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No.37503の一覧
[0] インフィニット・ストラトス ~弱きものの足掻き~【転生オリ主】[友](2013/05/05 20:35)
[1] 第一話 IS学園入学初日[友](2013/05/05 20:36)
[2] 第二話 IS特訓[友](2013/05/05 20:39)
[3] 第三話 クラス代表決定戦[友](2013/05/05 20:40)
[4] 第四話 まさかの共同生活の始まり[友](2013/05/05 20:42)
[5] 第五話 天才なんて嫌いだぁぁぁ![友](2013/06/23 22:14)
[6] 第六話 首突っ込むつもりは無かったのに………[友](2013/08/13 00:29)
[7] 第七話 2人の転校生…………ま、俺には関係ないが[友](2013/08/15 11:34)
[8] 第八話 俺が活躍すると? ブーイングの嵐です。[友](2013/08/15 11:35)
[9] 第九話  海の楽しみは海水浴だけではない![友](2013/08/25 11:52)
[10] 第十話  名は体を表すを地で行ってます。[友](2013/08/25 11:54)
[11] 第十一話 まさかのデート!?  そして…………[友](2013/09/15 22:47)
[12] 第十二話 楯無の心[友](2013/11/09 23:38)
[13] 第十三話 楯無の答え[友](2013/11/10 06:36)
[14] 第十四話 信頼の二次移行[友](2013/11/30 21:02)
[15] 第十五話 今日は自宅でゆっくり…………のはずが![友](2013/12/23 01:47)
[16] 第十六話 プールでデート。 あれ? プールで原作イベントってあったっけ?[友](2014/02/20 22:15)
[17] 第十七話 夏祭り………相変わらず一夏は唐変木だ[友](2014/03/30 18:01)
[18] 第十八話 彼女の家に行くのは初めてだ………不安です[友](2014/04/13 20:07)
[19] 第十九話 沖縄旅行 1~2日目[友](2014/05/26 00:03)
[20] 第二十話 沖縄旅行4日目~6日目[友](2014/07/26 22:24)
[21] 第二十一話 努力の成果[友](2014/08/16 17:32)
[22] 第二十二話 特訓風景と一夏ラヴァーズ急襲………まあ、予想通りだが[友](2014/11/02 13:22)
[23] 第二十三話 一夏の特訓風景と学園祭[友](2014/12/09 01:06)
[24] 第二十四話 妹達の邂逅とシンデレラ[友](2015/02/22 18:04)
[25] 第二十五話 白式を寄越せ? 人違いです![友](2015/03/29 19:26)
[26] 第二十六話 偶には自分から原作ブレイクしてみよう[友](2015/05/17 11:13)
[27] 第二十七話 男には やらねばならぬ 時がある    今がその時だ!![友](2015/08/12 07:36)
[28] 第二十八話 ワールド・パージ。 俺は別任務だけど[友](2015/12/06 21:11)
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[37503] 第四話 まさかの共同生活の始まり
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/05/05 20:42

