第二十四話
【Side 甲】
今日はIS学園の学園祭!
私もお兄ちゃんから招待券を貰ってIS学園に来ています!
着いた途端にケンカを目撃したので、とりあえず4人のヤンキーを1人で相手していた赤髪のお兄さんに助太刀して、ヤンキー達にお灸を据えときました。
その後に、赤髪のお兄さんとメガネをかけたお姉さんが何かいい雰囲気になっていたので居心地が悪かったんだけど、お兄ちゃんとお義姉ちゃんが偶然にも現れて、メガネのお姉さんがお義姉ちゃんの幼馴染ということが分かりました。
それからお兄ちゃんに一緒に学園祭を回らないかと誘われたけど、2人のお邪魔はしたくないので遠慮しときました。
甲は空気が読める子なのです!
それからお兄ちゃん達と別れて1人で学園祭を見て回っていたのですが…………
「ここどこ~~~~?」
只今絶賛迷子中です。
やっぱり好奇心に駆られて案内板を無視して探検してしまったことが失敗でした。
IS学園広すぎるよ…………
「はぁ~…………誰かいないのかなぁ?」
私はそう呟きますが、常識的に考えて誰もいない可能性が高いです。
今日は学園祭。
生徒は皆出し物の方に回ってるだろうし、先生方もそっちの方優先で見回ってると思う。
困ったなぁ~。
私が当てもなく彷徨っていると、
「……………あれ?」
何処からか音がする。
私がキョロキョロと辺りを見回すと、整備室と表示された部屋から人の気配がした。
「誰かいるのかな?」
私は地獄に仏だと思い、その部屋に入る。
部屋の中は薄暗かったけど、部屋の奥の方に明かりが見え、誰かが居ることが分かった。
私は道を聞こうと思い、部屋の奥へと歩いていく。
すると、水色のISの前で、誰かが忙しなくキーボードを叩いていた。
でも、その後ろ姿は何処かで見たことがあるような気がした。
水色の髪のセミロング。
「…………お義姉ちゃん?」
私は思わず口に出していた。
その人はハッとして私の方に振り向いた。
そこで分かったけど、その人はお義姉ちゃんじゃなかった。
当たり前か。
今、お義姉ちゃんはお兄ちゃんと一緒にいるんだから、こんな所にいるわけないよね。
でも、その人はメガネをかけてるけど、綺麗なルビー色の瞳だし、顔の作りもお義姉ちゃんによく似てる。
お義姉ちゃんの妹さんかな?
私がそんな風に考えていると、
「……………誰?」
そのお義姉ちゃん似の人が問いかけてきた。
私はそこでハッとして、
「あっ! と、突然邪魔してすみません! わ、私、無剣 甲って言って、お兄ちゃんから招待券を貰って学園祭に来たんですけど、迷子になっちゃって!」
慌てて喋った所為か、口が上手く回らなかった。
私は恥ずかしくなって一旦口を噤む。
「……………えっと………それでですね。 もし差し支えなければ、学園祭のエリアまでの道を教えて頂けないでしょうか?」
私はそう言いながら頭を下げる。
その人は、一旦キーボードを叩くとモニターを閉じて、
「いいよ………案内してあげる」
立ち上がりながらそう言った。
「えっ? あの、道を教えていただければ、そこまで手を煩わさせるわけには…………」
私は思わずそう言うけど、
「大丈夫………私も気分転換しようと思ってた所だから」
そう言って、少し微笑んで見せてくれた。
この人、ちょっと暗い雰囲気だけど、いい人っぽい。
その人が歩き始めたので、私もついて行く。
「えと、さっきも言いましたけど、私、無剣 甲っていいます!」
「………無剣?」
私の苗字を聞いて、思い当たるフシがあるのか反復するその人。
「知ってるか分かりませんけど、この学園に通ってる、無剣 盾の妹です!」
「…………一応知ってる。 世界で2人だけしか居ない男性IS操縦者の1人。 クラスが違うから個人的な交友は無いけど………」
「そうですか。 でも、ウチのお兄ちゃんって、影薄いですからもう1人の男性操縦者の影に隠れちゃってるんじゃないですか?」
「確かにウチのクラスに流れてくる噂は、もう1人の噂が殆ど…………」
「ですよねー?」
あれ?
もう1人の男性操縦者の話題が出たら雰囲気が暗くなった?
もしかして私、地雷踏んじゃった!?
