題を転じた
『たしか、ジェシカ・エドワーズの事は知っているね?彼女のことなんだが
今度の補欠選挙で反戦派候補の手伝いをしているらしい。テルヌーゼンの』
『そうですか、反戦派の運動も活発になってきていますからね・・・』
『そう。その分、主戦派の妨害も激しくなっているようだが』
「ほんとですか?やばいですよ先輩、こんど士官学校の式典でテルヌーゼンに
行かなきゃ為らないのに、暴動とかに巻き込まれたなんて事に為らないですよね」
とりあえず、政治の話題とかには反応が薄いヘインであったが
自分の身に関わりそうな話題への食いつき疾風の如しである。
『例えば、憂国騎士団による反戦派に対する暴行とか?』
『なに、そんなものは心配するに足りんよ。彼等はただのピエロに過ぎん
大したことなどできはしないさ。ふむ、このコニャックゼリーサラダは絶品だな』
『同感です・・・』「たしかにこのゼリーは詰まる心配は無さそうですね」
ヤンはサラダの味には同意しつつも、憂国騎士団に対する見解については
全く共感することはできなかった。彼等の後ろにいる国防委員長を始めとする
政治屋達の力を過小評価する気にはなれなかったのだ。
ヤンは横目でヘインを一度見つめ、小さな誰にも気付かれないような溜息をついた
自分は横の能天気に食事をする後輩のように、彼等と上手く付き合えそうにはない
この要領の悪さが、何かの報いとして返って来るのではないかという思いを持ちながら・・
■テルヌーゼンへ行こうよ!■
ヤンとヘインは士官学校の記念式典へ出席するため
ユリアンはそのお供としてテルヌーゼンへと足を伸ばしていた。
ヘインは昨日のグリーンヒル大将の話から
ジェシカがここにいる事を知って、若干ではあるがテンションを下げていた
こんど仲直りをしようとは思ったものの、
こんなに早く再会のチャンスが来るとは思っていなかったのだ
ヤンの方もまた反戦活動に身をおく亡き親友の婚約者と再会するチャンスに
ヘインとは全く違う次元ではあるが、その気分を憂鬱にさせていた。
■■
『着きましたよ。ヤン中将、ヘインさん起きてください!』
ふぁ~、もう着いたのか?もう少し眠らせてくれりゃいいのに
サービスの悪い航空会社だな
『理不尽な文句を言ってないで降りるぞヘイン』
うい~、先輩やけにテンション上がってるな・・・まさか、ジェシカとヤル気か!?
そうか、婚約者を失って意気消沈している女をやさしく、やししい言葉で誑かすんだ!!
怖ろしい、何て怖ろしい人なんだ・・・魔術師ヤンの異名は伊達ではないということか・・・
『なにをぶつぶつ言っているんだい・・早くしないとほんとに置いて行くぞ』
ちょっと、待ってください・・・残りのビールだけちょっと飲ませてって
ハイハイ、行きますから荷物ももって、あれ?ユリアン俺のサイフが?
あ、上着のポケット?あったあったサンキュー!