第四話


連れてこられた先は、主に2年生が訓練に使っているアリーナ。

アリーナは特に使われる学年が決まっているわけではないが、結果的に学年別に分かれている。

俺がそのアリーナのピットに連れてこられると、

「おや~? どうしたのたっちゃん。 男の子連れてくるなんて」

「薫子ちゃん。 ちょっと後輩を鍛えてあげようと思ってね」

「はい? 鍛える?」

楯無会長の言葉に俺は思わず訪ねてしまう。

「うん。 君が言ったんだよ。 強くなりたいってさ。 だから、私が強くしてあげようってこと」

楯無会長は笑顔でそう言ってくる。

その笑顔に一瞬ドキリとするが、すぐに気を取り直し、

「いや、ですから先程も言いましたが、俺に時間を使うぐらいなら、織斑を見てやってください。 あいつの方が真面目で才能もあります」

俺がそう言うと、

「優秀な子を育てても面白みが無いじゃない。 才能を努力で打ち破るって、なんかワクワクしてこない?」

「それはまあ、そうですけど…………俺は自分から努力なんて出来ませんよ」

「それは問題ないわ。 私が努力させるから」

「へっ?」

「私が君を強くする。 これは決定事項よ。 拒否権は無いわ」

「んな横暴な!」

「はいは~い、文句は受け付けないわ。 じゃあ、地獄の特訓デラックスフルコース行ってみよ~!」

「いや、俺の打鉄はもうエネルギー切れなんですけど!?」

「心配しなくてもそこの黛 薫子ちゃんは、優秀な整備課で補給や修理ならお手の物よ」

「楽しそうだね、たっちゃん。 私に任せておきなさい!」

黛先輩もノリノリだ~~!

「君もよくわかってるよね。 人生あきらめが肝心」

こっち方面に諦めたくはなかったぁ~~~~~~!

そのまま連行されていく俺。

そして、






うぎゃぁあああああああああああああああああああああっ!!!???







何があったかはこの悲鳴で推して知るべし。










「はっ!?」

次に気付いたとき、見覚えのある白い天井が映った。

「…………保健室?」

俺は体を起こそうとするが、

「うごっ!?」

体中がガクガクだった。

俺は、楯無先輩の地獄の特訓デラックスフルコースを受けていた事を思い出す。

その瞬間俺は青ざめる。

結局は途中で体力が尽きて気絶したらしい。

鬼だ、楯無先輩。

何故楯無先輩という呼び方になっているのかといえば、楯無先輩から名前で呼んでといわれたからだ。

「ああ、起きた?」

見れば、昨日と同じ保険の先生。

「あ、先生。 またご迷惑をおかけしたようで………」

「いいえ、それが仕事だもの。 気にすることは無いわ。 君の状態だけど、疲労が溜まっているだけね。 今日はゆっくり休めば、明日には疲れが取れるわ」

「そうですか…………」

「あ、だけど筋肉痛は覚悟しといてね。 一応湿布は貼ってあるけど、それだけで治るものじゃないから」

「は、はい………」

俺は多少ゲンナリしながら立ち上がる。

「うぎぎ………」

立ち上がるのにも一苦労だ。

「で、では先生。 お世話になりました」

「ええ。 お大事に」

俺は、ガクガクの体を引きずるように保健室を出た。




必死こいて自分の部屋の前にたどり着く。

いつもなら何でもない廊下も、今回ばかりは茨の道に見えた。

俺は自室のドアに手をかけ、ふとそこで一つの予感がした。

俺は恐る恐る扉を開けると、

「お帰りなさい。 ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」

裸エプロン姿の楯無先輩がそこにいた。

俺は思わず項垂れる。

「何やってんですか? 楯無先輩………」

俺は、予感が的中してしまったことに気落ちする。

「むぅ………現実を否定するわけでもなく、慌てふためくわけでもない、その反応予想外だなぁ」

因みに俺は項垂れたまま視線は楯無先輩から外している。

「とりあえず服着てください。 まともにそっち向けませんので」

俺は視線を外したままそう言う。

「私、魅力無いかなぁ?」

楯無先輩は俺の顔を覗き込むように聞いてくる。

俺は更に視線を外し、

「いえ、楯無先輩はとても魅力的な女性だと思いますよ。 ただ、本当に俺の事を好きでいてくれてそういうことをしてくれるというのなら嬉しいんですが、仕事やからかい目的でそういう事をされるのは、嘘を吐かれているのと同じと感じてしまうので、俺は良い気分にはならないんですよ」