私は慌てて他の話題を探そうとする。
「え、え~っと、そうだ! ちょっと気になってたんですけど、え~っと………」
その人の名前を言おうとして、まだ聞いてないことに気付いた。
「………簪。 更識 簪……」
私の言いたいことに気付いたのか、その人はそう名乗ってくれる。
でも、『更識』って事はやぱっり………
「あのっ、間違ってたらすみません。 簪さんって、もしかしておね…………楯無さんの妹さんですか?」
「ッ!……………そうだけど………」
ああああ!
お義姉ちゃんの話題を出したら更に雰囲気が暗くなっちゃった!?
地雷を避けようとして、逆に地雷原に踏み込んじゃった!?
「………何で姉さんの事を知ってるの?」
ああ!ごめんなさい!ごめんなさい!
そんな暗い眼で私を見ないで!
「えと………その………お兄ちゃん関係で楯無さんに勝負を挑んで…………完膚無きまでに完敗したことがありまして…………」
私は簪さんの雰囲気から、お義姉ちゃんとの仲はあまり良くないだろうと予想し、お兄ちゃんとお義姉ちゃんが恋人同士だということも知らされてないだろう思い、その事は伏せて説明した。
「………そう………姉さんは凄いから…………」
簪さんは暗い表情でそう呟く。
これって、凄すぎる姉に、コンプレックスを持ってる妹って奴なのかな?
「あはは………そうですね。 私のお兄ちゃんとは真逆です」
私は乾いた笑いを零しつつ、何とか話題を変えようと思っていた。
「私のお兄ちゃんは、弱っちくて、情けなくて、喧嘩もした事が無かったんです…………」
「…………そう」
「でも………いくら弱くて、情けなくても…………それでも私にとっては、優しくて……大好きなお兄ちゃんなんです!」
「……そう……なんだ……」
「簪さんも………そうなんじゃないんですか?」
「えっ?」
私はそこで変なことを口走ったことに気付いた。
折角お義姉ちゃんの話から遠ざけようと思ってたのに、自分でむし返してしまった。
でも、言わずにはいられなかったと言ってもいいかもしれない。
ええい! どうにでもなれ!
私は自分から地雷原に踏み込んだ。
「簪さんは楯無さんの事、嫌いですか?」
「………………わからない」
否定はしなかったけど、肯定もしていない。
それが答えのような気がした。
「そうですか」
私はそう言って笑ってみせた。
やがて、出し物で賑やかな廊下が見えてくる。
「あっ! ここまでくれば大丈夫です!」
「…………そう」
「簪さん! ありがとうございました!」
私はお礼を言って頭を下げる。
「それじゃあ、私はこれで」
簪さんはそう言いながら踵を返そうとする。
「あのっ、ちょっといいですか?」
私は簪さんを呼び止める。
「………何?」
簪さんは足を止める。
「もしISの授業の中でタッグマッチみたいな事があったら、お兄ちゃんと組んであげてください。 お兄ちゃん弱っちい上に友達もいないだろうから、簪さんみたいな頼りになる人が組んでくれると安心できますから」
私がそう言うと、
「わ、私はそんな頼りになる程じゃ…………」
簪さんは謙遜なのかそんな事を言う。
でも、
「私の感は、簪さんは頼りになる人だと言ってますよ」
「………………考えとく」
簪さんはそう言って背を向ける。
私はその背中に向かって、
「またね。 未来のお姉ちゃん」
そう言葉を投げた。
「えっ?」
簪さんは、驚いた顔で振り返ったみたいだけど、私はそのまま人混みに紛れた。
【Side Out】
しばらく刀奈と一緒に学園祭の出し物を回ったあと、刀奈は生徒会の出し物のキモである一夏と一夏ラヴァーズを呼びに行った。
暇を持て余した俺は、空と雑談でもしていようと思ったとき、
「ちょっといいですか?」
突然声をかけられた。
「ん?」
俺が顔を向けると、そこにはスーツを着た、オレンジ色のロングヘアーの女性がにこやかな笑みを浮かべて立っていた。
「失礼しました。 私、こういう者です」
その女性は名刺を差し出してくる。
俺はそれを受け取ると、そこに書かれていた名前を読み上げる。
「IS装備開発企業『みつるぎ』渉外担当・巻紙 礼子…………ん?」
巻紙?
何か引っかかる名前なんだが…………
まあ、とりあえず、
「織斑 一夏なら人違いですよ」
偶にいるのだ。
俺を一夏と間違えて装備提供をしようとする奴が。
「いえ、間違いではありません。 無剣 盾さんですよね?」
その女性はハッキリと俺の名を言った。
「………そうですけど?」
「はい。 是非とも無剣さんに我が社の装備を使って頂けないかなと思いまして」
(だ、そうだが?)