■■
『お見えになったわ!』『おい来たぞ、時間通りだ!!』
うぉっ!眩しい・・・いきなりフラッシュ攻撃かよ
なんか南国帰りの芸能人気分って奴か?こんどグラサンでも買ってこよう
『ようこそテルヌーゼンへ!!アスターテ、イゼルローンの両雄の訪問を
このレイモンド・トリアチ、盛大に歓迎いたしますぞ!さぁ此方に・・・』
『いやぁどうも・・』「諸君、私は再びテルヌーゼンへ還って来た!」
■
空港に着くや否やのタイミングで、取材陣や主戦派候補に囲まれた
ヘインとヤンはまんまと主戦派陣営の策に嵌められてしまい
トリアチの応援の為に駆けつけたかのような報道をされる事になる
この結果、補欠選挙における反戦派陣営に傾いた流れは
一気に主戦派側へと雪崩をうって変わる事になってしまう
なんといっても、大人気の若き英雄が応援に来たという効果は非常に大きいのだ
この選挙情勢の変化をハイネセンで聞いたトリューニヒトは
『ヘイン君は実に良くやってくれているようだ』と側近に漏らし
この結果に対して、非常に満足していた。
一方、一転して形勢有利から不利へと叩き落された反戦派陣営の
ヤンとヘインに対する悪感情は暴発寸前まで高まっていた。
■ハイヒールはお好き?■
『はぁー、こんな所まで来てヘインと一緒に政治ショーに付き合わされるとは
思わなかったよ。やれやれだ・・、私等二人は主戦論者の応援に来たようなもんだ』
「そういや、国防委員長がやけに熱心に式典参加を勧めてきましたからね」
『やはり国防委員長閣下の差金か、ヘイン、君はどうして断らなかったんだい?』
「断れたら断ってますよ!式典なんて面倒な物に、俺が好き好んで出ると思います?」
『そうですね、ヘインさんは式典に出るって言うよりは
サボったり、途中で逃げ出したりする側の人間ですよね』
「ユリアン!笑いすぎ!!まぁ、否定できないのが痛いところだけど・・・」
■
TVの選挙報道をみながら、あーでもない、こーでもないとうだうだ言いながら、
ヤンやヘインはホテルのベッドに寝転がっていた。
そんな気分を少しでも変えるかなと、ユリアンが紅茶でも入れましょうかと
二人に提案したとき、部屋のブザーが鳴り響いた。
『俺が出ようか?』というヘインの申出を遠慮して
ユリアンは玄関まで行き扉を開けると、数名の男たちが部屋へと駆け込んできた
■■
『ヤン・ウェンリーとヘイン・フォン・ブジンだな!!』『よくもあんなマネをしてくれたな!!』
なになに??テロ!!テロですか?
ちょっと、早くに逃げるか助けを呼ばないと!フロント!フロントに電話!!
『電話をかけさせるな、押さえろ!!』
『ボッコボッコのギッタギッタにしてやるぜ!!』
ちょ、おまなんでジャイヤンTシャツをって痛い痛い殴らないで
ゴメンナサイ、ゴメンナサイゴメンなさい・・・・
『やめなさい!!!何をしてるの!!!』
『やぁ、ジェシカ・・・』『ごめんなさい、ヤンこんなことをしてしまって・・・』
いやいや、ちょいまって!俺まだフルボッコですよー!
ちょっとジェシカさん鳩尾に食い込んだハイヒールを・・・ゴォハッ・・
ゆッユリアン、震えてないでたっ、助けてくれ・・・
いや、手でスミマセンなんてジェスチャーはいらんから・・
痛い!!痛いって!!ヒールが刺さってる刺さってるってぇええ!!
『五月蝿いわね、ボブ・・あと五発ぐらいでいいわよ』
って、ジェシカ!!!おまry・・・そりゃ、言えボブさん私に文句など
■■
『ヤン・・痛む・・・?』『いや、たいした事はないさ』
いや、俺は痛む?ってどころじゃねーぞ!!!!!