だから俺は、前世でも“そういう”店に行ったことは一度もない。

まあ、仕事の付き合いでキャバクラとかに連れて行かれたことはあるが、はっきり言っていい気はしなかった。

「へ~、純情なんだね」

「純情とは違うと思いますよ。 ただ単に自分の我儘に近いんじゃないんですかね?」

「そう………」

楯無先輩が頷くと、布擦れの音が聞こえてくる。

「はい、もう良いわよ」

そう言われて視線を向けると、制服姿の楯無先輩がいた。

俺はホッと息を吐いて部屋を見渡す。

するとそこには明らかに変わったものが。

部屋の4分の1程を占めていたベッドが、今や半分近くを占めるダブルベッドになっていたり、見慣れない棚が増えていたり。

それらが示す意味は、

「…………もしかして楯無先輩、この部屋に住むつもりですか?」

「おっ、よくわかったねぇ」

楯無先輩がセンスを広げ、『正解』の文字が現れる。

これはさっきと一緒だな。

「まあ、あれを見れば………」

俺はダブルベッドに視線を向けてため息を吐く。

「因みにその理由は………」

「もちろん、君を逃がさないためだよ」

「…………ですよね」

楯無先輩は満面の笑みでそう言ってくる。

どうやら俺は完全に目を付けられたらしい。

はぁ~、こういう役は一夏の役目だろうに。

俺は逃げられないという現実にため息を吐く。

「とりあえず、ご飯食べてないでしょ? 重いものは疲労で胃が受け付けないと思うから消化の良いお粥だけどね」

楯無先輩の示す先には、小さなテーブルの上にあるお粥の入った皿。

まあ、確かに今の状態では、まともな食事は胃が受け付けないだろう。

「ちゃんと食べないと、明日から持たないよ」

俺はそう言われ、テーブルに座る。

俺は手を合わせ、

「いただきます」

俺はスプーンで一口食べる。

その味は、

「………うまい」

いい感じに塩加減が効いていて、かなり美味しい。

ご飯粒も一粒一粒しっかり火が通っていて、口の中に入れるとまるで飲み物のように溶けて胃の中に滑り込んでいく。

疲れ果てた胃も、このお粥なら受け付けてくれた。

俺はしっかりと味わいながら全部平らげた。

「ごちそうさま。 とても美味しかったです」

俺は手を合わせてそう言う。

「ふふっ。 口にあったなら良かったわ」

楯無先輩は笑みを浮かべてバッと扇子を広げる。

そこには『御粗末』という文字が。

………扇子を取り替えた様子は無かったから、多分あの扇子がISの待機状態なんだろうなと俺は思う。

それならば、書かれている文字が知らず知らずの内に変わるのも納得だ。

「シャワーはもう使ったから、後は君が使っていいよ」

そう言ってくる楯無先輩。

「じゃあ、使わせてもらいます」

俺はシャワーを浴びる。

正直湯船に浸かりたいところだが、無いものねだりをしても仕方がない。

とりあえずシャワーを済ますと、寝巻きに着替えてシャワー室を出る。

疲れが溜まっている俺は、とっとと寝ようとしたのだが、ダブルベッドを前に一瞬考え込んだ。

「どうしたの?」

ニコニコしながら、ベッドに寝転がった楯無先輩が問いかけてくる。

「何でダブルベッドなんですか? ベッド2つ並べれば良かったのでは?」

俺がそう聞くと、

「スペース削減のためよ」

楯無先輩がそう言う。

「………………俺は床で寝ます」

俺は即座に踵を返した。

「ちょ、ちょっと、そんなにハッキリ拒絶しなくても………」

焦り出す楯無先輩。

「あっ。 なーに? もしかしてお姉さんを襲う気? エッチね」

楯無先輩は、そう言って慌てて否定させようとしているのだろうが、

「とりあえず、理性がまともであれば襲う気は無いんですけど、俺も男です。 性欲が理性を超えてしまえば襲いかかりますね。 さっきの裸エプロンでも、実際は結構精神力削れてるんですよ。 まあ、襲いかかっとしても、返り討ちに遭うのが目に見えてますが…………」