俺は一応空に話しかける。
まあ、答えは聞かなくても分かってるが、
(嫌!)
一文字のシンプルな答えだった。
空は、現状の装備を変えられるのを極端に嫌う。
まあ、俺も打鉄・不殺にこれ以上装備を増やすつもりは無い。
俺に取って空も打鉄・不殺も、武器でも兵器でもない。
俺の『翼』であり、刀奈を『護る為の力』だ。
第一、装備を増やしたところで、俺に使いこなせるとは思えん。
「すみませんがお断りします。 こいつも嫌がってますし、俺に装備を提供しても使いこなせないのでお宅のイメージダウンにしかならないと思いますよ」
俺はキッパリと断る。
女性はこうもキッパリ断られるとは思ってもみなかったのか、一瞬呆然としていた。
しかし、直ぐ気を取り直し、
「まあ、そう言わずに!」
少し強引に押してくる。
こういうタイプに弱みを見せたらいけない。
何か、前世の仕事の職場で生命保険のお姉さん(オバさんと言ってはいけない)達の勧誘を思い出す。
「申し訳ありませんが、そろそろ出し物の時間です。 俺はこれで失礼します」
一方的にそう言ってその場を立ち去った。
人混みに紛れて撒いた事を確認すると、俺は息を吐く。
それにしても巻紙か…………
聞いた時も思ったけど、何か引っかかるんだよなぁ?
なんだっけ?
俺はモヤモヤとした感覚を残しつつ、その場を後にした。
やがて刀奈が一夏達を連れてきて、俺は一夏と一緒に王子様の衣装に着替えている。
俺は王子姿の自分を鏡で見る。
うん、似合わん。
対して一夏は、持ち前のルックスから、王子姿が板についている。
さすがハーレム主人公。
つーか、俺まで王子役を演じる必要があるのかなぁ?
「2人ともちゃんと着たー?」
刀奈がノックもせずにドアを開け、入ってくる。
俺にとってはいつもの事なので別に気にはならなかったが、
「…………………………」
一夏は刀奈を見て固まっていた。
「開けるわよ」
「開けてから言わないでくださいよ!」
一夏よ。
そうやって素直に反応するから刀奈にいいように弄られるんだぞ。
「別に心配しなくても、盾以外の男には興味ないわよ」
「そういいう問題じゃありません! それからさらっと惚気けないでください!」
「ま、それは置いとて、はい、王冠」
刀奈は、俺達に王冠を差し出してくる。
「はぁ…………」
一夏は疲れたのかため息を吐く。
「なによ、嬉しそうじゃないわね。 シンデレラ役の方が良かった?」
「嫌ですよ!」
いいように振り回されてるな、一夏。
「さて、そろそろ始まるわよ」
第四アリーナに設けられた、豪勢な舞台のセット。
観客席も満員だ。
「あのー、脚本とか台本とか一度も見てないんですけど」
出番を前に気になった一夏が尋ねる。
そんな物はもちろん無い。
「大丈夫。 基本的にこちらからアナウンスするから、その通りにお話を進めてくれればいいわ。 あ、もちろん台詞はアドリブでお願いね」
刀奈はそう言って去っていくが、これは一夏を囮にして亡国機業のオータムをおびき寄せる作戦なんだよな?