『本当にごめんなさいね・・・彼等がここに押しかけると聞いて
慌てて貴方だけでも助けないと、と思って駆けつけたんだけど』
おいおい、俺はいいのかよ!!『ゴスッ!!』
いや、なんでもありません・・・、黙って座ってます。
ヒールが全部壁に全部めり込むって・・・・
『明日の式典には出るの?できたら出ないで欲しいの』
『それは無理だよ。残念な事に私は軍人だ。上層部の命令に逆らうわけには行かない』
『そうね。ラップも同じような事をいっていたわ・・・そう貴方と同じ事を・・・
でも、今日のようなことはしないで、分かるでしょう?私たち反戦派グループは
補欠選挙で独自の候補を立てて戦っているの、貴方達が来るまでは優勢だったんだけど』
『すまない・・・私達の軽率な行為で、謝るよ・・』
『もういいわ。今日は本当にごめんなさい・・それと事を表沙汰に
しないでくれたことを感謝するわ・・・それじゃ、さよなら・・・』
「ジェシカ!!ラップ先輩・・・助けてやれなくてごめん・・・」
『・・ううん、貴方が謝る必要は無いわ・・本当は私だって分かっているのよ
貴方が悪いわけじゃない。仕方がなかったんだって・・・でも、まだ・・・
どうしても駄目なの!!誰かに気持ちをぶつけないと・・・ごめんヘイン』
「いいよ、ジェシカ・・見ての通りで、俺は昔からぶつけられ慣れてるからな
多少の、ほんと多少だぞ!それ位なら受け止めてやるよ。友達だからな・・」
■
最後のヘインの言葉にジェシカは返事をする事無く
一度だけ振り返り、しばらく見せることのなかった
優しい微笑みをヘインに見せ、ホテルの部屋を後にした
そこに揺るぎ無い決意を見たヘインは、ジェシカに政治活動を
止めろなどと言う事はできなかった。
彼女が既に命をかける覚悟を終えていたことを悟ったのだ
結果として、代議員補欠選挙は反戦派の勝利に終わった
一時、ヘイン達の登場で圧倒的な劣勢に陥り、
独自に立てていた候補すら暗殺される窮地に立たされた反戦派運動家達であったが
新たに弔い合戦の旗頭として悲劇のヒロイン、
そう、ジェシカ・エドワーズを候補として
前面に押し出す事によって見事な大逆転勝利をおさめることになる
■いつものハイネセンで・・・■
((テルヌーゼン選挙区ではジェシカ・エドワーズ嬢が圧倒的な得票数で・・・))
『どうやら、ソーン・ダイクン候補者を暗殺したことが
主戦派にとって悪い結果をまねいてしまったようだな』
そうですね、憂国騎士団も無茶が過ぎたって奴でしょう
国防委員長の方も下の暴走にカリカリしてるんですかね?
『君のその他人事な発言を聞いたらトリューニヒト委員長の失望が
大きくなるだろう。同士と信じていたのが自分だけだと気付いたら』
なに笑ってんですか総参謀長、別に俺はどこかの派閥の
一員になった記憶なんてないですよ。どっちかっていうと幅にされてるぐらいですよ
『ふぅ、それは君の価値が政治的にも、軍事的にも非常に大きいからだろう
どの派閥の人間も君の力が欲しくてしょうがない。だから、あたかも自派閥に
属しているかのような振る舞いをする。それは本部長閣下も変わらないだろう?』
そんなもんですかね~?そういうのはヤン先輩に全部任せたいんですけど・・・
『中将♪やっとみつけましたよ!みなさんもう第11艦隊司令部室に集まってますよ』
『フォーク少佐、今日の夕食をブジン中将がご一緒したいそうだ』
『ほんとですかおじ様~!じゃなくて、総参謀長閣下・・』
『あぁ、アンネリー君も偶には上官にご馳走してもらうと良いだろう』
ちょちょっと、総参謀長!!なに『はっはっはっ』とか言って去ってくんですか
『若いとは良きことかな』じゃないぞ!おい、まてコラおやじ!逃げんな!!
『中将、今日はがんばって早くお仕事終わらせましょうね♪』
了解・・・まぁ、頑張って早く上がれるようにしますかね?『ハイ!』
■
銃後の平穏をいつもよりは慌しくない過ごし方をした凡人達であったが
その裏で、着々と更なる戦いの準備が進められていた。
血を流さずに得た勝利の美酒は、余りにも甘美に過ぎて
人々の冷静さを眠らせるのに十分すぎる代物であった。
・・・ヘイン・フォン・ブジン少将・・・銀河の小物がさらに一粒・・・・・
~END~