俺は可能性を示唆する。

「か、返り討ちにされるんなら別に一緒に寝ても問題ないんじゃ………?」

おそらく先程から楯無先輩の予想とはかけ離れた答えを俺は発言しているのだろう。

楯無先輩の表情に焦りが見え始める。

「俺は自分から襲いかかるなんてことをしたくないんです。 そんなことしたら、一生記憶に残って罪悪感を感じ続けますよ」

俺は床にタオルを敷いて、掛け布団を用意する。

「楯無先輩は、そのからかいで相手を元気づけようとしたり、気分転換させようとしているんでしょう? 確かに織斑のような前向きで鈍感で初心な人間には、楯無先輩のやり方は有効です。 しかし世の中にはそのやり方が逆効果になる人間もいるんですよ。 俺みたいな後ろ向きな人間は特にね」

俺はそう言うと、部屋の電気を消し、床の布団に潜る。

「別にそのやり方が悪いとは言いません。 でも、俺にはそういうことはしないでください。 自分が虚しくなるだけなので」

俺はそう言って目を瞑る。

少しすると、

「……………その……盾君?」

楯無先輩が声を掛けてきた。

「………何ですか?」

「……………その………ごめん……! 私そんなつもりじゃ…………」

楯無先輩が謝ってきたので、

「わかってますよ。 別に怒ったりはしてません。 ただ、先程も言いましたが、俺にそういうからかいはしないでください」

「うん………本当に……ごめん………」

楯無先輩は落ち込んだ声で謝ってくる。

「…………あのっ……やっぱり床じゃ疲れが取れないから、ベッドに………」

楯無先輩は申し訳なさそうな声でそう言ってくる。

これはからかいではなく本気なのだろう。

「いや………ですので、一緒のベッドでは精神がガリガリと削られますので…………」

「分かってる! だから、私が代わりに床で寝るから……!」

楯無先輩がとんでもない事を言い出した。

「それはダメです。 男がベッドで女性が床なんて、男として恥です」

俺はその案を却下する。

「わ、私の家は対暗部用暗部なの。 この私も訓練を受けていて、多少寝苦しくても平気だから………」

うぉい、そんなことバラしていいのかよ。

「対暗部だかなんだか知りませんが、俺からしてみれば楯無先輩は高校2年生の女の子ですので、楯無先輩が床で寝るのは却下です」

「むぅ………高校1年生の男の子がナマイキだぞ」

楯無先輩は、多少調子が戻ってきた口調でそう言ってくる。

「残念ですが俺の精神年齢は45歳です。 なので楯無先輩を子供扱いしても問題ありません」

俺は冗談めいた言葉でそう返す。

冗談ではなく本当だがな。

「45歳って、随分細かいんだね」

「さて………」

俺ははぐらかす。

「「…………………」」

暫く無言になる俺達。

「ねえ………」

「はい………」

投げかけられた言葉に返事を返す。

「私は君を強くするって約束した。 でも、床で寝てたら疲れが取れない。 それは訓練の効率低下につながるの。 だからお願い、君はベッドで…………」

真剣で、尚且つ少し悲しそうな声。

その声に、俺はついに我慢できなくなった。

「あーーー! もーーーーー!!」

俺は軽く叫んで床の布団から飛び上がるように起きる。

「楯無先輩! ギリギリの妥協案です! その位置を動かないでください!」