餌役の一夏にはご愁傷様だが。
俺には関係ないだろうし気楽に行くか。
『さあ幕開けよ!』
刀奈のアナウンスとともにセットの幕が上がる。
『むかしむかし、あるところにシンデレラという少女がいました』
出だしは普通だ。
『否! それはもう名前ではない。 幾多の舞踏会を経て、群がるライバルを蹴落とし、王子達の冠に隠された隣国の軍事機密を手に入れるため、王子の心を奪う事に執念を燃やし、その執念の灰すらを被ってひたすら突き進む少女達…………彼女らを呼ぶに相応しい称号……それが『灰被り姫』!』
「はい?」
刀奈のアナウンスに呆けた声を漏らす一夏。
まあ、まともじゃない事はわかっていた事だが。
『今宵もまた、シンデレラ達の王子の心を奪うための戦いが始まる!』
すると、
「一夏!」
ドレス姿の鈴が突然あらわれて、
「一夏! お願い! その冠を私に頂戴!」
鈴は胸の前で両手を組み、祈るような体勢から上目使いで一夏に懇願している。
因みに、王冠を手に入れた者には、その王冠の持ち主と同室になれるというご褒美がついているのだ。
一夏ラヴァーズは特に必死になろう。
「冠? 別にいいけど…………」
一夏はその王冠の意味が分かっていないので言われたままに王冠に手をかけようとする。
その時、
「お待ちください!」
反対側からセシリアが、同じくドレス姿で現れた。
「一夏さん! その冠は、是非わたくしに!」
セシリアは、自分の胸に手を当て、凛とした姿で一夏に言った。
鈴とセシリアの間で板挟みになる一夏。
「え? え?」
それぞれを交互に見る一夏。
「ま、待って!」
更にシャルロットが登場。
もちろんドレス姿だ。
「一夏。 王冠は僕に頂戴!」
「はぁ!?」
一夏が声をあげる。
だが、
「待て!」
今度はドレスを着たラウラが2階から飛び降りてくる。
「お前は私の嫁だ! ならば、夫である私に王冠を渡すのが筋というもの!」
ビシッと一夏に指を差し、そう言い放つラウラ。
「なぁっ!?」
次々と現れる一夏ラヴァーズに一夏は混乱する。
トドメとばかりに、
「い、一夏っ!」
ドレスを纏った箒が、顔を赤くしながら現れる。
「そ、そのっ! お、幼馴染のよしみで、その王冠を譲ってはくれないか?」
「ほ、箒まで…………」
一夏は呆れたように呟く。
因みに俺は蚊帳の外。
舞踏会場のセットの壁に腕を組んで寄りかかりつつ、舞台の真ん中で囲まれている一夏を眺めていた。
「何で皆こんなもの欲しがるんだよ…………」
一夏はそう呟きながら、何気なく頭の冠を取ろうとして、
『王子様にとって国とはすべて。 その重要機密が隠された王冠を失うと、自責の念によって電流が流れます』
一夏が王冠を外す瞬間を狙ったように、刀奈のアナウンスが流れる。
「はい?」
一夏は流れるままに王冠を外してしまう。
その瞬間、
「ぎゃああああああああああっ!?」
バリバリという音と共に、一夏の身体に電流が流れる。
お~お、見事に感電してらぁ。
電流が収まると、プスプスと服の所々から、焼け焦げて煙が上がっている。
一夏はピクピクと痙攣していた。
つか、あれだけ強烈な電流くらってよく生きてるな。
人間って、0.1A流れりゃ死ぬはずだが?
服が焼け焦げるって、相当な電流のはずだぞ?
前世で構ってた溶接機じゃ、150Aの20V前後で3.2mmぐらいの鉄板なら軽く溶けてたからな。
う~ん…………刀奈は電流って言ってたけど、電圧が高いだけなのか?
俺は、そんなどうでもいい事を考えながらその様子を眺めていた。
「な………な………な………なんじゃこりゃぁーーー!!」
一夏が叫ぶ。
生きてるだけじゃなく、よくあれだけ吠える元気があるもんだ。
『ああ! なんということでしょう! 王子様の国を想う心はそれほどまでに重いのか! しかし、私達には見守ることしかできません! なんということでしょう!』
「2回言わなくていいですよ!」
刀奈のアナウンスに一夏が突っ込む。
それにしても刀奈の奴、ノリノリだなぁ。
「す、すまん皆! そういうことだから!」
一夏はそう言うと、王冠を被り直し、脱兎のごとく逃げ出す。
「あっ! 一夏!」
5人が呼び止めようとしたとき、どこからともなく地響きが近づいてくる。
『さあ! 只今からフリーエントリー組の参加です! みなさん王子の王冠目指して頑張ってください!』
観客の希望者がシンデレラとして舞台に乗り込んできた。
「織斑君! 大人しくしなさい!」
「私と幸せになりましょう、王子様!」
「そいつを………よこせぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
シンデレラの大群が一夏に迫る。
「うわぁああああああああああっ!!」
叫び声を上げながら逃げる一夏。
「くっ! 一夏!」
「皆さん! ここは一度手を組みませんこと?」
セシリアが言った。
「このままでは、誰かに一夏さんの王冠を取られてしまうかもしれません。 ここは協力して、一夏さんを守りぬくのです!」
セシリアの提案に、一夏ラヴァーズは顔を見合わせる。
「この中の5人の内、誰が手に入れてもそれは一旦保留。 その後、改めて対等な条件で王冠の所有権を決めるということで」
セシリアの提案に、皆は一瞬思案する。
確かにこのまま乱戦になれば、誰が王冠を手に入れるかわからない。
ならば、ここは協力したほうが得策かもしれない。
それに、一夏を守れば、それだけ好感度アップにつながるかも知れない。
等等を、一瞬で考え、同時に答えを出した。
5人はアイコンタクトを交わすと、
「「「「「うん!」」」」」
力強く頷きあった。
因みに誰一人として、俺を追ってくるシンデレラはいなかった。
しばらくボーッとしていると、バルコニーのセットの扉が開き、
「ぜぇ…………ぜぇ…………」
一夏が肩で息をしながらフラフラと現れた。
先程から一夏ラヴァーズの声が時々聞こえてきた事を考えると、一夏は5人に助けられたようだ。
「お疲れ」
俺はとりあえずそう声をかけた。
「ぜぇ………ぜぇ………な、何でお前は誰にも追いかけられないんだよ?」
一夏が心底恨めしそうな表情で俺に問いかけてくる。
「そりゃ当然だろ? 俺かお前かどっちを選ぶと問われりゃ、99.999999%の女子はお前を選ぶに決まってるだろうが」
俺は、何を当たり前なことをと言わんばかりにそう言った。
「だから………ぜぇ………はぁ………何でだよ?」
本気で言ってんのかコイツ?