「えっ?」

楯無先輩は、ベッドの右側に陣取っている。

俺は、ベッドの左側の外ギリギリに潜り込む。

そして、楯無先輩に背中を向けた。

「無理に近づかないでください。 なるべく触れないでください。 これでも精神がかなり削れているので!」

俺はそう言って無理矢理目を閉じる。

「……………うんっ!」

心なし嬉しそうな楯無先輩の声が聞こえた。

眠れるかはわからないが、俺は目を閉じ続けた。






【Side 楯無】





世界で初めてISを動かした2人の男性。

1人は織斑 一夏。

彼はあの織斑先生の弟であの篠ノ之 束が興味を持つただ数少ない人物の1人。

もう1人は無剣 盾。

彼は特に特別な経歴もないただの男子学生だった。

ただ、彼の名前がまるで私の名前と対になっている事で、多少の興味が沸いた。

この私、更識 楯無と無剣 盾。

楯無き者と剣無き盾。

まるで示し合わせたかのような名前に、運命を感じた………なんてね。



入学式の翌日、その彼がアリーナで訓練しているという噂を聞きつけ、私はアリーナに向かっていた。

だけど、アリーナの観客席の出入口から、多くの女生徒が落胆の言葉を吐きながら来た道を戻っていく。

私は、出入口からアリーナの中を覗いたとき、

――ドガァン

ISが地面に墜落した。

すると、そのISはすぐに立ち上がり、もう一度飛ぼうとして、今度は壁に激突する。

見れば、その操縦者は、資料で見た2人目の男性IS操縦者の無剣 盾だった。

今までも、何度も墜落していたと思わせる土と泥だらけの打鉄。

多分、さっきの生徒たちはこの姿を見て落胆したのだろう。

でも、私は何故かその姿から目を離せなかった。

何度倒れても起き上がり、飛ぼうとするその姿。

確かにパッと見はカッコ悪いだろう。

でも、私はそうは思わなかった。

彼の何度も立ち上がる姿を、私は見続けた。



翌日。

彼は昨日と同じように、アリーナで飛行訓練をしていた。

でも、成果はあまり出てないみたい。

昨日と同じく、何度も立ち上がる姿を見て、私は気づけば彼にプライベートチャネルをつないでいた。

(君は足だけで飛ぼうとしてるからダメなのよ。 身体全体を持ち上げるイメージでやってみて)

私が見ていて気付いたアドバイスを送ってみる。

彼は、驚いたように辺りを見渡したが、少しして飛行訓練を再開した。

すると、今度はさっきよりも上手く浮かんだ。

フラフラしているけど、さっきみたいにバランスを崩すことはない。

やがて、彼は嬉しそうな顔をして、アリーナ内を飛び回った。

私から見れば、完全な素人飛びだけど、自由に空を飛んでいるからか、彼の顔は笑が浮かんでいる。

けどそこで気づいた。

あのまま行くとシールドにぶつかる。

私は警告を贈ろうとしたけど、結局間に合わず、彼はシールドに激突して墜落した。



それからも私は度々彼にアドバイスを送った。

優秀な生徒のように一を教えれば十を覚えるような才能はないけど、教えたことを繰り返し練習して、少しずつ上手くなっていってる。

ダメ元で瞬時加速イグニッション・ブーストを教えたときは、ジャイロ回転付きだけど、1発で成功させるとは思わなかった。

彼ってイメージ力はあるのかな?