と思うが、本気で言ってるからタチ悪いんだなこれが。
「お前はいい加減自分の魅力に気付け! 俺とお前を比べて俺を選ぶ奴なんて、どっかの物好きしかいねーよ!」
『くしゅん!』
そのどっかの物好きがくしゃみをしたようだ。
「おいおい。 その言い方だと、俺がモテモテみたいな言い方じゃないか。 第一それだったらお前の方がモテるだろ? 彼女居るんだし」
思わず一夏を白い目で見てしまった俺は悪くない。
一度ため息を吐き、
「彼女が居る=モテる奴とは限らんだろうが。 逆にモテる奴=彼女が居るとも限らんぞ」
「そうかもしれないけど、俺がモテる奴っていうのは間違いだ。 告白なんて一回もされたことないし…………買い物に付き合えっていうのなら、何回もあったけど………」
「……………因みに聞くが、その買い物に付き合えって言うのは、何回ぐらいあって、どういう風に誘われたんだ? 多分、誘われ方は似たようなものだから、代表的なものでいい」
「よくわかったな。 誘われ方は直接か手紙かの違いはあったけど、屋上とか体育館裏とか、人気のない所に呼び出されて、「付き合ってください」って言われたんだ」
「…………………………」
コイツ…………マジでわかってねぇのか?
「でもおかしいんだぜ? 俺が「いいぜ。 付き合うよ……………買い物ぐらい」って言うとさ、言い出した最初は嬉しそうにしてるんだけど、俺が言い終わった後、いきなり泣き出して走り去っちゃうんだ。 殆どがそんな感じだったなぁ………」
「………………………それが、中学3年間で何回あった?」
「中学3年間でか? う~ん…………ざっと100回以上はあったんじゃないかな?」
「……………………………………」
俺はもはや言葉が出なかった。
コイツ、無自覚で100人以上フッてやがった。
「そうか…………よくわかった……………」
俺は息を大きく吸い込み、
「おーい!! 一夏がこっちにいるぞーーーーー!!!」
大声でそう叫んだ。
「なっ!? 盾! てめっ!?」
「一夏よ。 俺は今ほど他人に1回死んでやり直せと思った事は無い」
俺は冷ややかな目で一夏を見る。
1回死んだぐらいで治るかは分からんがな。
やがて、地響きが近付いてきて、
「「「「「「「「「織斑く~~~ん!!」」」」」」」」」」
バルコニーの扉が破壊されてシンデレラが流れ込んでくる。
「うわぁああああああああああっ!!」
一夏は再び逃げ出した。
シンデレラの大群がそれを追いかける。
しばらくして嵐が通り過ぎた後、
「やれやれ…………」
再び腕を組んでセットにもたれかかったとき、
「ん?………おわっ!?」
突然足を掴まれ、セットの下に引きずり込まれた。
あとがき
第二十四話の完成。
オータムとのバトルまで書こうと思ったけど、思った以上に長くなったので一旦切りました。
さて、今回は妹ズの出会いとシンデレラでした。
どうでしょうか?
簪の初出演。
盾には出会ってませんが。
何げに関係を作っておかないと後々苦労するような気がしたので………
それからシンデレラの内容大分変えました。
力尽くではなくハニートラップの掛け合いとなりました。
どうでしょうか?
最後に盾君が何者かに引きずり込まれましたが、その正体とは(笑)
では、次も頑張ります。