そのあと直ぐに彼が気絶しているのに気付いて、慌てて保健室に運んでいったけど………

そして、クラス代表決定戦当日。

私も興味があったから観戦していた。

だけど、彼の戦い方は勝とうとする戦い方じゃなかった。

まるで、相手の手を多く出させるように。

そして、もう一つ気になったのが、彼がアサルトライフルを対戦相手に向けたとき。

彼の訓練を見ていて、射撃の腕前も当然見てるから、彼でも当てられるタイミングだと確信した。

だけど、彼は撃たなかった。

その後のブレードを呼び出した時も刃を返していた。

私は彼の行動が分からなかった。

最後には、覚えたての瞬時加速イグニッション・ブーストで相手の懐に飛び込んだけど、ミサイルに撃ち落とされた。

けど、その時に私は見た。

彼が口元に笑みを浮かべ、自分からミサイルにあたりに行ったように思えた。

そのミサイル攻撃が止めとなり、試合は彼が一撃も与えられずに負けとなった。

私はどうしても気になり、観客席を出てピットへ向かう通路を進む。

すると、その彼が休憩用のベンチに座り、備え付けのモニター画面を見つめていた。

まるで、泣きそうな表情で。

私は思わず気配を消して彼の隣に座った。

彼はモニターをじっと見ていて、私には気づいていない。

私も、彼と一緒にモニターをみる。

そこには織斑先生の弟君が、先程の相手といい勝負を繰り広げていた。

一応この一週間一夏君の事も調べているから、ずっと剣道ばかりやっていたことは知ってる。

ISを全然構っていなかったはずなのに、この短時間で、隣の彼と同等以上の飛行能力を身につけている。

「はあぁ~~~~~~…………」

彼は大きなため息を吐いた。

「ため息を吐くと、幸せが逃げちゃうよ」

私はそう言う。

「うおわっ!?」

彼は初めて私に気づいたのか、驚いて立ち上がりつつこちらを向いた。

「だ、誰?」

彼は驚愕の表情で私を見る。

「こうやって顔を会わせて話すのは初めてだね。 無剣 盾君。 私は更識 楯無。 生徒会長よ」

私は自己紹介した。

彼の表情は驚きで固まっていた。

「なんでここに、って顔してるね? 答えは簡単。 自分の教え子が気になったから」

「はい? 教え子?」

彼はそれだけではわからなかったのか、そう聞き返してくる。

(うふふ。 まだ気付かない?)

私はプライベートチャネルで話しかける。

「ああっ! この声、俺の訓練にアドバイスをくれた!」

それで気づいたのか、彼は私を指差して叫んだ。

「その通り!」

私はそう言って扇子を開く。

「えっと……更識先輩、アドバイスについては本当にありがとうございました。 お陰で、オルコットさんとの戦いの土俵にちゃんと立てました」

彼はそう言って頭を下げてきた。

「でも、何で俺に?」

そう言われ、私は少し考える。

「う~ん………まあ、名前が気になったから、かな?」

これ以外に理由が無いしね。

「そうですか。 それなら言っておきますけど、俺なんかに時間を費やすより、織斑を鍛えてやったほうが有意義ですよ」

彼はそんな事を言ってきた。

「何でそう思うの?」

私がそう聞くと、

「見てください。 織斑はISの合計稼働時間は今現在でも1時間………いえ、30分にも満たない。 それなのに、あいつはもう飛行をモノにしようとしてる。 俺がこの1週間、ずっと訓練してきてたどり着いた領域に、この5分足らずでたどり着いた。 いや、既に俺を超えている」

モニターの中では、一夏君とセシリアちゃんが互角の勝負を繰り広げている。

しかし、やがて一夏君のISが一次移行ファースト・シフトをした時、勝負が動いた。

一夏君がビットを全て破壊し、セシリアちゃん本人に斬りかかる。

セシリアちゃんは、先程の彼と同じようにミサイルを放つが、先程の試合を見ていた一夏君には通用せず、そのまま落とされた。

「見ての通りです。 織斑と俺の才能の差は、正にウサギとカメです。 ですから、俺なんかに無駄な時間を使うよりかは、織斑の才能を伸ばしたほうが効率的です」

彼は自虐的にそう言う。

「でも、いくらカメでも、歩みを止めなければ、いつかはウサギに追いつけるんじゃない?」

私は、少しでも元気を出してもらおうとそう言ったけど、

「無理ですよ。 真面目な頑張り屋のウサギに、怠け者のカメが勝てるわけないじゃないですか」

彼の言葉は更に自虐に走った。

「俺は努力をするということが出来ない人間です。 何度やっても3日坊主。 いえ、3日もてばいい方ですね」

「でも、今回君は1週間頑張ってたよ?」

「それは恥をかきたくなかったからです。 俺にも多少のプライドというものがあります。 自分の中では恥をかかない最低限のレベルまでは頑張れるんですよ」

「じゃあ負けることは恥じゃないの?」

「恥ではありませんね。 俺にとって負けることは当たり前。 負けることは、俺の人生の一部と言っていい」

彼は負けることを肯定してしまっている。

でも、それじゃあダメ。

「負けたって別にいい。 土俵に立てるだけの力があればいい。 だから俺は努力ができない。 それでいいと心が諦めているから」

「…………………」

私は一瞬黙り込んでしまうけど、さっき見た彼の悲しそうな顔を思い出す。

「君は本当にそれでいいの?」

私はそう問いかける。

「さっきも言いました。 心がそれでいいと諦めているんです」

「悔しくないの?」

「悔しがるほど努力をしていませんから」

「本当に?」

「……本当です」

「ホントのホントに?」

「……………はい」

何度聞いても彼は応えてくれない。

「本当に、悔しくないの?」

「……………………」

「………私は、君の本当の気持ちが知りたいの」

「…………………………」

次が最後。

これ以上は、踏み込むべきじゃない。

「悔しく………ないの?」

「……………………………………………………………悔しいですよ」

長い沈黙の後、彼の本音が漏れた。

すると、

「俺だって男です! 勝ちたい! 負けたくない! 負けるのは悔しくてたまらない! ………………だけど、それ以上に悔しいのは、それだけ悔しさを感じているのに、努力することが出来ない自分が一番悔しい!!」

彼はは壁を殴りつけ、本音を吐き続ける。

「だけど俺にはどうする事もできない! どんなに努力しようとしても三日坊主! どんなに悔しい思いをしても、体は楽な方を選んでしまう! 悔しがって! 努力しようとして! 結局は楽を選ぶ! そしてそんな自分が更に悔しい! 結局はその繰り返しなんだ!! それなら、最初から諦めて何もしない方がいい! それなら悔しさも感じない! 初めから負け犬でいれば、それ以上堕ちる事はないんだ!!」

これが彼の本音。

悔しくて……それでも頑張れなくて………頑張れない自分が更に悔しい。

私はその思いに泣きそうになる。

「はぁ……はぁ………そういうことです。 俺にはもう構わないでください」

彼は私に背を向ける。

「…………ねえ」

でも、最後に確認しておきたい。

「まだ何か?」

睨みつけるような目で私を見てくる彼。

無理矢理心の内を暴かれたようなものだから、そんな目を向けられるのはは当然だ。

「最後にもう一つだけ本音を聞かせて?」

「……………何ですか?」

私は、しっかりと彼を見て、

「………強くなりたい?」

そう訪ねた。

その問に彼は、

「…………なりたいですよ」

紛れもない本心で答えてくれた、

私は自然と嬉しくなる。

「うん。 君の気持ちはよくわかった」

私は彼の手を取り、

「え?」

そして、

「じゃあ、レッツゴー!」

彼を強くすることを心に誓った。




彼に地獄の特訓デラックスフルコースを受けさせてみる。

彼は悲鳴をあげてたけど、投げ出すことはしなかった。

やがて、体力の限界に来たのか、彼は気を失う。

流石に一般人の彼が最後まで特訓を続けることは無理だったか。

だけど、そこで私は気付いた。

彼は、努力ができないんじゃない。

努力のキッカケが見つけられないだけなんだと。

努力をしない人が、倒れるまで特訓を受けれるはずがない。

私はそう考えつつ、倒れた彼を保健室へと運んだ。




彼の部屋に引越しを終えた私は、何とか彼に気兼ねなく接してもらう計画を練る。

私はちょっと恥ずかしいけど、お色気作戦で行くことにした。

だけど、これは彼には逆効果だった。

彼は、からかわれたりすることは、嘘をつかれると同義に受け止めてしまう人だったのだ。

こういう人は稀にいるけど、まさか彼がそういう人だとは思わなかった。

私は、彼に惨めな思いをさせてしまった。

彼は怒らなかったけど、私は彼を傷つけた。

私は、そのお詫びに何とかベッドで寝てもらおうとしたけど、彼は頑として譲らない。

私は何度もお願いした。

やがて、彼は折れたのか、同じベットに潜り込んだ。

ただ、彼は端によって背中をこっちに向けてたけど。

だけど、彼との距離が少し縮められた気がして、私は嬉しいと感じた。





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